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m @ s t e r v i s i o n
pinkArchives 2000
★★★★★=すばらしい ★★★★=とてもおもしろい ★★★=おもしろい ★★=つまらない ★=どうしようもない

★ ★ ★ ★
いじめる人妻たち 淫乱天国(浜野佐知)

脚本:山崎邦紀 撮影:小山田勝治 出演:柳東史 黒田詩織|篠原さゆり
お盆のちょっとだけ大作「いじめる女たち 快感・絶頂・昇天」に続く、エクセスの正月のちょっとだけ大作は「舞踏会の手帖」ネタ。富山のスーパー店長が社長賞で貰った百万円と1週間の休暇を使って、東京まで3才で生き別れた姉を捜しにやってくる。手掛かりは「カナコ」という名前と「孤児院育ち」だということ。主人公は興信所のリストにある4人の女性を順に訪ねるが、行く先々で散々な目に遭う…。ピンク映画だから「散々な目」ってのはすべてセックスがらみなわけで、男性主人公が女性たちに圧倒されるいつもの浜野佐知コメディかと思いきや、最後に登場する篠原さゆりが(いつもの突拍子もない演技が嘘のような)人生の酷薄を漂わせる伊藤清美ばりの“凄演”をみせて、映画を傑作へと押し上げてしまう。小山田勝治のカメラも素晴らしい。 ● 姉捜しを終えて“血の繋がらない他人と新たな家族を作るため”に富山へと帰って行く主人公に、情けない顔が絶妙の柳東史。東京まで同道してくる恋人に、今岡信治の「OL性白書 くされ縁」ですっかり演技開眼した黒田詩織。主人公をいじめる面々には、カムバックしたベテラン・小川真実、“淫魔”鏡麗子、そして鏡麗子とキャラがかぶってる新人・彩木瑠名(なんとこの人“吉原まりあ”という源氏名で吉原のラテンクォーターという店の現役ソープ嬢なのだ。しかもHPによると“マイアイドル”がラジニカーントでインドまで映画 観に行ってる…) エンドクレジットに「SPECIAL THANKS:なかみつせいじ」って出てたのは、ひょっとして出番カットされちゃった? [追記]遺影出演だそうだ。気がつかなかった。

★ ★ ★
美人家庭教師 ふしだらな成熟(坂本太)

佐々木乃武良の快作「口説き屋麗子 火傷する快感」に続いて、はやくも登場の沢木まゆみ主演最新作。大学派遣の家庭教師として点数を稼いで大学講師への推薦をねらうヒロインが、担当助教授のセクハラの餌食に…。つまり「いじめられる家庭教師」の話。邪道だ「お姉さんが教えて…ア・ゲ・ル」シチュエーションのない「女家庭教師もの」なんて、おれは断じて認めんぞ(火暴) 下手の横好きなドラマ志向派・坂本太の演出は、ヒロインに憧れる女子高生・河村栞の描写などに観るべき点もあるが全体としては可もなく不可もなく。ヒロインと女子高生のレズ・シーンは冒頭に持って来るのが定石だろう。そうすればちゃんと「お姉さんが教えて…ア・ゲ・ル」という展開に…(←しつこい) セクハラ助教授に久須美欽一。義理の息子の裏口入学を画策する母親に佐々木基子。 ● あと美術スタッフ(てゆーか、助監督?)よ、あんな目立つ「掛け軸」を使いまわしちゃいかんなあ。バレバレだぞ。あと模試のポスターの「ゴールへ一直線」というコピーを「アナルへ一直線」と書き換えたりとか余計なことはしないよーに。観客の気が散るでしょうが。

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ピンサロ病院3 ノーパン診察室(渡邊元嗣)

日本が世界に誇(っていいのか知らんがともかく変わって)るモンド映画監督・中野貴雄の脚本による「渡り鳥、悪魔を退治する」の1篇。千年紀の変わり目には大天使が降臨して神と人類との契約延長を仲介する。だがその時点で地上に悪がはびこり、人類が夢を忘れていたら新しい世紀は悪魔の物になる・・・話としては「エンド・オブ・デイズ」である。いや「2001年から新千年紀」としてるあたりはこっちのほうが正統かも。ただあまりバチカンのお墨付きが得られそうにないのは、大天使ってのがモン・ロウって名前のピンク色の髪をした香港人ピンサロ嬢で、天使を悪魔の手から守るのが、ウェスタンな衣裳にズタ袋さげた流れ者、孤児院出身の赤城政子、またの名を上州小政ってピンサロ嬢だってこと。ハート型のおまんこをした(←ちゃんと小道具で作ってる)モン・ロウちゃんには不思議な治癒能力があって、ひとたびその口にちんぽを咥えれば、インポが治るだけじゃなく、盲の目は開き、いざりが立ち上がるという驚異のミラクル・リップの持ち主で、たちまちピンサロは大評判。ピンサロ嬢たちもナース姿で大ハッスル…って、あのう、それって「ピンサロ病院」じゃなくて「白衣ピンサロ」じゃないかと思うんですけどぉ…。 ● 本来の渡邊元嗣ならば「夢を忘れたはずの人類が素晴らしい愛を示して、その善意のパワーに悪が滅びる」という展開になるはずなんだが、脚本が中野貴雄だからとーぜん決着も女闘美(=女性同士の格闘)路線。全体にやたらとチープで、渡邊元嗣コメディとしても出来が良いほうではないが、「ラテン語で書かれた幻の黙示録」なんて小道具がやったら丁寧に造り込んであったりして憎めない。でも、これなら自分で監督すればいいのに>中野貴雄。 ● 正月映画ということで女優がゴーカに5人も出演。ヒーローの渡り鳥=小林旭に黒田詩織(1曲歌ってほしかったね) モン・ロウに「地上に降りた天使」という形容そのままの西藤尚。新入りの売れっ子に敵愾心を燃やすベテラン ピンサロ嬢に(終盤の悪魔メイクも似合いの)工藤翔子。賑やかしのピンサロ嬢に奈賀毬子と新人・水野里蘭。ゴールドの角を生やして白塗りで街中ロケに挑む「悪魔」に十日市秀悦。ギター担いだ金髪のイタリア人(もちろん台詞は日本語)…じつはバチカンからの使者に山崎信。そしてピンサロ店長に懐かしや(渡邊元嗣デビューの頃に螢雪次朗と名コンビを組んでいた)ジミー土田。おれ(ほんとに失礼だと思うけど)この人「死んだ」って聞いたような気がしてたからビックリしたと同時に嬉しかった。顔に手術痕があったから交通事故に遭ったかなんかだったんだな。滑るような絶妙の台詞まわしは得がたいのでぜひこれからもピンク映画に出てくれい!

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いんらん旅館 女将の濡れ姿(深町章)

浪花の夫婦漫才師。亭主の浮気癖が抜けず、ついには自分の双子の妹にまで手を出されて女房が家出。山間の温泉宿に仲居として雇われるが、そこには宿六亭主と瓜二つのキリリとした板長(いたちょう)と、とある秘密をかかえて艶然と微笑む若女将がいた…。シェイクスピア以来の取り替えっこの喜劇である。女性脚本家かわさきりぼん の3本目。深町章がもっとも得意とする艶笑喜劇ということもあって3本目にしてようやく“当たり”が出た。慣れない大阪弁で喋る“女房”水原かなえ は「夫婦善哉」を演るには、まだまだ「おままごと」のレベルではあるが、精一杯健闘しているし、相手役かわさきひろゆき が宿六亭主/二枚目板長をキチンと演じ分けて支えている。若女将に里見瑤子。偶然、宿に泊まる漫才師の師匠に(そういう役が似合いすぎの)久保新二。その愛人に新人・小室芹奈。背中に鳳凰、太腿に虎のみごとな墨を入れてて玄人さんかな? 正月映画に相応しい安定して楽しめる一品。ただ着付けが酷いのは何とかしてほしいぞ。

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愛人・人妻 ふしだらな性癖(杉浦昭嘉)

売れない構成作家がテレビ局のプロデューサーから企画を通すバーターとしてスワッピングを要求される。とは言っても、本物の妻ではなく「Pの愛人を妻と称して同伴してくれ」というものだった。Pから“シナリオ”まで渡されるが、スワッピング当日は予想外の展開に。そして後日、判明する意外な真実…という、ミソをつけた前作とは一転しての、オーソドックスな(人の死なない)1幕ものミステリー。相変わらず演出に才気は感じられないものの自筆のオリジナル脚本は及第点でしょう。主人公に竹本泰史。その妻に林由美香。プロデューサーに幸野賀一(怪演) その妻に葉月螢。愛人に容貌魁偉な新人・立花澪<キャバクラかなんかでスカウトした素人か?

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見られた情事 ズブ濡れの恥態(菅沼隆)

国映の新人・菅沼隆の監督・脚本 第1作。 ● あれえ? おれ、新宿の国際名画座で観たんだけど、なんか最後のほうを1巻トバして上映してんじゃねえのか!? いやだってそうとでも考えなきゃ辻褄が合わんぜ、この話。別の女とヤッてるのを見られて恋人が入水自殺。それから2年、インポになった主人公はその“別の女”と鎌倉の町で、傷を舐めあいながらヒリつくような同棲生活を送っている。そんなとき、死んだはずの恋人とそっくりな訳アリ女がフラリと江ノ電を降りる・・・という導入部で、主人公のカップルと訳アリ女が最後まで出会わないってんじゃ話が成立しないし、訳アリ女は「鎌倉に来た理由」も「訳アリ女になった事情」も説明されぬまま途中でフッと姿を消してしまうし、「はたして訳アリ女はかつての恋人と同一人物なのか?」というミステリーにも答えは出ないまま・・・な? 1巻トんでるとして思えないだろ。でなきゃ相当ヒドい脚本だぞ。 ● そもそも1時間もかけてこの映画は何も描いていない。「2人が辛い時間を過ごしてる」ってことぐらい観客にもすぐ判るんだから「雨がざんざ降る中を傘もささずに歩くヒロイン」とか「がらんとした部屋で熱帯魚の水槽をじっと見つめてる主人公」などという意味のないカットを延々と映したりする必要はまったくないのだよ。それよかさっさと話を進めろっての。年配刑事に「山さん」という名前をつけるセンスもわからん。ま、貶すばかりではナンだから、鎌倉の町を丹念にロケした撮影は褒めておく。カメラマンの森下彰三(新人?)も良い絵を撮っていた。ヒロインに(北沢幸雄「驚異!勃起促進剤」の第3話に出ていた)東城えみ。最初っから最後まで悲痛な顔のままでせっかくの美貌も台なし。死んだ恋人に瓜二つな訳アリ女に中川真緒。ピンク映画として必要最小限の濡れ場はクリアしてるが、途中のドラマがこんなに辛気臭くちゃ場外馬券帰りの観客は途中退場しちゃうだろうなあ。

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欲しがる兄嫁(小林悟)

おれの鑑賞予定リストからは外れてる耄碌老害監督の作品だが、主演が佐々木麻由子とあって観に行った。内容については、佐々木麻由子が出てるってこと以外コメントするべき点もない。場内の年老いた観客たちは「このような娘が家の嫁であったなら、おおぉ…」などと良からぬ妄想を膨らませてるのであろうな。観客の意思を代行するセクハラ痴呆舅を港雄一が怪演。今回、撮影が名手・小山田勝治で、いつもの天才カメラマン柳田友貴じゃないので「いつブレるか」とか「女優の顔がフレームから切れないか」とかハラハラしないで観ていられるのも大きい。…って、ものすごーくレベルの低い話をしてる気がするが、よーするにそーゆー映画なのだよ。

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ハイヒールの女 赤い欲情(工藤雅典)

脚本:橘満八&工藤雅典 撮影:井上明夫 出演:五十嵐ゆうか なかみつせいじ 野上正義
エクセス期待の新星・工藤雅典の3作目は、再びデビュー作「人妻発情期 不倫まみれ」の路線に戻って大人の女の官能を描く(“官能”って言葉はひょっとしたら今や死語かもしれませんなあ) ● 都会に独り暮しのOL。会社の上司との愛人関係がずるずると続いてる。自分の父親ほどの歳の男に何を求めてるわけでもないけれど、今ではすっかり躯が馴染んでしまった。このごろは、満たされぬ思いに見て見ぬ振りを続けるのにも疲れてしまった。…そんな彼女の心の隙間にすっと入ってきたのが、折れたハイヒールの修理にたまたま見つけた街の靴屋の男。「靴を見ればその人のすべてが判るんですよ」と言う、その男の優しいまなざし。繊細な指先。この人なら、あたしの事を理解してくれるかも。だが、その男はハイヒール・フェチの変態女たらしだった…。 ● まさに小沼勝を彷彿させるポルノの王道作品だが、「階段を1段目から順々に上がるような」描写をしない、観客の知性に信頼を置いた脚本のおかげで見応えのある作品に仕上がった。ただ、ヒロインの五十嵐ゆうかはイヤらしい躯つきはソソるのだが、台詞が棒読みでどーにもこーにも。ハイヒールを履いて歩く姿がブザマなのも致命的。…まあ、ハイヒールで美しく歩ける女優なんて日本にゃめったに居やしないんだけどさ。一方、なかみつせいじ(=杉本まこと)にとって「フェチな変態靴屋」などという役柄はお手の物で、まるで当て書きのよう。初老の愛人に野上正義が扮して人生の味。とてもイイ人な見合い相手に森士林。ワンポイントに里見瑤子。往年のロマンポルノ/ピンク映画の名女優・小川真実が本作で復帰しているのだが(言いにくいんだけど)ちょっともうキツいかなあ。

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スチュワーデス禁猟区 昼も夜も昇天(片岡修二)

片岡修二が7年ぶりにピンク映画に戻ってきた。かつてハードな描写が売り物の、にっかつ買取ピンク()「地下鉄連続レイプ」シリーズでならしたベテラン監督にとって「麻薬組織に誘拐&レイプされる国際線スチュワーデス」という題材は打ってつけのように思えたのだが、観せられたのはなんともクソぬるい代物。あのなあ、回想シーンだからって、何にも考えないでレイプシーンにソフトフォーカスかけるかフツー?(撮影:下元哲) やっつけ仕事なら、しなくて良いよ。イキの良いヤル気のある若い監督がいくらでもいるんだから。結局、片岡修二の唯一の功績は麻薬組織の男を演じた(最近はあまりピンク映画に出てくれない)下元史朗を連れてきたことだった。 ● ヒロインの吉井美希は顔に吹き出物が目立ってちょっと可哀想。演技は素人。台詞はたぶん吉行由実の吹替だと思う。台詞ではいっさい「スチュワーデス」と言わず「フライト・アテンダント」で統一してるのに、制服は現実には有り得ない超ミニ(←好きだけど) なんともチグバクなPC主義ではある。麻薬課刑事に元ローグのヴォーカリスト・奥野敦士(「漂流街」のブラジル食堂のマスター) 下手なのにリキ入れすぎでみっともない。しかもこいつ本来ならヒロインを救い出す役回りのはずなのに(これは脚本の所為なんだが)徹底的に無能なのである。拳銃を突きつけホールドアップした素手のレイプ犯は取り逃がすは、誘拐されたヒロインを助けに敵のアジトに潜入して(猿轡のヒロインが必死で目で合図してるのにまったく気付かず)背後から犯人に殴られるは、人質に猿轡もせず犯人が外出したのに口で縄をほどくことすら考えつかないという馬鹿さ加減で、観てて嫌になってくる。おまけにラストはヒロインが機転で事件を解決して、刑事は縛られたまま。それで終わりかい! 最初のエジキとなる同僚スチュワーデスに河村栞。愛情の冷めきった刑事の妻に林由美香。 ● ※註釈:かつての日活/にっかつロマンポルノでは、3本立プログラムのうち、メインの2本は日活/にっかつが直接製作、3本目は独立プロに作らせたピンク映画を“買い取って”上映していた。

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飯場で感じる女の性(荒木太郎)

脚本:内藤忠司 出演:荒木太郎 林由美香|鈴木あや 時任歩|久須美欽一
なんちゅうタイトルや。…だって「飯場もの」だから。「噴飯もの」でも「ハンパもの」でもないぞ(似てるけど) 大蔵映画から「次は“建設現場の女”でどうですか」とオファーされたのだそうだ。ななな、何それ? おれは寡聞にして知らんが、ひょっとして世の中じゃガテン女がブームなのか!? ● ピンク映画版の「男はつらいよ」こと、荒木太郎 自作自演による「キャラバン野郎」シリーズ最新第7作。寅さんはテキヤだったが、荒木太郎演じるシンジ君は自前のおんぼろワゴン車で関東平野を西から東へ、レトロな手作り白黒ショーをしながら旅を続けている。基本的なフォーマットは(「男はつらいよ」がそうであるように)シンジが旅の道連れ…すなわち白黒ショーの相手役となるマドンナを拾っては捨てられてを繰り返すという「ダメな男の失恋コメディ」なのだが、その裏に流れているのは(「男はつらいよ」がそうであるように)「人生いかに生くるべきか」という普遍的な主題だったりする。そしてその主題を象徴するのがシンジの元カノジョであるハナエの存在だ。つまり浅丘ルリ子だな。ハナエはかつてシンジを「あたしに頼りきってしっかりしてないから。このままじゃシンジ君ダメになる」という理由で振り、シンジはその傷心ゆえに旅に出たのだ。その後、ハナエもまた漂泊する魂となり、シンジの行く先々で巡りあい、あるいはすれ違いしつつ共に落ちつける場所を捜しているのだ。本作では、今日も今日とてイマドキの若い娘っ子なショーの相手役に金を持ち逃げされたシンジが腹を空かして田舎の工事現場で行き倒れると、その飯場ではハナエが飯盛り女をしていた、という設定。ハナエを演じるベテラン林由美香が素晴らしい(そう、平野勝之の「由美香」で平野を翻弄してメロメロにして打ちのめした、あの林由美香だ) 主人公のことを「シンジ君」と君付けで呼ぶ自立した女性で、この映画に出てくる男性は全員、彼女のひたむきさ/したたかさにマイってしまうのだ。いや、おれもこんな女にファーストネームに君付けで呼ばれてみたいよ。 ● シンジの金を持ち逃げした後でひょっこり飯場へやって来て土方のアイドルになってしまう奔放なガテン女に(鈴木砂羽 系とゆーか角度によっては小柳ゆきにも似てる<褒めてへん褒めてへん)鈴木あや。肩幅がいかつくて女子プロレスラーにいそうな感じが役に合ってる。最後にちょこっと出てくる白黒ショーの新しい相手役に、浴衣も似合う時任歩。土方の人の良い親方に久須美欽一。荒木組の現場スタッフの皆さんが汚いズボン&汗臭そうなシャツ&首手拭いという普段どおりの格好で土方のエキストラを務めておられる。音楽が(女優の)篠原さゆりでピアニカかなんかで弾いた(なぜか)「星条旗よ永遠なれ」がテーマ曲。あと、ハンマー音&シャカシャカ走りは「鉄男」のパロディ? 夏の話なので最後は十五夜の盆踊りで大団円。荒木太郎、依然として好調である。監督によるとこのシリーズは「林由美香が引退するまでは続ける」そうなので、まだまだ頑張ってね>由美香さん。

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買う妻 おんな 奥さま(秘)倶楽部(新里猛作)

脚本:高木裕作  O・H・C+新東宝+国映製作
プロデューサー(の1人):友松直之 配給協力:(有)幻想配給社
「ロンリーハート」は人妻専用の秘密クラブ・・・「奥様牛乳」という牛乳パックのバーコードの数字に電話すると黒塗りのリムジンが迎えに来て、目隠しされて連れていかれるそこは人妻の隠れた願望を具現してくれるイメージクラブ。そこで彼女たちは夫からは久しく受けたことのない優しい言葉と愛撫を受けたり、夫には見せたことのないワイルドな一面を開放したり、インポの夫には望めない強烈なエクスタシーを得たりする・・・いかにも山崎邦紀+浜野佐知コンビがやりそうな“類型”だが、類型であっても陳腐には堕さず、ディテイルを丁寧に積み重ねて見事な ★ ★ ★ ★ ★ のピンク映画に仕立てている。登場する3人の人妻に相関関係がない緩やかなオムニバスなのだが全体の構成にも工夫が凝らされていて違和感なく1本の長篇作品として観ることが出来る。 ● 偶然だが主演もまた「ノーパン白衣 濡れた下腹部」「変態肉濡れバイブ」の浜野・山崎組出身で、ストレートな美人ではないが妙に色っぽい天然巨乳の望月ねね。そして、黒い下着姿で男をかしずかせる時任歩サマの妖艶さと言ったら(!) 3人目の、あまり出番の多くないヒロインに新人(?)松永えり。男優が8人も出てるのは予算が少し多めなのかな?

