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■ 動物ジャーナル 55 2006 秋
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「殺してはならぬ」が基本
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動物虐待防止会
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殺してはならぬ。すべての生きものにとって生命は愛しい。己が身にひきくらべて、殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ。
最初期の仏典『ダンマバダ』から引用して、宗教学者・久保田展弘氏が紛争地での殺戮を哀しみ、「いや、この日本においても。」と付け足された。(『動物ジャーナル49』掲載)
世界各地の紛争、戦争、犯罪。日本における凶悪事件の数々。
そのような中、二〇〇五年三月「国際宗教学宗教史会議」第十九回世界大会が東京で開かれ、翌二〇〇六年八月には京都で「世界宗教者平和会議」が百カ国・二千人の宗教者を集めて開催された。
これらの会議では、紛争解決のため、宗教学者の勧告など積極的行動が提案され、宗教者は、自省・責任・協力を確認しあったという。「殺すなかれ」は全ての宗教に説かれるから、宗教界が「殺さない」社会実現に熱意を見せたと言える。殊に仏教は不殺生戒の対象に動物を含む。このことを、近年欧米で仏教の平和思想が注目されているとのことなので、充分咀嚼し拡めてほしいと希う。
今、動物の現実を見渡せば、文化の発展、教育上の必要、娯楽・美食追求などの名目で不殺生戒は踏みにじられている。むしろ、なりふりかまわず理屈を創り出し、正当化しようとしている。
たとえば「人間は食物連鎖の頂点いる」の論。これを振りかざして美味飽食にうつつをぬかす者は、連環をなす全生類から顰蹙を買うであろう。かれらはみんな抑制の効いた食べ方をしているのだから。
私たちは、つつましく、いのちを頂くときは最小限に、そして殺生の罪を自覚しつづけたい。
食物だけでなく、全ての殺生に対する一人一人の自覚は動物からヒト社会にも及び、やがて地球上の平和につながってゆくと信じている。
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