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m @ s t e r v i s i o n
pinkArchives 1999
★★★★★=すばらしい ★★★★=とてもおもしろい ★★★=おもしろい ★★=つまらない ★=どうしようもない

★ ★ ★
美人取立て屋 恥ずかしい行為(工藤雅典)

「美人取立て屋のチームが悪徳整理屋(=計画倒産の手配師)をだましてタンマリ金をふんだくる」という“逆「夜逃げ屋本舗」”とも言うべきコンゲームもの(てゆーか、ほんとは「ミナミの帝王」や「借金王(シャッキング)」の世界により近い気もするが、おれはそれらを未見なので) そういえば前作も裏金融の話だったなあ。共同脚本の橘満八がそっち方面にくわしい人なのかも。デビュー作の「人妻発情期 不倫まみれ」では石井隆 的なラブストーリーに挑戦したエクセス(≒日活)はえぬきの工藤雅典は第2作をおよそピンク映画らしからぬエンタテインメントにしあげて力量を示した。ただ、この素材を描くのに60分という上映時間ではちょっと厳しかったかも。 ● チームリーダーの中村雅敏に佐々木ユメカ姐御。おなかのバラの刺青もあざやかに颯爽とヒロインを演じている。リーダーをアシストする益岡徹/阿部寛に森士林(♂) リーダーに敵愾心を燃やすルーキー、京野ことみに新人・青山実樹。ちょっとイチロー夫人・福島弓子似の、白い肌&綺麗なおっぱい&きゅっとした尻と三拍子そろった上玉である。いや裸だけじゃなく演技もまあまあ勘がいいので、エクセス作品ヒロインの常として これ1作きりのピンク映画出演だとしたら勿体ないかぎりだ。助演陣にも、悪徳整理屋に吉田祐健、町工場社長に飯島大介、サラ金社長に元・怪物ランドの赤星昇一郎(からみは無し)と実力のある人たちが揃って、見応えのある1作となった。 

★ ★ ★
女子アナ 盗撮下半身(佐々木乃武良)

セックスという蜘蛛の糸にからめとられていくテレビ局の女子アナウンサーを描いた、ピンク度 ★ ★ ★ ★ ★ のポルノグラフィ。 ● 現在のピンク映画においては、からみのある女優を3人出すというのが興行的要請&予算的制約からくるルールである。美しくて演技のまともな女優を3人そろえるのは なかなか難しいのが現状なのだが、本作はそのめずらしい例外となった。あたりまえの事だが、女優の良いポルノ映画は強い。 ● 主人公の女子アナにはピンク映画初出演の(深夜テレビでパンチラ天気予報をやってたローバー美々こと)水原美々。アングルによってはハッとするほどの美人で、特にちょっとめくれ気味の上唇がセクシーでよろしいな。彼女を性の深淵へと誘うベテラン女子アナに佐倉萌。豊満な肉体から匂いたつ官能がすばらしい。まだ若いのに これほど堕ちていく女が似合うというのも得がたい素質である。ヒロインの同級生/ライバルのOLに里見瑤子。いつもの工藤夕貴/大竹しのぶ的「思いつめ女」ではなく、これまた20代OLのセクシーないい女を演じて新鮮。男優も岡田謙一郎、久須美欽一、山内健嗣と実力派がそろった(まあ、男優はどーでもいいんだけど)

★ ★ ★
痴漢の指2 不倫妻みだらな挑発(神野太)

これはピンク映画じゃなくてVシネマだなあ。だって小沢仁志が出てるし。新東宝とジャパンホームビデオとの合作で、予算も通常より潤沢…とは言わないまでも、Vシネマ・レベルの美術&照明が可能なほどには有るようだし。 ● 「浮気調査専門のケチな私立探偵が、ある事件の調査をするうちに、1人の女に出会い、その女に惹かれる。だが事件の裏にはもう1つの真相があり、探偵は打ちのめされる。しばらくして探偵はその女と再会するが…」という話。竹橋民也の脚本は、ハードボイルド探偵もののフォーマットをきちんと踏襲する。ただ本篇では、女は電車内痴漢の被害者として、男はその目撃者として出会うわけだが(演出はここで絶対に彼女と探偵の視線を合わせておくべき) ● 主演の探偵に江原修(って誰?) そこそこだが、ちょっと安っぽいか。これなら伊藤猛のほうが100倍も上手い。ヒロインには勝虎未来(この芸名ってやはりタイガース・ファン? 劇中でちょこっと大阪弁喋っておったが…) こちらもそこそこなんだが、この役は「痴漢されてるときの切ない顔」に探偵が惚れるわけだから、そこが不満。どーでもいいけけど乳輪が渦巻き状になってるのは豊胸手術の失敗? 小沢仁志の役は「東京都清掃局」。つまり「クリーナー」だな。探偵事務所の所長に港雄一。濡れ場要員として佐々木麻由子さん(敬称)と南けい子。 ● あと、この映画、ポスターに監督の名前を入れ忘れてるぞ>新東宝。

★ ★
遊び妻 昼下がりの快楽(深町章)

テキトーな設定で10分ほどの濡れ場を3つ4つ撮って、あとはすべてナレーションで辻褄を合わせて一丁あがり・・・深町章脚本・演出による、いつものお気楽オムニバス映画、…かと思いきやラストでブラックなオチが決まった。出演は葉月螢、里見瑤子、水原かなえ、しのざきさとみ、かわさきひろゆき、神戸顕一。

★ ★
セクシーパブ 乳揉み尻さすり(小林悟)

おさわりパブにセックスOKの肉弾新人娘が入店したために他のお姉さん方と騒動になって…。←いちおう「…」を付けたが、じつは脚本家(三河[王秀]介)がここでストーリーを投げ出してしまっていて、なんと「…」のまま映画は終わってしまう(!) ● ベテラン監督による野心皆無のルーティン・ワーク。恐るべきはカメラマンの柳田友貴で、おざなりの照明&撮りっぱなしのカメラワークが、結果として黒沢清あたりのドキュメンタリー・タッチの映像と似通っているのだ。もしかしたら天才カメラマンかも(←絶対違うと思う) ● 新人娘に、「浅草ロック座」とクレジットされる宝翔。演技がド下手なのは仕方がないとして、踊り子さんにしちゃ躯が美しくないんだけど…。「それまで店長のお気に入りだったのに、新人のせいで冷たい扱いを受ける、可哀想なんだけどいつもニコニコ笑っている、もしかしたらちょっとオツムが弱いかもしんないベテラン風俗嬢」に扮した南けい子が好演。てゆーか、ほとんど柄(がら)で演ってる? 他に里見瑤子、さとう樹菜子が出演。ゴジラ(中身)の薩摩剣八郎が出てるのは(小林悟がプロデューサーを務めた)「地獄」つながり?

★ ★ ★
痴漢海水浴 ビキニ泥棒(渡邊元嗣)

往診に来た医者が若後家の胸を触診して「うーむ、この辺にしこりが…」「先生、それは乳首です!」・・・バカバカしくて面白いのが渡邊元嗣の一大特徴だが、脚本だけを見るならばバカバカしくて頭に来る新田栄と同じようなもんなのだ。つまりは演出の弾み加減1つ。とうぜん渡邊元嗣にだって当たり外れはある。今回は…まあまあ当たりの方か。 ● 亡き夫の遺した海辺の民宿を女手1つで切り盛りする若女将と、冴えない中年の町医者のラブストーリー。いい歳してメルヘンチックな元嗣節は今回なかなか好調だが、ラストで情感を盛り上げるためには、若女将が町医者に好感を抱くにいたる描写がもう1エピソード、2エピソード不足でしょ(脚本は山崎浩治+波路遥) ● 若女将には、ロリで笑顔が可愛くって胸が小さくてエッチな…まるで渡邊元嗣のヒロインになるべくして生まれた来たような西藤尚。本作でも、その魅力を余すところなく発揮している。町医者に、名前の通り生臭坊主のような風体の十日町秀悦。健闘してはいるが、まだトーンが不自然。つい蛍雪次朗ならと考えてしまう。東京から遊びに来た若女将の妹に、黒田詩織。じつはビリングトップはこの人で、渡邊元嗣独特の歯の浮くような気恥ずかしい台詞も自然にこなしていて好感が持てる(ちょっとうそ乳くさいけどね) ● あと、重箱の隅だが「七回忌」は「ななかいき」じゃなくて「しちかいき」だぞ。

★ ★
女囚房 獣のように激しく(勝利一)

艶笑コメディに実力を発揮してきた国見岳志脚本+勝利一監督コンビが初めて(?)挑んだシリアス・ドラマ。結論から言えば大失敗である。艶笑コメディでは大した問題とならないリアリティの欠如がドラマを台無しにしている。いや、ピンク映画に予算がないのは おれだって承知してるさ。だから、美術セットがチャチいとか、刑務所がオフィスビルにしか見えないとか、囚人が3人しか居ないとか、そーゆー事にはこの際、目をつむろうじゃないか。だが、どうしても目をつむれないのは、面会に来た妹が獄中の姉に隠した3億円のありかを堂々と面会室で問いただすような無神経さだ。リアリティに目を向ける気がないのならシリアス・ドラマなど撮るべきではない。いっその事、いつもの調子で獄中艶笑コメディでも目指せば良かったのだ。鈴木則文を見よ。 ● 主演は、にっかつ終焉時の「ラスト・キャパレー」(金子修介1988)以来の かとうみゆき。久々のスクリーン復帰ではあるのだが、この人、もともとカワイ子ちゃん路線(←死語)だったので、おばさんになって帰ってきてくれても嬉しくない。アバズレの妹に里見瑤子。アバズレである事を示すために毒々しい色の口紅を塗って、真っ赤なボディコンとかエルメスのスカーフ柄のミニワンピなどを着て出てくるのだが、こーゆーのって今どき極妻な方々か大阪人しか着ないのでは?

