デジタルトランスポート環境のまとめ 


TOP Audio Topics DIARY PROFILE LINK 掲示板

[PC Audio編] 12.デジタルトランスポート環境のまとめ (2021年11月23日記載、2023年7月10日更新)

「究極のデジタルトランスポート」を探して随分と長い間あれこれとトライを続けてきた。未だ究極などという次元には程遠いのだが、どうやらしばらくはこの構成でいけるだろう、という地点まで辿り着いた。改めて眺めてみれば、これが本当に探し求めてきたものの成果なのだろうか、との自問もしてしまうほど廉価でシンプルなものである。それでも求めてきた「音」は何とかこの構成でも実現できているようにも思う。少しでも良い音となることの期待で、それぞれ工夫を行ってきたこともあり個々には詳細を記載してきたが、あちこちに分散してしまっているので全体をざっくりと把握できるようにここにまとめておきたいと考えた。

膨大な音源を手中にできるネットワークストリーマ―として「Bluesound Node」が最早当方には欠かせない存在となり、PCオーディオとしては、ファンレスPCとラズパイ4を組み合わせた「AoE Symphonic-MPD」である。この二つの構成からデジタル出力(S/PDIF)を受けて、一旦「MUTEC MC-3+USB」にてリクロック処理を行っている。ここには外部のマスタークロックから10MHzを送り込んでいる。その後に4wayマルチアンプシステムの核となるデジタルチャネルデバイダーへと送り出す、という構成が我が家におけるデジタルパートの全容である。

0.主要機器構成図:(2023年7月10日更新:Digital Cableについて追記)
Interconnect Cable

以下、順にそれぞれの構成で行っている対応内容や施策を紹介していく。

1.Bluesound NODE (Gen3)

Amazon Music HDを始め、MQA Radio Paradise、 Your Classical などのストリーミングを聴くネットワークストリーマとして我が家では必須の機器となっている。これもリーズナブルな価格の機器であるのだが、デジタル出力では意外と思えるほど実はかなり音が良い。これをさらにブラッシュアップさせようと内蔵スイッチング電源を換装して、外部から良質のアナログ電源を供給するスタイルとしている。このBluesound Node系の機器はワールドワイドで相当実績のある製品であるお陰と思うが、電源変更の際に必須となる専用のインターフェースカードが英国の Fidelity Audio から販売されている点は非常にありがたい。電源換装によりさらに音に磨きがかかる。

(1)左側が5V(3A)を供給するアナログ電源:
Bluesound Node (Gen 3)

(2)電源変更のための専用インターフェースカード:
基板上のコンデンサはすべてOsconである点も注目に値する。
Bluesound Node I/F Card

2.AoE Symphonic-MPD

音楽再生ソフトウエアとしてのSymphonic-MPDについては、そこに至るまでのラズパイスキルのキャッチアップのため長~いストーリーと共に「Symphonic-MPDノススメ」としてまとめてあるので そちら を参照いただくとして、ここではそのベースとなるプラットフォームを中心に記述する。

AoE Symphonic-MPDは「フロントエンド」と「バックエンド」という2台のPC環境で構成されており、バックエンド側は最終的にS/PDIF信号を送り出すための最低限の機能で稼働させることに特徴がある。このバックエンドを駆動する役目となるのがフロントエンド。このフロントエンドは「PCオーディオで最上の音を目指す」という狙いで完全ファンレス仕様、電源系ノイズ対策に注力して2016年に製作したもの。その詳細な内容については こちら に記載してある。AoE Symphonic-MPDのフロントエンドとしてはArch Linux64 x86を稼働させている。

(注記)AoEとは「Audio over Ethernet」の略でフロントエンドとバックエンドはLAN接続。

(1)フロントエンド、後日かなり一般的となったStreacom製のシャーシを使用:
AoE Symphonic-MPC Front End

バックエンドはラズパイ4である。極めてコンパクト、廉価なものであるが、音への大きなインパクトを持つ肝の部分でもある。ケーシングは前述のフロントエンドとは打って変わってプラ製であるが中身は案外と凝っている。S/PDIF信号を生成するHAT基板を改造してクロックを高精度のNDK2520に換装してある他、このクロック専用の電源、ラズパイ用の電源の二系統を用意してある。TDK LambdaのAC電源フィルターやファインメットビーズなどの電源系ノイズ対策も言うまでも無くばっちり。ソフトウェアはAoE Symphonic-MPDの専用バックエンド(Linuxベース)である。

