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TOP mook 動物ジャーナル バックナンバー 動物ジャーナル57・知っていますか? この念書

■ 動物ジャーナル 58 2007 春

  知っていますか? この念書

新井 ルマ


[編集部注]
 横浜市では、引取られた犬はいわゆる愛護センターで〈殺処分〉され、猫は獣医師による薬殺という方式を採っています。
 この度有志が、猫を獣医師に委託する際に提出する念書(様式5)を入手、それについて市職員に説明してもらいました。
 同行された新井ルマ氏(自称動物愛護一年生)は、この念書の存在も、職員の説明内容も、ほとんど一般の人には知らされていないという事実におどろき、率直な感想をまとめて、ご自分のホームページに掲載されました。
 当編集部は、非常に重い事柄であると感じ、同氏の許諾を得て、転載させていただきます。
 なお、このホームページURLは編集部にお問合せ下さい。

知っていますか? この念書(様式5)

 唐突ですが、お伺いいたします。
 下記の文書、これは実際に使われているものなのでしょうか?
 答えは「Yes」……公に使われている文書だということです。
 保健福祉センターに保管されているのは、一年くらいだとか。
 横浜市では、犬はセンター、猫の殺処分はすべて動物病院で行なっているとのこと。
 その時にお役所と動物病院と動物を持ち込んだ方のもとに残される念書がこれです。
 私がこの文書のコピーを見せてもらって驚いたのは、「特定の飼主がいないことを確かめたうえ持参しました」という部分です。
 つまり、のら猫の殺処分を依頼する文書というわけですね。
 私だけが知らなかったのかもしれませんが、これは驚愕の現実でした。
 「動物との共存」を謳っているのに、行政がのら猫の殺処分を当たり前のように認めているわけですから。
 「No」という答えを期待していましたが、答えは「Yes」でした。

 では、のら猫を捕獲器で捕獲して動物病院に持っていけば、処分してくれるわけですか? 
この質問に対する答えは「NO」。
 そのようなことは「駄目、許されません」というきっぱりしたお返事でした。
 え、どういうこと? 頭が混乱してきました。
 そういう判断は動物病院の先生にお任せしている……という実に曖昧な状況のようです。
 つまり、実際に殺処分するかしないか、そのあたりのことは、殺処分を行なっている動物病院の先生の裁量に任されているというのです。
 なんだか、私の頭ではよく理解できませんでした。つまり、現実問題として、のら猫(おとな)を捕まえることはできないから、持ち込まれて処分されるのは、赤ちゃん猫だけというのです。

 矛盾していませんか? 持参できる赤ちゃん猫を殺すことができるなら、おとなののら猫だって殺していいということになるのではありませんか?
 結局は、連れてこられるのら猫なら、殺処分可能ということではないでしょうか?

 あくまで殺処分は、「やむをえない場合にかぎり」ですから……というもっともらしいお答えでしたが、やはり釈然としないものがあります。
どこにも、動物との共存や、のら猫たちの命の重みに対する配慮は見当たりません。
 また、この念書の成猫(生後31日以上)という区分けにも、かなり無理があるように思いますが……。
 一般に、成猫って六ヵ月以上ではありませんか?
成猫と子猫では、殺処分の費用が異なるのですか?
 答えは「Yes」。
 そうですか。動物病院への委託による事情が関係しているのでしょうね。
 そう、「一はら」という表現も今回初めて知りました。
 五匹生んでも、一匹生んでも、同じ一はらとして、発生料金の支払いを事務的に行なうのでしょう。
 動物病院で殺処分が行なわれているのは、横浜だけ……そこに問題があるのではないですか? 
とお伝えすると、動物愛護の方々は「横浜が羨ましい」と言っているそうです。
 えっ、なんで?
 ガス室で殺すのではなく、一匹ずつ対応して殺すから羨ましいのだそうです。

 殺処分ゼロしか思い描けない私には、到底理解できない理屈でした。
 病苦の苦しみを免れさせる安楽死処置と殺処分は同じ動物病院で行うとしても、意味がまったく違うものでしょう。