★ ★
三十路女医 白衣欲情(新田栄)

またもや新田栄だあ。今回は脚本がいつもの田吾作・岡輝男ではなく五代暁子。岡輝男の時代錯誤の台詞と受け入れがたいストーリーよりは、五代暁子の陳腐な台詞と有って無きが如きストーリーの方がまだマシか(って、究極の選択やな) 今回ヒロインの新田利恵が、いつもの容貌怪異な人工美女でないのも幸いした(台詞、棒読みだけど)

★ ★ ★
人妻同窓会 密漁乱行(下元哲)

ドラマを描こうなんて中途半端な野望や、リアリティのあるセリフを書こうなんて些末事をすっぱり捨てた純粋なポルノグラフィ。カメラマンも兼任する下元哲はいかにいやらしく撮るかという一点に心血を注ぐ。同窓生の人妻3人が互いの体験を告白しあうというよくある形式。間宮ユイの妄想自慰→佐々木基子vs風間今日子のレズ→しのざきさとみvs日比野達郎の白衣SM→佐々木vsしのざきvs日比野の3P→間宮の童貞食い…と、ほぼ濡れ場だけで構成されたエロ度 ★ ★ ★ ★ ★ の一品。佐々木基子、しのざきさとみ、風間今日子のエッチさは言わずもがな。ヒロインの間宮ユイも(美人ではないが)男好きのする雰囲気がエッチでよろしい。


義母と娘 羞恥くらべ(新田栄)

父娘2人暮らしの家庭に後妻がやって来る。その女には、かつて産んだ子供を男の実家に取り上げられた悲しみのあまり、公園から他人の子供を何日か連れまわした過去があった…って、それ誘拐じゃねえか! で、その時、子供をこっそり親元へ返すために雇った探偵に強請られてる“悲劇のヒロイン”という、思いっきり無理のある設定。しかもこの女、「アンタの所為でわたしたちの家庭はメチャクチャよ」と怒る義娘に向かって、「わたしはかつて取り返しのつかない事をしたわ。でも人生にリセット・ボタンはないのよ。だから現時点での打開策を考えましょう」などとしゃあしゃあと説教するのである<その前に罪を償えよ。おまけにこの娘のほうも義母をかばって「あの女はたしかに罪を犯した。でもアンタ(恐喝者)にあの女の気持ちがわかる?…子を想う親の気持ちが!」ときた<誘拐された子供の親の気持ちはどーなんだよ。ムチャクチャである。この恐喝者にどう対処するのかと思ってたら、ラストで「あの男、警察に捕まったんですってね」「他にもいろいろ悪いことしてたみたいだから」ちゃんちゃん…って、それで終いかい! 岡輝男という脚本家はもしかしたら天才かもしれん(違うと思うが) 義母に、アエぐ顔がただのしかめ面に見える浅野京子。娘に水原かなえ、父に杉本まこと、恐喝者にかわさきひろゆき。

★ ★ ★ ★
鍵穴 和服妻飼育覗き(深町章)

江戸川乱歩の短篇「人畜」より…てのはだけど、そうした趣(おもむき)の時代もの猟奇ミステリー。 ● 昭和26年の秋。猟奇的かつ扇情的な小説で人気のあった探偵作家がプツリと消息を絶って2年。親交のあった別の人気作家が山奥にある探偵作家の自宅を訪ねてくる。迎えたのは探偵作家の若い妻。かつて新橋のカフェエで女給をしていたという女だ。不意の来客は一通の手紙を取り出す。じつはこの2人の作家は密かに自分の私生活を記した書簡を遣り取りしており、その手紙は探偵作家が失踪する直前に出されたものだった…。 ● 美術費のかかる時代ものが毛嫌いされる1999年の日本映画界にあって、低予算のピンク映画でそれに挑戦するのは大変な冒険と言っていい。それを最小限の美術・小道具・SEで必要十分な効果をあげたスタッフの力量は賞賛に値する。なかでも経験豊かな清水正二のカメラワークとライティングが映画のグレードを一回りも二回りも高めている。脚本は福俵満。この人は新東宝の社員プロデューサーのはずで、国映製作である本篇は「プロの脚本家としての真価」を問われる一作となるが、作家の残した手紙の乱歩文体モノローグなど大健闘。もちろん模倣ではあるのだが、オリジナル脚本でここまで乱歩の猟奇を、その異常な、けれど激しい愛の世界を描ければ文句はない。そして「柳生一族の陰謀」の萬屋錦之助をほうふつさせるラストの大台詞! 虚構のエンタテインメントを満喫できる、ベテラン深町章の見事な傑作。 ● ヒロインの若妻に葉月螢。現在のピンク映画界ではベストな選択だとは思うが、和服姿が女中か仲居に見えてしまうのはサトウトシキ作品の弊害か? 探偵作家に杉本まこと。これは年齢的に野上正義か港雄一の方が良かったかも。探偵役となる人気作家に かわさきひろゆき。「悪魔の手毬歌」の若山富三郎ばりの好演である。謎めいた女中に里見瑤子、濡れ場要員として女郎役に水原かなえ。


覗かれた不倫妻 主人の目の前で…(榎本敏郎)

おそらく井土紀州のオリジナル脚本は、佐藤寿保が手がけるようなサイコ・サスペンスとして書かれていると思うのだが、榎本敏郎の無能な演出がすべてを台無しにしている。井土紀州よ、頼むから誰か他の監督と組んでくれ。 ● 榎本敏郎は「喪服姉妹 タップリ濡らして」に続いて、またもピンク映画館の観客にいちばん嫌われる類の映画を撮ってしまった。冒頭に本筋とまったく関係のない濡れ場が申し訳程度にあって、その後、何も起こらないまま30分が経過、ようやくヒロインが裸になったと思ったら主人公が不能でSEXなし。2人がやっと結ばれるのは開始45分もしてからで、ちゃんとした絡みはこれ一度きり。場外馬券目当てのオッサンが続々と途中退場するのも、むべなるかな。 ● 「視線恐怖症でノイローゼになった男が、精神科医に過去の出来事を語る」という、サトウトシキ&小林政広の「迷い猫」と同様の構成。もちろん男の過去の解明がサスペンスとなるわけだが、ドラマを盛り上げる能力のない監督なので、ただただ退屈なだけ。精神科医の心理分析に対して、主人公が「…違うんですよ。ぼくはコトバを捜してるわけじゃない。理屈じゃぼくは救われない」と呟くが、救われないのは観客の方である。 ● カメラは斉藤幸一。主人公の心理状態を象徴したかのような極端なグリーン・トーンの画面でほぼ全篇をおし通す。初っ端の新東宝ロゴからして赤味が抜けているので、現像段階で加工したのかも。ヒロインの満たされぬ人妻に沢田夏子。久々の主演は喜ばしいが、出演時間が少なくて残念。せっかくのお久し振り岸加奈子は、主人公の回想に出てくる死んだ妻の役で、絡みのみで台詞なし(しかもビデオ撮り) 精神科医役の伊藤清美は台詞だけで脱ぎはなし。さとう樹菜子は本筋と関係なく、脇役の川瀬陽太と2度絡むだけ。ピンク映画の貴重な人材の無駄遣いである。 ● それと、これは観た人でないと通じないが、川の土手で2人が会話するシーンで、沢田夏子が「来週も来ていい?」と訊いたあとの伊藤猛のリアクションを写してくれないと、その後の展開が解釈不能だ。それともオフで受けの台詞が入ってるのかな?…新宿国際名画座は再生ヴォリームが極小なので、小さい声の台詞は聞こえんのよ。

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ねっちり女将の乱れ帯(小林悟)

「フランス留学帰りの旅館の若女将と、競輪選手を目指す兄。血の繋がらぬ兄妹の道ならぬ恋」って話だが、里見瑤子と坂入正三じゃ親子にしか見えんぞ。てゆーか、そもそも脚本が破綻してるので空々しいドラマにしかならない(個々の場面の演出は丁寧なのだが) あと、里見瑤子ファンとしては言い難い事だけど、女将が入水自殺を試みるクライマックスで滝に入っていく時の、後姿の裸身があんまり美しくないんだよなあ、この人(いや、演技は上手いんだけどさ)

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新妻痴漢 たまらず求めて(片山圭太)

「万引き現場を写真に撮られた若妻が、姿なき脅迫者にいやらしい行いを強制される」というお話。いちおうサスペンスものだが「姿なき脅迫者の正体は?」とかはどうでもよくて「若妻が街頭での露出を強要されて恥ずかしがる様」や「だんだんと被虐の快感に目覚めて変わっていく様子」などを見せるのが眼目の、ポルノ映画である。監督の片山圭太はこれが2作目。いやらしい映画を撮るんだという意欲はひしひしと伝わってくるし、脅迫者の(前半は電話の声だけの演技となる)飯島大介も素晴らしいのだが、いかんせん主役の麻丘珠里がなあ。いや、とても可愛い女優さんだし、すごく頑張ってはいるんだが、「初々しい新妻から、妖艶なM女へ」ってのはちょっと荷が重かった。

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ぐしょ濡れ人妻教師 制服で抱いて(今岡信治)

脚本:今岡信治 撮影:鈴木一博 諏訪光代|伊藤猛|鈴木敦子|佐藤幹雄 製作:国映
トントントントン。妻が台所でキャベツを刻んでいる。夫は居間で朝飯。トントントントン。平和な朝の風景だ。トントント…「ねえ、お父さん」「ん?」「手首 切りたくなっちゃったんだけど」・・・いきなりオープニングからこれだからなあ。ピンク映画館の客は思いっきりヒイてたぞ。 ● 情緒不安定な人妻教師と それを支える夫の哀切なラブストーリー。脚本が素晴らしい。篠崎誠の「おかえり」を超える傑作だと思うが、演出がちと重い。これほど息苦しくせずに、もう少し軽く演出した方が効果的で「面白うてやがて哀しき」のラストも活きると思うんだがなあ。 ● 人妻教師に諏訪光代。「愛欲みだれ妻」に続いて地味で内気で壊れてしまいそうなキャラを凄演。今後 普通の役が出来るのかしら?と心配になるほど。のそのそ もそもそ とした夫に伊藤猛。1人で笑かしてくれる名演。完璧でしょう。これに、人妻教師に横恋慕する女子高生と、そのBFが絡んで、登場人物は4人のみ。もちろん今岡信治の映画なので役者はたえず ゴロゴロしたり 揉みあったり 女装したり オンブしたり 押入れに入ったりする。 ● あと どーでもいいけど、子供のいない夫婦で妻が夫を「お父さん」と呼ぶものかね?

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痴漢タクシー エクスタシードライバー(新里猛作)

「タクシー・ドライバー」のロバート・デ・ニーロになれなかった男と、「マンハッタン」のダイアン・キートンになれなかった女の話。高橋伴明あたりが撮りそうな「ちょっといい話」ってやつだがだいぶ塩加減を間違えてる。「お客さん、タクシーの運転手は お客さんを運ぶだけじゃなくお客さんの人生も運んでるんですよ」だと。けっ!なに言ってんだか。 ● そもそも主人公が魅力的じゃないのだ。「商社勤めでNY転勤目前にリストラ、彼女に捨てられ、嫌々タクシー運転手に」という設定で「このおれがなんで運ちゃん風情に」というプライドの高い嫌な奴。善人ぶって女子高生を助けたりするが、別れ際に名刺を渡すなど下心ミエミエ。彼女の部屋を訪ねて玄関に男物の靴があってアエギ声まで聞こえてるのに、わざわざベッドルームに入っていき、男の上で腰を振る彼女に平然と見つめ返され、かえって惨めになる。こんな男がどうなろうと知ったこっちゃないね。 ● 田中要次は適役は適役だが…。男を捨てる彼女に佐倉萌。こちらも役としては嫌な女なんだが許せてしまうのは佐倉萌だから?(ばく) 不良女子高生に白痴顔の奈賀毬子(←昔いた女優に似てると思うんだが誰だろう?)

