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詩部門入選 |
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いがらし のりこ |
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1953年神奈川県生まれ。 |
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詩人会議グループ このゆびとまれ会員。 児童合唱団指導者。 |
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受賞のことば
出会った子ども達一人一人の心が知りたくて、子どもだった頃の私を忘れたくなくて、小さなことばを書いています。それがこんな大きな賞を戴くことになり、喜びと驚きでいっぱいです。「平和」とは、全ての人がその生を伸びやかに健やかに全うする事であると信じています。今回の賞を励みとし、誰にでもわかる和らかなことばを探して、ゆっくりと書き続けたく存じます。よろしくご指導下さい。ありがとうございました。本当に嬉しい。
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この町 |
いがらし のりこ |
ぴちぴちの魚を捌く手
それを干す手
働きがしみこんだ手を
少しも 休ませませんね
小母さんたら 道を教えてくれるのに
まるで けんかのような大きな声
それが いきなり笑い出して
びっくりするけれど
なぜか楽しくなって 一緒に笑うわ
海に続く坂道
小母さんの満ち足りた笑顔にあえて
とても 安心しましたよ
大切な人が この町にいるんです
その人が送ってくれた地図を手に
思い切って 訪ねてきたんです
風が潮のにおいで ふくらんでいますね
その風に吹かれ
小母さんの魚を 干して暮らせたら
小母さん
あなたに似てくるかしら
初夏の海の沖に
島が一つ うかんでいます
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