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淫ら姉妹 生肌いじり(深町章)

原作舞台「精霊夜曲」劇団星座(ほしざ) 作・演出:かわさきひろゆき
祖父の葬式で田舎に帰ってきた青年が途中、一泊した宿で摩訶不思議な体験をする。つまり(タイトルを出すのもおこがましいが)「雨月物語」とかと同ジャンルである。仲居の婆さんに「藏にだけは近づくな」と釘をさされた青年が当然、藏に入っていくと、そこには絶世の美女がひとり、信一という恋人を待ち続けている。観客がおおっ、と身を乗り出したところで青年の台詞「信一? 死んだ爺さんの名前と同じだ」…チャンチャン。ネタを割るのが早すぎるっちゅうねん。これでピンと来ない観客がいたらお目にかかりたいよ。しかもこの青年、ヒロインを見て「美しい…。この世のものとも思えない」とか、一人二役で演じてる祖父を見て「どうしちまったんだ!? あいつ、おれソックリだ。それに何だあの格好、まるで戦時中だよな」とト書きを読んでるような台詞を連発してくれるのだ。 ● 女性脚本家・かわさきりぼんの「痴漢家政婦 すけべなエプロン」に続く第2作だが、とてもまだプロの脚本と呼べるレベルではない。たとえばこの話ならば絶対に「過去に戻るきっかけ」が必要だろ。別にデロリアン出せとは言わん。「仏壇の古い写真を見る」でも「藏にある古い箪笥の抽斗を開ける」でもいいんだよ。現在に過去の時間が侵入してくるきっかけが必要なのだ(原作舞台では「主人公が桜吹雪の下を歩くと…」となっていて、これはこれでちゃんとした“きっかけ”になっている) また、ヒロインの姉の口から台詞で説明されてしまう「悲劇の原因となる、ある決定的な場面」はきちんと映像化すべきである。あと、これは一種のファンタジーなのだから、骸骨を出したりすんのはあまり良い趣味とは言えないと思うが(あの場面は階上から白いドレスの裾がぶら下がるだけで充分) てゆーか、何度も言うけど、深町章よ、あんたベテランなんだから何か指導してやんなさいよ。 ● ヒロインに里見瑤子。その姉に水原かなえ。水原かなえは仲居の老婆も(メイクして)自分で演じていて、ここは大したものだと思った。だが、両女優のキャラからいったら、この姉と妹のキャスティングは逆でしょう。主人公の岡田智宏は現代の青年を演じるぶんにはいいんだけど、とても戦時中の若者には見えないし台詞まわしも酷い。心中疑惑カップルに浅倉麗と(本作の原作者でもあり、りぼんの旦那でもある)かわさきひろゆき。そう、本作はかわさき夫妻が主宰する劇団星座の舞台が原作なのだ。まあ、唐十郎の安っぽいイミテーションでしかなかったどうしょーもない素人芝居に比べれば、この映画版のほうがよほど観られるのは確かなのだが。

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黒い下着の未亡人 通夜の情事(勝利一)

まず新婚旅行から帰ってきた夫婦のアツアツぶりが描かれる。で、旦那が会社に出かけた留守に空巣狙いが侵入、そこへ財布を忘れて帰ってきたヒロインと鉢合わせ、ヒロインはレイプされる。一方、旦那は交通事故で帰らぬ人となる。こうしてヒロインは全体の半分を過ぎたところでようやく未亡人になるわけだが、その通夜の席で列席している妹の亭主が「妹じゃなくてあなたが好きでした」とか言ってヒロインに迫る。夫の会社のOLが焼香に来て「わたしは御主人の愛人でお腹にはあの人の子どもが」とか言って回想するが、それは嘘で「やっぱり奥さんの愛にはかなわない」とか泣き崩れて、お腹に仕込んだ風船を落として去る。そこへ件の空巣が焼香に来て「惜しい人を亡くしました」とか言う。エンドマーク・・・なんなんだ一体!? 場当たり的な脚本にもほどがある(脚本:国見岳志) しかも勝利一はこの話をコメディとして演出しないのだ。何を考えておるのだ。ヒロインの高樹里緒は丸顔童顔でライトコメディには向いてると思うけど、喪服姿が色っぽくないのでちょっと。まあOL役・時任歩の妖艶なワンポイントがあるので良しとしよう。

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義母35才 息子が欲しい(新田栄)

監督・新田栄+脚本・岡輝男の田吾作コンビの新作。里見瑤子と葉月螢が出演してるという以外、内容については特に言うことはない。ま、逆に言えば激しくツッコミたくなるところもない普通のつまらない映画ということ。“義母35才”を演じる(ちょっと岸加奈子に似てる)川島由佳は元はセーラー服路線のAVギャルだったが今では上野のSMクイーンだそうだ。ま、♪人生いろい〜ろ、ですな。

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昼下がり、濡れるOL(渡邊元嗣)

愛って素晴らしい…と、ジャニーズの歌みたいなことを本気で思ってしまった。それほど素晴らしい「夢見るファンタジスト」としての渡邊元嗣の資質が全面的に開花した傑作。初期の「未来(みき/ヒロインの名前)もの」と比べても遜色ないのでは? 渡邊元嗣の映画監督としての最大の才能は「主演女優に本気で惚れてしまう」ことだ(もちろん惚れてれば惚れてるほど傑作になる) 本作を見れば誰でもわかることだが渡邊元嗣は西藤尚を愛してる。もう完全に恋する男の目でヒロインを撮っている。追いかけている。その一挙一動を見逃すまいと見つめてる。カメラで愛でている。主演の西藤尚はいちど引退した身だが(たぶん渡邊元嗣のラブコールに負けて)本作で復帰。そして驚くべきことに本作はピンク映画であるにもかかわらず(引退の事情が絡んでいるのか)西藤尚は最後までヌードにならないのだ。そう、愛があれば主演女優が脱がないピンク映画だって撮れるんだよ。この映画はストーリーとか演出とかのレベルを超えて美しく輝いている。おれは観ていて涙が出てきた。…じつを言うと西藤尚は最後の最後に3分間だけ裸を見せるのだが、これはもちろん渡邊元嗣の求愛に対する彼女の「答え」なのである。 ● 妄想(火暴)はこの辺にして映画紹介を。東京に独り暮しのOL。中堅下着メーカーのデザイン部に勤めてるけど、意地悪な女上司の犬飼部長にデザインは盗用されるは、優しくしてくれた男性社員は寝取られるは散々。考えてみたら田舎から出てきて良いことなんか1つもなくて、つい挫けそうになり1年前に死んだ黒猫の写真に涙をポトリ。すると翌日、会社に黒いドレスキトンという名の「謎の女」があらわれて…。脚本は波路遥。なにしろ「よく友だちに笑われたわ。あたしが“いつか白馬に乗った騎士があらわれる”って信じてたから」「ハクバノキシ!? 古風だね。で、今でも待ってるの?」「うーん、待ちくたびれちゃったか…な」とか、「こんな広い東京に住んでるんだもん。自分が誰かの白馬の騎士になれるってこともあるかもよ」なんて台詞が飛び交う、とてもじゃないがまともな大人ならテレちゃってやってらんない世界である。これを映画化できるのは渡邊元嗣と大林宣彦と小中和哉ぐらいであろう。 ● 主演の西藤尚は、もうとにかく「愛おしい」としか言いようがない。「時をかける少女」の原田知世級の愛らしさである。意地悪上司にベテラン・林由美香。こういう「パターンのコメディ演技」を演らせるとじつに達者。主役の代わりに大いに脱ぎまくってくれるのがキトン役、「質屋の若女将 名器貸し」の荒井まどか。黙ってりゃ長身スレンダーな美形なんだけど、喋るとガイジン?という滑舌のヒドさ。この娘ときたら「あたしを悦ばせてくれたら」を「ああしょよおこばせてくえたあ」と発音するのだ。この役が神崎優ちゃんだったら完璧だったのになあ。男優は…男優は、まあいいや。あと飯岡聖英の撮影でいつも気になるんだけど、この人、蛍光灯のシーンがグリーン過ぎないか? ハートウォーミングな映画なんだから、ちゃんとフィルター掛けてくんないと。 ● [追記]アップしたあとで「西藤尚は引退したわけじゃなくて“半年間の休養”をしてただけで、このたび仕事を再開、Vシネマ1本とピンク2本、1月からは舞台公演の予定も入っている」という、おれの論旨を根底から覆す“衝撃の事実”が発覚したのだが、いまさら書き直しようがないので、このままにしておく。いずれにせよ復帰はメデタイ:)

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不倫願望 癒されたい(国沢実)

快進撃を続ける樫原辰郎(脚本)+国沢実コンビの新作はなんと「まだ夢を捨てきれないんだねアンタ」などという台詞が飛びかい、バックには山崎まさよしチックなオリジナルのフォークソングが流れるというコッ恥ずかしい青春映画である。ピンク映画界の誇る“青春映画の巨匠”北沢幸雄ですらよう撮らんようなジャンルを前にして、この脚本・演出コンビは無謀にも正面突破を試みる。何箇所かワザと8ミリ映画のような撮り方をしてる場面があることからも、こいつらが意図的にそれをやってんのは明らかなんだけど、2000年に「ストレートな青春映画」を成立させるためには、よほど周到な戦略か、時代錯誤をものともしない強靭な演技陣が必要なのだよ。みごと玉砕、だな。 ● 主たる登場人物は3人。癌を宣告されて自暴自棄で家出して自転車で町をさまようサラリーマンに持田修作。映画の本質とまったく関係ないことで悪いんだけど男のくせに乳があるのは気持ち悪いんですけどぉ(なんであんなとこの肉がたるむ?) その夫と揉みあった拍子に頭を打って一時的な記憶喪失になり、それでも夫の帰りを待つ妻に佐々木ユメカ姐御。うつくし〜。従来のアクティブな役柄とはガラリと変わった「けなげな待つ女」を演じて永島暎子の域に達している。そして3人目は、公称19才だけどほんとはもう25にもなっちゃったのにちっとも売れなくて、事務所からはヌードヌードと責めたてられてるトウの立ったアイドル歌手。扮するは「淫臭名器の色女」に続いての国沢組出演となる二代目・滝川真子こと、南あみ。じつに愛らしい大根女優である(←褒めてる) この娘、劇中ピンクのビキニ姿になるのだが、おれ、ここだけの話「ビキニのボトムからはみ出した下腹のぶくりとしたところ」フェチ(火暴)なのでじつによき目の保養であった。ふんふん。「元セイント・フォー/現ヌードモデル」の役に奈賀毬子。監督自身も患者を捜す医者の役で出演している。しっかしまあ、エンドマークは「NEVER END」と来たもんだ。なんちゅうか…。

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ロリ色の生下着(池島ゆたか)

「アメリカン・ビューティー」のレビュウで「この話はピンク映画に出来るぞ」と書いたら、ほんとに出来た>これが証拠写真。いや、さすが。このフットワークの軽さはピンク映画ならでは。 ● 座付き作者・五代暁子の脚本は、ほぼ「アメ・ビュー」を忠実に踏襲している。ただ1時間という上映時間内に所定量の濡れ場を構成した結果、せっかくおれの指定どおりにケビン・スペイシー役に杉本まことをキャスティングしておきながら、肝心の主役パートがすっかり後退してしまった。会社を辞める件もなし、ハンバーガー屋でのバイトもなし、マリファナ吸って車を買い変えるのもなし(ゲイ関係のネタもすっかり落ちてるが、これはピンク映画の性格上、仕方がないだろう) さて「1960年代世代の中年男の回春コメディ」という「アメ・ビュー」のメイン・プロットがすっぽりと抜け落ちてしまった結果、そこに見えてくる光景は(多摩川べりの高級住宅地というロケーションの所為もあって)逆輸入された「岸辺のアルバム」である。いや、それならそれでもいいんだよ。何から何まで「アメ・ビュー」と一緒にするこたぁないんだから。だけど「家族の崩壊(そして再生)」で行くんなら、ラストを「アメ・ビュー」と同じにしちゃダメじゃんか。…と、とりあえず悪口は言ったものの、ピンク映画としては1時間を飽きさせず、標準以上のエロ満載で ★ ★ ★ ★ ★ に充分あたいする。多摩川のコンクリの斜面に腰掛けて「どこか上流から流れてきてテトラポッドに引っかかった子どものズック(死語)」を眺めながら語らう「地味娘」と「覗き少年」の場面は、寂しさが胸を打つ、オリジナルの「風に舞うコンビニ袋」にも負けない良い場面だと思う。清水正二カメラマンの力量はいまさら言うまでもないし、池島組の専属作曲家・大場一魅の手になるトーマス・ニュートンの“原曲”にピノ・ドナジオ風味をまぜたようなテーマも秀逸。 ●  杉本まこと(なかみつせいじ名義)は期待どおりの素晴らしさで出演場面が少ないのがかえすがえすも残念。生保レディをしてる性的欲求不満&ミエっ張り女房には新人・鏡麗子(すでに的場ちせの「どすけべ夫婦 交換セックス」が公開済みだけど撮影順はこちらが先) 日常生活に差し障りがあるのではと余計な心配をしたくなるほどケバい顔だちと、エロエロな腰遣いのド迫力女優さんである。芝居もまあまあ。ただビックリしたのは「どすけべ夫婦…」では確かに付いていた巨乳が本作では無かったってこと<それってつまり…。 地味いな独り娘(女子高生)に鈴木敦子。たしかな演技で映画の質を高めている。かたや援交美人女子高生に扮した河村栞だが、このところ1作毎に下手になってる気がするのはどうしたことか。隣家の覗き少年に入江浩治。その(右翼ならぬ)堅物高校教師親父に神戸顕一。

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痴漢家政婦 すけべなエプロン(深町章)

♪赤〜いべべ着た 可愛〜い金魚 …という唄があるけれども、この映画に登場する、真っ赤なドレスに身を包んだお手伝いさんは金魚の化身である。イライラお母さんに流しに捨てられそうになったところを救ってくれた無気力インポのお父さんに恩返しをするために人間の姿で戻ってきたのだ。演じるは“日本一の映画女中里見瑤子<嬉しくないキャッチだなあ。銀色ステンレスの浴槽に水を張って全裸でゆらゆらと幸せそうに たゆたっている様はまさしく人魚のように美しい。ただ、その分…というか何というか、名手・清水正二のカメラにもかかわらず、家出妻・佐々木麻由子と予備校生娘・河村栞があまり魅力的に撮られていないのが気になった。 ● (お父さんを演じている かわさきひろゆき の奥さんでもある)川崎りぼんの映画脚本デビュー作。この2人は夫婦で「星座(ほしざ)」という小劇団を主宰していて川崎りぼんも戯曲を書いた経験はあり、本作も「家族の再生のファンタジー」として手堅くまとめている。ただ「この金魚を…この奇妙な物語は…」とか「あれから…あれは…」など、とても普段から台詞として発声されることを前提とした戯曲を書いているとは信じられないほど言葉の選択に無神経なところが気になる(そもそも普通の日本語ならばここは「一匹の金魚を…この奇妙な物語は…」「それから…あれは…」とすべきでしょう) 何より最悪なのは(ネタバレになるが)「福の神である金魚の化身を、お母さんが嫉妬心から刺し殺してメデタシメデタシ」という、今後 彼女が娯楽映画の脚本を書いていく上でこの感性の欠如は致命的と思われる欠陥を露呈してしまったことだ。てゆーか、深町章よ、あんたベテランなんだから何か指導してやんなさいよ。


多淫OL 朝まで抜かないで(女池充)

クソつまらない映画をお探しか? ならば女池充をお勧めしよう。もう2度目なので何も言わぬ。こーゆーのが撮りたきゃテメエの金で撮れ。主演は佐々木ユメカ。脚本は新人・西田直子。荒井晴彦が脚本協力としてクレジットされている。

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口説き屋麗子 火傷する快感(佐々木乃武良)

「口説き屋」とは、不倫相手を寝取ってしまうことにより依頼者の夫/妻の浮気を強制的に終結させる裏稼業のこと。ヒロインの麗子は表向きは「貞淑な人妻」である同時に、凄腕の口説き屋という夫には内緒の裏の顔を持っている。その日も興信所からの依頼を受けて、妻の浮気をやめさせるべく不倫相手の男性に近づくが、その男、甲斐靖彦はなんと精神科の医者だった。心の奥を見透かすような甲斐の視線に麗子は言いしれぬ胸騒ぎを覚える…。 ● デビュー以来、一貫して日活ロマンポルノ・テイスト濃厚な作品を撮りつづけてきた監督・脚本の佐々木乃武良が、ついに決定打を放った。二転三転する心理サスペンスの醍醐味を感じさせてくれるエンタテインメントの傑作。これがオリジナル脚本であることを高く評価する。ヒロインの沢木まゆみは「お天気お姉さん」の水谷ケイ似の目許のクッキリした美人AV女優。レクター博士チックに妖しく迫るサイコドクターに杉本まこと(なかみつせいじ名義) 浮気妻に(水族館劇場公演時の金髪がかすかに残る)葉月螢。