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女子大生 朝まで抱いて(杉浦昭嘉)

ルームメイトの女子大生2人の反目と友情。「たまたま忍び込んできた空巣狙いを、互いに相手のカレシだと思いこんで“寝盗って”しまう」という他愛ない艶笑コメディ。主演のさとう樹菜子は本物の女子大生で、これがピンク映画初出演。アテレコに固さが残るがまずは及第点。もう片方の女の子を演じた七月もみじ が一見 小泉今日子でじつは土屋久美子というキャラで素晴らしい存在感を示す。監督・脚本・音楽はこれが2作目の新人・杉浦昭嘉。野心の欠如が心配になるほどの手慣れた手綱さばき(でも、音楽はプロに任せた方がいいと思うぞ) 早稲田大学の構内でロケしていて協力クレジットに早稲田映研の名も見えるから映研OBか。

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叔父と姪 ふしだらな欲情(荒木太郎)

田舎で農業を営む やもめ暮らしの叔父と、叔父の家に居候して大学のレポートを作っている姪。亡き妻のほうの姪っ子なので血は繋がってないのだが、まるで親子のように自然に暮らしている。だが、叔父に見合い話が持ちこまれてから、2人の関係に波風が立つ…。 ● ポルノ的誇張とは一切 無縁の愛すべき掌篇。ふつうのポルノ映画だと「叔父と姪がまず一発ヤッてから、どう話を進めるか」なのだが、吉行由美 脚本は最後までヤラずに叔父と姪それぞれの静かな けれど無視することの出来ない心の揺れを描く。荒木太郎は(きっちりと絡みも処理した上で)繊細な演出でそれに応える。そして何より、この作品を素晴らしいものにしているのは、ベテラン・カメラマン清水正二の、さまざまな夏の光・風・空気をとらえる確かな技術と、真夏に初雪を降らしてしまう引出しの多さである。 ● 叔父に田嶋謙一。朴訥とした、女心に鈍感な中年男を好演。姪になかなか美乳の山崎瞳(ちょっと岩崎宏美はいってる?) 少し表情に乏しいが、台詞まわしは達者なもの。叔父の見合い相手に佐々木基子。普段はいかにもポルノポルノした役ばかりまわってくる彼女だが、ここではごく普通の中年女を自然に演じて地力を見せた。姪と付き合う役場の青年を荒木太郎が自演している。

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不倫女医の舌技カルテ(池島ゆたか)

ファーストシーンの一人称カメラと不協和音の音楽が「ヒッチコックですよ」と親切に告げてくれるのだが、肝心の物語に入ってからがどうもいけない。やたらと思わせぶりな人物紹介に時間を取られて「この物語において“何が”サスペンスを構成するのか」がなかなか見えてこないのだ。そりゃ精神科クリニックの患者に佐川一政(本人)がいて「ほら、あの、パリの…」と自己紹介したり、「仁科明子さんて美味しそうですねえ」などと真情を吐露したりするのは笑えるが、それはドラマの本筋とは関係ない事。エキストラの診察シーンを延々写している時間があったら、もっとヒロインに迫る姿なき脅威をこそ描写すべきだろう。おそらく作者はさまざまな精神病理を抱えた患者を描写することで「誰が加害者か?」というサスペンスを演出しようとしているのだろうが、その前にまず「ヒロインが被害者である」事を明示すべきではないのか。つまり、ヒロインがそこにあるはずのない刃物で指を切ったりとか、ハイヒールに精液が入ってたりとか、その手の描写が必要ではないのか。ま、全般としては五代暁子 脚本/池島ゆたか演出は堅調で、最後まで飽くことなく楽しめる。 ● 人の痛みのわからないスーパークールな精神科医に佐倉萌。始めから彼女に当て書きしたというだけあってピッタリの役どころ。患者の1人である女子高生に新人の河村栞。クリッとした瞳が可愛くて、演技の勘もなかなかのもの。ただ、どうもアングラ小劇団の出身らしく、女子高生にしちゃあ、声が張り過ぎ。今にもおどろおどろしい声で「さあ、やっておしまい! 魔王ルシフェルの命によりお前の魂を頂くよ」とか言い出しそうでヒヤヒヤした(うそ)

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義母覗き 爪先に舌絡ませて(国沢実)

脚本:樫原辰郎 撮影:小山田勝治 音楽:黒澤祐一郎
佐々木麻由子|平川ナオヒ|村山竜平|さとう樹菜子|夢乃(=桜居加奈)
♪わたしが貴方に惚れたのは ちょうど十九の春でした いまさら離縁というならば もとの十九にしておくれ♪(JASRAC未申請) 静かに口ずさまれる戦前の流行歌「十九の春」とともに幕を開けるクラシックなドラマ。まるで西村昭五郎が撮った宮下順子の映画を観ているような既視感におそわれる一篇。 ● ヒロインの佐々木麻由子が素晴らしい。AV以前の、平凡パンチのグラビアを飾っていそうなマスクと(心なしかメイクも1970年代調?)、しっとりとした雰囲気を持った女優である。早稲田ならぬワダヤマ大学志望で一浪中の、オナニーしてパンツ下げたまま机で寝ちゃったりする、情けない義理の息子イクオに平川ナオヒ。今まで特異な名前だけの印象だったが、今回はじめて、しっかりと顔を憶えた。イクオの同級生のガールフレンドに夢乃(=桜居加奈)。さっさと早稲田に合格して、ちゃっかり大学生のボーイフレンドを作っちゃったりしてるんだけど、でもほんとはイクオの事が好き、という女の子をじつに自然に、チャーミングに演じている。さとう樹菜子嬢は今回、濡れ場要員。ご本人も「あたしたち会ってヤルだけ?」と劇中の台詞で愚痴をこぼしてるのだが、なになに、ベッドシーンで顔が自然にぽおっと紅潮するエロティックな体質は、ピンク映画女優として得がたい財産である。 ● 樫原辰郎の脚本が素晴らしい。「新しく来た後妻と義理の息子との禁断の関係」という、それこそ過去に何百本と作られた題材を、奇をてらうことなくじっくりと描き、エモーショナルなリアリティを獲得している。そして「えっ、ほんとに同一人物?」というほどガラッとタッチを変えた丁寧な国沢実 演出にも好感が持てる。小山田勝治の、カメラの存在を意識させぬ過不足ない自然なカメラワーク。黒澤祐一郎が静かに奏でるピアノBGM。たしかに此処には新しいもの/刺激的なものは何もないが、変哲のない素材をじっくりと仕上げて、見応えのあるドラマに仕上げたスタッフ&キャストの力量は賞賛に値する。

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出張和服妻 ノーパン白襦袢(新田栄)

出張着付けサービスの人妻の話で、商売的には「和服のセックス」が売り物ということになるんだろうが、なにせ新田栄&岡輝男(脚本)の時代を超越した田吾作コンビだからなあ。おまけにピンク映画の命とも言うべきヒロインがピーター(池畑慎之介)そっくりのガイコツ顔。いや、正確に言えばピーターの方がずっと美人とくる。「黒い下着のスチュワーデス 感じすぎる乳房」のディバイン顔ヒロインといい、新田栄ってなんか女の好みが特殊? 濡れ場要員として出ている佐倉萌の方を主役にしていれば、まだ見られる映画になったろうに。

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喪服未亡人 いやらしいわき毛(木村純)

日常の中の官能をじっくりと描いた佳作。「夏の暑い盛り、夫を亡くして1年になる人妻が喪服を脱ぎ捨てるまで」のお話。新人監督だけあって(脚本も監督自身)ファーストカットから画面全体に良い意味での気負いがみなぎっている。蛇口からしたたる水滴、夏の夕にとどろく雷鳴、そして(新田栄が一顧だにしなかった)衣擦れの音…と、SEにいたるまで繊細な設計がほどこされた丁寧な演出。撮影は鷹野聖一郎。構図の切り取り方に独自のセンスが感じられる。わざとピントを後景におくったショットが印象的。 ● やはり妻を亡くした知人役の千葉誠樹が、永島敏行タイプの寡黙で、ザクッと女をヤッてしまう男を好演。惜しむらくはヒロインの広瀬和菜が(演技はそれなりだが)童顔で、とても「喪服未亡人」の柄ではないこと。クライマックスは、この2人がついに互いの体をむさぼりあう堂々10分にもおよぶ濡れ場で、ここでヒロインの情感が一気に燃え上がって、画面から「匂いたつような官能」が感じられなければいけないのだが、いまひとつ色っぽくないのだな この女優さん。残念。 ● あと妄想シーンにわざわざ赤いライトとかあてる必要はないと思うぞ。敢闘賞。

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驚異!勃起促進剤(北沢幸雄)

もう、なんというか…、ミもフタもない題名であるな。その題名どおり「とある開業医がバイアグラでの治癒例を語る」という構成のオムニバス。さしものドラマ派・北沢幸雄も1エピソード10分そこそこの中では、まともなドラマを生み出せずお手上げ。かろうじて「純な若い恋人たち」を描いた第3話に北沢幸雄タッチが垣間みえる。このエピソードでヒロインを演じた東城えみがちょっとロシア入ってる感じでなかなか良い(名前からすると踊り子さん?) ● この作品、実際の個人医院にロケしたようで(たぶん)本物のバイアグラが小道具として使われている。商標権を考慮してバイアグラの「ア」の字の「ノ」の部分をナイフで削りとり、縦棒を上に書き足して「バイグラ」ってなってるのが(ちょっと)笑える。きっと本物のパッケージを使えるのが嬉しかったんだろうなあ^^)

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(秘)性犯罪 女銀行員・集団レイプ(坂本太)

そりゃ裸さえ写しときゃ良しとする無気力よりは、本格志向のドラマに情熱を燃やすほうが何倍か好ましいさ。だが、下手の横好きってのもなあ…。 ● 今どき「孤児院出身の男女の命がけの恋」+「銀行強盗→人質篭城→集団レイプ」って設定からしてスゴいんだが、台詞がまた「どん底から這い上がるため金が欲しかった。だが昔のダチに騙されて、気がつきゃ借金地獄にはまってた」だぜ。「もう おれに関わるな。せっかく地獄から抜け出したのに、また地獄へ逆戻りだぞ」と来て「今だって…今だって地獄だよ」と受けるんだぜ。おまけに「あなたが少年院に送られた日から、わたし、自分の心の時計を止めたの」だって。もう、おまえは石井隆か!って感じである。…いやいや「天使のはらわた」は大好きなのだよ。何しろおれは日本映画で1番好きなラブストーリーが「浮雲」という、どうしようもなく暗い人間だからな。だが、こういうアナクロな宿命のドラマを今の時代に成立させるのには、それなりの技術と才能が必要なのだ。本作程度の、稚拙な脚本と愚直な演出とVシネ クラスの演技力では、20年も前に賞味期限切れの昼メロにしか なりゃせんのだ。 ● 映画の内容以上に悲惨なのは主演の平沙織で、これだけ華がなくて貧乏臭い女優ってのも珍しい。元B級アイドルだかレースクイーンだかで、テレビ(ただし深夜)に出てた人のはずだが、そこらの新人ピンク女優より地味ってのは、この商売 向いてないのでは? ● ちなみに本作の有馬仟也という脚本家、前作の「発禁本 緊縛肉襦袢」も銀行副頭取の妻と娘をレイプする話だった。なにか銀行に対して個人的な怨みでもあるのか?(倒産させられた旧にっかつの社員だったりして^^)

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したがる兄嫁2 淫らな戯れ(上野俊哉)

脚本:小林政広 撮影:小西泰正 本多菊雄|江端英久|葉月螢|佐々木ユメカ|里見瑤子
昨年の「白衣と人妻 したがる兄嫁」の続篇。前作のラストで葉月螢がいみじくも言ったバカ兄弟バカ兄弟ぶりが全篇にフィーチャーされる(ま、いわゆる愛すべきバカというやつだが) ● 主要登場人物は3人。長野の在で籠織り職人をしている無愛想な兄(本多菊雄)とその嫁(葉月螢)、そして東京で彼女に振られて舞い戻った情けない弟(江端英久)。母親の葬式の日の夜、一晩のお話。嫁はバカ兄弟に愛想を尽かして家出、山間の温泉宿で仲居のアルバイト中。母親に死なれ兄嫁にも家出され人恋しくなったバカ兄弟は、それぞれ夜の田舎町に女漁りに出かける。…で、「戦い終わって夜が明けて」というほろ苦い味わいのウェルメイド・コメディ。 ● バカ兄弟(弟)を演じる江端英久が出色。デカいメガネをかけて冴えない風采で、小心者で小ズルくて、そのくせスケベで興奮すると声が裏がえったりする青年の役を、じつに生き生きと演じている。その分、バカ兄弟(兄)の本多菊雄は、前作でコメディになりにくいキャラに設定されてしまったので形勢不利か。葉月螢、佐々木ユメカのご両人は安心して見ていられる。そして…里見瑤子!ちょっと暗い、不幸せな、だけど無理やり自分を幸せだと思いこもうとしている女の子を演らせたら彼女の独壇場である。 ● これ、もう一本ぐらい作れるよな。今度は東京に戻った弟の元へ兄夫婦が上京してくるって設定でさ。「嫁の高校時代のクラス会に亭主が付いて来る」ってのでどうだ?

