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■ 動物ジャーナル91 2015 秋

【新刊紹介】
『動物と戦争』 真の非暴力へ、〈軍事ー動物産業〉複合体に立ち向かう

青島 啓子

[著]アントニー・J・ノチェッラ二世/コリン・ソルター/
ジュディー・K・C・ベントリー   [訳]井上太一
(株)新評論  二〇一五年十月刊(原著は二〇一四年刊)
三百六頁 二千八百円プラス税
 今年十月、翻訳を業となさる井上太一氏より「この度、拙訳の動物福祉関連文献『戦争と動物』が出版されることになり、献呈もできることになった。内容は、軍事活動に伴う動物や自然界の被害を複数の著者が報告したもの。貴会の活動にも役立つと思うので、献呈したい。送り先と代表者名を知らせて」とのメールをいただきました。
 折返し、当会編集の『動物ジャーナル』のこと、そこで紹介できること、バックナンバーをお送りするのでご検討を。OKでしたら頂きますとご返事し、間もなく頂戴しました。
 紹介文を二三の方にお願いしましたが、辛い酷い内容を推量して尻込みなさる方ばかり、やむなく青島がかいなでのご紹介を、本格的には今後どなたかにお願いする予定です。
 先ずは、目次を。(本論のみ。ページ・改行などは省略します。また、★☆などは私に付す)


[目次]
序章 〈軍事─動物産業〉複合体

コリン・ソルター
 ★産業複合体 ★人間至上主義 ★人間以外の動物と戦争 ★困難に立ち向かう

第一章 戦争の乗り物と化した動物たち

ジョン・ソレンソン

第二章 動物たちの前線──米軍医療訓練実習の動物搾取

ジャスティン・R・グッドマン
シェイリン・G・ガラ
イアン・E・スミス
 ★「生体組織訓練」★化学負傷訓練 ★気管内挿管訓練 
 ★人間以外の動物に対する傷害、殺害行為が持つ社会的機能
 ★人間以外の動物の殺害を容易にする

第三章 兵器にされる人間以外の動物たち

アナ・パウリナ・モロン
 ★先史時代、有史以前 ★古代 ★中世 ★近世 ★近代

第四章 戦争──動物たちの被害

ジュリー・アンジェイェフスキ
 ★隠蔽と支配権力 ★秘密主義と検閲  ★動物の抑圧 
 ★現代の戦争のどのような中心要素が動物に長期影響を及ぼすのか(この章は以下七つの節に
  分けられます。)
 ☆帝国主義は終わりなき戦争によって動物の抑圧と絶滅を更に悪化させる
 ☆人の手による自然破壊が世界の紛争を増加させる
 ☆戦争は生物多様性危機地域に集中する
 ☆環境戦術は広範囲の生息地を死で覆う
 ☆現代兵器の破壊性能は殲滅につながる
 ☆避難民は動物に対する戦争の影響を強める
 ☆動物に影響する世界的課題をないがしろにして戦争に資源が費やされる
 ★環境戦術(爆発兵器、化学兵器、生物兵器、放射能兵器、環境改変兵器)は動物にどのような
  長期影響を及ぼすのか(同じく、以下五つの節に)
 ☆爆発物と爆弾 ☆化学物質および焼夷物質☆放射能兵器とその試験 ☆生物、昆虫戦術
 ☆環境改変兵器(ENMODないし気象戦術
 ★特定集団の動物は戦争の余波によってどのような影響を被るのか
 ☆人間の管理する動物 ☆野生動物 ☆危惧種と絶滅
 ★戦争活動のあおりを受ける中、動物はどのような選択肢を持っているのか
 ☆野生生物保護区は動物を維持するものか、汚染を維持するものか 
 ☆国立公園は動物のためにあるのか、観光事業のためにあるのか
 ★どちらが答えか──社会運動VS根本解決

第五章 戦地の動物

ラジモハン・ラマナタピッライ
 ★動物は平等以上 ★飼い馴らし──動物の新たな地位の発達 
 ★戦地の動物 
 ☆戦地の象 
 ★馬の運命 ★ゲリラ戦術と野生 ★結論

第六章 戦争と動物、その未来

ビル・ハミルトン
エリオット・M・カッツ
 ★断片をつなぎ合わせて ★軍内部の研究 
 ★大衆メディア、娯楽作品からの着想 ★結論

終章 動物研究、平和研究の批判的検討   ──全ての戦争を終わらせるために

アントニー・J・ノチェッラ二世
 ★人間以外の動物との戦い ★人間の戦争は全生命に影響する ★エコテロリズムとの戦い
 ★エコテロリズムに対する緑の犯罪学の見方 ★変革と戦争放棄

 本論の前に、献辞・緒言」・謝辞、その他書評など七項が置かれ、終章の後に参考文献・総索引・執筆者紹介・編者紹介、と、周到な「理解補助?項目」も用意されています。
 そして、訳者の「日本の軍事、自然の脅威──訳者はしがきに代えて」及び「日本軍国文化考──訳者あとがきに代えて」が本論を挟み、本書によって戦争被害が「人間以外の生きものに及ぶ害悪の実態を知れば」私たちの求める平和の概念も変化させざるを得ないであろうと、力強く語りかけています。

 個人的感想を述べれば、本書カバーの写真、泥沼にはまった二頭立ての給水タンク運搬車、片方の馬の足がすっかり埋もれてしまっているのに、うしろの兵士数人は立って見ているだけ。アタマにきたどころではありません。この酷薄が、ヒト以外の生きものへの戦争被害の象徴。

 目次で見当がお付きと思いますが、本文で例示される「動物利用」はこの馬さんのケースを上回ります。読者諸兄姉には読破の意欲を失われると思います。それでよろしいのですけれども、やはり多くの人に読み、知ってもらいたいので、ご近所の図書館にはたらきかけて下さいますよう、お願いいたします。
 図書館に収められましたら、是非表紙だけでもご覧下さい。それと、訳者のはしがきとあとがきも是非。個別のひどい事例は出てきませんので。念のため申し添えます。
 また個人的にわたりますが、訳者のご母堂に尊敬をささげます。


終章 「人間の戦争は全生命に影響する」より 


 人間以外の存在が人間の軍によって様々に苦しめられる中、本書の著者らは主要六種の搾取形態を明るみに出した。乗り物としての利用、実験材料としての利用、兵器としての利用、戦時の被害、戦後の障害や疾病、そして未来の軍事利用に向けた計画。各章はこの六つの搾取について詳しく述べている。
(二三二頁)

 戦争は莫大な利益をもたらす産業といってよく、銀行、兵器製造業者、航空機製造業者、服飾デザイナー、食料品店、インターネットプロバイダー、携帯電話会社、コンピューター会社、その他多くの企業、事業主が恩恵を得る。(二三四頁)