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女医(秘)診察室 人に言えない性癖(遠軽太朗)

遠軽太朗の監督作品は初見だったが、これは小林悟/小川欽也/関根和美レベルだなあ。野心に燃える精神科の新進女医が、赤ひげな町医者のもとで「医は仁術。患者とはセックス」という真理に目覚めてメデタクメデタシ…という話。段取り脚本にやる気のない演出。この手のピンク映画に特に言うことはない。なぜか看護婦役で引退したはずの相沢知美が出ていた(脱がないけど)

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ノーパン浴衣妻 太股の肉づき(下元哲)

お化け煙突がニョッキリそびえる下町の銭湯。地上げで立退きが決まり、湯を焚くのもあとわずか。女房に逃げられて、ひとり番台を守る与三郎は、近頃きまって終わり間際に入ってくる浴衣美人に一目惚れ、勝手に湯を貸切にして甲斐甲斐しく湯加減を調節したりしてる。だが、まだ与三郎の耳には届いていなかった−−夜更けの公園に夜な夜な出没するという浴衣姿の淫乱幽霊の噂は。…って、これ8月の話だろ。なぜに今ごろ公開? ● 現役のカメラマンでもある下元哲は、今回めずらしく撮影をベテラン・中尾正人にまかせて演出に専念、男優連中にむりやり下町言葉をしゃべらせて「ちょいといい話」に仕上げている。主演はAV女優のつかもと友希。なかなかキレイな女優さんで、小鼻のホクロが色っぽい。ストリップの仕事もしてるらしく銭湯で身体を洗うのが振り付けみたいなのはご愛嬌だ。スケベだけど純情な、風呂屋の大将に荒木太郎。荒木に未練たっぷりの別れた女房にしのざきさとみ。近所の商店街の旦那連中になかみつせいじ(=杉本まこと)と久須美欽一の両ベテラン。いかがわしい地上げ屋にAV界から日比野達郎。商店街のみんなと肌なじみなチャッカリ女子高生に風間今日子。…って、風間今日子が女子高生ってのはいくらなんでも無理があるぞ

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淫臭名器の色女(国沢実)

ピンク映画のタイトルってのは会社(この場合は大蔵映画)が考えるんだが、それにしても「淫臭名器の色女」などという、映画の内容と一切、関係ない、しかも思考回路の想像できぬシュールなボキャブラリーを駆使したタイトルを付けるのもひとつの才能だよな。ま、もっとも「ロマノフ王朝最大の秘宝、時価4億円の“ラスプーチンの壺”をめぐってツカサのウィークリー・マンションの一室だけで繰り広げられる裏切りと欲望のドタバタ・コメディ」なんて話に見合ったタイトルなんて、おれだって考えつきゃせんが。 ● 筒井康隆というかドナルド・E・ウエストレイクというか…まあそういう話なんだけど、脚本・樫原辰郎と演出・国沢実の名コンビが直接的に意識しているのは、おそらく脚本・高木功&演出・滝田洋二郎のコンビによる、新東宝の「痴漢電車」シリーズから、にっかつの買取ピンク「痴漢○○○」シリーズにいたる一連のスラップスティック・ミステリだろう。意図としてはわかるのだが、いかんせん国沢実の演出には狂騒的なパッションが欠けているので、キチガイのように可笑しい状態は最後まで訪れない。それと音楽(黒沢祐一郎)がお上品すぎる。ここは山下洋輔とか「マルサの女」の本多俊之のようなスウィングが欲しかった。…まあそれでも飽きずに楽しめたけど。 ● 私欲に走るゴキブリ刑事という「螢雪次朗の役」に村山竜平<いくらなんでも、もうちょっと口パク合わせてくれよ。葛城峰子という名の国際的な大泥棒…じゃなかった私立探偵という「竹村祐佳の役」に佐々木麻由子<ちょっと太った? とつぜん闖入してくる喫茶店の素っ頓狂なウエイトレスという「滝川真子の役」に、じっさい滝川真子に(見た目も演技も)ちょっと似てる新人・南あみ。そして誰よりも目立っているのが、バブル富豪の若妻に扮した、どっちかというと下手な役者なのだが、邪悪な役をやらせると誰よりも輝く、誰にも似ていない特異な女優・篠原さゆりであった。

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どすけべ夫婦 交換セックス(的場ちせ)

的場ちせ(=浜野佐知)監督+山崎邦紀・脚本による、欲求不満人妻の「淪落もの」、…ではなく「性開放」として描くところが浜野+山崎コンビたる所以。思えば本篇のヒロイン・時任歩のデビュー作「平成版・阿部定 あんたが欲しい」も浜野佐知監督による同種の作品だった。佐々木麻由子とならぶ2000年のピンク映画クイーンも、これでちょうど「ひと回りした」って感じかな。相変わらず小山田勝治のカメラは女優をとてもキレイに撮るなあ(嘆息) ヒロインの性意識改革の媒介となるのは2人の女。若い男と浮気中の人妻役に、浜野組レギュラーの天然巨乳・風間今日子。これは適役。もう1人、ネットで夫のブックマークから覗き見た風俗店紹介サイトの、売れっ子ソープ嬢がなぜか近所に引っ越してくるんだけど、このソープ嬢の濡れ場はすべてヒロインの妄想として処理されていて、もしかしたらこの女の存在自体がヒロインの妄想の産物かも?(またドッペルゲンガーかい!>山崎邦紀)という描かれ方をしている。演じるは、濃いい顔だちにドラッグクイーンのような強烈なメイク、自然の造形とはとても思えないまん丸いおっぱい…なんか美醜を超えた迫力の新人・鏡麗子。ヒロインの夫になかみつせいじ(=杉本まこと) 風間今日子の夫に平賀勘一。もちろんラストはタイトル通りの4Pである。いや、もうエロエロ度 ★ ★ ★ ★ ★ 。恐れ入りました。 ● 女優が3人とも「ヘアヌードあり」なのは浜野佐知ならではのサービスなんだけど、鏡麗子に至ってはヘア丸出しでオナニーまでしてるぞ。…てことはこの映画、初めて映倫が(シャワーシーンとか着替えなどではなく)セックス絡みのシーンでヘアヌードを許可した画期的な作品てことになるのかも。…あるいはあれか? ひょっとして「愛のコリーダ2000」効果か? あれなんか全篇セックスシーンだもんなあ。「あれを許可するならピンク映画も」ってことなのかも。いや、まるきり憶測だけどさ。

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人妻家政婦 情事のあえぎ(橋口卓明)

浮気調査専門の私立探偵が、調査対象の“人妻家政婦”に惹かれていくが、じつは…という、探偵もののルーティンであるが…下手だ下手だ下手すぎるぜ! 新東宝のプロデューサー福俵満による脚本は「私立探偵もの」のプロットをよく研究してはいるが、傍観者であるべき探偵が一線を踏み越えるに際しての説得力が弱いし、見せ場であるはずの「真犯人の犯行が露呈する場面」で「真犯人がなんのきっかけもなく自分からポロリと犯行を告白する」などという言語道断の手抜きをしているのが致命的。橋口卓明の演出は、やるに事欠いて、探偵が初めて人妻を見る場面で、人妻が振り向くと背景はなぜか海で波がザッバーン…って、本気でやってるから怖い。探偵がマッチ箱大の黒い盗聴機を蛍光灯の半透明の傘に設置したり(←夜、点けた瞬間にバレます)相手のセカンドバッグに隠したり(←バレないわけがない)…サークルの自主映画じゃねえんだからさ勘弁してくれよ。ベテラン・中尾正人による撮影も(女優はキレイに撮ってるが)「暗い画面を活かした」というより「ただ照明が下手なだけ」に見える。 ● タイトルロールの人妻家政婦に、もはや今年何本目の主演作かも数えきれない(時任歩とならぶ2000年のピンク映画クイーン)佐々木麻由子。残念ながら(演出の不手際ゆえ)探偵が惹かれずにはいられない、守ってあげたいと思わずにはいられない、はかない美しさが出せていないのだが、全裸エプロン・シーンがあるので許す(火暴) 冴えない探偵・伊藤猛と、依頼人(ヒロインの夫)・小林節彦は安心して観ていられる。夫の浮気相手の女社長に佐々木基子(オフィスのロケセットが「金融腐食列島 呪縛」のように豪華なのは、あれは何処?) 頭と終わりだけ出てくる探偵のなじみのキャバクラ嬢にとんがりアゴがキュートに撮れてた工藤翔子。

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監禁悪戯 悲鳴のあえぎ(山崎邦紀)

“ピンク映画界のデビッド・リンチ”山崎邦紀の脚本・監督による新作。おお、これはドリュー・バリモアの「ドッペルゲンガー 憎悪の化身」(1993/アヴィ・ネッシャー)ではないか。まさか!? …いや、ほんと。 ● ひとつ家に住む20代の姉妹。人類の未来に絶望した生物学者の妹(なぜか和服)が、公園でアンチ家庭内暴力募金をしてた女を拉致監禁して、ドーベルマンとシベリアンハスキーという名前の人間の♂2人に凌辱の限りをつくさせる。すると監禁された女のドッペルゲンガーが出現して英語で卑猥な言葉を撒き散らしながら男どもを逆レイプする。それを見ていたバイブ・デザイナーの姉がみずから製作したクリスタル・ディルドォで女とレズり、ドッペルゲンガーの怒りを鎮めるのだった・・・よくもまあこんな突拍子もないピンク映画を考えつくものである。ズラウスキー/アジャーニの「ポゼッション」やクローネンバーグの「ザ・ブルード 怒りのメタファー」が好きな人にお勧めする(ほんとか?) ● ドリュー(2役)にドリューに似てなくもない上原めぐみ(特に体型) バイブ・デザイナーの姉に巨乳・風間今日子。狂信者の妹に里見瑤子。声を張って頑張ってはいるんだけど、この人は女優としてはまだ抽斗が1つしかない状態で、それはつまり「ひたむきな女」というものだが、それゆえにこの手のフィクショナルな役をこなしきれていない。特に和服姿だとマッド・サイエンティストとゆーよりは「女中」に見える。

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果てしない欲情 もえさせて!(サトウトシキ)

企画:朝倉大介 脚本:小林政広 撮影:広中康人 音楽:山田勲生 国映製作
P−1グランプリ覇者サトウトシキの戴冠後、第1作。公開タイトルに続いて黒地に白文字で「青空」とオリジナル・タイトルが出る。しばらく続いた「団地妻」コメディを離れて、今回は「迷い猫」系統の実録犯罪もの。ヒロインがルポライターに告白していくスタイルだった「迷い猫」同様、本作では主人公の(まるで取調室で刑事に喋ってるような)ぼそぼそとした独白でストーリーが進行する。 ● 主人公は全身にバイカーズ・タトゥーのある若者。新宿でシャブの売人をしてたが、同棲してる女のタレコミで警察に踏みこまれ走って逃げだす。千葉・習志野の旋盤工場に身を隠すが、痴情のもつれの刃傷沙汰に巻きこまれてまたも逃亡。東京・下町は亀有へ舞いもどり、かつて自分をタレこんだ女と再会。やがてバイトも辞めてしまいセックス漬けの日々を送るが…。 ● 直球勝負の青春映画である。いや青春映画といっても「激情に身をゆだねて」なんて描写はまったくない。日々は淡々と過ぎゆき「事件」も淡々と起きる。かなりの長まわしのシーンもあるが、登場人物たちの心理はほとんど描写されず、主人公の感情のない平坦なナレーションがそこにかぶる。物語にも、そして主人公にも目的はない。かれは走りつづけるしかない…ただあてどなく。だからラストシーンではじめて映る青空が目に染みるのだ。マチュー・カソヴィッツの「憎しみ」が好きな人にお勧めする。ただし画面は暗いし前半は乳すらまともに映らないというヌケないピンク映画なのでそっちめあての諸兄にはお勧めしないが。 ● 主人公のイレズミ青年に向井新悟。「したがる兄嫁2 淫らな戯れ」の暴力バー店員だった人のようだ。腐れ縁のヒロインにサトウトシキの「団地妻 不倫でラブラブ」でピンク映画デビューした、もっか売りだし中の横浜ゆき。習志野の旋盤工場の社長にベテラン・下元史朗。その妻にこれまたベテラン・伊藤清美。女事務員に奈賀毬子。

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喪服妻 湿恥の香り(荒木太郎)

「どうぞあの人にお線香を上げてやってください」「奥さん、ぼくはお線香より奥さんのおマンコウが」…英語の喋れないガイジン噺家・快楽亭ブラックが脚本を担当した荒木太郎の新作。ブラックは劇中の語りも担当し、オープニング・クレジットは寄席の「めくり」、エンディングは追出し太鼓という趣向。それに加えていつもの荒木太郎独特の自主映画タッチの映像/編集処理も絶好調なのだが、今回はそうした多種多様なテクニックと「再婚同士の2人の結婚へのためらい」というしっとりとしたストーリーが消化不良を起こしてしまったようだ。 ● 主人公の風俗ライターに岡田智宏(頭が白髪まじりな感じなのは役作りで染めてるの? ぜんぜん老けて見えないんだけど…) ヒロインに時任歩。仲人を依頼された流行作家に、なぜかターザン山本@元・週刊プロレス編集長。その妻(のち喪服妻)にベテラン・伊藤清美。喪服プレイOKなイメクラ嬢に、おっぱいのキレイな新人・前野さちこ。 ● 上野オークラではなんとパンフレットとして、いつも荒木組のほのぼのした似顔絵タイトルを担当している堀内満里子さんによるA5版モノクロ6ページのマンガ撮影ルポを一部100円で売っていた。こういうのは楽しくて良いね。ぜひ次回作でもお願いしたい。そうそう、ラストのコマで女優さんを募集してたので転載しておく。監督(似顔絵)によると「ピンク映画は必ず女優さん3人で1人は新人。捜すのたいへんなんです」だそうだ。応募は[104-0061 中央区銀座5−3−12 壱番館ビル 大蔵映画 荒木組]まで。そこのおネエさんどうですか? ピンク映画なら即、主役だよ。テレビやVシネマと違ってちゃんと35ミリのフィルム撮りだし、アダルトビデオと違ってホンバン行為はないのでご安心を…って、何を熱心にスカウトしてるのだ?>おれ。

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痴漢トラック 淫女乗りっぱなし(関根和美)

気風はいいが頭と財布は空っぽのデコトラ野郎が大衆食堂で可愛い女給のネエちゃんに一目惚れ、いつもはカツ丼なのにカッコつけて「ビーフ・スカトロノフひとつ」「ス…、ストロガノフですね?」「そのスカトロ一丁」・・・ああ、驚いた。30年前じゃあるまいし今どきビーフ・ストロガノフで笑いを取ろうって輩がいるとは(脚本は関根和美と小松公典) 相変わらずの“関根和美”節。意欲のカケラもないマンネリズムの腐臭ただようピンク映画である。主役のデコトラ野郎に町田政則。必死で「苦みばしった」顔を作ってはみるが、どーみても奥歯が痛いようにしか見えない。撮影はおなじみ天才カメラマン柳田友貴。内容からして屋外シーンが多いのだが画面がつねに小刻みに揺れつづけてるのは酔っ払って撮ってんのか? 女給に(田尻裕司「ノーパン痴漢電車 見えちゃった!!」のヒロイン)池谷早苗。デコトラに同乗するヤクザの情婦に永森シーナ。なじみのソープ嬢に佐々木基子。

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B級ビデオ通信 AV野郎 抜かせ屋ケンちゃん(望月六郎)

渾身の「皆月」が思ったほど世評を集めなかったせいかどうか知らんが、望月六郎がなんか開き直って凄い展開になってる。ビデオ撮りのアナーキーな怪作「通貨と金髪」を脚本・監督したかと思えば、小劇場界の“アングラ宝塚”月蝕歌劇団のSMでSFな「家畜人ヤプー」にゲスト出演して怪演を披露、今度は「愛奴人形 い・か・せ・て」以来14年ぶりのピンク映画を監督・主演してしまった。もっとも「ピンク映画」とは言ってもジャパンホームビデオが金を出して上映時間も83分と通常のピンク映画より長いし、いちおう濡れ場も規定数あるがピンク映画としちゃあ画面が暗いし、どっちかと言えばHなVシネマという感じ。 ● 「就職難で仕事にあぶれた青年が三流AV製作プロに就職して次から次へと大変な目に遭いつつ人間的に成長する」というストーリーもVシネマ的。ラーメン屋劇画誌に連載中の劇画が原作だそうで、いかにも「絵の下手な、適当にH場面を配した、類型的なストーリーの、ぬるくてクソつまんねえ劇画」が目に浮かぶようだが、残念ながら映画の出来も五十歩百歩。望月六郎の演出は、同じく劇画原作だった「極道記者」のときのような活力に欠ける。今回みずから「AVプロの社長 兼 ハメ撮り監督」として出演、カラミもバンバンこなしてるんだが、演出より演技のほうが出来が良いんじゃマズいでしょやっぱり。 ● 松本零士の四畳半ものの主人公のように煮え切らない青年ケンに、ここまで下手だとちょっとツラい植田大悟。業界ズレしたAVギャルに今回 演技もなかなか頑張ってる神崎優。自身も女流AV監督な、望月六郎の別れた女房に佐々木麻由子。主人公の想い人に扮した宮島葉奈が素晴らしい。他人とのコミュニケーションが苦手で工事現場の交通整理バイトをしてて、主人公と知り合ったがゆえにハメ撮りされて、そのうえ縄まで体験させられちゃう女の子。仕事帰りに背中のリュックから赤い誘導灯がニュッと突き出してるのがキュート。この若者2人のラブストーリーにフォーカスして60分でまとめたほうが良かったのでは?>望月六郎。

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イヴの未亡人 夜のいそぎんちゃく(剣崎譲)

客の入りがいいのだろうか今年2本目のイヴ主演/剣崎譲 監督による関西発ピンクである。今回のイヴの役どころは「元ポルノ女優で関西の映画館主に見初められて結婚、亭主が早逝した今でも遺志を守って客の入らぬポルノ映画館“北斗座”を切り盛りしている未亡人」という、ちょっとイヴ自身を思わせるもの。男の躯ともすっかりご無沙汰でイヴさんたら「あなたにとってわたしは映画館のモギリのオバチャンにしか見えないの?」なんて悲しいことを仰有るが、…とんでもない、こんなキレイな人がモギリやっとったらピンク映画館なんて恥ずかしゅうて入れませんがな。映画自体はストーリーにメリハリがなく(脚本:宇喜多洋平)ぬるい出来なのだが、北斗座のラストショーとしてイヴの「にっかつロマンポルノ」デビュー作「イヴちゃんの花びら」(中原俊/1984)が上映されるシーンでは、さすがにちょっとジーンとした。もう16年も前だものなあ。途中で結婚引退があったけど、16年間ずうっとハダカで飯を食ってきた訳だ>イヴ。…いや、この人の場合はその前に歌舞伎町のノーパン喫茶時代があるわけだからもっとか、おおお、おれは知らないけどさ(火暴) ● あと剣崎譲は回想シーンの入り方を勉強したほうがいいぞ>回想がすべてカット換わりに見える。