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とろける新妻 絶倫義父の下半身(深町章)

「付き合って半年のカレシが家族を紹介するのを渋ってる。あたしの事はアソビだったのかと心配になって無理やりカレシの家に押しかけたら、なんとカレシの家族は近親相姦ヤリまくり一家で、あたしも挨拶がわりにカレシの父さんにヤラレてしまった。ショックで自分の部屋に逃げ戻ったあたしだけれど、カレシの父さんの絶倫ぶりが忘れられない」…ってムチャクチャな話である。ところが御大・深町章は自ら脚本を書いたこの話を、お得意の艶笑コメディとしてではなく、ヒロインのOLの一人語りで丁寧に叙情的(!)に描ききってしまうのである。ラストのブラックなヒネリなどは短編小説の味わい。御大の懐の深さをあらためて認識させる一作。清水正二の、いつもとトーンを変えた撮影も印象的。 ● ヒロインの荒井まどかは台詞まわしなど まだ たどたどしいが、整って逆に平凡な顔立ちが役柄に合っていた。カレシの義母に村上ゆう。そしてタイトルロールの“絶倫義父”は、他には考えられないハマり役の久保新二。

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和服夫人の身悶え ソフトSM編(山崎邦紀)

油断してはいけない。一見、何の変哲もない新聞配達や八百屋のおっちゃんに見えるあなたの隣人は、もしかしたら恐ろしい俳句結社のメンバーかもしれないのだから! 突如として腰に携帯した筆と短冊を取り出してはスラスラスラと理解不能の文言をしたためるようなら要注意である。 ● 浜野佐知の座付き作者でもある山崎邦紀の新作は、「嬉しいだの悲しいだのといったドラマなぞクダらん。ファルス(笑劇)こそ芸術」と俳句結社の主宰の台詞を借りて宣言している如く、リアリティを無視した まさしく滑稽な茶番劇である。SMセックスに興じつつ短歌を詠むというコミカルなシーンの合間に、主宰の弟であるサイコ青年のサスペンス描写が挿入される。この青年は「兄夫婦が偽物にすり替わっている」と思いこみ、ナイフを手に隣室から覗いている。あまりに異化効果のありすぎる構成に頭をかしげていると最後は青年が主宰を刺し殺してジ・エンド。理解に苦しむ…というか観客の理解をはなから拒絶してる。わからん。 ● 主宰の妻に今井恭子。初見だがまったく魅力なし。その分、ベテランの村上ゆうと風間今日子が好サポートしているが、この映画に限っては男優の出来が素晴らしい。ニコリともせず前衛的な短歌を詠む主宰を演じる やまきよ が笑わせるし、(役者名が特定できないが)新聞配達&八百屋&サイコ青年ともそれぞれに独特の存在感で女優陣より目立ってた。 ● おれは浜野佐知の“一般映画”「尾崎翠を探して 第七官界彷徨」を未見なのだが、ラストの描写などから類推するにどうもこの映画は、師匠(?)の執念の一作を茶化しているようだ。おいおい、そんなことして人間関係、大丈夫なのか?>山崎邦紀。

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母娘ONANIE いんらん大狂艶(小川欽也)

オナニーで同時に絶頂を迎えたため身体が入れ替わってしまった母娘の物語。テレビで浅野温子と野村佑香がやっていたコメディ・ドラマ「チェンジ!」のピンク映画版・・・というパッケージからどうしたらこれほどつまらない話が考えつくのかというほど工夫のかけらもない脚本(池袋高介) いったいいつの時代の女子高生だよ!というほど古臭い言葉づかい。撮影時には台本が出来てなかったのか?というほど口パクの合ってないアフレコ。頭の中で考えたことをすべて口に出す登場人物たち。たかだか60分の映画で“チェンジ”するまでに30分も費やす理解不能の構成。星一つじゃないのは主演の伊藤清美に免じて、だ。 ● ま、つまりあれだ。たかが300万円の映画かもしれないが、そこから3億の映画に匹敵するシャシンを生み出す活動屋もいれば、この小川欽也のように60分の間テキトーに裸が写ってればよしとするクズもいるってことだ。だが生憎とおれはそんなクズに払う木戸銭は持ち合わせてない。


素人ONANIE告白(小川欽也)

うぎゃあ。20年も前の旧作かと思ったら、これ1999年の新作じゃないか。まだこんな事やってるのか>小川欽也。最低限のリアリティすら無視した台詞(脚本:水谷一二三) ビデオ撮りのアメリカン・ポルノ並に芯のないルーズな構成。それでいてエロですらないのだ。フィルム資源とスタッフ・キャストの才能の無駄遣いである。小川欽也よ、頼むから後進に道を譲って引退してくれ。

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若菜瀬奈 恥じらいの性(柴原光)

夕陽。エンニオ・モリコーネ。テンガロン・ハットにウェスタン・ブーツ。1人の男が、捨てたはずの町へ還ってきた。男の名は玉造五郎(速水健二)。早撃ちならぬ“ハメ撮り”の帝王として名を馳せるAV界の一匹狼。新興AVメーカー、サファイア映像の社長(清水大敬)にスカウトされたのである。五郎の心には苦い想いがあった。なぜならこの町、高円寺こそ、かつての師であるピンク映画界の巨匠・亀田満寿夫(港雄一)が自宅兼スタジオを構える町だったからだ。心臓病の発作に苦しみながらも、800本目の記念作となる次回作として亀田の胸にあるのは、自分を…ピンク映画を捨ててアダルト・ビデオへと転進したかつての助監督、五郎の手になる1本の脚本だった…。 ● 五郎が常に携帯する最後まで決して開けられる事のないギターケースからも明らかなように、ストーリーは小林旭が演っていたような日活アクションからの借用である。「旧来の仁義を重んじるヤクザ組織」と「新興の金儲け主義の暴力団」の対立が、ここでは「ドラマ性を重んじるピンク映画」と「エロなら何でもありのアダルト・ビデオ」の対立に置きかえられている。もっとも誰がみても明らかなようにこの勝負はとっくについている(もちろんピンク映画が負けたのだ) 本作にしても脚本の沢木毅彦はどちらかといえばAV界の人間だし、主演の速水健二はご存知「洗濯屋ケンちゃん」の男優。なによりタイトルロールの若菜瀬奈は有名AV女優だ。つまりこの映画は、渡辺元嗣がよくやるような「ピンク映画の現場からの檄」というよりは「ピンク映画界を去った人間&ピンク映画が本業ではない人間が、いまだにピンク映画などというものと格闘している酔狂な人たちに送ったセンチメンタルなエール」という色合いが強いのだ。いわば「現役のチャンピオンが年老いた元チャンプにみせるいたわり」のようなものだな。最後まで面白く観つつもいまひとつ割りきれぬ思いのする所以である。 ● ピンク映画の若い助監督が五郎に「あんたの本番ハメ撮りビデオじゃセンズリかけないんだよ。…愛がないから!」と叫ぶが、センズリに愛は要らない(てゆーか邪魔だ)と思うぞ。 ● 若菜瀬奈は中原早苗もしくは松原智恵子の役回りを神妙にこなしている。“タコ社長”ことピンク映画館の支配人に扮した神戸顕一が好演。ベテラン男優役に螢雪次朗。

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盗撮痴女 覗いて濡らす(橋口卓明)

技術的にはしっかりしているのだが、肝心の脚本・演出が自主映画レベル。渡辺元嗣や荒木太郎の作風でアマチュアっぽいのならご愛嬌だが、この橋口卓明のようにシリアスなドラマを志向していて、しかも昨日今日の新人でもないのにここまで下手ってのは、そりゃプロの映画監督に向いてないって事じゃねえのか? せっかく佐倉萌、夢乃(桜居加奈)といった達者な女優をキャスティングしておきながら、その魅力もまったく活かされず。


制服淫ら天使 吸い尽す(関根和美)

「ターミネーター2」のパロディ・・・と簡単に言ってしまっては「ターミネーター2」にもパロディにも失礼であろう映画以前の代物。照明の影がクッキリと壁に写る稚拙な室内撮影。顔が画面から切れようがお構いなしの投げやりな構図。所作の演技指導をまったくしていないとしか思えない棒立ち演技。ひとつも笑えぬサムいギャグの波状攻撃。思いつきだけで撮り始めてフィルムを使い切ったから撮影終了したに違いない尻切れトンボな脚本。まるで学生が内輪受けだけを狙って作った学園祭で上映される自主映画のような・・・と言っては自主映画に失礼なほどの低レベルである。しかも恐ろしいことに本作には「ターミネーター1」をパロった「未来性紀2050 吸い尽す女」という前篇すらあるらしいのだ(幸いにしておれは未見) 他の“映画”と同列に評価しては他の映画に失礼なので星は付けない。

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美容師三姉妹 乱れ髪くねり腰(小林悟)

こういうのをピンク映画の王道というのだろうな。亡き父の跡をついで下町で床屋さんを営むパイパン三姉妹を描いた艶笑コメディ。まるで「東芝日曜劇場」のような、どーとゆーことのない話だが、最後まで面白く観られた。おれは小林悟というベテラン監督にあまり良い印象がないのだが、今回は好感を持った。撮影が↑の「制服淫ら天使 吸い尽す」と同じ柳田友貴で、やはり平気で顔が画面から切れたりする無神経さが気になったが、室内照明の酷さはそれほどでもなかった。なんだろう、照明の違いなのだろうか? 役者陣では三女役の風間今日子がストーリー面でも演技面でも、そして肉体面でも映画を引っ張っている。次女役の江本友紀が勘の良い演技を見せていて拾いもの。

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愛欲温泉 美肌のぬめり(サトウトシキ)

