オーディオ日記 第56章 音楽三昧の日々(その1)2023年9月 7日


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Moving Massの考察:

スピーカーユニットの重要なパラメータのひとつに「Moving Mass」というものがある。シンプルに云えば「振動板の重さ」である。多くの市販ユニットではいろいろ重要なパラメータが明示されており、エンクロージャの設計や使い方など購入時の目安にもなるのだが、必ずしもすべての値が公表されているとは限らず、一部分に留まるケースもある。

このMoving Mass(質量)に関する一般論としては、軽量であるほど初動感度が高く、またユニットとしての能率も(磁束密度が同じ場合)高くなる、という傾向がある。Moving Massは振動板の素材や製法によっても変化するので、これだけで「音の素質」を見抜くことはできない。しかしながら、古典的な紙を始めとして、「軽量で高剛性である」という素材が試され、開発されてきた歴史的事実がある。アルミ、マグネシウム、ボロン、カーボン、ダイヤモンド、 ベリリウム 、、、植物系ではシルク、麻、ウッドコーン、ペーパーコーン等々。ペーパーコーンであっても紙自体の素材や製法は千差万別で、それによる音の差は大きいとされてきた。

また、いくつかの素材を組み合わせた複合素材(ダイアモンドコーティングのベリリウムやカーボン系のグラフェンを表面素材としたもの、など)も広く採用されており、これらは耳目を集めるという意味もあってメーカーの格好の宣伝材料ともなる。目指す観点は、軽く硬い(たわまない)、ということであり、ここはどのような振動板素材であっても基本は変わることはないのだが、軽さ=絶対的な正義ということではない。

今般のベリリウムの中高域、中低域のユニットの導入に絡んで、このMoving Massについて改めて確認してみたが、Moving Massと音との単純な関係を確認するまでには至らなかった。なお、当然ながら重さというのは振動板の面積(口径)にも比例するので、単純な重量ではなく、面積比で考えねばならない点もあろうかと思うが、下記の表が示すように単位面積当たりの重量では大幅な差異は見られない(各社の優秀なユニットの所以であると思う)。なお、聴いたことのあるユニットの範囲となるが、それぞれにやはり微妙な音の差異があって、オーディオの奥の深さを感ぜすにはいられない。

(参考)各社代表的なユニットの一覧表:
Moving Mass

付記:(雑感)

我がオーディオの来し方を振り返ってみれば、多くの時間をスピーカーユニットを「如何にして手懐けるか」に費やしてきたように思う。学生時代にバイトをして購入したパイオニアの3wayスピーカーキット。社会人一年目に一大決心をして手に入れたALTEC(416-8Aと802-8D)のユニット。その後、JBLやElectro Voiceを経て、SONY( SUP-L11、SUP-T11 )へと辿りついた。これでもう終着駅か、とも考えていたのだが、それでも尚納得できる十全な音に仕立てることは叶わず、望みを4way化に託してユニットを選びながら少しづつ構成を発展させてきた。

個々のユニットの音を単純に括って評価してしまうことは極めて難しい。それは複雑なコンポーネントの一つでしかなく、音を決める要素は広範囲にわたる。そのひとつひとつの要素について課題と対応を考え、ブラッシュアップし、総合的な再生能力を向上させておかなければユニットの真っ当な評価をしたことにはならない。そのことをいつも痛感する。

4wayマルチアンプシステムの理想型を描き全体の構成を決めて洗練させていくためには、デジチャンやアンプのみならず当然のことと思うが送り出しとなる上流の吟味、更には各コンポーネントを繋ぐケーブルに至るまで神経を張り詰めねばならない。それらのひとつひとつを完璧ではないにしろ、出来る限りの手を入れてきた。その結果として朧げな部分は残るものの、ユニットの能力の判断が少しは付くようにはなってきたと思う。

スピーカーシステムとして製品になったものを導入している訳ではないので、出てくる音は自分の感性と使いこなしの能力に100%依存する。従って、どんな出音であってもそれは自分として「No Excuse」の音になる。厳しく自分自身で判断していかなければならない。この判断は、出来る、出来ないに係わらず人に委ねることはできないもの。

自分に甘くならずにそんなことができるんだろうか、、、そう自問することもあり、また出音に納得できない、と悶々とすることも多々ある。納得できない点が、自分のシステム構成のどこに起因するのか、そしてそれがスピーカーユニットの能力にも関係しているのか、その見極めが(どんな音源にも拘らず)できなければただ交換を繰り返すことになりかねない。おそらくは、かっての自分はそうだったんだろうとも思う。それ故に名器と呼ばれるユニットすら使いこなせては来なかったし、結果にももどかしさが残った。

こんなことの繰り返しでもあったようにも感じる自分のオーディオの道。既に半世紀ほども経ってしまったことなど到底自分では信じられないのだが、だからといって、それを否定し嘆くようなことでもない。その間、多くの音楽に出会い、導かれて幸せの時間を過ごしてきたとも云えるのだ。音楽を聴く素晴らしい至福とオーディオの艱難辛苦、その狭間で呻吟してきた自分なりの歴史でもある。

さて、このような紆余曲折がありながらも今般自分流の「ベリリウム三兄弟」のスピーカーユニット構成に至った(三兄弟の呼称はオーディオ仲間である Myuさん の団子三兄弟から拝借)。ここで聴ける音は単なる結果、あるいは偶然の産物ではないんだろうな、と思わざるを得ない。もちろん自分なりには足掻いても来たけれど、それ以上に先達オーディオファイルの方々の知見を参考としながら、またアドバイスやサポートもいただきながらやっとやっと生まれてきた音だと思う。

我が家の「ベリリウム三兄弟」:
(Experimental) BEW-16

従って、ベリリウム振動板という素材、あるいはスピーカーユニット能力というような単なるパーツ論では語れない部分が多いこともまた事実。しかしながら、ここで聴けるモーツアルトの弦楽四重奏はやはり「ベリリウムあってのもの」という感も強い。単純な素材礼賛はオーディオにおいて慎むべきものとも思ってきた。だが、現状はこの音を素直に享受すれば良く、その観念に縛られる必要も無いのかも。それ故なのだが、自分のオーディオの道の果て、言い換えれば「限界」はどうもこの辺りなんじゃないだろうか、とも考えてしまう、、、

冷静になって考えてみれば、それも含めて所詮自己満足の世界でもあるんだろうけれど、今は音楽に浸れるこのささやかな幸せを(結局は少しの期間の自己満足にすぎないのかもしれないが)味わっていたい。


                 4way構成の設定値(2023年9月7日暫定)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
(Experimental)
BeW-16
Bliesma
M74B-6
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 97.0 (+7.0) 92.0 (+2.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +0.0 +0.7 +2.7 +3.5
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 88.0 86.2 84.7 83.5
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

200
200

800
800

2800
3550

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-18 24-48 48-48 24-flat
DF-65 DELAY
設定
cm -8.0 +19.5 +22.5 +25.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-65 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-65デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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