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奥様 ひそかな悦び(池島ゆたか)

エロ爺いとエロ親父とエロ息子の巣食う家庭に、妻の姪にあたる19才処女の浪人娘が下宿することになったからサア大変…というピンク映画の王道を往くドタバタ艶笑コメディ。リアリティのかけらもないクダラン代物で、後世に残るような作品じゃなし、ピンク映画の年間ベストテンとも無縁だろうが、「ピンク映画」としては ★ ★ ★ ★ ★ でしょう。口惜しいけど笑っちゃったぜ。 ● 欲求不満で福沢諭吉にコロッとヨワいお母さんに、黒縁メガネにひっつめ髪で器用なコメディエンヌぶりを発揮する佐々木麻由子。純情可憐な19才処女娘に河村栞。息子のカノジョに水原かなえ。覗きオナニーばかりでカラミのないお父さんに神戸顕一。エロ息子に佐々木共輔。かわさきひろゆきの演ったエロ爺いは久保新二の役でしょう。

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痴漢電車 巨乳もみもみ(渡邊元嗣)

県警の「宴会係長」を命じられた若き熱血警官が、警察汚職の証拠となる領収書が入ったセカンドバッグを、満員電車で痴女スリに擦られてしまう。ところが痴女スリもまた旧知の女スリに獲物を奪い取られてしまって…という、ゆるーーーいサスペンス・コメディ。サスペンスとしては構成がボロボロ(脚本:波路遥)だし、コメディとして観るにはハジけかたが足りず、しごく座りの悪い映画になってしまった。めずらしく撮影の飯岡聖英が色彩設計をまちがえて完全に「サスペンス」として撮ってしまっていて、電車セット内が青々と寒々しいし、主人公のアパートまわりがフィルタのかけ過ぎでまっ黄色なのはありゃ夕陽のつもりか。いちど気になりだすとカットごとに光線が違いすぎるのも気になるし、うーん…。 ● 主人公の熊谷孝文は青臭い若者像を好演。痴女スリの神崎優は「巨乳」というより巨乳輪なおっぱいがエロくてOK。旧知の女スリに西藤尚。「休養」前の最後の作品だが、この人「不良娘メイク」は似合わないんだよなあ。内務調査班の女に、きりりとした顔立ちが適役な工藤翔子。

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おしゃぶり天使 白衣のマスコット(榎本敏郎)

まず褒める。「喪服姉妹 タップリ濡らして」「覗かれた不倫妻 主人の目の前で…」と2本つづけてカラミをないがしろにした観客退場率ナンバーワン映画を作ってきた榎本敏郎だが、今度はちゃんと「ピンク映画」になっている。前半と後半でヒロインが入れ替わる特殊な構成なのだが、バランスよく濡れ場を配してハダカ目当てのお客さんの目を逸らさないようにしている。病院、ホテル、モーターボートなど(予算がないにもかかわらず)ちゃんと本物を使ってロケしてる努力は買うし、その結果は画面にも反映されている。 ● 「人の運命」「ドライフラワー」をモチーフに綴る、人生に煮つまってしまった男の「魂の彷徨」。脚本が井土紀州だから当然「犯罪実話もの」なのだが、榎本敏郎は相変わらず脚本の読めない演出家なのでポイントとなるべき部分を撮っていない。主人公が「人生に煮つまっていて苛立ちを感じてる」のは当人のせりふによって観客に知らされるのみで、それを実証するエピソードも描写もないのだ。これでは観客が主人公に感情移入することなど望むべくもない。オリジナルの脚本を元に書かれたはずのPG誌のあらすじ紹介を読んでも、完成した映画が当初の脚本とは大きく異なっていることが容易に想像できる。脚本を台無しにする演出家としては相米慎二にも匹敵するのではないか。どこが良くって組んでるんだろう?>井土紀州。 ● 主人公である総合病院の医師に川瀬陽太。離婚協議中の妻に、久しぶりのピンク映画出演となる長曽我部蓉子(…脱がないけど) 前半のヒロインである、ちょっと疲れた感じの婦長を(この人もカムバック組の)林田ちなみ好演。後半のヒロイン、若い看護婦に(サトウトシキ「団地妻 不倫でラブラブ」でデビューした)横浜ゆき。この娘どこか見覚えあると思ったんだけど、…そうか長曽我部蓉子に似てるんだ。あと、濡れ場要員として奈賀毬子が出演。 ● [以下ネタバレ]だいたい、部屋で転んで頭打って倒れた自分の女を(救急車も呼ばず)いきなりカバンに詰めて海に捨てに行くかあ? 「女が死んだ」ってのをちゃんと描写しないからそうなるのだ。てゆーか、よしんば死んだとしたって「事故」だろ。殺したわけでもないのに、なんでわざわざ死体を自分で処分しようとするかね? てゆーか、それよりこれって「事故死」でいいわけ? 「殺人」にしないと話が成立しないんじゃない? それとヒロインは「バッグ詰めの身元不明の女性死体が海岸に漂着」って新聞見出しだけで、なぜ男が犯人とわかるのだ? あと、ホテルのフロントはそう簡単に宿泊者のルームナンバーを教えないと思うけど。 ● [追記]死んじゃう女を演じた林田ちなみのHPのBBSからご本人の発言を引用>[元の台本では、結婚を目前に無邪気に振舞う愛人を見て「同じ事の繰り返し」を感じた川瀬さんが、半ばパニック状態で愛人を突き飛ばして死なせてしまう、でした]・・・な、言ったとおりだろ。

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エロ事師 天国の快感(深町章)

「エロ事師」とはずいぶんとまた時代がかったタイトルを付けたもんだ。あなた知ってます?>エロ事師。おれだって野坂昭如の小説と今村昌平の映画でしか聞いたことないものなあ。もっともここでは単に「女たらし」程度の意味で使ってるようだけど。 ● いきなり冒頭で腹上死した精力絶倫の老人が、天国の“受付係”の前で過去の女遍歴を回顧する。えっ?ルビッチの「天国は待ってくれる」?…と思ったら、受付係いわく「あなたの一番の思い出を映像として記録します」だって。なんだ是枝浩和の「ワンダフルライフ」じゃんか(おれは未見だけど) ずいぶんと卑近なところからパクッてくるもんだ。まあしょせん脚本家が田吾作だから。ひょっとして「天国は待ってくれる」観たことないとか?>岡輝男。 ●  ピンク映画の「お盆大作」なので−−だから“あの世”ネタなのだ−−女優は河村栞、時任歩、里見瑤子、水原かなえ、佐々木麻由子と豪華5人体制。メイクをきっちりした河村栞の美しさと、関西弁で台詞をこなす時任歩の器用さが印象に残った。そして、精力絶倫の老人はもちろんこの人、久保新二。口パクが合わなくなるのもお構いなく、相変わらずの広川太一郎ばりの悪のりアドリブを連発(ピンク映画がオール・アテレコなのはご存知ですな?) もっとも、そのお蔭でなんとか観ていられるんだけど。何度でも言うぞ>深町章よ、早いとこ田吾作脚本家とは縁を切ってくれい。

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極楽露天風呂 カキ回して!(新田栄)

エクセスは2週続けて新田栄の艶笑コメディだ。(仕事なのに予約も入れずに)温泉ホテルに露天風呂の取材にやって来た雑誌記者の娘さんが(なぜか途中から)そこの仲居に就職して過激サービスで売れっ子になってしまう…という、論理とか整合性を求めてはいけない話。とりたててどーのこーの言う出来じゃないんだけど、それでも今回は脚本が田吾作じゃないので(脚本:夏季忍)脱力ダジャレ台詞がない分だけ心安らかに観ていられるし、佐々木基子・林由美香・久須美欽一・杉本まこと(なかみつせいじ名義)といったベテラン勢がそれぞれの柄を活かしたコメディ演技で楽しませてくれるので−−もちろん新田栄だから新作にもかかわらず ひと昔前のピンク映画みたいではあるのだが−−ついつい ★ ★ ★(=おもしろい)を付けてしまった(<てゆーか、文が長すぎ) いや「慣れ」ってのは恐ろしい。だんだんと不感症になってきてるのかも>おれ。ヒロインの新人・麻木涼子は顔も体もまあまあで、これだけ演技の勘が良ければ新田栄作品としては拾いものでしょう。

★ ★ ★
川奈まり子・現役熟女妻 奥まであたる…(坂本太)

夫に仕える貞淑な妻が、夫の浮気を識り、その反動から淫乱浮気妻に変身する…というポルノグラフィの一典型を人気熟女AV女優・川奈まり子で魅せる企画。もちろんこれはピンク映画だからホンバン行為はしてないわけで、それでもなるほどこのヒラメ顔&ロシア系マスクの女優さんの、アンニュイな(←死語じゃ)色っぽさはなかなかのものがある。 ● 夫に岡田謙一郎。その淫乱秘書に今日も巨乳の風間今日子。ヒロインを誘惑する隣家の淫乱主婦に(ピンク映画に帰ってきた)林田ちなみ。

★ ★ ★
白衣の令嬢 止めて下さい!(新田栄)

まさか田吾作コンビの映画に ★ ★ ★(=面白い)を付ける日が来るとは思わなんだ。いや別にいつもと較べて、とりたてて出来がいいわけではない。岡輝男の脚本は相変わらず構成はメチャクチャ、台詞は陳腐、おまけに卑しい心根がまるだしで、男が下肢不随の恋人のことを「あの人はぼくがいないと何にも出来ない可哀想な人なんです」と言ったりする。新田栄の演出は「演出」と呼ぶのもおこがましい段取り芝居である。ただ、たまたま今回 起用した大根&天然ボケ・キャラの、山瀬まみのNGのような顔の(てゆーか、山瀬まみ自体がもともとNGって話もあるが)ヒロイン・緑川さらが「浮世ばなれした病院のお嬢さん」という役柄にマッチしてて、結果的に宇能鴻一郎チックな能天気コメディの味わいを醸し出している。ついつい最後まで飽きずに/呆れずに観てしまった。下肢不随(だけどおまんこは随意)のサブヒロインに林由美香。お手伝いさんに佐々木基子。ヒロインに岡惚れする酒屋の息子に岡田智宏。

★ ★
美人家庭教師 むさぼる内股(佐々木乃武良)

同時上映の新田栄に較べたら、本作の監督・脚本の佐々木乃武良のほうが百万倍ぐらい真剣に「ちゃんとした映画」を撮ろうとしている。その意欲は認めるよ。だが「ピンク映画だから」というエクスキューズの要らない本格的な映画を作りたいんなら、「陳腐な段取り芝居」とか「登場人物が心情を独白する説明的な台詞」などの安っぽい演出を根本的に洗いなおさなきゃ駄目だ。カメラアングルや構図に凝ったりするより先に手間をかけるべきところは山とある。 ● タイトルロールの冴木椋は、ときおり良い表情を覗かせるものの、いかんせん演技のとても不自由な人なので「ヒロイン」たりえていない。共演の風間今日子と里見瑤子も、濡れ場はきっちりと/いやらしくこなしているが、それ以上のエモーションを映画にもたらすほどではない。

★ ★ ★ ★
社宅妻暴行 白いしたたり(北沢幸雄)

「1970年代映画」の匂いのする作品を撮りつづける巨匠・北沢幸雄による「1970年代ポルノ」の王道ジャンル「団地妻」もの。主演に「1970年代映画女優」の再来・佐々木麻由子を迎えた幸運も手伝って、タイトルの出し方からエンドクレジットまでスタイリッシュに一分の隙もない。監督・脚本・編集を独りでこなす北沢幸雄としても会心の出来だろう。欲をいえば起承転結の「転」から「結」への展開がちょっと性急なのだが、これは60分という尺が決まっている以上しかたがない。あと10分使えれば完璧な作品になったはずなんだが。 ● 平凡だけど幸せな暮らしと信じてたものが、夫の海外栄転を妬む隣人(=同僚の妻)たちの悪意によってがらがらと崩壊していく。夫の浮気。怪文書。レイプ。さんざん語られてきたストーリーだが、日常のディテイルを積み重ねる的確な脚本と演出力−−そのどちらが欠けても駄目だ−−によってたしかな説得力が生まれる。カメラマン・清水正二の名人芸、美しいピアノの劇伴(クレジットをメモし損ねた)の功績も大。 ● 「心の内に孤独と怖れをかかえた人付き合いの上手くない人妻」なんてヒロインを演じさせたら佐々木麻由子さまの独壇場である。ラストで、明日に向かって歩きはじめる麻由子さまの神々しいまでの美しさと言ったら(!) 悪意を撒き散らす隣人妻に、キツい顔だちが適役の工藤翔子(引退したわけではないのね) 旦那の浮気相手である隣人妻に、太り肉のエロティックな肉体にもうボクちゃん暴発寸前な佐倉萌。ヒロインの夫を演じた千葉誠樹も好サポート。

★ ★ ★ ★
いじめる女たち 快感・絶頂・昇天(浜野佐知)

北沢幸雄のクラシックな「社宅妻暴行 白いしたたり」と浜野佐知のアバンギャルドな本作。今週のエクセスは見応えあるいい番組だなあ。 ● 阿刀田高の短篇「ラスト・チンチロリン」が原作、…ってのは嘘だけど、ロアルド・ダールとかにも通じる「奇妙な味」のブラック・コメディ(脚本:山崎邦紀) 夜の公園で浮浪者相手のチンチロリンで一千万円の負債をおったエリート・サラリーマンが、金策に追われて体験する奇妙な1週間。まあ、ピンク映画だから「奇妙な体験」てのはすべてセックスがらみなわけで、「夏休み大作」ゆえの里見瑤子、風間今日子、佐々木基子、鈴木エリカ、時任歩、杉本まこと(…え?杉本まこと? そう杉本まこと)という豪華6大女優が、浜野佐知ならではのエグいカラミで観客の目と股間を楽しませてくれる。情けなさが絶妙の主人公に常連・やまきよ。石橋蓮司のような凄みで主人公に迫る浮浪者のリーダーに吉田祐健。あとの浮浪者たちに、荒木太郎・国沢実・内藤忠司といった大蔵映画の監督軍団がゲスト出演してるんだが、これって何らかの(ピンク映画業界内の)政治的寓意が込められてるんでしょうか? 下元哲の自在な撮影も素晴らしい。 ● 主人公のモノローグ「夢は終わる。しかしその終わりは新しい夢の始まりなのだ」

★ ★ ★
変態肉濡れバイブ(山崎邦紀)

浜野佐知と製作会社「旦々舎」を構成する「ピンク映画界のデビッド・リンチ」こと山崎邦紀の新作(こちらは大蔵映画) いつもどおりの「奇妙な性欲に支配された奇妙な人間たちの奇妙な話」だが、本作は「強い女性」が主人公で、つまるところ「フェミニズムの映画」であって、浜野佐知が監督してもおかしくない。またも「アベ・マリア」から始まるし。 ● ペニスに「自己愛」を感じて、ペニス調査の「フィールドワーク」を続けるヒロインに、幼児顔の上原めぐみ。自分のマンコにはペニスを噛みきる歯が生えてると思いこんでるモデル女に望月ねね。チャイナドレスの女ボス(←何のボスなんだかは不明)に村上ゆう。その部下の、気が弱くて人の良い、まったくスカウトに向いてない街頭スカウトに中村和彦。同じく部下の、鉄のペニスを持つ金髪ターミネーター男に柳東史。ヒロインの高校時代の恩師にして初めての男、じつは変態に杉本まこと。ストーリーは書いても無駄なので書かないが、このキャラ紹介で本作の「トンデモ映画度」は充分におわかりいただけよう。そうそう、ヒロインの剣道着ファックが2度もあるので、世の剣道着フェチの諸氏にもお勧めだ。…って、いるのか、そんな奴。


人妻 淫らな情欲(杉浦昭嘉)

卑弥呼に滅ぼされた大魔人オマンゲリオンの怨霊が妖怪マンゲリとなり、これにとり憑かれセックス大魔人となる主人公の名前がイカリ。その姪の名がレイ。妖怪と戦う卑弥呼の銀印の精がアスカ・・・どうも「新世紀エヴァンゲリオン」のパロディであるらしい。おれは「エヴァンゲリオン」をまったく観たことがないので、パロディ云々に関してはコメントできない。だが、それ以前の問題として、これは「ひとさまからお銭を頂戴してお見せする代物」ではない。水原美々・池谷早苗・葉月螢・桜居加奈といったキレイドコロを揃えても宝の持ち腐れ。(女優を通常より1人増やしてギャラがなくなったためか)主役にはなんと監督本人(クレジットは「杉・浦の助」)が扮して、恐るべき学芸会演技を披露する。カメラの藤原千史はろくにピントも送れないのなら手持ち撮影などするべきではない。稚拙な照明技術。仲間内の悪ふざけ。杉浦昭嘉は早稲田の映研出身だそうだが、これを「学生映画なみ」と評したら山川直人をはじめすとるOB&現役に失礼であろう。★はゼロ。映画以前。

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痴漢電車 百恵のお尻/下着検札/聖子のお尻(滝田洋二郎)