製作:国映 脚本:小林政広 撮影:広中康人 音楽:山田勲生
葉月螢|沢田夏子|佐々木ユメカ|本多菊雄|川瀬陽太|野上正義|飯島大介
大傑作。いますぐ映画館に走れ。いそいで付け加えておくと〈ピンク映画の傑作〉ではない。〈本年度 日本映画 屈指の傑作〉だ。脚本、演出、撮影、照明、俳優のアンサンブル…どれひとつとっても今の日本映画で望みうる最高のレベル。誤解を恐れずにいえば、この映画がピンク映画のレッテルを貼られ、ピンク映画のポスターを貼られて、たまたま入った常連客以外には気づかれもせず、スピーカーの音より旧型のエアコンの風音のほうがデカいような場末のコヤでひっそりと上映されるだけ、というのではあまりにも勿体ない。せめて新宿シネマ・カリテか中野武蔵野ホールあたりでレイトショーができないものか>新東宝&国映&武蔵野興業。 ● 今年に入ってすでに3本目、“まるでピンク映画のような”ペースで量産を続けるサトウトシキ=小林政広コンビの最新作は、コメディ・タッチの団地妻シリーズではなく、昨年の「新宿♀日記 迷い猫」タイプの実録犯罪もの。いつもは搦め手勝負の多い小林政広脚本は「ひなびた温泉地にひとりの若い女が仲居として雇われる。たまたま泊まりに来ていた刑事は、女の顔にどこか見覚えがあるような気がする…」という陳腐なストーリーをじっくり見せるが、ところどころに仕掛けた独特のツイストが効果的。長野県の角間温泉に全篇ロケした広中康人のカメラも素晴らしい。サトウトシキ演出はいつもの調子で淡々とドラマを進めながら、池田敏春の「人魚伝説」を想わせる凄惨なラストへと静かに着地する。葉月螢 熱唱によるオリジナル主題歌(小林政広作詞/山田勲生作曲。しかも演歌!)という飛び道具もお見事。 ● サトウトシキ作品のヒロインとしてすっかり定着した葉月螢は、最初に見たときは台詞まわしの一本調子な大根女優だなあと思ったものだが、そのまま達者になることなく凄みすら漂わせるスゴい女優になってしまった。悪役たる刑事を演じる飯島大介が出色。脇を固める“サトウ組”の役者の面々も黄金期のプログラム・ピクチャーを想起させる息の合い方で、まさに映画を観ている幸福を味あわせてくれるのである。 ● 但し、ポルノグラフィとしては絡みは必要最小限、それもすべて薄暗がり。せっかくの風間今日子の巨乳すら判別できないありさまなので、その手をお求めの向きにはお勧めしかねるが。

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セックス・フレンド 濡れざかり(坂本礼)

おお、これは「フィールド・オブ・ドリームス」ではないか。つまり「EASE THE PAIN(痛みを癒せ)」の物語である。「フィールド・オブ・ドリームス」で結局、痛みを癒されたのがケビン・コスナーだったように、本作でも癒されるべきは主人公のアルバイト青年。そんな彼の元に小学校を卒業以来、音信のなかった同級生が突然たずねてくる…。 ● 先輩・瀬々敬久&今岡信治の脚本協力を得ての新人・坂本礼の第1回監督作品。ドラマへの向きあい方に好感が持てるし、ラストでちゃんと子供を出すところなど「基本的なことが判ってる人」なのだということはわかるのだが、ドラマの肉付けが甘い。まず、苦い想い出が現在の主人公をいかにスポイルしているかをきちんと描写しておかないと、ラストの癒しが効いてこない。10年ぶりにたずねてきた旧友が忘れていったケータイ電話を、わざわざバイトを休んで埼玉のド田舎まで車で届けに行くってのも全く説得力に欠ける。ヒロインが面接状をゴミ箱に捨てる描写も、あれじゃ面接に落ちて泣いてるようにしか見えない。新人なので致し方ないが、編集の間もいまひとつ気持ち悪い(もっとも編集はベテラン、酒井正次なのだが…) 気持ち悪いといえば、まるでビスタサイズの映画をスタンダード映写したかのような天地スカスカの構図も、なんとも座りが悪い(撮影は鏡早智。初めて目にする名前なので、もしかしたらこちらも新人か) ● キャストは総じて好演。但し、旧友の役は「失礼なやつだけど憎めない」という魅力を持っていないと成立しないキャラなので川瀬陽太の役でしょう。ヒロインのさとう樹菜子は、主人公を温かく支えるイイ女で儲け役。そういえばエイミー・マディガンに雰囲気が似てるかも。

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主婦の性 淫らな野外エッチ(荒木太郎)

ピンク映画版の「男はつらいよ」こと、荒木太郎自作自演による「さすらいキャラバン」シリーズ最新作。寅さんはテキヤだったが、当シリーズのシンジ君は自前のワゴン車で手作り白黒ショーをしながら関東近県をさすらいつつ(予算の関係で全国ってわけにゃいかんのだ)、白黒ショーの相手役となるマドンナを拾っては別れてを繰りかえしているのである。 ● ディスカウント家具屋を経営する中年夫婦。大恋愛の末に一緒になったものの今では倦怠期。妻は、夫と若い女店員との浮気を疑い、真相をさぐるため狭っ苦しい軽自動車で3人の慰安旅行に出かける。そして案の定、旅先で2人の情事現場を目撃してしまった妻は、たまたま遭遇したシンジの白黒ショーのテントにふらふらと入っていく…。 ● ま、このあと話はなるようになって、最後は中年夫婦が元の鞘に収まってエンドマークとなるわけなんだが、ラストシーン、神代辰巳の「恋人たちは濡れた」にオマージュを捧げたような海岸での全裸セックスシーンによって荒木太郎の企みが明らかになる。そう、この中年夫婦はまさしく「恋人たちは濡れた」のヘラヘラ男(あれは何という名だったか)の26年後だし、シンジ君の将来の姿でもあるのだ。さすらい続ける事への憧れ。さすらう事をやめられない者たちへのエール。本シリーズのテーマがストレートに反映された一篇となった。登場人物たちの心の揺れをチョーンと鳴る拍子木で表現した演出も鮮やか。 ● 本篇が1970年代の臭いを感じさせるのは、主演が伊藤清美だということとも無縁ではあるまい。少年のような細い裸体にショートカット、そしてハスキーな声。躯の中に1970年代の倦怠をかかえたベテラン女優。近年ではピンで主役を張る回数も減ってきたが、並みの女優では太刀打ちできない存在感はサスガ。女店員に林由美香。こちらもそーとーのベテランなのだが、いまだに“若い”女店員の役ができてしまうところが、別の意味でスゴい。中年夫婦の夫役に田嶋謙一。

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平成版・阿部定 あんたが欲しい(浜野佐知)

まあなんともスゴいタイトルだな。ところが内容の方は いつものイケイケドンドンな浜野佐知と違って、端正と表現しても良いようなラブストーリーなのだ。いつもはズンドコ鳴らしてるだけの中空龍も美しい劇伴をつけてるし、透明感のある下元哲の映像も素晴らしい。 ● 裕福な税理士の夫を持つ美人妻。副業で管理をまかされているコインランドリーに通ってくる青年とひそかに意識しあうようになる。妻の気持ちを知った夫は嫉妬にかられて青年の正体がゲイバーのウリ専ボーイ(男性客向け売春夫)だとバラすが、それが逆に2人の気持ちに火を点けることになる…。 ● 主演は端正な顔立ちがクラシックな物語とマッチした時任歩。演技も悪くない。相手役の樋渡剛はピンク映画の男優には珍しいタイプの豊川悦司 似の美青年。夫役の杉本まことの、ドラマ・パートとエロ・パートをきちんと使い分ける器用さは貴重。そしてエロ・パート担当として風間今日子と河野綾子が乳ふり乱してがんばってくれる。もちろん「阿部定」だから主演女優の絡みもたっぷり。あれ…、なんだ、いつもの浜野佐知じゃないか。

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発禁本 緊縛肉襦袢(大門通)

日本のポルノ映画独特のジャンルに「緊縛もの」がある。ドイツあたりには「ボンデージもの」とか「SMもの」のポルノが存在するが(暴力表現に厳しいアメリカでは違法)、日本の「緊縛もの」はそうした「女体を肉塊として捉えて締めたり鞭打ったり切ったり穴開けたりする」だけの純粋に肉体的なポルノとは全く異質な、多分に精神的なものである。優れた緊縛ものポルノ(はっきり「団鬼六もの」と言ってしまってもいいのだが)が、描くのは女性を縛ることによって生じる女性の精神のありようの変化、そして男女の関係性の変化である。これは「縛られた女性が縛った男性に精神的に従属する」といった単純なものでは、決してない。 ● この「発禁本 緊縛肉襦袢(“はっきんぼん・きんばくにくじゅばん”と読む)」がダメなのは、まさにその精神のドラマがすっぽりと抜けているからだ。その部分を描かずして「バブル崩壊で銀行に酷い目に遭わされた男2人が、副頭取の娘と後妻を誘拐して肉奴隷に仕立てる」などというストーリーは「どうでもいいこと」なのだ。 ● 主演の月岡みちると麻生みゅうはただ縛られてるだけ。特に月岡みちるはSM雑誌のグラビア向け(動くメディアに向いていない) また、スタッフはたとえ緊縛ものであっても、着付けひとつロクに出来ないのなら女優に和装などさせるべきではない。この映画で見るべき点はただひとつ、ベテラン・久須美欽一の悪役演技のみ。

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高校教師 保健室の情事(佐々木乃武良)

とある高校。悪魔のような秀才少年の奸計によって、女教師と女校医と教頭と体育教師が偽善的な仮面を剥ぎとられてインモラルなセックスの世界に堕ちていく…といういささか古めかしいポルノグラフィ。昔の日活ロマンポルノの味わいか(てゆーか山本塔のかもしだ君ものだな) 少年の犯行動機が「性的に放埓だった母のせいでセックスや女を憎むようになって」というのがいかにも。ただポルノ映画としては珍しくこの少年、最後までだれともセックスしないのだ。惜しむらくは先生を演じる女優2人(菅野ゆかり・美里流季)のレベルがいまいちなので官能性が不足して、「スンゲーやらしい」ってとこまでは達してない事。女子高生役の桜居加奈ちゃんが可愛いから許すけど^^)


黒い下着のスチュワーデス 感じすぎる乳房(新田栄)

「コックピットでおれのコックがピッとなったのを、おまえが鎮めてくれたんだよな」「ああ機長、逆噴射しまぁすぅ!」(脚本・岡輝男) ● 旧作ではない。1999年の新作である。十年一日、新田栄。このような映画に語るべき言葉は何もない。 ● ヒロインの麻生玲緒がだれかに似てるなあと思ったら、…うわぁぁぁ!ディバインに似てるんだあ。

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痴漢電車 いじわるな視線(渡邊元嗣)

「メリーに首ったけ」のイタダキ。ヒロインの名がメイで、劇中で臆面もなく「メイに首ったけ」などと歌われる。 ● いまひとつパッとしない主人公の青年が、アメリカに留学してしまった幼馴染を電車で見かけて、探偵に転職したかつての恩師に調査を依頼したものの、ミイラ捕りがミイラになって…と「メリーに首ったけ」そのままのストーリー。ユニークなのはヒロインのキャラクター設定としてヒッチコックの「白い恐怖」を持ってきたところ。このお嬢さん、幼少時のトラウマが原因となって、渦巻き模様を見ると突如として淫乱娘に変身してしまうのだ! 〈変身シーン〉では恐怖におびえるヒロインの顔にサスペンスフルな音楽がかかって渦巻き型の照明がぐるぐる回ってるのがバカバカしくて笑える。しかも〈変身〉後は、なぜかブルーのアイシャドウと真っ赤な口紅のたいへんに判りやすいメイクになってたりして。 ● 五代暁子はこーゆーリアリティの必要ない脚本の方が向いてるのではないか? しかも演出を手がけるのが大林宣彦・小中和哉とならぶ〈日本三大ジュブナイル・ファンタジスト〉渡邊元嗣であるから、客が何人か怒って帰りそうな、じつに奇妙で楽しくてクダらなくてどーでもいい映画にしあがった。役者は総じて平均点。惜しむらくは探偵役の十日町秀悦が軽妙さに欠けるところ。ここに蛍雪次朗のような芸達者がいると映画の出来が30%ぐらいアップするんだが…。 ● あと、渦巻きギャグはぜひラーメンのナルトでもやってほしかったね^^)

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ザ・痴漢教師3 制服の匂い(池島ゆたか)

