第42回詩人会議新人賞
詩部門佳作
玄原冬子
東京都出身。
埼玉県在住。
長いブランクの後、やっと詩の入り口に向かって歩きはじめた
ところです。


受賞のことば


 詩は、何処かへ向かう心を言葉で紡いでゆくものなのに、むしろ言葉にはならない想いのためにこそあるような気がしてなりません。
 小さな頃、海の傍で暮らした日々が心の中に積もって、その時に感じた空のひかりと風の音、息苦しいほどの海の匂いや多くの人々とのめぐり逢いが私の危なげな歩みを支えてきてくれたように思います。
 今回の賞は私ひとりの身には余るもので、みなさんの応募作品一つ一つに込められた深い想いに対し授けられたものと受けとめさせて頂ければと思っています。 本当にありがとうございました。



こんぺいとう 玄原 冬子

  


あれは みずいろのかがりびであったと

それは うすべにのかんざしであったと

いもうとは

くもりがらすにくちびるをよせる

 

わたしのめには

さとうがしのかたちにしかうつらないのに

いつのまに

そんなまぼろしを

みるようになったのだろう

 

 ひにひとつぶのおもいがけないあまさに

 いもうとは

 たやすくえみをとりもどす

 このしゅゆを

 まもりとおすことができるのだろうか

 このわたしに

 

ちいさなつのをたてて

ふたりで

ひっそりといきてゆくはずだったのに

なぜ

わたしたちのそらだけが

こわされてゆくのだろう

 

さびたてっついを

いくどもうちおろして

 

もしや

そのかけらの

みずいろや

うすべにが

やわらかな

いもうとのまぶたに

つきささったとでもいうのか

 

 *

 

どなたか

わたしたちを

ほしのかたちのとめぐにして

はがれおちるそらの

さいごのひとひらをとどめるため

どこまでも

たかくたかく

ほうりあげておくれ



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 鮮 一孝 玄原 冬子 青木 美保子
評論部門
小野 絵里華 詩にみる〈日本身体〉の変容
   ―萩原朔太郎を中心に