滝田洋二郎が一躍その名を知らしめたピンク映画の傑作シリーズがニュープリントでリバイバルされている。彼はこの後、にっかつロマンポルノを経て、脚本家・一色伸幸との出会いによりメインストリームのコメディ作家としてブレイクするわけだが、そのプロフェッショナルなエンタテイナーぶりはピンク映画時代から一貫して変わらぬものである。特にハードサスペンス「連続暴漢」を挟んで「百恵のお尻」「下着検札」と連作していた1983年後半はキャリアの最初のピークと言える油の乗りようで、彼のピンク映画を観たことがないという滝田ファンにはぜひ一見をお勧めする。 ● この3本には「共通点」がある。もちろん「痴漢電車もの」だから艶笑コメディではあるのだが、それだけではなく、なんと本格的なミステリー仕立てとなっているのだ。これはこの時期の滝田の座付き脚本家だった(今は亡き)高木功の指向によるもの。志の高い脚本と、新宿東口アルタビジョンの画面合成や「ターミネーター」ばりのストップモーションに果敢に挑んだ志賀葉一(=清水正二)カメラマンの創意によって、他に例を見ない楽しくて見応えのあるピンク映画となった。 ● 「痴漢電車 百恵のお尻」(1983)は、螢雪次朗 扮する口ひげ&黒縁メガネにパナマハットの黒田一平探偵と、竹村祐佳 扮する助手の浜子のコンビによる「黒田探偵シリーズ」の3作目。タイトルに「百恵のお尻」とついてるのは理由なきことではなく、山口百恵のそっくりさん女優・山内百恵が主演。いや「主演してる」なんてもんじゃない。ストーリーが[東洋テレビの敏腕プロデューサー(織本かおる)が企画した「山口百恵 復帰スペシャル」。しかし本人が急性胃炎になったため急遽、そっくりさんを本人と偽って出演させる。ところが生放送中の東洋テレビに爆弾を仕掛けたという脅迫電話がかかる。犯人の要求は「山口百恵にテレビでオナニーさせろ」というもの。要求は「山口百恵とジャイアンツの江川(当時現役)に白黒ショーさせろ」とエスカレートする。必死で爆弾のありかを捜す黒田探偵を傍目に、視聴率は上がりつづける…]というもの。「爆弾があるために危機的事態をストップできない」というつまり「スピード」と同じ話だ(火暴) 「山口百恵のそっくりさん女優」が「山口百恵のそっくりさん」と「山口百恵本人」の二役を演じて「そっくりさん」のほうはテレビで「ビートたけし」や「ジャイアンツの江川」とカラミを演じ、それを自宅のテレビで観ている「本人」は「藤竜也」とコトにおよび、それを三浦友和のキャビン(タバコ)のポスター(本物)がニッコリ笑って見つめている]というよく訴訟にならなかったよな級のハチャメチャな展開。もちろん演じているのはすべて「そっくりさんタレント」である。「江川」が着ているユニフォームの「GIANTS」のロゴとキャップの「YGマーク」に(たしか初公開時には無かった気がする)ボカシが入ってるのは巨人軍からクレームがついたのか?もしや、この映画観たのか?>ナベツネ。「百恵のお尻」が凄いのは、そうしたスラップスティックな部分だけではなく、爆弾犯人をめぐるミステリとして本格的に構成されていて、ストーリーにも画面的にも丁寧に伏線が張られている点にある。JASRACには見せられない最後のオチも鮮やかにキマって、シリーズ中の最高傑作。 ● 続く「黒田探偵シリーズ」4作目が「痴漢電車 下着検札」(1984)。1995年にも「痴漢電車 朝の悦しみ」と改題公開されている。今度はなんと昭和史の謎に挑んだ歴史ミステリ(ちょっと嘘) オープニングは昭和3年、満州(でもロケ地は九十九里浜あたり)。関東軍の謀略で爆死したチョウ・サクリン(張作林?)の指から消えた「黒い月」と呼ばれる超大粒の黒真珠。時は流れて昭和59年、東京。関東軍最後の生き残りの老人が「マン拓…」と言い遺して腹上死する。そこで、「張作林って誰だっけ?」「張本勲の本名よ」「ああ!3000本安打の」とか言ってる黒田探偵事務所に、財産目当ての後妻(風かおる)から「黒真珠のありか解明」の依頼が舞いこむ。手がかりは床の間に飾られた、老人の姪のヨーコのものだという半分だけの「マン拓」のみ。探偵はさっそく満員電車の中でマン拓採取をはじめる…。後半、歴史研究家として登場するのが、文豪(と表札に書いてある)「松木清張」で、これを竹中直人(クレジットは竹中ナオト。たぶんこれが映画デビュー)が全篇、下唇つきだした顔真似で怪演している。限りなくバカバカしく、密室殺人トリックもあり、しかもラストでは数奇な歴史の悲哀すら感じさせる傑作。 ● 5作続いた「黒田探偵シリーズ」に続いて、江戸時代から忍者(螢雪次朗)がタイムスリップしてくる「痴漢電車 極秘本番」を経て、ふたたび螢雪次朗を探偵役にすえたのが「痴漢電車 聖子のお尻」(1985)。本作では「星空宣伝社」なるチンドン屋という設定で、全篇を白塗り桃太郎の扮装で押しとおす。チンドン屋のアシスタントに金太郎腹掛け姿の麻生うさぎ。「かい人21面相」を騙ってコシヒカリに毒を入れ、ササニシキの米市場独占を狙った宮城農協の理事長・豊年万作(池島ゆたか/こちらも赤鼻&頬に黒点あばたの田舎者メイクで演じる)が逆に「毒入りササニシキ」で脅迫される、という話。農協の経理担当でミス・ササニシキ(「時かけ」替歌の「米を食べる少女」というCMも流れる)の米子に竹村祐佳。またまた密室殺人が出てきて、超アクロバティックなトリックを絵解きしてくれる。本作のみ脚本を片岡修二が共作。 ● このリバイバルを企画した新東宝は「偉い!」と褒めておく(ネガは残ってるんだねえ) 電車の絵柄が3枚を貫いているB2x3枚貼りの特製ポスターを作ったりしてなかなか気合が入ってる(でも3枚とも「螢雪次朗」が「螢雪次“郎”」になってるのは減点) 次はぜひ滝田洋二郎のダークサイドを代表する作品群であり、その後の作品傾向からすっぽり欠落しているサイコサスペンスの2大傑作「連続暴姦」(1983)「真昼の切り裂き魔」(1984)と、石井隆的ラブストーリーである「OL24時 媚娼女」(1984)のリバイバル3本立てをリクエストするぞ。 

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せつなく求めて OL編(荒木太郎)

なんか荒木太郎が大変なことになっている。昨年からの好調を維持しつつ、早くも今年3本目となる本作では変化球を捨てて一気にストレート勝負に出た。いつもなら荒木太郎の旗印である「8ミリ映画的チープさ」(←貶してるわけではないよ)の発露となったはずの「古い8ミリ映画のように処理された回想シーン」すら、ここでは、ごく正統的な演出技法としてドラマに寄与している。 ● ファザコン娘が義兄と近親相姦する話…というと1999年の傑作「叔父と姪 ふしだらな欲情」のリフレインのようだが、私小説的な臭いを強く感じさせる吉行由実脚本のテーマとなっているのは(彼女の脚本がいつもそうであるように)「愛する家族の欠落/不在」である。娘連れの母が、息子のいる男性と結婚。父が死んで残された娘・母・義兄が同居の3人暮らし。ファザコン娘は義兄の面影に早逝した義父の面影を見ており、義兄の妹への愛は報われない。古都・鎌倉を背景に描かれる成瀬巳喜男ばり(←ちょっと褒めすぎ)の、寂しさが胸を打つラブ・ストーリー。 ● 残念なのは、ファザコン娘を演じた田原総一郎の娘みたいな顔の新人女優・川奈恵美にまったく魅力がないこと。悲しいんだか二日酔いでムカムカしてるんだか区別がつかないような演技ではダメでしょう。ここはやはり「叔父と姪 ふしだらな欲情」に続いて山崎瞳でお願いしたかった。それとタイトルに「OL篇」とあるが、働いている描写がないのでヒロインが女子大生にしか見えない。このヒロインのキャラ設定にとって、彼女が学生なのか、自分で金を稼いでる社会人なのかって結構大きいと思うので、ワンカットでいいからオフィスのシーンとか入れたほうが良かったのではないか。 ● 高校教師の義兄に岡田智宏。優しいけれど決行力に欠ける青年像を好演。それとなく義兄に結婚を迫る同僚女教師のカノジョに時任歩。どうして迷うかなあ?>岡田智宏。かたや田原総一郎だぞ。時任歩で即決だろ。ヒロインが嫌悪するおんなおんなした母に吉行由実。彼女が転がりこむ甲斐性なし映画青年に荒木太郎。監督と脚本家が劇中でカラむってのも珍しいよな。池島ゆたかと五代暁子(=山ノ手ぐり子)ってカラんだことある? ● 最後にちょっとツッコんでおくと、障子はノックしないだろ普通。ラスト近くに印象的に使われる縁側の鉢3つはもっと早くから見せておくべき。ラストの濡れ場にかぶる妹の心情を説明した“義兄の”ナレーションは余計、…てゆーか、言わずもがなの蛇足。

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せつなく求めてII 人妻編(吉行由実)

タイトルから判るように続きものである。吉行由実が脚本を書き、第1部を荒木太郎が、第2部を吉行由実本人が監督。撮影も連続して行なわれ、大蔵系の映画館で連続公開された。ピンク映画で、同一のキャラクターが登場するシリーズものは今までにも実例が無いわけでは無いが、こうして始めから2部作を意図して製作された例は初めて(だと思う) ● 第1部の「せつなく求めて OL編」はラストで一応の結末(妹はついに義兄と結ばれるが、そのすぐ後で実母に誘惑されてしまう義兄を見て家を出る)が付くので独立した作品として観ることに何の支障もないが、この「せつなく求めてII 人妻編」は第1部の出来事を前提としてストーリーが展開するので、いきなりこれから観た人には何の事やら。冒頭で「これまでの物語」を説明すべきだろう。 ● あれから数年。それぞれ別の相手と結婚していた妹と義兄が偶然に再会し、そこへ母も舞い戻ってくる…。はっきりと描き分けられているわけでは無いのだが−−てゆーか、そうであったならもっとスッキリしたと思うのだが−−義兄を語り部としていた第1部に対して、この第2部は妹のナレーションで展開する。と言ってもストーリーの輪郭よりも吉行由実がこだわるのはもっぱら、ファザコン娘がコンプレックスを振りきるまでの心象風景である。いや、たまらんなあこんな暗い女。ちょっと付いて行けん。 ● 川奈恵美・岡田智宏・吉行由実のメインキャストは前作と同じ。妹の亭主に川瀬陽太。こいつ刑事なのだが、女房の義兄に向かって「あんたの妹が売春してたのを摘発したのがきっかけで結婚しました」なんて言うかあ正直に? 義兄の妻に林由美香。この人、もうかなりのベテランだが、吉行由実と組んだときがいちばん自然で活き活きしてる気がする。しかし、近所の商店街で鉢植えの花を買った後で伊勢丹には行かんだろう普通。吉行由実が出演した「発狂する唇」つながりか、音楽をゲイリー芦屋が担当している。 [追記]「せつなく求めて OL編」のラストについて事実誤認ありとの指摘を近代非人さんからいただいたので、そのまま転記する>[出来事の順番が大きく前後してあります。実際の「OL篇」のラストは〔1.沙野子(吉行)は映画青年(荒木)の借金を肩代りしたところで男には逃げられる。2.家に戻りションボリしてゐる沙野子を慰める修司(岡田)。沙野子は修司にしな垂れかかる。3.その様を香奈(川奈恵美)が目撃。香奈はショックを受ける。いよいよ居場所を失つた沙野子は香奈の宝物である、隆一の形見を持ち出し家を出る。4.宝物を喪つた香奈はシャワーを浴びてゐる修司に泣きつき、そのまま二人は寝る。5.香奈も家を出る。〕と、いふものです。]

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OL性白書 くされ縁(今岡信治)

脚本:今岡信治 撮影:鈴木一博 黒田詩織|加茂大輔 鈴木敦子 桜沢菜々子|本多菊雄
役者に神代辰巳ばりのくねくねした動きをつける悪癖をやめて、今岡信治がいよいよ本格派の貌をあらわにしてきた。通学途中の小学生がリコーダーで吹く「幸せなら手をたたこう」の音で幕が開く。「カレシに振られて油の煮えたぎった鍋に手を突っ込んで大ヤケドして食あたりでうんこ漏らして変態夫婦のSM奴隷にされてくされ縁の男と青木ヶ原の樹海で遭難した女が赤い野球帽の天使に救われてケガレを落とす」話。なんのこっちゃ? いや、これが実にいい話なのである。感動した。今週、真に観る価値のある日本映画はこれだけだ。わずか3日ばかりの撮影期間で3人の女優全員から今まで見せたことのない顔を引き出している。演出の力である。 ● ヒロインはモーニング娘。の保田圭のお姉ちゃんといった感じの、黒田詩織。渡邊元嗣の映画で見せていたドジなコメディエンヌぶりとは一転して、…いや一転じゃないか、ドジな自然体のコメディエンヌとして優しくたおやかな表情を見せている。突然 隆起してる嘘くさいおっぱいさえナチュラルに見えるからたいしたものだ。くされ縁の、足の速いのだけが取柄の大阪弁の若者に、ハイロウズの甲本ヒロトみたいな感じの、加茂大輔。その暴力的なガールフレンドに、ピンク女優とは思えぬ地味さがたまらなくキュートな鈴木敦子。てゆーか、金属バットで思いっきり背中叩いてませんか? ヒロインに愛の言葉をささやいた舌の根も乾かぬうちから新しいカノジョを作って「じゃ、そーゆーことだから」とか言ってる元カレに、本多菊雄(ポスターに名前がないのはなぜ?) その「新しいカノジョ」に、ぬめっとした不思議な存在感をみせる桜沢菜々子。 ● これだけ褒めといてなぜに星3つか・・・台詞が聞こえないんだよお! 新宿国際名画座ではエアコンの騒音にかき消されて聞きとれぬ台詞多数。リアルにこだわるのもいいが、もう少し録音のレベルを上げられんか?

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変態ハレンチ学園 危ない教室(池島ゆたか)

恋人と離れている淋しさを紛らすため、ふたたび教鞭をとった女教師が赴任した東映化工そっくりな学校は校内セックス自由の“変態ハレンチ学園 危ない教室”だった…という話。これをまともにポルノにしようと思ったら「はじめは普通の学校に見えているが、徐々に徐々に淫靡な香りが洩れてくる」という構成にするものだが、脚本・五代暁子&池島ゆたかのコンビは、いきなり教室を「白塗り&学ラン姿の男子学生」と「赤い襦袢のお引き摺りさん」という寺山修司映画のキャラクターで埋め尽くし(短歌を詠む寺山という登場人物すらいる!)まるで見世物小屋のような気狂い沙汰を演出する。いや、狂騒を描くのが目的のコメディならそれもいい。だが実際、クスリとも笑えないし、かと言ってカラミに浜野佐知ほどのパワーもない。なんとも中途半端な失敗作。 ● 女教師役の今井恭子が酷い。山崎邦紀の「和服夫人の身悶え ソフトSM編」で、あれだけ魅力のカケラもなかった三流マスク&ボディの大根をどうして使うかね? だいたいこの役はラストの「仕掛け」をこなせる演技力がないと務まらん役じゃないか。佐々木ユメカとか佐倉萌とかいるでしょう、もっと適役が。ヒロインを誘惑する黒井ミサに河村栞。もともと声を張るとアングラになる子だからハマリ役のはずなんだが意外と冴えない。レザー・ボンデージとかじゃなく、もっとおどろおどろしい感じにしたほうが良かったんじゃないか。あたり構わずまんこを弄くってる(台詞らしい台詞もない)お引き摺りさんに間宮ユイ。これは、なんかエッチな雰囲気がとてもよろしい。あと、いつもニヤニヤして扇子をぱたぱたしてる教頭に扮した石動三六の、人の良さそうに見えて絶対に裏で人に言えないようなことしてるに違いないと思わせるサイコぶりが出色。「ザ・痴漢教師4」出演確定だな。 ● [以下ネタバレ]池島ゆたかは「P・G」誌に連載している日記で「元ネタは『カリガリ博士』である」と書いている。つまり「狂っているのは女教師のほうだった」というオチがつくのだ。だけどカリガリ博士も夢遊病者チェザーレも出てこない「カリガリ博士」なんてアリか? 黒井ミサがカリガリ博士だってんなら、もっと脚本を練らなきゃだめでしょう。てゆーか「カリガリ博士」の胆は「いま自分の拠って立っている世界が崩れ落ちるような悪い夢を見ている感じ」にあると思うのだが、この映画にはそうした現実崩壊感覚はこれっぽちも無い。「カリガリ博士」の精神を受け継いでいると言えるのは、たとえばジョン・カーペンターの「マウス・オブ・マッドネス」や「ダークシティ」などだ(ひょっとして「ユージュアル・サスペクツ」もそうかも)

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三十路兄嫁 夜這い狂い(関良平)

…な、なんなんだ、これ? 関良平という人が脚本・監督・編集したシュールで稚拙で理解不能の代物。一般に言う「ストーリー」というものが存在せず、いくつかの「場面」が(監督本人にだけ判るやり方で)繋がれており、その間を妄想だか現実だか判然としないカラミで埋めている。カラオケ・パブのマスター(パンチパーマ)に金を渡していきなり映画を作らせたら、こーゆーものが出来るのではないか。劇中カラミ比率の大変に高い映画だが、ただハダカが映ってりゃコーフンすると思ったら大きな間違いである。飯島大介がミニに乗ってたりとか、ディテイルが妙にバタ臭いのは、磯村一路チックな愛欲ものでも目指してるのか。ヒロインは高田聖子を20キロ太らせて谷ナオミをまぶしたみたいな鈴木エリカ@なぜか関西弁(しかもアテレコ別人?)