「そーゆー輩は去れ!」などと罵倒した直後にこんなことを書いては定見のなさを露呈させるばかりだが、まあいいか・・・福俵満 脚本によるすぐれた猟奇サスペンス。杉本まことが変態教師を憎々しげに演じるシリーズ最新作である。 ● 今回はすこしトーンを変えて、真面目だけがとりえの、世の中をおどおどと生きている古文の教師役。ただもちろん裏にまわれば鞄にビデオカメラを隠して、好意を持つ女子生徒のスカートの中を盗撮したりするわけだが。しかも、犯した後で陰部を切り取るという猟奇的な手口の女子高生連続殺人まで起こっている。 ● 全体を通してかっちりとした構成に好感が持てるが、演出上の重大なミスがひとつある。(以下ネタバレ)脚本としては倒叙式のサイコ・ホラーではなく、ミステリー・サスペンスなのだから、中途赴任してきた熱血教師をはじめからエキセントリックに描いてしまっては、誰が見てもこいつが真犯人だとわかってしまうではないか。少なくとも西山かおりを殺害するところまでは千葉誠樹の正体を伏せておくべきである(いや欲を言えば脚本に、この殺人場面までは犯人の顔を隠すぐらいのミスディレクションがあっても良い) それと最後の2段ショック落ちは間延びし過ぎで効果半減。(ここまで) ● 一方、杉本まことと里見瑤子の純愛パートは素晴らしい出来。里見瑤子の好演もあって、不幸な家庭環境の内向的な性格の少女が、同じ本好きのおとなしい教師に惹かれていく心境がきちんと伝わってくる。だから杉本まことが意気地なしでおまけに痴漢教師と判っても味方のままでいることが不自然に感じないのだ。

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巨乳三姉妹 肉あさり(的場ちせ)

もうエロエロである。ピンク度 ★ ★ ★ ★ ★ である。タイトルに偽りなし、巨乳三姉妹が肉あさりをしちゃうお話。ま、もう少し詳しく言うと、 巨乳淫乱の姉2人と清純派の妹という三姉妹がいて、昼は〈名物肉団子弁当〉の弁当屋台、夜は売春パブをやっている。じつはこの三姉妹には継父の性的虐待を逃れて孤児院で育ったという過去があり、すべては子供のための保護施設を建設するための資金稼ぎのため。で、親の資産で会社を経営しているぼんぼん三兄弟が情(とセックス)にほだされて資金提供を申し出るのだが…というお話。いちおうきちんとした〈映画〉にはなっているが、このストーリー展開でハッピーエンドはないよなあ(脚本は山崎邦紀) ● 巨乳淫乱の姉2人には風間今日子と河野綾子という美しき天然巨乳のお2人。清純派の妹に水原かなえ。そんなに華のある女優ではないが姉2人との対比で持ち味が活きた。おれが的場ちせ(=浜野佐知)を偉いなあと思うのは「セックスシーンと関係のないヘアヌードはOK」という最近の映倫の基準(確認したわけじゃないが…)を利用して、必ず女優単品のヘアヌードを入れたりするサービス精神である。それがハリウッド映画でもピンク映画でも、客の見たがっているものを見せるという精神を忘れては娯楽映画は成立しないのだから。 ● 9月18日から10月8日まで東京・銀座シネパトスで〈的場ちせ=浜野佐知 特集〉が組まれていて、この作品を含む5作品が2本立てレイトショーされるのだが、なにも知らずに(あるいは瀬々敬久やサトウトシキのつもりで)観に行ったお客はビックリするだろうな。なにしろ的場ちせ=浜野佐知の映画はえげつない性描写が売り物のまさに〈ポルノ映画〉としかいいようのないものだから。いいのか>銀座シネパトス(まあ元をただせばあそこは銀座名画座というピンク映画館だったわけだが)

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未亡人旅館 したがる若女将(深町章)

なにが悲しゅうてピンク映画を観ていて〈古色蒼然〉などという四文字熟語を思い浮かべにゃならんのか。10年前の映画だといわれても素直に信じてしまいそうな古色蒼然たる新作映画。わざと古ぼけた感じに撮影しているようにすら見えるのは気のせいか?(撮影は飯岡聖英) ● 「死んだ亭主のことが忘れられない(若くもない)女将の旅館にやって来た客は、死んだ亭主と瓜二つだった…」というストーリー自体は珍しくもない。ユニークなのは「亭主が死にきれずにまだ幽霊として賽の河原で彷徨っていて、毎年 お盆になると女房とセックスをしに帰ってくる」という設定で、恐ろしいことにこの亭主、白塗りして白装束に三角ハチマキ(あれなんてんだ?)という、いまどきドリフのコントでしかお目にかかれないような古典的な格好でお出ましになる。そのうえ〈賽の河原〉ってのが、そこらの河原に石を積んで、縁日で売ってる風車(かざぐるま)を地面に刺して、レンズにフィルターつけただけの代物で、そこではご丁寧にも、アフロのカツラに色を塗って、はりぼての角をつけ、顔を黒塗りした〈鬼〉が〈地獄の門番〉をしているのである! ● まあ、たかがピンク映画の艶笑コメディごときに目くじら立てても仕様がないが、問題なのは脚本家までもがそう考えていると思しき点で、この福俵満という脚本家はおそらく大雑把なストーリーを思いついた時点で“書けた気”になっていて“ストーリーを詰める”という作業をまったく放棄している(そーゆー輩は去れ!)

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痴漢電車 指が止まらない(中村和愛)

痴漢電車ものとしてはそーとー画期的な映画である。なにしろ「内気な女の子が、痴漢に『やめてください』とハッキリ言えるようになるまでの物語」なのだから。 ● 山本富士子・陽子・明美という名の三人姉妹。長女の富士子は勤めてる会社の社長の愛人をもう5年も続けてて、自分にはそれで充分しあわせだと思っている。三女の明美は姉2人と違ってハキハキした性格で2度 結婚して2度 出戻ってきている(それぞれの元亭主のところに1人ずつ子供がいる) 両親は同居していて健在だが劇中にはいっさい登場しない。で、本篇のヒロインは次女の陽子。新宿の京王デパートに勤めてる。“山本陽子”なんて嫌でも目立つ名前をつけられてしまった反動か、子供の頃から目立たないように、目立たないように生きてきて、自分の意志を表現するのが苦手だ。というか、自分の意志なんてあるのかどうかもよく判らない、そんな自信のない女の子だ。どのぐらい極端かというと、電車の中で痴漢されても嫌だと言えず、そのままナイフを突きつけられてトイレに連れ込まれてずるずるとレイプされても拒否できず、日記に「30分だけのカレシだったと思おう」などと書いてるような消極さなのである。この映画は“日蔭の女”として生きるお姉ちゃんや、自分の欲望に正直に生きる妹の姿をみるうちに、自分の気持ちをきちんと表明できるようになるまでをモノローグ形式で丁寧に繊細に描いている(脚本も監督自身) ● ちょっと常盤貴子に似てなくもないヒロインの桐島貴子は好演。長女は村上ゆう。ぜんぜん悪くはないんだけど、やはりこれは岸加奈子の役でしょう。妹に夢乃(=桜居加奈)さばさばしたイイ女の役でとても適役。愛に生きる決心をする老社長の野上正義がいい味を出している。

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ノーパン痴漢電車 そっとして(勝利一)

「女はみんなセックスが大好きで痴漢されるのを待っていて、会社では上司が部下に『ストレス発散に好いから ぜひ君も痴漢したまへ』と勧めたりする」という宇能鴻一郎的パラレル・ワールドでの物語。とはいえ「白昼の電車内で見知らぬ痴漢男と服を脱いでペッティングを始めてしまう」などという場面はどう考えてもヒロインの白日夢だろうと思って観ていると、これが本当に起こった出来事という設定だったりするのは、いくらなんでも〈ポルノ映画のリアリティ枠〉すらはみ出してる気もするが(てゆーか、編集が下手?) その辺りを無理して目をつぶれば国見岳史 脚本は快調。「封建的な時代錯誤亭主によって家庭に縛りつけられていた主婦が、性的に開放されることによって意識を改革して亭主にしっぺ返しを食わせる」というポルノ映画のルーティーンを軽快にまとめている。 ● 主演は“エキゾチックな顔だち”の藤咲美帆(別人が声をアテているようだ) 主婦が勤める旅行代理店の肉弾セールスが得意な女社長に、小林幸子似の佐々木基子。封建的で浮気好きなろくでなし亭主の竹本泰史が上手い。

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魅惑の令嬢 Gの快感(池島ゆたか)

とりたて特筆するような映画じゃないが、ピンク映画としては ★ ★ ★ ★ ★ を進呈してもよい丁寧な造りの艶笑コメディ。何も知らないで観たら深町章監督作品と思うかも。 ● 「バーやスナックを経営する小金持ちの冴えない中年男が見合いをした相手は、信じられないような美人の深窓の令嬢だった」という話で、すぐにこのお嬢さんは実家の金策目当てだと判明するのだが、不器用で実直な中年男は「それでもいい!」と愛を貫こうとする。演じる かわさきひろゆき の熱演もあって、同じ冴えない中年男(>おれ)としては ついつい感情移入して観てしまったよ。 ● 基本的にどーでもいい話なので五代暁子脚本の凡庸な台詞もたいした障害とはならないし、池島ゆたか演出もこの手の話に向いていると思う。池島本人が役者として出演もしているのも嬉しい(役者の場合は不器用さ転じてチャームポイントになることもあるのだ>笠智衆を見よ) ● いちおう難癖もつけておくと、感激した かわさきひろゆき が何かというと歌声喫茶状態になるのは勘弁してほしいし、“魅惑の令嬢”役の青山リカ嬢が(おっぱいの形は良いんだが)とんでもない大根で、おまけに「(お見合い)写真以上だ。なんて美しい!」などとワザとらしくモノローグでフォローしてやらんといかん程度のマスクなのも説得力に欠けるよなあ。

★ ★
不倫OL 野外恥戯(勝山茂雄)

同じ類型的な脚本でも社会派きどりのステロタイプは正義面(づら)が鼻につく分だけタチが悪い。たとえば山田洋次の「学校」に比べたら五代暁子の方が罪がないと言える。 ● で、この映画だが(脚本・藤堂圭一郎)、「社内不倫で男に捨てられ子供も堕ろした傷心のOLが、自殺をしようと迷いこんだ奥多摩だかどこかの山中で、森林警備の青年に助けられ、大自然と優しい心に触れて癒される」という聞いただけでケッと言いたくなるプロット。これに「山林をゴルフ場にしようと企む、金の亡者となった地主の息子を、山の神である幻の狼が成敗する」というサブプロットが絡むのだが、ファンタスティックな主題をまったくさばけず未消化に終わっている。ここにあるのは もっともらしいテーマの羅列だけだ。作者はそこからドラマを紡ぎだそうという努力を怠っている。 ● 外波山文明や伊藤猛など上手い役者が出ているのだが、役にリアリティがないので宝の持ち腐れ。

★ ★
女ピアノ教師 ゆび誘い乱されて(荒木太郎)

青春映画である。地方の高校生という設定だが、いまどきこんな真っ直ぐな高校生はおるまいて。まるで中学生だ。これはピンク映画だから普通なら当然、いい歳した大人が学生に扮して大真面目で演じている不自然さが際立ってしまうはずだが、“永遠の映画青年”荒木太郎の場合、サイレント字幕やコマ落としを多用した いい意味での学芸会的な演出が幸いしてなんとなく観てしまう。高校生だけではなく、野上正義の年老いたお父さんから岸加奈子がふわっと演じるお母さんの幽霊(!)にいたるまで、純な心根の人たちばかりが出てくる静かで優しい映画。まあ、欠点は静かすぎて眠くなることだな。 ● いちおうタイトルロールなのに出番の少ない女ピアノ教師役の山崎瞳が、死んだ魚のような感情のない目をしててコワすぎ。

