TOP | ■ アピール | ■ 活動報告 | ■ GPCA-FAQ | ■ トピックス | ■ 出版案内 |
mook 動物ジャーナル | ■ Links | ■ 通信販売 | ■
ご連絡窓口 |

TOP mook 動物ジャーナル バックナンバー動物ジャーナル46・動物行政アンケート報告

動物ジャーナル 46 2004 夏

  動物行政アンケート報告


「回答のまとめ」

 長崎県森山町が町営施設において動物の不妊手術を実施するとの報道(毎日新聞2004年1月12日)を前代未聞の朗報として「動物ジャーナル44」でお伝えしました。
 そして、これを受けて、全国の自治体に、同様の政策を実現できるかどうかを主眼として、アンケートをお願いしました(内容は『動物ジャーナル45』、本HP掲載)。
 回答は、少し遅れるとの知らせもありましたので、四月初めまで待ち、80%の返送を得ました。
(この80%は発送数60に対するもので、市町村・中核都市からの計13通は入っていません。)
回答の有無は「殺処分数一覧表」に入ってます。
 以下アンケートの質問順に回答を整理します。

1.
昨年度殺処分数

 数字の背後に、一つ一つの命が在ったことを思い、書き写すのは気の重い作業でした。
 アンケートを発送した都道府県47、政令指定都市13、それに回答を頂いた中核都市2を加え、一覧表にまとめました。
 成犬子犬・成猫子猫に欄を分けていますが、区別しない自治体が25。その数は両欄の中央に記入してあります。双方区別有りは19自治体、犬のみ区別するのが京都府、猫のみが岩手・山形・岡山の三県です。
 双方を区別する自治体19(青森・茨城・群馬・神奈川・石川・山梨・長野・三重・奈良・島根・大分・宮崎各県、札幌・仙台・川崎・京都・神戸・旭川・奈良各市)に、猫のみ区別の岩手・山形・岡山三県を加え、22自治体について、子猫の数に注目しました。
 なぜならば、前回にも述べましたが、殺処分された子犬の数がおおむね成犬の数より少ないのに対し、猫の場合は逆で、その多さは半端なものではないと見えたからです。
 右22自治体で殺された子猫の数を成猫の数で割り、何倍になるかの数値を出してみました。
0.4 0.7 1.6 2.0 2.2 2.5 2.6 3.0 3.2 3.9 4.0 4.0 4.6 4.8 5.3 5.4 5.7 6.2 6.3 7.0 9.8 39.2 
 (小数点以下二位を四捨五入)
 数字をもてあそぶ(平均を出すなど)のは命への冒涜と考えて慎みます。が、右の状態から、3倍弱から6倍強という傾向は読みとれます。
 猫の繁殖制限は努力不足、はっきり申せば放置されていると見てよろしいでしょう。

2.

子犬子猫の引取り(殺処分)依頼者への指導
「無」は皆無。
「有」の内容――具体的に自由に記述してもらいましたので、その文章から項目を拾い出し、まとめました。
 一自治体が複数項目を挙げますから、その言及内容の多い順に記します。
(1)不妊手術を勧める――54例
   うち、積極的に「助成金があると知らせる」が3例。
   室内飼育を勧める(懐妊せぬよう?)が2例。
(2)新しい飼い主探しに努力せよと言う――31例
   うち、もらい手の探し方を教える・公営の譲渡制度があることを教える等が8例。
(3)終生飼育を求める――23例
(4)致死処分に言及する――6例
   うち、「あなたが殺すのと同じ。飼育前によく考えよ」と言う・スライドで処分を説明、が各1例。
(5)家族の合意有無を確認する――3例
(6)命あるもの・くり返さぬよう諭す――3例
(7)獣医院での安楽死を勧める――1例
(8)不妊手術をしなかった理由を聞く――1例
(9)今後の不妊手術確約を求める――1例
(10)愛護に関する基本認識を理解させる――1例
 その他、パンフレット・リーフレット等による説明や啓蒙も挙げられてあります。その資料を同封送付し
て下さったところもありました。
 「終生飼育を説得し、再考すると連れて帰った人もいる」と書き加えられた県があり、その実りのあり難さはいかばかり、と思われたことでした。