愛染恭子 Gの快感(下元哲)

「好きだから続けてこれた。続けたから少しは芝居が巧くなったのかな」…って、その台詞が棒読みで訛ってるんですけど>愛染恭子。自著(ということになってる)のセックス指南書の映画化。愛染恭子が本人の役で出演、取材にきたTVクルーの冴えないADに性技を個人指導するという構成で、ところどころにその「Gの快感」からと思われる図版が挿入されるが、これがもう超絶トンデモ本なのである。「オナニーが30点、普通のセックスが50点、70点以上は〈死んでもいいゾーン〉」とか「快感が突き抜けると原風景が見える。わたしの場合は…笑わないでくださいね…田圃と襖が見えました」とか「Gスポットの快感をはるかに超える〈ゴールデンGスポット〉が存在する」とか言いたい放題(でも台詞は棒読みで訛ってる) トンデモ映画として評価するむきもあろうが、おれとしてはもう勘弁してほしいよ。観るに堪えん>映画も愛染恭子の裸身も。

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私が愛した下唇(片山圭太)

「中年男に片想いしてるゲイの坊やが、不思議な老人の導きで女に変身して想いを遂げる」という性転換コメディ。里見瑤子が男→女の1人2役を演じる。冒頭のゲイの坊やはもちろん男装して演じてて(この部分は男優が声をアテてるので「すわっ間違えてホモ映画館に入ったか」と場内がざわついた)途中から本来の女に戻るのだが、ときどき男言葉が出てしまうという設定。恋した相手の中年男が、女房から離婚をせまられてるのを叱咤激励するのだが、なにせ元は男だから彼女には「侠気(おとこぎ)」があるのだ。これはもう完全な里見瑤子のワンマンショーである。 ● 脚本・関根和美は気の効いた台詞のひとつも書けないし、前作「新妻痴漢 たまらず求めて」でいいところを見せた、これが3作目、片山圭太の演出は感覚がどうしようもなく古臭いのだが、ひとえに里見瑤子の溌剌とした魅力で最後まで飽きさせない。撮影は中本憲政。天才・柳田友貴にくらべれば、照明もまともだし俳優の顔がフレームから切れてしまうようなこともないが肝心のピント送りが素人並みに不器用で観ていてイライラする。 ● 中年男に岡田謙一郎。その女房に村上ゆう。その愛人のホストに山内健嗣。そのまた愛人に「人妻同窓会 密漁乱行」でデビューした間宮ユイ@なんと赤毛。 ● しかしこれ、ほんとならもっと面白くなる素材なんだがなあ。渡邊元嗣が監督してたら、もっとバカバカしくて楽しいコメディに仕上げただろうし、吉行由実なら片想いの切なさを前面に押し出した佳作になったろうに。いやじつに惜しい。

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派遣OL 深夜の不倫(渡邊元嗣)

人材派遣会社その名も「人甲斐」では不況の折りから大胆なリストラを画策、契約者の数を一挙に12%に減らすという恐ろしい「1/8計画」(!)が進められていた。寒風吹きすさぶ工事現場の交通整理にまわされ次々と辞めていく派遣OLたち。だが、その中に1人だけ「我、意に介さず」でたくましく現場に順応して、辞める気配のまったくない派遣OLがいた。会社は次なる手段として「幽霊が出る」という噂のある東映化工そっくりなオフィスビルの警備員として彼女を派遣することに…。 ● 「痴漢海水浴 ビキニ泥棒」に続く山崎浩治+波路遥・脚本。派遣社員を全員 辞めさせてどーすんのか?…てゆーか、派遣社員のシステムが根本的に判ってないのでは?という話もあるが、まあ、ここまでは前フリ。派遣会社の女社長しのざきさとみと人事部長・十日市秀悦の(無いほうがいいよーな気がする)カラミが終わって開巻十数分後にやっとタイトルが出て本筋へ。 ● これ、オフィスビルのワン・ロケーション、一晩だけに限定した幽霊ネタのシチュエーション・コメディであると同時に(季節的にはちょっと早いけど)わりと正統的な怪談噺である。「OL 金曜日の情事」で田吾作がすっかり忘れていた怪談噺の約束事もキチンと踏襲されている。渡邊元嗣は人物の出し入れも快調に、最も得意とする「元気な女の子が活躍する、クダラなくて何の役にも立たない映画」を仕上げた。撮影・飯岡聖英による(先輩・清水正二に負けじとの)創意工夫の数々も特筆もの。ビルの外景が影絵だったり、換気ダクトがベニヤ板&アルミフォイルだったり、天使の輪っかはパルックだったりと、もう、8ミリ映画のような楽しさに満ちている。ガードマンの制服がなぜかチェックのミニスカなのはお約束だ。どうせ後でハダカになるのにパンチラ・ショットにドキマギするのは何故だ>おれ。 ● 能天気で元気なヒロインに黒田詩織。全篇ほとんどスッピンに近いメイクで、やや垂れ目ぎみの困った顔がベリー・キュート。コメディ調の台詞まわしなどもう玄人はだし(ってプロの女優に失礼だが) オフィスビルでヒロインを出迎える先輩派遣OLの警備員に、ショートカットが相変わらずベリー・ベリー・キュートな西藤尚さま>休業に入ってしまうそうで残念(泣) ● ふと気付いたんだけど(…って、たまたま おれが今回 気付いただけで、前からそうなのかもしらんが)映倫て、いつの間にか「全裸ファックシーン」OKになったのな。いや、あなた知らんかもしらんが日本のポルノ映画って「全裸ファックシーン」NGだったのよ。意味もなく男がパンツをケツにひっかけててたり、下半身に布団をかぶってたりすんのはそのためだ。(映画における)ヘアヌードがいつのまにか解禁されてたり、こっそり&ひっそりと性表現の開放を進める映倫<偉いぞ。

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ノーパン白衣 濡れた下腹部(的場ちせ)

的場ちせ(=浜野佐知)のエロエロ ★ ★ ★ ★ ★ ワールドに佐々木麻由子さまが初挑戦、という(おれ的には)注目の1作。大病院から独立して派遣ナースを始めた桃園里緒・春野若菜・大空みどりの3人だったが、患者を取られた院長の妨害工作や、在宅患者たちのセクハラに悩んだあげく出した結論が、派遣ナースが白衣の「出張ホテトル嬢」に変身してメデタシメデタシという、いいのかそれで! それが女性解放なのか!>浜野佐知@女流監督…な話(脚本:山崎邦紀) 「アベ・マリア」をバックに“崇高な使命”に燃えた女性が目的に向かって邁進する、という昨年の「女修道院 バイブ折檻」にも通じるテーマで、佐々木麻由子さまがすんごくやらしいアングルで撮られたり、女優3人並びでナースキャップだけのヘアヌード姿を見せてくれたりすんのはそれはそれで嬉しいんだけど、だけどやっぱりこれは風間今日子の役だよな。「そうだ!心のケアだけじゃなく身体のケアも大切なのよ」なんて台詞をしゃべるのに佐々木麻由子ではリアリティが克ちすぎるのだ。宮下順子や風祭ゆきが1本も「宇能鴻一郎もの」をやらなかったのと同じ理由だ。向き・不向きってもんがあるのだよ。 ● リーダー格の桃園里緒に佐々木麻由子。サブリーダー格の春野若菜に、スラッとした長身に巨乳が浜野佐知ワールドにピッタリはまる新人(?)・望月ねね。看護に熱心なあまり自分が一線を越えてることにも気づかない後輩ナース・大空みどりに里見瑤子@適役。卑怯な手段で彼女たちの邪魔をする品性下劣な院長先生はもちろん…杉本まことだ!

★ ★
質屋の若女将 名器貸し(深町章)

「前のカレはわたしの上で腹上死したのよ。よっぽど良かったのねえ、わたしのラブマシーン」「うぉううぉううぉおう」・・・佐々木麻由子さまや時任歩さまの増殖は喜ばしいが“ゴキブリ脚本家”岡輝男の増殖は断固として駆除せねばならぬ。新田栄と組んでる分には田吾作コンビと笑ってもいられるが、御大・深町章の艶笑コメディまでをキサマの「無気力」という毒で染めることは断じて許せない。岡輝男よ、去れ!(新田栄のもとへ) ついでに言っとくと、キネ旬のビデオ紹介頁にも「丸山尚輝」とかゆー別名でクソヌルい文章を書き飛ばしてるようだが、あんまり世の中ナメてんじゃねーぞ。 ● 未亡人下宿ならぬ「未亡人質屋」として学生たちの若い肉体を「質草」に金を貸していた母を憎んで家を飛び出した娘が、10年ぶりに帰郷すると母はひと月前に亡くなっており、なりゆきで娘が質屋の後を継ぐが…という話。娘に里見瑤子。(回想場面の)母にしのざきさとみ。冒頭の台詞を吐く質屋の客に荒井まどか。質屋の番頭にかわさきひろゆき。 ● 岡輝男の毒に深町章の腕がすっかり汚染されてしまった無残な1作。

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美姉妹スチュワーデス 名器くらべ(坂本太)

タイトルどおり美姉妹スチュワーデスの艶笑コメディ。姉妹は東映化工そっくりな空港ビルに入ってる「コーワ国内航空」という二流航空会社のスチュワーデス。「会社は二流でもスチュワーデスは一流と言われるようにガンバリましょう」とゆーことでとっても嬉しいサービスとかをいろいろとしてくれちゃうワケである。しっかり者の姉に、ハスキーな声が「下町の気風の良いネエちゃん」のような麻宮淳子。ちゃっかり者の妹に、今年に入ってから狂ったように才能を開花させている時任歩@コメディエンヌ・モード。ま、新田栄が撮りそうな他愛ないコメディ(脚本:有田琉人)なんだけど、坂本太監督はいつまでたっても上手くならないシリアス・ドラマものよりは、こーゆー軽いやつのほうが向いてるのでは? あと、どーでもいいけど航空会社でフライトスケジュールを組むのって「人事課長」かあ?

★ ★
ONANIE教師 猥らな保健室(新田栄)

またまた精神修養の時間がやってきた。新田栄+岡輝男(脚本)の田吾作コンビの新作。レイプ体験からオナニーでしかイケなくなってしまった産休代理の女教師が、ひとりの男子高校生と出会って…という話。例によって岡輝男にはマトモなストーリーを作る気などサラサラ無くて「とりあえず1時間 話が持てばいい」というレベルだが、今回は新人ヒロイン・杉本れみが新田栄映画としては画期的といえるほど十人並みの器量なので(演技はド下手だけど)なんとか観ていられる。あと、杉本まことが校長先生ってだけで嬉しくなっちゃうし。同僚の女教師に、メガネがソソる黒田詩織。校長先生に肉体進学相談する母親にしのざきさとみ。 ● この映画で特筆すべきは古今東西のあらゆる映画文法の常識をくつがえす史上最高に唐突な回想シーンである。ヒロインがかつてのレイプ体験を回想するシーンなのだが、まるで異次元から侵入してきたような不思議な入り方に腰が砕けた。ふつうは「回想シーンに入るきっかけ」ってもんがあるだろよ。おまけに今どき「野菊ボカシ」だし。ひょっとして天才か?>新田栄。

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エッチな天使 ねっちゃり白衣(関根和美)

悪名高いトラブルメーカーの看護婦。生来のドジがあだになり患者を殺しそこねたこと数しれず。ついた綽名が「白衣の渡し守」…って、“三途の川の渡し守”なんて使わんだろ、いまどき。相変わらず謎の天才カメラマン柳田友貴だし、酷い代物であることには違いがないのだが、ヒロインの林由美香と院長役 やまきよ のおかげで何とか(いつものように怒り心頭とならずに)観ていられるので星2つ。…って、いやなら観なきゃいいじゃんよ>おれ。いや、そのとおりなんだけど、併映されてる荒木太郎の旧作が観たくてさ。

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性奴の宿 うごめく女尻(池島ゆたか)

脚本:五代暁子 撮影:清水正二 佐々木麻由子|河村栞|平川直大|千葉誠樹
「ずうっとわたしたちは一緒にいるのよ。罪も快楽も…すべて分けあって」・・・古い旅荘にまつわる忌まわしい血の記憶。池島ゆたか「援交コギャル おじ様に溺れて」に続く今年2本目は純和風・猟奇サスペンスである。なかなかの傑作だ。しかもエロエロ( ★ ★ ★ ★ ★ ) 池島ゆたかは与えられたなかから間違いなく最良のものを引き出している。座付き脚本家・五代暁子は今回、気の効いた台詞のひとつも書けなくとも、定型フォーマットをきちんと守れば観賞に耐える脚本となりうることを証明した。そう、それでいいのよ。 ● 狂気をはらんだ旅荘の女将を演じるのは、わが愛しの佐々木麻由子さま。ひさびさに出現した宮下順子/風祭ゆき路線の女優とあって(これはピンク映画では大変にめずらしい事態なのだが)いまや各社からひっぱりダコである。ま、それも当然であって、あんたの眼球(めんたま)がガラス玉じゃないかぎり、佐々木麻由子の存在感を無視することなど誰にもできない。名匠・清水正二のカメラによる、闇に映える赤い襦袢の あやかしくも美しいことよ! そして夜空にかかる赤い月! ● 蜘蛛の巣に囚われた蝶=住み込みの仲居に、池島組連続出演中の河村栞。アングラ劇団チックに声を張る癖がだんだんと取れて、良くなってきた。この調子ならベタベタの渡邊元嗣コメディなんかも意外とイケるかも。クライマックスに回想シーン…ミステリーの謎解きにあたる部分…があるのだが、5分ほどもあるこのパートは なんとレディコミ調の劇画紙芝居で処理されていて、その作画も彼女の筆によるもの。 ● 前半まったく台詞なしの不気味な作男に千葉誠樹。女将のハンサムで気弱な弟に、なぜか今回 漢字表記の、平川直大(=平川ナオヒ) 池島ゆたか自身もちょい役の刑事で出演。濡れ場要員に新人・佐々木優香>カラミのときにアントニオ猪木の顔真似をするのはやめるよーに。 ● ひとつ気になったんだけど、ペニス恐怖/嫌悪症の女がストラップオン・ディルドウとか使うかね。あと冒頭の○○○の詰まったガラス瓶は何だったの?

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痴漢電車 手のひらで桃尻を(国沢実)

「手のひらで桃尻を」なんてタイトルだから青春映画だと思ってたら「定年を過ぎたのに何もやることがなくて毎日スーツ姿でぶらぶらしてる初老の男が、たまたま出会った痴漢の導きで生きる気力を取りもどす」という回春映画だった。 ● 「歳取ってから気がついたんだ。自分は歳を取るのが下手なんだってな」・・・樫原辰郎(脚本)+国沢実という「義母覗き 爪先に舌絡ませて」コンビの新作。主人公に痴漢の哲学を語る水先案内人のエピソード(小山田勝治のカメラによる公園での長まわしと、それに応えた寺十吾の軽い演技)がわりと良いが、肝心の主人公とその息子夫婦の描写が類型の域を出ないため、総じて平凡な出来に終わった。「映画の枠組み」から抜け出していくエンディングが爽やかにならないのは、道行きを共にする「天使のような」女の子にリアリティがないからだ。この娘に「亡くなった妻」との類似性を持たせるとかなんとか ひと工夫 必要でしょ。4人も出てくる女優陣に欠けているのはA級感(←A感覚ではない)

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女痴漢捜査官3 恥情のテクニック(渡邊元嗣)

脚本:武田浩介 撮影:飯岡聖英 蒼生侑香里|山崎信 十日市秀悦 ささきまこと|佐々木麻由子
ベタな「渡邊元嗣コメディ」だった1作目、都会派サイコ・サスペンスの2作目に続いて、気鋭脚本家・武田浩介を迎えての最新作は、なんと篠原とおる調 東映ハードボイルド女性アクションの大傑作! つまり「0課の女 赤い手錠(ワッパ)」や「女囚701号 さそり」の世界だ。(通常のピンク映画予算枠の作品だが)このまんまVシネマとして売れるんじゃないだろうか。 ● 恋人の刑事を植物人間にされたヒロインが4人のレイプ殺人犯に1人ずつ復讐していく話。ヒロインを演じる新人・蒼生侑香里(あおき・ゆかり)が素晴らしい。木の内みどり系の「1970年代顔」のスリム美人。長回しにも耐えうる演技力。男をにらみ返すシャープな目元にゾクッとくる。ヘアスタイルまで1970年代調だけど、これはたぶん意図的(飯岡聖英のカメラもソフトフォーカスで「昔の映画」っぽいし) そして先輩の女痴漢捜査官に「義母覗き 爪先に舌絡ませて」の、1970年代顔のお姉さま・佐々木麻由子! 煙草を吸う姿が絵になる女優なんてそれだけで貴重だ。1970年代顔の女優を2人も揃えて気分はすっかり「プレイガール」である。 ● 共演は、犯人グループの1人、嫌らしい下司な金貸しに十日市秀悦。今までの無理した感じのコメディリリーフよりずっと良い。犯人グループの黒幕に山崎信。植物人間にされた恋人に、TAKE2の田中美佐子のダンナ似の中出一漏。「双生児」メイクの看護婦さん役でカメオの西藤尚は、唯一の3作連続出演者。 ● おかしいなあ、渡邊元嗣って いつの間にこんなに演出 巧くなったんだろう。つい2、3年前までは「ヴァージン・スナイパー 美少女妖魔伝」とか作ってたのになあ…。現時点で本年度の日本映画ベストワン<いいのか、それで!?

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どすけべ姉ちゃん(上野俊哉)

昨年の「したがる兄嫁2 淫らな戯れ」のレビュウで「これ、もう一本ぐらい作れるよな」と書いたらほんとに出来た。しかもポスターに曰く>[好評の「兄嫁」シリーズ「エピソード1」いよいよ登場]・・・そう、なんと前日譚なのだ。役者が1・2作目と違う(若がえってる)のも「エピソード1」と同じ(!)だ。 ● おなじみのバカ兄弟。まだ2人とも東京で兄はパチプロ、弟は貧乏学生をしてる。故郷の親父がとつぜん死んで葬式に帰らにゃならんのに長野までの旅費がないってんで、金策に駆けまわるうち将来の兄嫁となる女性と出会う…って話。もちろんこの時点では「兄貴の嫁さん」になると決まったわけじゃないから弟のほうもまんざらじゃなくて…。 ● 男女の偶然の出会いを描いたちょっとした小品。脚本はもちろん小林政広(でも「エピソード1」にしちゃ「長野新幹線」とか「カップヌードルのビッグサイズ」とか時代考証が…) 撮影は小西泰正。 ● 兄に「OLの愛汁 ラブジュース」の佐藤幹雄。弟に しらとまさひこ。2人ともいかにも「歳取ったら本多菊雄と江端英久になるんだろうな」と思わせる好演。特に佐藤幹雄は今までシレッとした役が多かったが、本作で見せる豊かな感情表現も大いに魅力的。そして「葉月螢の若い頃」という難役に山崎瞳。この役“単体”としては何の文句もないんだけど、やっぱりあの葉月螢独特の喋りかたを真似てほしかった(あるいはこの役だけ葉月螢本人でも良かったかも) 兄のろくでなしのパチプロ仲間に川瀬陽太。江端英久がナレーションを担当している。 ● じゃ次は「エピソード2」ってことで:)「エピソード6」でも可。あ、やもめになった兄・港雄一と弟・野上正義で幻の「エピソード7」ってのもいいかなあ…。

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痴漢電車 ナマ足けいれん(高田宝重)