★ ★ ★
引き裂かれたプルーフィルム/濡れ牡丹 五悪人暴行編(梅沢薫)

東京・水道橋のアテネ・フランセ文化センターで行われた梅沢薫の追悼上映会に行ってきた。1960年代の後半からピンク映画を撮りつづけてきたベテラン監督である。おれがピンク映画をリアルタイムで観はじめたのは1970年代末期からなので、1969年および1970年の製作であるこの2本は当然 初見。この2本が当時のピンク映画でどういう位置づけであったのかは不明だが、おそらく当時としても相当な異色作だったのではないか。諦観と虚無感に塗りこめられた破滅のドラマは、梅沢薫の映画というより、両作の脚本を手がけた大和屋竺の映画を見たという気がする。 ● で、まずは「引き裂かれたプルーフィルム」。ひとりのファム・ファタルをめぐる複数の男たちの騙しあい(殺しあい)のドラマである。主人公は若き日の若山富三郎を思わせる津崎公平。女を騙しとる若者役で鮮烈な演技を見せるのが、まるで川口浩のような野上正義。この映画がアバンギャルドなのはパートカラーの貴重なカラー部分をすべてブルーフィルム(=今でいう裏ビデオ)の映像に充てていることだ。モノクロシネマスコープに色鮮やかに映写される8mmスタンダードサイズのカラー画面。けっして想いの報われることのない現実が白黒で、憧れの女が虚構の愛を演じるスクリーンの中だけが本当の色彩を持つという皮肉。 ● 事情は「濡れ牡丹 五悪人暴行編」においても同様で、ギャング同士の殺しあいを描いた本作で何度か挿入されるベッドシーン(今日のそれに比べたらおとなしいものだ)はモノクロのまま。どこでカラーが使われるかというと、殺される/自滅していく悪党どもの、その鮮血を写し出すために費やされるのだ。裸を売り物にするピンク映画としては詐欺行為である。よくこういう映画が許されたものだ。ファナティックな若者役で港雄一が顔を見せている。 ● [注]パートカラー:昔はカラーフィルムが高価だったので、低予算映画の最たるものであるピンク映画においては全体をモノクロで撮影し、売りものである濡れ場のみをカラーフィルムで撮影するという方法がとられた。カラーになるのは大抵は ほんの数分間である。ちなみに現在では白黒映画の方が高くつく。

★ ★ ★
女修道院 バイブ折檻(浜野佐知)

みずから悪徳のはびこる街へと出てマグダラのマリアとなる修道女の物語。見ようによっては単なる宗教キ印ともいえる、このシスターはすすんでホームレスや性病持ちと交わると、セックスによって彼らに光明を与えて立ち直らせ、おまけに街のダニまで退治してしまう。シスターの台詞がすべて聖書の引用というのが笑わせる。それでもこの映画がキリストを茶化しただけのファンタジーではないと知れるのは、ラストにつぶやかれる「新しい時代のイエスは女」というテーゼによってだ。脚本を書いた山崎邦紀はともかく、女性監督である浜野佐知はおそらく本気でこの台詞をしゃべらせている。 ● 修道女に10年前の林由美香みたいな口元がかわいい紺野沙織。一連の奇蹟の目撃者となる街娼に村上ゆう(役名が「パンパンの潤子姐さん」ってんだけど、いまどきパンパンなんて言うかあ?)

★ ★ ★
女刑務官 美肉狩り(坂本太)

女刑務官(=看守)京香のレズ相手だった同僚サキが、京香の婚約者の保護監察官を殺害した。嫉妬からの犯行なのか、はたして真相は…というお話。カメラの構図や編集などにまだまだ問題はあるものの、きっちりとドラマを作っていて好感が持てた。ただ、予算の関係などあるのだろうが、やはりサキが男を殺す場面は説話上のクライマックスとして必要だろう。 ● 京香役はクッキリとした顔立ちと造り物っぽいおっぱいの牧原美穂。もう少し演技力があれば梶芽衣子ばりの激しさが出せるのだが、まあこれは無いものねだり。サキの役に悲惨な境遇のよく似合う佐倉萌。刑務所に入ったサキが責められるのがピンク映画としての見せ所なのだから、ここはやはり縄がけをしてほしかった。この映画は出てくる男性が全員 悪人という徹底ぶりなのだが、竹本泰史、久須美欽一、吉田祐健の男優陣がじつに憎々しげに演じていて効果をあげている。

★ ★
愛欲みだれ妻(今岡信治)

ただ役者に不自然な動作で、のらりくらりさせたり、じたばたさせたり、おんぶさせたり、腕相撲させたり、裸足で歩かせたりすれば映画になると思うのは大きな勘違い。神代辰巳? 神代のはそういうのと違うでしょ。 ● お話はフェリーニの「道」(といってもこちらはハッピーエンドだけど)。ファンタジー色と生臭さが奇妙に入り交じっていて結局どっちつかずに終わってしまった感がある。いっその事、渡辺元嗣に監督させれば、よくできた純愛ファンタジーになったのじゃないか? ジェルソミーナ役の諏訪光代が浮き世離れした感じと、おどおどした感じを上手く出している。

★ ★
美人受付嬢 不適切な関係(佐々木乃武良)

「不適切な関係」というタイトルどおり、クリントン大統領のスキャンダルのパロディ…のはずなんだが、いまひとつ演出がハジケない。経営不振の会社社長が栗頭、不倫相手の受付嬢が森田ルイ、資産家のおっかない奥さんが ひらり夫人、会社乗っ取りを狙う銀行屋の手先が(スターならぬ)星“独立検査官”と、ここまでフザけた名前をつけておいて、なんと湿っぽい純愛ドラマをやり始めるのである。なに考えてんだか。てゆーか、だいたい今ごろクリントンものをやること自体が遅いよな。クリントン役の杉本まことの熱演むなし。いっその事、渡辺元嗣に監督させればドライなギャグ・ファンタジーになったのじゃないか?

★ ★ ★
濡れ上手 白衣の未亡人(勝利一)

未亡人の町医者をめぐる、往年の宇能鴻一郎もののような軽いセックス・コメディ。出てくる女がみなセックス好きで、黙ってても向こうから服を脱いでくれるという非現実的なパラレル・ワールドでのお話だが、脚本(国見岳士)がキャラクターをきちんと描いており、演出も手慣れているので安心して楽しめる。本当は未亡人女医がもう少し年上に見えないと成立しない話なんだが、まあしょうがないでしょ。ヒロインの永森シーナ嬢はご面相よりも巨乳で選ばれたような感じだが、無難にこなしている(というか演技に比べて台詞が達者すぎるような気がするけど別人がアテレコしてるのかな?) ちょっと木村佳乃似の看護婦さんをやった娘(桜居加奈)が可愛い^^)

★ ★ ★ ★
新 団地妻 不倫は蜜の味[今宵かぎりは…](サトウトシキ)

脚本:小林政広 撮影:広中康人 葉月螢|沢田夏子|本多菊雄|村木仁|佐々木ユメカ|久保田あづみ
フォーマットとしては団地妻の艶笑コメディで、じっさいに最初はクスクスと笑いながら観ていたのだが、作者のしかけた悪意が後からじんわり効いてきて背筋がすぅっと寒くなる。 ● どこか足立区か川向こうの辺りの高層団地。中年にさしかかった、子供のいない2組の夫婦。いつもと変わらぬ日常。目に見える対立や憎悪は存在しない。せいぜい「なんでお隣りは特別な日でもないのにすき焼きなのよ」とか「なんでお隣りの旦那はあの歳で3回も出来るのよ」とか、その程度。だが、目に見えない嫉妬が、それと意識しない悪意が、均衡を崩していく。クライマックスでの葉月螢の“受難”はそうした日常の悪意の象徴である。かれらはまた明日から何事もなかったように生活を続けて行くだろう。だが“悪意”の存在を知ってしまった以上、それは以前と同じ日常ではありえない。 ● 脚本・演出・撮影ともども名匠の域に達してると思うが、なかでも特筆すべきは小林政広脚本の自在ぶりだろう。

★ ★
義姉と弟 はしたない人妻(北沢幸雄)

すでに100本を優に超すフィルモグラフィを誇る監督の、たかだか30本足らずを観てこんな事を言うのもどうかと思うが、北沢幸雄という人は一貫して1970年代の気恥ずかしい青春映画を撮り続けてる人である。どんなジャンルの脚本でも、この人が撮ると朴訥で一途な青臭い映画になるから不思議なものだ(これは否定しているのではない。うまくハマれば抒情的な佳作となる) ● この作品はタイトル通り“憧れの女性は義姉だった!その義姉は商売女だった!”という話なのだが、秘密クラブで売春をする義理の姉の恥態を見てしまい、ムラムラっと来て参加する…のではなく、憧れの義姉さんがそんな事…嘘だぁぁぁぁぁぁ!だだだだだっ(走り去る音)…と、なるところが、いかにも北沢幸雄なのである。ちょっと古臭くてキツいかなということで★2つだが、ピンク映画としては ★ ★ ★ の及第点。 ● さて、この映画の脚本は五代暁子。毎回毎回、同じ人の悪口を書くのも気が引けるが(うそ)、なぜか売れっ子なんだから仕様がない。本作でも五代節は絶好調。そこで今回は独創的な名台詞の一部をご紹介する。まずは、義姉に夢中の彼氏に振られたガールフレンドがカレシの友人とデキてしまう、といういかにもアリガチな展開で:「いいのよ、遠慮しないで」「だってユカリは自棄になってるだけだから…」「いいの。彼のこと忘れたいの。お願い、抱いて!」 ● 次は義姉が主人公を誘惑する場面:「あたしはカズヤさんの視線を感じていたわ、躯が熱くなるぐらい。カズヤさんだってそうでしょ?(義弟の股間を触って)あたしを見ながらココを熱くしてたんでしょ?」 ● ギャグとして使うのではなくビビビってのもあったな。今どき使うか? ビビビだぞビビビ。これで(名前だけじゃなく本当に)女性脚本家だってんだから信じられるか? ● では最後にピンク映画の存在意義を根本から問いなおす名台詞を:「人間には表と裏の顔があるんだ」「そんなのただの変態じゃないか!」

★ ★ ★
人妻発情期 不倫まみれ(工藤雅典)

女と男が出逢ったのは熱帯魚ショップ。青白くて照らされた水槽ごしに言葉もなく見つめあった。やがて、女の目元に青痣が浮いていた日、2人はたがいの心を癒すかのように求めあう。互いの素性も知らぬまま…。じつは女は人妻だった。そしてホテトル嬢。愛のない結婚のストレスから買物依存症になり際限のない浪費を続けている。男は裏金融の世界に足を踏み入れてずるずると10年。今では借金のカタに負債者を風俗に売りとばす凄腕の取立屋。…出逢ってはいけない2人だった。愛し合ってはいけない2人だった…。残酷な運命にもてあそばれる恋人たちがたどる哀切なラブ・ストーリー、・・・と思ってたら、あやや!? ハッピーエンドになっちゃったよ。拍子抜けして★1つ減。 ● これエクセス作品なんだけど、男優が川瀬陽太と本多菊雄、撮影が西久保維宏で、国映作品のようだなと思ってたら、そうか石井隆だ。エクセス(=日活の別会社)がロマンポルノに先祖帰りしたわけだ。 