3.
なぜ殺処分するのか、理由を具体的に
(1)記入されてないのが三県ありました。
(2)次に、関係法令(動物愛護法・狂犬病予防法・犬及びねこの引取り並びに負傷動物の収容に関する措   置要項・地方自治体の条例)を個々又は複数挙げたところが18例ありました。
 右の法令等を挙げたのに加えて、「収容される数があまりに多いため」としたところが五例。さらに詳しく「収容施設・人員がなく、数が多すぎるので虐待的飼育になってしまう」と書いてあったのが1例。
(3)収容動物の数の多さ=過多を理由に挙げる自治体は22に及びます。
 過多の故に「全てを長期間飼育することは困難」、なぜならば、飼育のための「施設がない」11例。
「人員が確保できない」5例。「財政的に無理」5例。「引取り猫のほとんどが離乳前」という悲鳴もありました。
(4)「長期飼育は困難」「その体制がない」と記された各1例は、過多でなくても無理という意でしょうか。
(5)具体的ではなく「やむを得ず」のみの回答が3例。
(6)理由の記述に加えて、「殺さずにすむよう啓発している」「譲渡に努めている」等の弁明?も記されていました。心中お察しします。

4.
森山町のように、職員が手術を実施するか
(1)回答なしが三県ありました。
(2)「3=実施する。二〇××年度から」は皆無でした。
(3)「2=実施したいと思っている」は四自治体。
  現在できない理由として、対応できる機能がない・人員・予算がない・センター等がないが、建設時に検  討する等が挙げられました。少くとも意志はあるわけで、それがどのように実現されるか期待し、応援しましょう。
(4)「1=すでに実施している」は6例。
 ただし、「行政から譲渡する場合に職員が手術する」が全てで、森山町は「住民の依頼を受けて実施する」のですから、単に職員が実行するだけでは当てはまりません。獣医師会に委託し、助成金も出しているという回答もありました。これもこの項に当てはまりません。従って、やはり森山町は、独歩の存在ということです。
(5)「4=実施しない。又は、できない。その事情・理由」
回答はこの項に集中しました。32例。ただし理由無記入が二県。挙げられた理由で最も多いのは飼い主の責任でなすべきことである――19例
 行政の助成制度の存在と効果に言及する回答も多数。
以下、
 行政は啓蒙活動するのが役目――10例
 開業医師がすべきこと――5例
 この項に属する記述として「獣医師が多数存在する」「開業病院との競合を懸念」「獣医師会に助成金あり」等がありました。
上記の回答自治体は「実施しない」表明と見られます。が、以下の場合「できない」表明で、この理由がクリアできれば実施に転ずるかもと考えておきます。
実施できる施設・設備がない――7例
実施可能の人員、獣医師がいない――8例
財政的に無理――4例
今後検討したい――3例
一条の光として信じたいところです。
(6)その他、項目に○印のなかった二県が「助成金あり」「行政からの譲渡時実施」と記し、他の自治体からは「住民のニーズなし」「そもそもセンターがない」「手術施設建設は非飼育者から反発が出る」等々の記述。

 以上で一応のとりまとめを終ります。
 当会として自治体アンケートを実施したのは初めてですが、誠実に対応して下さった方々に感謝していま
す。県内全域に配信・回答返信のあった奈良県、同じくまとめに労を尽くされた島根県、山口県、徳島県
(当方で把握できた限りです)の皆様にはことさらに。まとめた事柄の分析はこれからですが、明白なのは不妊手術の必要性です。当会は「実行あるのみ」と考え、現実的な行動を準備しております。