「彼はあなたの唯一の理解者だって言ってたじゃない。どうしてあなたも彼のことを理解してあげないの?」「だって姉さん 相手は痴漢よ。どうしたら そんな人を理解できるのよ」「じつはウチの人も痴漢なの」(ここで義兄登場)「今まで隠してたけど僕たち…電車の中で知り合ったんだ」<それは“知り合った”とは言わないって! ● 痴漢サークルの「青年」がたまたま痴漢した女の子に一目惚れ、痴漢を廃業(?)して彼女に近づく。彼女は童話作家志望(死語)の煙草屋の看板娘(死語)で、毎日毎日 ピースを買いに来る青年が、今まで誰も褒めてくれなかった自分の(出版社から断られまくりの、どう見たって下手っぴいな)童話に「感動した」なんて言ってくれるもんだから、すっかり青年にのぼせあがっちゃうんだけど、ある日ついに青年の正体を…。 ● 新人監督の第1作。とは言ってもピンク映画の助監督として10年のキャリアがある人だそうだ。岡輝男が脚本ということで心配してたんだけど、深町章=渡邊元嗣=池島ゆたか系統の(古臭くはあるけれど)悪くない純愛コメディに仕上がった。ただそこは田吾作のことだから「ヒロインが青年の痴漢現場で鉢合わせしてしまうという、起承転結の“転”にあたる重要なシーンの後に、全然 関係ない池島ゆたかの濡れ場を無神経に挿入して感情の流れを断ちきってしまう」とか「ラスト前の(煙草の)ピースを効果的に使った、いちばん感動できるはずのシーンを荒木太郎に事前に台詞で説明させてしまう」といったシナリオの基本作法が出来てないのは困りもの。池島の濡れ場は「鉢合わせ」の前に置くべきだし、荒木太郎の台詞はカットしても(少なくとも岡輝男以外の)観客には充分伝わるはず。 ● 林由美香に山田邦子を5%ぐらい混ぜたような顔のヒロイン、水島ちあき は生来のバカッぽさが役作りにプラスに作用している。恐ろしいほどの棒読み台詞が誰かに似てるなあと思ってたら、戸川純の台詞まわしにソックリなのだった。「青年」に渡辺力(好演) 痴漢サークルの先輩「ゴールドフィンガー」に荒木太郎。ナマズ髭の「ムッシュ」に池島ゆたか。この髭が「描き髭」で、いやそれは映画だから当たり前なんだけど、前述の濡れ場でなぜかその髭をコールドクリームで拭い落としながら台詞を言ってて妙に可笑しい。なんだどういう設定なんだ「痴漢するときだけ髭を描いてる」って設定なのか。まあどうでもいいけどなんとなくメタ映画っぽくて。「痴漢大好き」なヒロインの姉に佐々木基子。池島の相手役のコギャルに、歯並びの悪さがいかにも「ブスなコギャル」な大原里美。ベテラン下元哲のカメラが新人監督を好サポート。

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痴漢と覗き 尼寺の便所(新田栄)

「尼寺の便所」って…。バチがあたるよあんたら>新田栄&岡輝男(脚本)の田吾作コンビ。例によって容貌魁偉な主演女優(赤坂美月)をどっかから連れてきて、愚にもつかないお話を繰りひろげる。まあ「ピンク映画的」には里見瑤子&やまきよ、林由美香&杉本まことの2カップルが安定した艶技を見せてくれるので及第点か。

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痴漢バス いじめて濡らす(荒木太郎)

脚本:内藤忠司 撮影:清水正二
時任歩|荒木太郎 西藤尚|岸加奈子 港雄一 杉本まこと|野上正義
ノリにノッている荒木太郎の新作はピンク版「踊れトスカーナ!」。陽光ふりそそぐヒマワリ畑が印象的だったイタリア映画を、青白い満月の映えるしっとりとしたラブストーリーにみごと換骨奪胎してみせた。 ● 月(ルナ)という名を持つ旅回りのストリッパー、…というよりエキゾチック・ダンサーと呼びたいヒロインのカルメン・ルナ。演じるのは快進撃が続く時任歩。“カルメン”という名跡に負けない、妖艶な魅力と寛容と慈愛の微笑で堂々と映画を背負う。しがないマネージャーに野上正義。温泉旅館のマイクロバスの運転手で、ルナに一目惚れする気の弱い青年に荒木太郎。その妹で、男言葉を使う健気な短髪レズ娘・ヒデコ(愛称デコちゃん)に西藤尚。近くのスナックのママに岸加奈子。ママのパトロンの因業地主に港雄一。ルナの元愛人で東京の劇団の演出家に杉本まこと・・・と、現在のピンク映画でこれ以上の配役は考えられないほどの、まことにゼイタクな映画である。岸加奈子・野上正義・港雄一が同じフレームに収まって芝居をするゼイタク! わずかワンシーン、それも濡れ場だけのために杉本まことを配するゼイタク! 予算の厳しい制約の中で、後景に富士山の偉容がそびえる湖畔(富士五湖?)までロケをしたゼイタク! ● 気弱な青年のルナへの一途な想いをメインストーリーにして、スナックのママとマネージャーとの恋がからむ。夜の湖畔に止めたマイクロバスの、屋根に並んで腰掛けたルナと青年。時任歩が荒木太郎に自分の情熱を語るシーンの…富士にぽっかりと浮かんだ満月の青白いあかりに照らされた…その詩的な美しさはどうだ! 岸加奈子と野上正義が初めて情を交わすシーンにあふれる素晴らしい情感! ピンク映画を観てれば濡れ場なんて腐るほどあるが、これほど美しい濡れ場はめったにお目にかかれるもんじゃない。そしてまた清水正二の陰影に富んだ撮影が映画の質を何倍にも高めている(“陰影に富んだ”ってのと“暗い画面の”ってのはまったく別のことだかんね、念の為) ● 真にピンク映画のマスターピースともクラシックとも呼びうる傑作。荒木太郎はこれをもって一流監督クラブに入会した(あれ?文章が淀川調かな) ともかく必見。

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義母の淫臭 だらしない下半身(大門通)

いい歳して息子の嫁にムラムラしてるスケベ爺いのために、部長の愛人の上海女を譲り受けて後妻に…という話。深町章監督だったら爆笑まちがいなしの艶笑コメディだが、悲しいかな大門通には御大ほどのコメディセンスがない(てゆーか、面白い映画を作ろうって気がない?) まあ、それでも時おり笑えるのは、ひとえに“スケベ爺いの代名詞”久須美欽一の個人的な技量によるものだ。上海女の役を“北京出身のAV女優”美麗がたどたどしい日本語で演じてるのだが、このキャラ設定が「ライジンク・サン」の日本人描写なみで、中国大使館が観たら国交断絶は間違いないところ。息子の嫁に桜居加奈。部長の嫉妬深い妻に佐々木基子。

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爆乳風俗 お気に召すまま(山崎邦紀)

ちがいの兄とちがいの弟をもつ爆乳イメクラ嬢の近親相姦願望もの…にサイコ・レイプ魔が絡む話。なんのこっちゃら判らんだろうがそういう話なのだ。浜野佐知監督作品にはオーソドックスな脚本を提供している山崎邦紀だが、自身の監督作となると一転して、整合性のあるストーリーよりも奇妙な欲望に支配されたシュールな人々を描くことにエネルギーを費やすという傾向がある。何の効果があるんだかよう判らんセットに金をかけたり、セックスシーンに唐突に猫の鳴き声を入れたりするような不思議な演出で、それでいて妙にフォトジェニックだったりする。そう、いわばピンク映画界のデビッド・リンチである(そうかあ?) …ま、稀有な才能であることは確かだ。誤解のないよう書き添えておくが、山崎邦紀はプロなので「わけのわからん自主映画」は作らない。ポルノ度数は水準以上。本作でも風間今日子、河野綾子、村上ゆうという豪華ラインアップで、彼女たちの濡れ場を眺めているだけでも充分満足できるだろう。 ● ヒロインの爆乳2号(<なんちゅう役名や)に河野綾子。これほど台詞の多い役は久しぶり(てゆーか、初めて?)だが、下手ではないがちょっと棒読みかなあ。イメクラ“爆乳シスターズ”の同僚・爆乳1号に役名に偽りなしの風間今日子 姐御。大学講師の妻に乳のない分は艶技力でカバーする村上ゆう。銀縁メガネが色っぽいぞ(出来ればそのままで絡んでほしかった) 例によってうっとうしい変態兄貴に扮した やまきよが怪演。 ● これ、ヒロインの側から描いた物語のようでいて、最後でいきなり弟の一人称になってしまうので、結局 最後までヒロインの気持ち(=兄弟とヤリたいのかヤリたくないのか)が不明瞭なのだ。それがきちんと描けていれば傑作になったのに。

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OL 金曜日の情事(深町章)

なんだ岡輝男にも、まともな脚本が書けるんじゃないの。傑作とは言わぬまでも、これなら充分に商品として通用する(てことは新田栄と組んだ時は手ぇ抜いてる?>「相手のレベルに合わせてる」とも言うが) ● 毎週金曜日の晩にセックスしてる社内恋愛カップル。だが、男が女にプロポーズしたその金曜日に、女が車に轢かれて死んでしまう。身寄りのない女の、葬式を済ませて沈んだ気持ちの月曜日。ところが死んだはずの女がいつものように出勤してくる。どうやら死んだ自覚がないらしい(!) ヘタに「あなたはもう死んでいる」と告げて祟られてはたまらないので、部内でも誰も彼女にほんとうのことを言い出せない。仕方がないので魂が成仏するという四十九日までは彼女が生きてるふりで接しようということになる…。 ● ストーリーはコメディのようだが、どうしてどうして「ゴースト ニューヨークの幻」ばりの純愛ラブ・ストーリーである。つまり「彼女といられるなら幽霊でもいい!」となるわけだ。まあそれはいいが、やはり「幽霊とセックスした男は生気を失って衰弱していく」という怪談噺の約束事は守ってほしかった。 ● 生死を乗り越えて愛し合う若いカップルに扮した山崎瞳と岡田智宏が好演。男に横恋慕する年上のOLに佐々木麻由子さま(もっと見たいぞ) 部長に かわさきひろゆき(コメディリリーフとしてはまだまだ力不足) 濡れ場要員に時任歩。エクセス・浜野組、大蔵・荒木組ときて今度は新東宝・深町組(おお、各社のエースを渡り歩いてるぞ) 白髪頭の池島ゆたかと組んでコメディエンヌとしての意外な勘の良さを発揮している。ぜひ次回作は彼女主演で御大お得意の艶笑コメディを撮ってほしいね。 ● それにしても封切2日目に観たのにもうフィルムがタテ傷だらけだったのは如何なることか?>新宿国際名画座。


不倫妻 情炎(女池充)

エンドクレジットの最後に変わった謝辞が出る>「自主映画と偽って撮影したためにここに名前を出せない人たち、ありがとう そして ごめんなさい」(正直に「ピンク映画のロケです」と言ったんじゃ場所を貸してもらえないので、こういうケースは割りとよくあるようだ) だが脚本・監督の女池充よ、謝る必要はないぞ。あんたの新作は紛うことなき自主映画だ。暗すぎて何が写ってんだか判らない画面の連続。声が小さすぎて何言ってんだか聞き取れない台詞の連続。あんたが初号試写を観る現像所の試写室ならいざ知らず、映写環境の劣悪なピンク映画館でかかることを承知の上でこういう代物を作ってしまったのだから、あんたはプロの映画監督じゃない。自主映画作家だ。撮影の小西泰正も同罪。そして製作会社・国映の朝倉大介プロデューサーは商品とはいえない自主映画にOKを出すべきじゃない。昨年の榎本敏郎「喪服姉妹 タップリ濡らして」以来の観客退場率ナンバーワン映画。当然、星は1つ。 ● 中味はしかし見応えのあるドラマである。きちんと視認できる明るさで撮影されて、きちんと聞きとれる大きさで台詞が発声されていたなら ★ ★ ★ を付けていただろう。舞台は豪雪地帯の山村。すっぽりと屋根まで雪におおわれ、どこかで電線も切れたのだろう電気もつかない小屋でひとり、男が女を待っている。女は人妻。2人して駆け落ちをする約束だ。もう何時間待っているのだろう。雪に閉ざされた暗闇の中で時間の感覚も失われて久しい。朦朧とした意識にさまざまなイメージが浮かんでは消える。女との出会い。人目をしのんでの逢瀬。東京へ行った昔のカノジョとの再会。兄の説教。しんしんと降りしきる雪がゆっくりと男の神経を狂わせていく…。キューブリックの「シャイニング」を思い出したのは突飛な連想か。 ● “人妻”の伊藤清美がいつもながらに素晴らしい。暗闇の中でも台詞が聞こえなくとも圧倒的に観客に迫ってくる女そのものの存在感。“男”に川瀬陽太。熱演…なんだろうけど、ほとんど顔が見えないので。川瀬陽太の兄に「したがる兄嫁」シリーズで“日本一の兄貴役者”としての地位を確立した本多菊雄(ラストシーンで煙草を吸ってるのはこの人だと思うが、画面が暗すぎて誰だかすら判らない) 女の亭主に少ない出番ながら強い印象を残すベテラン・下元史朗。女優はもう1人、黒田詩織が“濡れ場要員”として出てくるのだが、胸も見せずに退場してしまうとは何たることか!

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欲情夫人 恥ずかしい性癖(北沢幸雄)

ピンク映画界随一のドラマ派・北沢幸雄の新作は夫殺しの保険金殺人を描く実録犯罪ドラマ。資産家の中年男に嫁いだ若いホステス。しかし暇を持てあましてスナックで出戻りアルバイトするうち、客といい仲になり…。 ● 悲しいかなピンク映画の60分という上映時間の制約と、女優3人の濡れ場を設定しなければならないという脚本上の制約が枷となって、肝心のヒロインの心情を描ききれていない。時間的な制約から「犯行と、その崩壊の予感」まででエンドマークを出して、逮捕の顛末を字幕で処理したのは納得できる。解からないのがスナックのママ・林由美香と馴染み客・飯島大介のカップルで、この2人は濡れ場を演じるためだけに登場して物語の本筋にまったく絡まない。北沢幸雄ならばもっと良い脚本が書けるはずだ。 ● 顔も声もおっぱいも山田まりや似のヒロイン、上原めぐみは決して上手くはないが熱演だってことは認めよう(びっこ曳いてんのは演技?) 若い妻への負い目がある中年の夫に岡田謙一郎(なんか顔が違う気が…) ヒロインの愛人に、ろくでなしの優男ぶりに磨きがかかった千葉誠樹。金ほしさに犯行に加わる千葉誠樹の兄に、思いつめた演技なら誰にも負けない伊藤猛。スナックの同僚ホステスという脇役に、ゼイタクにも葉月螢。

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襦袢未亡人 白い蜜肌(下元哲)

カメラマン=ディレクター 下元哲の新作。「戦時中の山村。出征中の銃後を守ってきた貞淑な妻の元に、上官が夫の遺骨を持参してくる。だがその上官の正体は変態猟色者だった…」という話。いつもは「ストーリーは二の次でエロ中心」という映画を撮る人なのだが、今回は珍しくドラマ性が強い。で、その分つまらないってのがなんとも皮肉。モノクロ場面だけビデオ撮りなのはコストのせい? ● ヒロインの桜沢菜々子はアナウンサーの渡辺真里を(さらに)安っぽくしたような感じ。たしかに苛めたくなる雰囲気ではある。追っ手から逃れて転がり込んでくる遊女に佐倉萌。猟色者に杉本まこと。職業軍人の夫にやまきよ。隣家の親切な農夫に久須美欽一。ずぇったいにヒロインによこしまな下心を抱いてると思ったら最後まで良い人だったので逆にビックリ。

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ノーパン女医 吸い尽くして(浜野佐知)

欲求不満の産婦人科医が、淫乱なノーパン女医になるまでの物語。それを「堕ちていく話」としてではなく、セックスによる自己の開放として描くのが浜野佐知のスタイル。起承転結のかっちりした山崎邦紀の脚本(「夫の子供を妊娠した愛人の膣をヒロインが触診する」という設定が秀逸)と、浜野佐知の強靭な演出力によって見応えのあるエロティック・サスペンスとなった。もちろん浜野佐知だからポルノ度 ★ ★ ★ ★ ★ の保証つき。ピンク映画のひとつの理想形と言えるかも。 ● ヒロインの“ノーパン女医”に葉月ありさ。たぶん芸名の由来は葉月里緒菜であろうキツめの顔だちのスリム美人。(名手・小山田勝治のカメラの助けも多分に借りて)妖艶な魅力をふりまく。ヒロインに対抗意識を燃やす愛人に篠原さゆり。グレン・クローズ的怖さがよく出ている。あと、巨乳淫乱看護婦に河野綾子が扮して思う存分、巨乳淫乱看護婦ぶりを発揮してくれている。男優陣には、いいように妻をあしらってるつもりが強烈なしっぺ返しを喰らう院長先生に杉本まこと。ヒロインを欲望の世界へと誘う姦計をめぐらす入院患者タチバナに やまきよ。「タチバナさん、あなた糖尿病でしょう。なんで車椅子なのよ?」「車椅子は私の趣味なんですよ。フッフッフッ」…このメフィストフェレス的キャラクターの存在によって映画の魅力が倍増している。

★ ★
高校教師 赤い下着をつける時(中村和愛)

登場人物のこまかな心の揺れを丁寧にすくいあげて行くというのが中村和愛(監督・脚本)のスタイルのはずだが、本作ではそれがうまく機能していない。作者だけが納得して話を次に進めてしまうので結果として誰ひとり登場人物の心の動きが理解できないという最悪の事態になっている。さらに致命的なのがヒロインの女教師・藤井さとみに、これっぽっちも魅力がないという事だ。ありていに言ってしまえばただのデブなんだよなあ。演技はもちろん大根だし。女教師と張り合う女子高生役の、わが愛しの夢乃(桜居加奈)さんも出番は少ないし、ちっとも魅力的に撮られていないし、困ったものである。次回はもっと脚本を練ってから作るよーに>中村和愛。

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巨乳発情ナース(渡邊元嗣)

いきなり冒頭からチープなSFセットで怪しい科学ネタ爆発か?と思いきや、なんと話は人情コメディとして収束する。なぜなら今回は久々に螢雪次朗さん(←敬称)がゲストだから!(念のために解説しとくと「ガメラ」シリーズで「行く先々で怪獣に遭遇する不運な警察官」を演ってた役者さんね) 螢さん(って書くと葉月螢みたいだけど)の役どころは、故あって組から追われる元やくざ。夜の公園で、暴力亭主から逃げ出して来た人妻・林由美香と出合う場面は、情感あふれる芝居どころ。ダテに10年選手じゃないやね>御両人。で、その泣かせる場面のすぐ後で、石膏ハリボテの巨大チンポ振りたてて絡んだりするんだから、いやはや…。 ● 性感測定クリニックの院長先生に佐々木恭輔。意外な器用さで渡邊元嗣ワールドにハマッている。ハマッてるといえば“巨乳発情ナース”の役に、これ以上なくハマッてるのが神崎優ちゃん(←愛称) (渡邊元嗣好みの)ロリ顔&短髪ではないんだけど、あの巨乳をピッチピチのピンク白衣(しかもミニスカ)に包んでカマトト演技で迫って来られた日にゃあもう…(火暴)←使い方が違います。院長にまとわりつく欲求不満マダムに(もろ渡邊元嗣好みのロリ顔&短髪の)西藤尚さま(←尊称) いつもの天使のスマイルも素敵だけど、今回の役柄の悪魔のように妖艶な微笑みってのも これまた魅力的で、ああもう…(火暴火暴)←やめなさいって。 ● サスペンスをすべてギャグに転化する徹底してバカバカしい脚本は波路遥(なみじ・はるか) ペンネームからしてふざけてるけど、ヒロインたちの役名がまた海野珊瑚、花園つぼみ、青空翔子だ。脚本や台詞のバカバカしさ(=現実からの乖離度)においては「老害監督たちの映画」と大差ない渡邊元嗣の、いちばんの違いはチープさに自覚的であるか否か。すぐれたコメディ作家である所以だ。飯岡聖英の職人芸フレーミングも見事。