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アナーキー・イン じゃぱんすけ 見られてイク女(瀬々敬久)

じゃぱんすけってなんだ? ジャパネスク? JAPAN女(スケ)? ● 瀬々敬久自身の脚本による最新作は1981年から1999年までの19年に渡るドラマである。瀬々のデビュー作「課外授業 暴行」を彷彿とさせる、活力に…やるせない活力に満ちた快作。アナーキーという括りで言えば山本政志の作劇(と呼べれば、だが)に近いかも。しかしコレ、濡れ場もノルマ数ちゃんとあるけど、もはや“ピンク映画”じゃないよな。いや、瀬々敬久に場を提供してくれている国映には感謝するけどさ。 ● 若い頃の荒淫がたたって子供が産めない体になったので他人様の赤ん坊をさらって東京へ出てきてソープ嬢をしているヒロインに佐々木ユメカ。昔っからいいことなんか一つもなくて40才にもなろうってのにいまだにコンビニの店員をしているヒーローになり損ねた情けない中年男に佐野和宏。そのダチで新聞拡販員のオムツ変態に下元史朗、同じくアル中でアナル好きの葬儀屋のドラ息子に諏訪太郎。下元の父親役で港雄一が特別出演。撮影は斎藤幸一、かっこいい音楽は安川午朗が担当。

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女痴漢捜査官2 バストで御用(渡邊元嗣)

いかにもなタイトルだし、監督は渡邊元嗣だし、またいつもの明るく陽気でルーズな演出のセックス・コメディだろうと思っていたら、なんと片岡修二ばりのサイコ・サスペンスだった。渡邊元嗣はいつからこんなかっちりとした演出をこなせるようになったのだろうか!? ● 警視庁 特別捜査班 女痴漢捜査官の緑川ジュン(工藤翔子)は今日も自分の肉体を餌にして痴漢の現行犯逮捕に燃えていた。そんなジュンの目の前でレズ恋人の里恵(西藤尚)がクロロホルムを嗅がされ拉致されてしまう。これは7年前にジュンが取り逃がしたクロロホルム暴行犯の報復なのか? 必死の単独捜査をすすめるジュンをあざ笑うようにサイコ男(岡田智宏)が物陰から見つめる…。 ● 役者陣が総じて健闘しているし、脚本もジャンルのルーティンにキチンと則っていて好感が持てる。

★ ★ ★
超いんらん 姉妹どんぶり(池島ゆたか)

(開巻5分で明らかになるので書いてしまうが)ヴァンパイアものである。永遠の生命を持ったヴァンパイアの姉妹が何処からともなく町に現れ、1人の青年を虜にしてまた何処ともなく去っていく話。 ● 妖艶な姉格ヴァンパイアの吉行由実が、いかにも陽に当たってなさそうな感じでハマり過ぎ。妹分ヴァンパイアは一見、清純そうに見えて、でもやっぱりヴァンパイアだから…という役でなければいけないのだが、この女優さん(水原かなえ)には荷が重かったようだ。 ● 今回めずらしく脚本の五代暁子が、着想だけでなく(陳腐な台詞はいつも通りだが)全体の構成まできっちりと仕事をしているし、演出の池島ゆたかも(才気は感じられないものの)いちおう無難にこなしているので、最後まで安心してみていられる。 ● この手の映画はジャンルに対する愛情やディテイルが勝負の分かれ目なので、例えば(撮影日数の制約があるとはいえ)黒い帽子に黒のロングコートにサングラスといった「さそり」の梶芽衣子みたいな格好をしたヴァンパイア姉妹に白昼堂々と太陽の燦燦と照りつける街中を歩かれたりすると白けてしまうのも事実。黄昏時に撮影するとかオレンジのフィルタかけるとか出来ないものか。

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公衆便所 私いたずらされました(瀧島弘義)

めずらしやメタフィクション・ポルノである。新進官能小説家のアヤノ(吉行由実)はかつて女公衆便所でフレディ・クルーガー的怪人に性的暴行を受けたことがトラウマとなっていて、その実体験を小説にする。が、作中の主人公ミキ(森本みう)が作者の思惑をこえた行動をとりはじめ、アヤノはミキに嫉妬するようになる。そしてアヤノはいつか作中世界へ・・・と出だしはなかなか面白いのだが、後半、アヤノとミキがクロスしはじめてからの展開が消化不足。脚本の段階でもうひとふんばりすれば傑作になったのに残念。 ● 一言のセリフもなく怪人を演じるのは佐野和宏。

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痴漢電車 奥までたっぷり(松岡誠)

盗聴マニア、というか盗聴フェチの青年(寺十吾)がある日、電車で痴漢の被害に遭っていた女性にひと目惚れ、というか“ひと聞き”惚れ。蜘蛛の巣に捕らえられた可憐な蝶を救ってあげたいと奮闘するが、じつはその蝶こそが黒後家蜘蛛で、気づいたときには自分が蜘蛛の糸に絡めとられていた・・・というお話。青年が女に惚れてしまうところがちゃんと描かれていないので、その後の展開に説得力がないのが苦しいところ。

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好色夫婦 すすって欲しい(荒木太郎)

とある田舎の町。老妻がボケはじめて自分に辛く当たるようになり苦い毎日を送る老人(港雄一)。息子の嫁(伊藤清美)はそんなボケ義母の世話を押しつけられるのを不満に思っている。老人いきつけのうどん屋の女将(岸加奈子)は息子の幼なじみで、息子が別の女と結婚したいまでもずっと彼のことを想いつづけている。そんな時、都会から駆け落ちしてきたらしいカップルが町に居着く。どうやら男には妻子がいるらしい。けなげに愛を貫こうとする若い女(山崎瞳)の姿は、老人に自分たち夫婦の若く幸せだった頃、この女と一生ともに生きていこうと固く誓ったときの事を思い起こさせる…。 ● 大ベテランの港雄一が自身はまったく絡みのシーンなしで堂々の主役。その代わり回想シーンで、老人の若かりし頃に坊主頭の荒木太郎が扮して、若い頃の妻(山崎瞳2役)と絡む。 ● 劇中の台詞に明示される“人が人を好きで居続ける力ってなんだろう”と問いかける吉行由実 脚本と、万年映画青年・荒木太郎のロマンチシズムがうまい具合にミックスされて佳篇になった。

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新妻不倫 背中で感じる指先(吉行由実)

子供の頃から優等生の姉にコンプレックスを持ちつづけてきた妹。大人になって腰かけOLになり、会社の御曹司と結婚。やっと姉と肩をならべたと思ったら、国際結婚していた姉が離婚して帰国。妹の新婚家庭に転がりこんだ姉は、幸せそうな2人に嫉妬して奸計をめぐらすが…。 ● 吉行由実は相変わらず優れた演出家だが、五代暁子脚本の凡庸さが足をひっぱっている。日常の中にひそむこまやかなディテイルをすくいあげる技が必要とされる話なのだが、五代暁子は設定を考えた時点からひとつも先に進まず、類型や陳腐でお茶をにごすのみ。例えばロマンポルノの名脚本家・斎藤博が生きていたら、などと思わずにいられない。ステップアップのためにはもうすこしマシな脚本家を探すべきだろう。

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髪結い未亡人 むさぼる快楽(川村真一)

ビリングのトップが愛染恭子。だれもが、いまさら愛染恭子? と思うところだが(おれも思った)、この映画には愛染恭子が(それもキョウコという役名で)出演する必然性があるのだ。そればかりか、実質は主演の野上正義が“ガミさん”、久保新二が“クボちん”、特別出演の港雄一が“ユウちゃん”と、ピンク映画の1970年代を支えたベテランがそのままの役名で、老けメイクで(実際にもうみんないい歳なのだが)登場するにおよんで、ああ、これはピンク映画の同窓会を意図した映画なのだな、と合点がいく。ストーリーも一言でいえば“くたばり損ない、再起す”てな話で、演出・脚本をはじめとする若手スタッフのベテラン俳優への敬意がこころよいし、それに応える彼らには単なる“カラミの相手役”を超えた芸があったのだなあ、と実感する。都内を横断して架空の“かつてあった町”を創造したロケハンも出色。ほろ苦い後味を残すエンディングに、ああ、いい話を見た、と思った。 ● あ、若い女優さんのカラミもちゃんとあります。念の為。


喪服姉妹 タップリ濡らして(榎本敏郎)

この映画の監督である榎本敏郎のデビュー作を観たときから、こいつは「幻の光」の是枝浩和や「月とキャベツ」の篠原哲雄の一派に違いないとニラんでいたのだが、やはりその疑いは正しかったようだ。おれはこいつらを“似非ドキュメンタリー”派と勝手に呼んでいるのだが、「事件がほとんど起こらない」「淡々とした日常を淡々と描写する」「劇伴(BGM)を使わない」「ロケーションにこだわる」「照明はほとんど自然光」といった共通項があって、たぶん作者は「主人公の微妙な心の揺れを画面に定着させたい」などと目論んでいると思われるが、何も起こらない画面をえんえんと見せられても、ケッ!退屈なだけなんだよ。 ● 何が間違ってるって、瀬々敬久とコンビを組んできた井土紀州・脚本の実録犯罪ドラマを“似非ドキュメンタリー”として映画化しようとするところが決定的に間違っている。実録犯罪ドラマはあくまでも“ドラマ”なのだ。フィクションなのだ。演出が必要なのである。 ● 技術的にはしっかりしているので通常なら★2つのレベルだが、これはピンク映画。ポルノグラフィとしてすら成立していないのでは★1つ(=どうしようもない)

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エロスのしたたり(サトウトシキ)

サトウトシキの資質なのか、脚本の小林政広の資質なのか判然としないが、このところの2人の映画は“ひょうひょうとした主人公がひょうひょうと事件を乗り切っていく”ものが多い。ピンク映画だから大抵はじまりは“夫(恋人)の浮気”だったりするのだが、その後のストーリーは予想もつかない転がり方をしていくものだから、こちらはクスクス笑いながら、ボーゼンと映画に身をゆだねるしかない。 ● この作品の場合、主人公は失業中の独身男(あとで売れないピンク映画の監督だと判る)。ふとした事から隣室に駆け落ちして来たヤクザの娘をかくまうことになるが…。−−と設定を書いて、あなたが想像するようなステロタイプを作者は徹底してハズしていく。トボけた味わいの、良く出来たコメディ映画(ちゃんとピンク映画としても機能してます)

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OLの愛汁 ラブジュース(田尻裕司)

6年間つきあったカレから一方的に別れを告げられた28才のOLが、終点まで寝過ごしてしまった電車で、偶然となりにすわった20才の学生と付き合いはじめる。もうすぐ三十。明日のことを考えずにはいられない女と、未来のことなど考えたくない、思い出なんてほしくない若い男。なんとなく付き合いはじめた2人はやはりなんとなく別れる…。 ● なんの変哲もないそこいらに転がっているようなカップルの出逢いと別れ。よくできた脚本と丁寧な演出が、それを普遍的なラブ・ストーリーに仕上げた。

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巨乳秘書 パンストの湿り(池島ゆたか)

王道である深町章(稲尾実)の“明るく楽しい”ピンク映画をめざしてるんだろうが、いかんせん池島ゆたかの演出はタルいし、脚本の五代暁子には独創力が皆無。

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