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■ 動物ジャーナル98 終刊直前号

  海士町だより キャンペーン十五年をふり返って

松田 修一


 二〇〇一(H13)年、長年住み慣れた千葉県から妻の生まれ故郷である島根県の離島、四つの島からなる隠岐諸島の一つ、島前中ノ島(海士町)にU・Iターンして十六年目を迎えました。
 移住して地元にも慣れた二年目ごろ、島根県の犬猫殺処分数が国内では常にワースト上位にあり、又、地元では生後間もない子猫を人里はなれた山中に捨てたり、水神様に返すという名目で「さん俵」に乗せて海に流すということが日常的に行われているとの話が耳に入り、心を傷めていました。
 そのような折、たまたま雑誌『猫びより』で山口獣医科病院の記事を拝見し、離島であるがために隠岐四島にはペットの獣医さんがいないこと等現況を山口先生にお話しし、相談したところ、急遽無医村の海士町にて不妊手術を行う旨を快諾していただけました。
 手探り状態、課題を抱えた状態での船出となりましたが、山口先生のご紹介で、京都の「ぜろの会」根津代表、佐上様、『動物ジャーナル』の青島さんと多数の愛読者様から物心両面のご支援ご指導をいただき、開催のめどが立ちました。
 併せて、キャンペーン会場設営の場所確保を町役場に依頼したところ、快く、役場の一角=町民ホールの提供を受けた上、獣医師の交通費の一部として十万円の補助金も受ける事ができ、第一回海士町キャンペーンを無事完了することができました。

 補助金交付につきましては、地方自治体として初めてのケースであり、マスコミ等でも希有の事として報道され、人口二千五百人弱の小さな地方自治体としては、思い切った決断をしていただいたものと感謝しております。
 この交通費補助金の交付については、二〇〇三(H15)年の第一回以来十五年間二十回分を継続維持していただいております。さらに、昨年の十八回目より、ホームレス猫の手術代も負担していただいており、この初回(十八回目)には、メス二十七、オス二十六、合計五十三匹分の手術代を負担していただきました。これまで当会で負担していたホームレス猫の手術代は大幅に軽減され、会からの持ち出し分も最低限に抑えられることになり、金銭的不安は少し解消されそうな現状です。

 不妊手術キャンペーン開始当初は否定的な発言もかなり周囲にはありましたが、五〜六年目より不妊手術の必要性が認知され、ボランティア参加の方の人員も増え、前回の開催時には隠岐島前高校二年生の生徒さんたちが、地域の課題を探求し、解決策を策定する授業の一環として参加されました。
 生徒さんたちは、地域への啓発活動・ポスター作成・手術当日の補助作業等に真摯に取り組み、十一月にはシンガポールへの研修旅行で、現地の人達に、私どもの動物愛護に対する取り組みや活動の成果を発表し、好評であったとの報告をいただきました。
 この生徒さんたちはこれから受験勉強に専念するので、下級生に対して趣旨を引き継ぐと、確約していただいており、頼もしく感じております。

 本土と異なり海に周囲を囲まれて、島内にのみ限定されることから、不妊手術の効果は目に見えて実感できる状態でありますが、毎回少しではありますが漏れがあって、予断を許されない状況にあり、最低でも年一回のキャンペーンは引き続き継続してまいる所存です。
   

(まつだ しゅういち・隠岐海士町猫の不妊手術の会 代表)