(2)ラズパイバックエンド、外観はプラケースなのでちょっとチープなのだが、、、:
AoE Symphonic-MPC Back End

内容は肝心のラズパイがほぼ見えない程凝ったもの:(アルミケースを是非とも奢ってあげたいのだが)
AoE Symphonic-MPC Back End

3.MUTEC MC-3+USB

この機器は結構多機能でUSB DDCとしても、デジタル入力の切替機としても使えかなり重宝する。当方はデジタル信号を「リクロック処理」することによる音質の向上を目指して導入したが結果としてその恩恵はかなり大きい。本来はプロ用の機器なので少々取っつき難さはあるが使い慣れればドイツ製という質実剛健さを実感すると思う。こちらも内蔵スィッチング電源を外部から良質なアナログ電源(6.3V)を供給する構成に改造してある。

(1)MUTEC MC-3+USBの下にあるのが専用アナログ電源:
MUTEC MC-3+USB and Power Supply

電源だけでも充分とは思われたのだが、リクロックもやはりやるなら徹底したい。その観点からMUTEC MC-3+USBに10MHzマスタークロックを注入している。オリジナルのクロックも充分高精度なのだが結果として音の品位は向上する。やはりデジタルはクロックと電源(のノイズ対策)なんだろうな、と思わず納得してしまうことなる。

(2)リクロック処理の更なる精度向上を目指してマスタークロックは不可欠:
External Master Clock Cybershaft

4.ノイズ防止トランス

それぞれの内蔵スイッチング電源等を変更してもなお、大元の交流電源のノイズ対策はやはり必要だと思う。このため、デジタルチャネルデバイダー、マスタークロック、MUTEC MC-3+USBにはノイズ防止トランスを介しての電源供給を行っている。消費電力の小さい機器なのでそれに見合った小容量(100VA)のノイズ防止トランスを使用している。容量が小さいのでトランスの唸りなどの弊害はほとんどない。なお、デジチャン用として採用しているのは、豊澄の NR11-100A というノイズ防止トランスとTDK Lambdaのノイズフィルター( RSMN-2003 、アモルファスコア採用)を組み合わせた構成。接続は壁コン~トランス~フィルターの順である。その効果は期待値よりもかなり大きい。

5.サーバーPC

我が家では音源用にNASを使わなくなってから久しいのだが、基本NASでもサーバーPCでも機能はほぼ同じ。ただ、PCの方がいろいろと自分で構成、環境を工夫できるし、サーバー用を意識してOSをインストールしておけば立ち上がりやシャットダウンは爆速である。お古のPCパーツ(CPUやマザーボード、メモリなど)の再利用で済むので敢えて高価格なNAS導入には踏み切っていない。なお、OSはArch Linux64 x86とWindows Server 2012 R2のどちらでも立ち上げられるようにしてあり、機能的には同一に仕立ててある。OSと音源はそれぞれにSSD(振動、発熱、消費電力の観点)を割り当てている。PCオーディオに本格的に取り組み始めた頃に調達した PCケース であるが、横置きで案外見栄えも良いので10年以上経つが今も現役。ただし、現状であればもっとずっとコンパクトにすることもできるので今後のリニューアルプランの中でこの辺りを考えて行きたいと思うが、ストリーミングが中心となってしまうと音源サーバーとしてその存在意義も少々薄くなってしまうだろうか。

(1)さすがに外観は多少くたびれてきたかな:
Server PC for Music Data Base

6.マルチチャネルアッテネータ

こちらはデジタル部分ではなくアナログによる音量調節機能なのだが、一点補足しておかねばならない。プリアンプで音量調節した後のアナログ信号をデジチャンに送り込む構成がどちらかと云えば一般的とは思うが、我が家のこのデジタルトランスポート環境においてはアナログならびに所謂デジタルボリュームによる音量調節をデジチャンの上流では行わず、音量を減衰させていないデジタル信号をデジチャンに送り込んでいる。この構成ではデジチャンの後段にて4way対応の音量調節を行うためのマルチチャネル(8ch)アッテネータの存在が必須となる。デジタル入力を行う場合でも、現在ではデジタルボリュームも結構高精度であり、それほど音への影響はないものと思う。だが、ここは余分なA/D、D/A変換を避けたいし、デジタルボリュームも使いたくない、という当方の「拘り」の部分でもある。導入経緯や機器の仕様は こちら に。

機能構成図と外観:
System Configuration Multi Channel Attenuator




index back top