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■ 動物ジャーナル 56 2006 冬

  ブータンは気高い国


 新春早々、新聞の「清貧ブータン」という大きな文字が目にとび込んできました。「豊かな国はどこですか」とのタイトルの下に、ブータンとアメリカを対比する特集です(東京新聞一月七日)。
 ブータンについては、『動物ジャーナル』二〇〇二年春から二〇〇三年冬まで、佐上邦久氏の序章に続き、山口武雄氏「獣医、ブータンへ行く」連載六章の掲載で、読者にはおなじみのことと思います。
 国の施策として動物の不妊手術を実行する、生きものに温かいお国柄が印象付けられました。

 右の特集記事によると、
○ 経済的豊かさを示すGNP(国民総生産)という尺度をブータンは採らず、三十年以前、当時二十一歳だった前国王の提唱による「GNH(国民総幸福)」を追求するのが国の責務と捉え、今作業中の憲法草案にもそれを明記し、幸福度を数値で示せるよう方法を研究している。ゆくゆくは数値化された幸福度をGNPにも対峙できる客観的指標にしたいとしている。「物質的豊かさは幸福になるための手段に過ぎない」との考えは行きわたるっている。
○ チベット仏教の「足るを知る」「輪廻転生」の思想を根底にもつ人々は、自然環境を尊重し、過剰な便利さを求めない。(例えば、越冬しに来る鶴にとって電線は危ないと考えて、ソーラー発電で暮す。)また、森林が国土の七十%を占めるが、今後も六十五%以上保全することを政策として決定している。「物欲の達成を追い求めると、環境への悪影響などに気づかなくなってしまう」とは、国営シンクタンク上級研究員の言。
○ 家族、人の絆を重んじ、助け合う暮しぶりは自然に身に付いている。「周りの人がひとりでも不幸だと、人は幸せになれない」から。
○ テレビ・インターネットの解禁(一九九九年)以来、西欧化の波にも晒されているが、政府は「多少の変化は自然なこと、我慢を無理強いすべきでない。満足感とのバランスが大切」と、慌てることはない。国民への信頼がある。
その他その他が紹介され、記者の判定は「ブータンが一周遅れのトップランナーに見えてくる」というものでした。

 二〇〇二年、サッカーのワールドカップ決勝戦が開催された日、もう一つのサッカー決戦・サッカー最下位決定戦がブータンの首都ティンプーで行われました。たまたまテレビニュースで開始前の映像を見たのですが、この国の王子の立ち姿が現れ、私は、ここ何年も見ることのなかった本物の気高さに、びっくりしてしまいました。つくろわない挙措、にじみ出る大らかな威厳、こういう気高さは、この国土にある全存在の自然な反映、自然な象徴なのかもしれません。
 二〇〇八年には民政に移行するとのこと、国民総幸福の数値はどう示されるでしょうか。

(動物虐待防止会)