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ノーパン痴漢電車 見えちゃった!!(田尻裕司)

田尻裕司の3作目は、大評判を取った前作「OLの愛汁 ラブジュース」のバリエーション(脚本も同じ武田浩介)を、今度は男の側から描く。「OLのセックスフレンドがいる二十歳のバイト君が、高校の時の同級生と再会して好きになり、OLと別れるけど結局 同級生にも振られてしまう」って話のはずなんだが、「主人公が元同級生の女の子に惹かれて行く」描写が抜けてるので、なんでOLと別れにゃいかんのかよく判らないし、元同級生に迫るシーンも唐突に思えてしまう。ラストに(小人数スタッフで、失敗しても撮りなおす予算もない)ピンク映画としては無謀ともいえる相米慎二ばりの大移動撮影があって、これが本来ならば主人公の「一時の熱情→落胆→諦観…明日は明日の風が吹く」という心情的変化を一気にあらわす映画的ケレンのクライマックスであるべきにもかかわらず、あまり効果をあげていない。 ● …と、悪口から書きはじめたが、「高校を1年で中退して以来、何になりたいってわけでもなく、外盤屋でバイトしてる」主人公のキャラクターはよく書けている。皿まわしが趣味だけど「本気でDJを目指してる」ってほどでもないイマドキの若者を等身大に演じることのできるピンク男優は佐藤幹雄ぐらいだろう(ピンク映画の場合、女優は若い子もいるんだけど、男優はどうしても年令が高くなりがちなのだ) OLにちょっと田中裕子に似た新人・池谷早苗。会社には結婚を前提に付き合ってるカレがいながら、年下の男の子とのセックスに溺れるときだけ「素の自分」に戻れるOL像をこれも好演。この2人中心に話が進む前半は文句なく素晴らしいのだから、最後までこの2人の関係にフォーカスしたまま行ってほしかった(それじゃ、まんま「OLの愛汁 ラブジュース」の裏返しなので、作者としても気が引けたんだろうけど、いいじゃんよ、それでもさ) 元同級生に山崎瞳。女の子を「美化」するのではなく、寒さに赤らんだ頬といったありのままの美しさを写し撮る飯岡聖英のカメラの力もあって、今までにない魅力を出している。あと、痴漢の被害者役で愛しの桜居加奈ちゃんが出てるのだけど、出演時間はわずか30秒(泣) ● 田尻裕司の演出は、とにかくリアルに拘っていて「ブラを外すのにもたつく」「セックスの後でコンドームを外す」「電車のドアが閉まるまでの中途半端な間」といった、通常は省略される描写を丁寧にフォローする。


どすけべ女社長 未亡人の性欲(小林悟)

亡夫の法事を終えた愛染恭子が喪服を着替える。隣人の港雄一が襖の隙間から覗き見する。椅子を後ろへ反らし過ぎて倒れる。そのドサッという音に、腰巻1枚の愛染恭子が出てくる。気絶(の振り)をしている港雄一を見て「まあ大変!そうだ人工呼吸よ」と港雄一に馬乗りになって人工呼吸。すかさず港雄一の指が愛染恭子の股間に伸びるが、人工呼吸に夢中の愛染恭子はおまんこ弄られてんのに気付かない。「あら?人工呼吸ってこんなに気持ちよかったかしら」そして2人は組んずほぐれず…「あはん!許してえ!」・・・許して欲しいのはこっち(観客)の方だって。 ● 小林悟 翁の脚本・監督による愛染恭子主演の「変格未亡人下宿もの」(未亡人下宿といえばこの人=久保新二もラストにチラッと出てくる) 経営の苦しい運送会社の女社長役、愛染恭子は給料の不足分の代わりに住込み社員に肉体を提供していて、新入社員の童貞クンに初めての手ほどきをするという場面での台詞「昔は戦争に行く兵隊さんにこうして…」ってアンタ、歳いくつだよ!妖怪か>愛染恭子(近いかも) てゆーか、もう頼むから引退してくれ>小林悟。 ● 撮影が、いつもの「天才カメラマン」柳田友貴ではなく、飯岡聖英なので(>飯岡聖英月間か!)安心して観ていられるが、ワンシーンだけ途中から(まるで蛍光灯フィルタが外れたように)画面が青白くなってしまうのは小林翁の呪いか?

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黒下着の淫らな誘い(荒木太郎)

セクハラ入社面接のあげくにレイプまでされた女子大生が、社会人となってからセクハラ男に復讐する話。前半が「セクハラ悪夢篇」、後半が「甘美な復讐篇」という構成で、前半がえらい面白い。市川崑の初期コメディをほうふつさせる超早口&アップテンポ&魚眼レンズ多用な語り口でヒロインのシュールな悪夢を描きだす。なにしろ杉本まことが演じるセクハラ面接官は、ソシアル・ダンスが趣味で、軽やかにステップを踏みながらヒロインをレイプするのである。後半が失速するような印象を受けてしまうのは、ひとえに「杉本まことが縛られて動けなくなる」からだ。 ● かように荒木太郎は依然として変化球投手なのだが、全体として とてもウェルメイドな印象を受けるのは、彼がいま一番 脂がのっている監督だという証だろう。何度か挿入される8ミリ・カメラの映像が効果的。 ● 主演は「平成版・阿部定 あんたがほしい」の時任歩。原節子→鈴木京香ラインの端正な美貌。これで「ちょっと抜けてる」ってのが巧く出来れば、より魅力的になるんだけど。ヒロインを助けるレズのSM女王に風間今日子。快楽亭ブラック師匠と絡む場面での(ほぼ)スッピン顔がキュートだあ。復讐劇の犠牲となる面接官の若妻に篠原さゆり。今回は出番も台詞も少なくて残念。その代わりに(?)劇伴のピアノ演奏も担当。

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性戯の達人 女体壺さぐり(園子温)

「自転車吐息」「部屋 THE ROOM」「桂子ですけど」の自主映画作家・園子温がピンク映画に初挑戦した。ところが出来あがったものは、なんと「女流陶芸家ナンバーワンの座を目指して、おフェラ陶芸家パイズリ陶芸家が火花を散らす」というギャグ・コメディだった。設定のバカバカしさといい、登場人物がカメラに向かって喋ったりするところといい、まるで出来の悪い渡邊元嗣を観ているようだ。商業映画である事に意識的な姿勢には好感を持つが、その一方で「こーゆーの作りたいわけ?」という気もしないではない。同時上映の荒木太郎作品のように、自主映画タッチを残しつつピンク映画として成立させるのは決して不可能な事ではない。園子温が「普通のピンク映画監督」になりたいと言うのなら、こちらがとやかく言う筋合いではないが、例えばもっと初期8ミリのような「俺が園子温だ!」という図太さを出しても良いのでは?(もっとも男優として出演もしてる園子温の本音は案外「女優と絡みたい」だったりして) ● おフェラ陶芸家に夢乃(=桜居加奈)。夢乃ファンとしては言いにくいけど、これはミスキャスト。「お師匠さま」なんだから吉行由実とか佐倉萌ぐらいの貫禄がほしいところ。パイズリ陶芸家に神崎優。こちらも「可愛いから許す」と言いたいところだが、やはり風間今日子の役でしょう。夢乃のお弟子さんに(「ぐしょ濡れ人妻教師 制服で抱いて」の女子高生役でピンク映画デビューした)鈴木敦子。銀縁メガネの似合う、いかにも大学の映研にいそうな地味な女の子で、そっち方面の人から偏った支持を受けそう。後半に史上最高に唐突に神崎優のアオカンを挿入するよりも、鈴木敦子がお師匠さまのために審査員を誘惑する場面とか作ればいいのに。 ● 撮影の鈴木一博だけが自主映画モードのままで、映画のタッチに合ってない(もっと明るく撮るべき) それと、前貼りが平然と映ってるのは見苦しいのでもっと気を使うよーに。

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和服義母 息子よやめて!(剣崎譲)

年に1度のイヴ主演作。関西製作の作品で、舞台は神戸。阪神大震災当時のテレビ映像も出てくるが、べつにそれがドラマと有機的に関わってくるというわけではない(それともあれは何かを訴えてたのかね?) 「後妻が義理の息子の肉奴隷に堕ちる」という団鬼六ものだが、それにしてはねっとり感不足。脚本(宇喜田洋平)は方向性が定まらずとっちらかってるし、演出も(勃たせ処である)息子が初めて義母を犯すシーンを小細工で処理するという愚をおかしている。36才になったイヴの、腰の線の崩れかけた爛熟した躯は、それなりに魅力的ではあるが、この人もともと金子修介の「イヴちゃんの姫」のマネキン人形役を思い出すまでもなく、現実感の希薄さが特徴だった人で、義理の息子が犯さずにいられないようなむんむんした色気に乏しいと感じるのはおれだけ? あと、義理の息子役の俳優の台詞まわしが、典型的な「関西人が無理して喋ってる東京ことば」で聴き苦しい事この上ない。関西の話なんだから素直に関西弁で喋ればいいじゃんか(←これ東京弁?)●[追記]この俳優(佐賀照彦)はじつは九州の人で、東京ことばだけじゃなく関西弁も喋れないんだそうだ。

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異常体位 大淫乱(勝利一)

元スチュワーデスのママが経営するパブを舞台とする、どうやら人情喜劇を狙ったと思しき脚本(国見岳志)だが、弛緩した演出がすべてを台無しにしている。主演の麻宮淳子は素人みたいなもんだから仕方ないとして(でもおっぱいキレイだから許す)、里見瑤子のいつもの「思いつめ演技」は重すぎる。中村杏里(永森シーナ)と久須美欽一の演技が正しいトーンと思われるが、それが浮いて見えてしまうのは演出の責任だろう。もっと軽やかに撮らなきゃ>勝利一。

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団地妻 不倫でラブラブ(サトウトシキ)

製作:国映 脚本:小林政広 撮影:広中康人 音楽:山田勲生
林由美香 横浜ゆき|伊藤猛 本多菊雄|川瀬陽太 さとう樹菜子
「団地妻」などというタイトルのついた映画をこれほど胸トキめかせて待った事はない。日本映画の宝 サトウトシキ+小林政広コンビ、待望の新作コメディ。「団地の隣同士に住む奥さんがレズ友達になり亭主に無断で温泉旅行に出かける。取り残された亭主たちはヒマを持て余してホモだち関係になってしまう」なんてムチャクチャな話を、きちんと夫婦のラブ・ストーリーとして着地させる小林政広はまさに名人芸。こんな脚本、誰にも書けない。ま、ひとつ文句をつけておくと、夫に置手紙を残す妻は逆だと思うけど。 ● お馴染み葉月螢&沢田夏子にかわって、今作ではベテラン・林由美香と新人(なのかな? 見覚えあるような気もする)横浜ゆきが団地妻コンビを演じている。どちらも達者。林由美香はこれぐらい出来て当たり前だけど、それにしても(このキャリアで)いまだにネコ役ってのも不思議な女優さんではある。男優3人は言うことなし。伊藤猛が本多菊雄を誘惑する図なんてのは爆笑もの。さとう樹菜子は今までで一番良かった。現役女子大生という現実の属性から、ついキャピキャピした役がまわって来がちだが、この娘はあんまり明るくない役の方が合ってると思う。 ● そうそう、「愛欲温泉」に続いて本作でも、カラオケのシーンでザ・ピーナッツばりの新曲「二人の秘密にしましょう」が聴けるのでお楽しみに:)

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一週間 愛欲日記(小林政広)

脚本家としてサトウトシキとの併走を続け、また「CLOSING TIME」「海賊版=BOOTLEG FILM」という2本の趣味の自主映画を発表している小林政広が、満を持して自らの商業映画デビュー作として選んだのは、なんと葉月螢と川瀬陽太の2人芝居。呑み屋で出逢った男と女のSEX漬けの1週間を描く密室劇である。広中康人のカメラは男の部屋から一歩も出ない。(おれの嫌いなタイプの)フランス映画とかにはありがちな設定だが、ピンク映画としちゃあえらい実験作だ。よくOK出したなあ>国映。もっとも出演してる2人は全篇の8割方は裸で、半分はSEXしてるわけだから、ピンク映画としての要件は満たしちゃいるが。 ● 密室でSEXしつづける男女の話といえば、どうしたって○○○を連想するわけで、まあ、そーゆー話である。小林政広は劇的なエピソードを(おそらく意図的に)廃していて、それで最後まで見せてしまうのだから大した腕なのだが、ストーリー展開にあまり変化がないのでサスガに途中でちょっとダレる。ロケ現場は小林政広の自室なのだろうか。リアリティを重視した話の割りには「いい歳していまだ定職のないバイト君」の部屋が「フローリングの広いリビング、大量の蔵書・LPレコード・CD、仕事机+パソコン、BOSEのスピーカーシステム、イサム・ノグチのフロアライト」ってのはリアリティに欠けるのでは? ホッとしたのは趣味の自主映画に満ちあふれていた「自分の愛する映画へのペダンチック&ナルシスティックな言及」が一切なかった事。部屋にワザとらしくポスターが貼ってある事もなかったし。いちおうプロの脚本家としてのけじめはついているようで安心した(川瀬陽太が「ヒッチコック/トリュフォー 映画術」を手に取った時はギクッとしたが) ● 2人の役者が素晴らしいのは言うまでもないが、特に葉月螢が瑞々しい。…ミズミズシイ?こんなベテランの女優をつかまえて“瑞々しい”? …いや、ほんとなんだって。ここには今まで見たことのない葉月螢がいる。それだけでもこの映画を観る価値はあるだろう。

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援交コギャル おじ様に溺れて(池島ゆたか)

騙されても騙されてもつい男を許してしまう弱い性格の姉と、愛に幻想をもたず金がすべてと言いきる現実主義者の妹・・・監督本人が公言するとおり溝口健二「祇園の姉妹」のアダプテーションである。芸者姉妹が、ここでは元AV嬢のホステスと“援交コギャル”の姉妹になっているわけだ。衣田義賢+溝口健二が相手じゃはなから勝ち目はないが、それでも五代暁子+池島ゆたかは善戦している。いつも台詞の陳腐さが気になる五代脚本だが、本作ではかなり改善されているように感じた。ここまで書けるのならあと一息粘れれば傑作を書く力はあるはずなのに惜しい。具体的にはラストの妹の処理を誤っている。昭和11年の映画じゃねえんだから泣いて終わりはないだろうよ。おれは1年に3本も4本もアベレージ作を作りつづける池島ゆたかを、年に1本だけベストワン作品を作る監督と同じくらい偉いと思うが、それでももう一押しで傑作になれたはずの映画を観せられるのはとても歯がゆいものだ。 ● 姉の水原かなえがとても素晴らしいのに吃驚した。役を演じるのではなく役になっている。台詞をしゃべるのではなく自分の言葉をしゃべっている。この娘ってこんなに良い役者だったっけ?(かわさきひろゆきの劇団で鍛えた成果だろうか) 元版では山田五十鈴が演じた妹役に、池島ゆたかの前作「不倫女医の舌技カルテ」でデビューした河村栞。初のタイトルロール。少ない出番で強烈な印象を残した前作と違って、これだけ出ずっぱりではサスガに地金が出てしまうが、台詞まわしの上手さは新人離れしている。躯もキレイだし、あとは魅力的な表情だな。(おれとしては珍しく清水正二のカメラに文句をつけるが)もっと彼女の表情を追いかけてあげるべきだった。姉の腐れ縁の、どうしようもないろくでなしの愛人に千葉誠樹。池島ゆたか自身も河村栞に翻弄される中年おやじを演じて笑わせてくれる。姉の愛人の妻に佐倉萌。ワンシーンの出演ながら素晴らしい情感の濡れ場を演じて印象的。千葉誠樹の尻にまわして絡めた足がもう…ああああっ

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花嫁は初夜に濡れて(国沢実)

傑作「義母覗き 爪先に舌絡ませて」チームによる期待の新作だが、残念ながら「あれはまぐれ当たりだったのか」と思わざるを得ない出来。コメディ・タッチの結婚詐欺ものだが、まず樫原辰郎の脚本は構成がなってない。「結婚願望の強いヒロイン」の対比として描かれるべき存在が「仕事一途な姉」と「レズのルームメイト」と2人いて、その2人とも描写不足のためどちらにも居る意味がない。またタイトルに「花嫁は初夜に濡れて」と謳っておいてヒロインが妄想の中でしかウェディング・ドレスを着ないのは詐欺だろう。妄想オナニー場面を2度も入れておいて、最後に結ばれる相手とのセックスシーンが無いってのは、いかにもバランスが悪い。国沢実の演出はコメディ場面が滑ってしまっていて観てて痛々しいばかり。ヒロインが大阪弁でしゃべるのだが、もっとこう、ポンポンポーンとテンポ良く行けないもんかね? 黒澤祐一郎の劇伴も耳障りな場合が多かった。なおカメラマンは前作(小山田勝治)とは別人(村川聡) ● 結婚願望の強いプータロー娘に さとう樹菜子。もうそろそろ“化けて”欲しいとこなんだが未だ不発。ああ、これが桜居加奈だったらと思わせてしまうところが…。あと、神戸育ちの割りには大阪弁が下手なのは何故? ヒロインに片思いしてるレズのルームメイトに(こちらは達者な)篠原さゆり。ヒロインとのレズシーンがロクに裸も見せないまま中途で終わっちゃうのはルール違反でしょう。仕事一途で結婚詐欺に引っかかる姉に石井かおり。何故か吉行由実が声をアテていて、声だけやたら演技が上手いのでとても不自然だった。


痴漢電車 ゆれて絶頂5秒前(関根和美)

ある意味で黒沢清より難解な、関根和美の新作。妄想癖のある小心者の冴えない中年おやじが主人公。通勤電車で若い女に痴漢と間違えられ(なぜか)河原に連れて行かれて「わたしと繋がるか、手錠に繋がるかどっち?」と脅されコトにおよび「スッゴイおじさん、社長さんサイズぅ!」…と、まあ、こーゆーものを1時間も観せられるわけだ。自分の忍耐力を褒めてやりたいよ、おれは。 ● で、また撮影が謎の天才カメラマン柳田友貴だ。人物や机や布団が必ず壁際に置かれ、照明の影がクッキリと壁に映る素人レベルの室内撮影などまだ序の口。恐るべき事にいくつかの場面では人物の首が切れたまま平気でカメラが回るのである。ファインダー覗かねえのか、このカメラマン? ● いくら何でも商品とは呼べない出来なので(前作に続いて)★はゼロ。評価外である。

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