 もうひとつ、お尋ねします。
 殺処分をしている動物病院には「殺処分します」という表示がありませんが、皆、どうしてその病院に持って行くことがわかるのですか?
 保健福祉センターで、指定獣医師をお教えするからです。
 なるほど、役所が持って行くように勧めるわけですね。
 私は飼っている自分の猫を診ていただくなら、できれば殺処分していない獣医さんを選びたいと思います。
 他にも、そういう方々が多いことでしょう。
 表示がなければ、表面上、わからないではないですか?
 はあ、獣医さんも好きでやっていることではないので、そのようなことは出来ないのでしょう。という答え。
 そのような行為が不人気に結びつく自覚があるようですね。だから、隠して行っている。私を含め、知らされない、知らない市民は馬鹿みたいではありませんか。
 のら猫のお世話をしている方々は、この現実をどう思われるでしょうか?
 あなたが一生懸命守ろうとしている子たちがいつこの文書で殺処分に出されるかもしれないのです。他人事ではありません。

負傷した猫について

 時々いただく負傷したのら猫のご相談。とても、私個人には解決できないことばかりです。
 苦悩がついてまわるケースが多いので、ついでに聞いてみました。
 動物の愛護及び管理に関する法律に下記の項目があります。
(8)犬及びねこの引取り等
都道府県等は、犬及びねこの引取りを行うとともに、道路、公園、広場、その他の公共の場において発見された負傷動物等の収容を行います。
 このような法律がありますけれど、横浜ではどうなっていますか?
 まずは、指定動物病院を紹介してくれるそうです。そして、実費を払えば治療はしてくれるようですが……
 その治療費のこと、治った後にその動物をどうするか……が問題だとか。
 そうです。外に出せないような結末になった子はどうしたらいいでしょうか?
 結局は、持ち込んだその方が治療費を払い、きちんと飼ってくださるなら問題は解決します。しかし、そうでない場合は、治療しても殺処分……
いえ、現実は、無意味ですから治療しないで殺処分ということに至るようです。

 それでは、ご相談者さんたちに、ご自分で頑張るしかないとお伝えするしかないわけですね? 
 はい、行政の引取りはあくまで最後の手段と考えてください、とのことでした。
 やはり、向き合ったその方以外、動物たちを守ることはできないようです。

今、私が思うこと

 やはり行政では何もやってもらえないのだ……
そして、やむをえない事情のもと(現状は非常に曖昧)では、役所と動物病院が公然とのら猫の殺処分を認めている。
 昨日、お話させていただいた職員の方は、かなり頑張っていらっしゃる方だと思う。
 長い時間、アポもとらない相手につきあってもくださった。そのことには感謝している。
 しかし、役所と動物病院の委託関係があることで、互いが互いのせいにして、逃げ道をつくっているという印象が拭い去れない。これは、あくまで私見だが、私にはそう思えた。
 この現実、どうしていけば、少しでも改善の方向に向かっていけるのだろう。

私が今願うのは下記。
 殺処分をやめて、その費用で負傷した動物の治療、保護を行う病院および施設を運営してほしい。
それができないなら、せめて動物病院での殺処分をやめてもらいたい。
 やめられないのであれば、それぞれ動物病院の先生の裁量に任せるだけでなく、しっかりした監視機関を置いてほしい。
 また、ペットを飼う側の気持ちとして、殺処分を委託されている病院には必ず公表を義務づけてほしい。
 誰の責任とも言えなくなっている難しい問題だけど、横浜のこのシステムは、動物との共存が基本にあるとは思えない。
 現実がこのようなものなら、せめて「動物との共存」なんて謳わないでほしい。
なまじ、行政に期待をかけてしまうではないか!

 最後にひとつ、希望をもったこと。
 何年後になるか明白ではないが、行政の施設で、のら猫の不妊去勢手術を行おうというプランがあるらしい。
 ぜひ、現実のものとし、誰もが利用できる有用なシステムを作ってもらいたい。
そう、お伝えしてきた。
(あらい るま)


 この新聞記事について説明します。
 これは、14ページからの泉井氏稿にある虐待男逮捕(一月十六日)の一週間後に掲載された検証記事です。
 内容は、このような虐待目的のもらい受けが発生しやすい事情として、横浜市と横浜市獣医師会の委託契約の下に行われる「所有者不明猫」の処理法を指摘したものでした。
 また、猫を引受けた獣医院は三日以上保管すること、猫一匹につき九千五百五円が獣医師に支払われることなど、一般には知られていない「契約」事実を示しています。
 新井氏の「念書」への疑問と回答を合せ見るとき、この記事末尾にある市担当者の「飼主は出来る限り責任もって」という発言は、何ともちぐはぐに感じられます。
 (青島)