オーディオ日記 第56章 音楽三昧の日々(その2)2023年9月18日


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べリリウム三兄弟:

最後に加わったミッドローユニットにあわせる形で最終的なクロスオーバー周波数を決定した。それぞれにポテンシャルの高い広帯域をカバーできるユニット達なので、どのように帯域を分担させるのか、という点は己の技量が問われる課題でもある。このミッドローユニット、素直な音で高域方向の雑味も極めて少ないので、これを活かすべくいろいろと試行錯誤した結果を踏まえて、250Hz、1250Hz、4000Hz(全て24dB/octのスロープ特性))というクロスオーバーポイント。思っていた以上に能力が高く使い易いユニットでもあるので、音そのものに大きな影響を与える250Hz~1250Hzの帯域を担当することになった。全体の音としては自分なりの感性に沿ってはいるのだけれど、ある種の聴き易さを伴う小型2wayのようでもあって客観的に聴けば「ごく普通の音」かもしれない。

今回はミッドハイ用のユニットに引き続いてこのミッドローユニットを短期間の内に続けて導入してしまったので、本来であれば半年から一年程度の時間を掛けた上で当該ユニットの音を判断し、設定自体を熟成させていくようなことは全然出来ていないのだが、現状は弦楽曲が気持ちよく感じられるのでこれはこれで良いのかな、と。

さても残念なのは、このミッドローユニットは試作機ということで、ベリリウム振動板の製造過程上の課題(毒性による環境面)の観点から生産の継続が既に断念されてしまっているもの。従って本来は入手することができない貴重品。ベリリウムユニットはかってはヤマハやパイオニアを始めとする日本のオーディオ界の先行技術であったけれど、(一部TADには残るが)ほぼ失われてしまった。現在は MATERION という米国の会社がベリリウム箔を製造しているようで不確かな点はあるのだが、現状の各メーカーが製造しているベリリウムユニットの振動板はこの会社が供給しているものらしい。Paradigmのベリリウムユニットに関する 紹介映像 では「世界で唯一」ともされているが、これは単なる広告上の表現かもしれない。

この情報をベースに考えると、16㎝級の所謂ミッドウーファーに関して今後新たにベリリウム振動板を搭載したユニットが登場してくる可能性が全く無い訳ではないかも。Paradigmに採用されているユニットの製造コストが如何ほどのものかは推測するしかないが単独のユニットとして販売してくれないだろうか。あるいはSB Acoustics、Scanspeak、Bliesma辺りが新ユニットとして開発チャレンジしてくれないだろうか、と強く希望してしまう。

なお、このところはScanspeakとBliesmaのユニットと合わせてようやっと揃ったこのベリリウム三兄弟でほぼ聴いているのだが、時に中高域をSONY SUP-T11に変えてみることもある。ここもミッドローの帯域に合わせて受け持ち周波数を変更して試しているが、アルミ振動板だからというようなビハインド感は(これだけ聴いていれば)あまりないのも事実。ただし厳密に聴き較べて見ると、SUP-T11にはある種の甘さがあってこれはこれで女性ボーカルなどにはとても合うのだけれど、音の表情というのかキレというのか、その辺りが僅かにもどかしくもなってしまう部分が顔を出す。

音に対する好み、というものも当然あるのだろうしやはりオーディオはそうそう単純ではないんだな、と思わざるを得ないが、この三兄弟を大事に使っていきたい。

矛盾する自己:(雑感)

俺の(オーディオ)人生はどこから始まりいったいどこで終わってしまうんだろう、、、(いつかの少年、長渕剛)

始まりは何となく分かったような気もするのだが、終わりは遠からずやって来るはず。もちろんまだ全く見えていないし、予想だに出来ないのだがそれなりの覚悟は(流石にこの年齢ともなると)出来てもきた。足掻き続けたような自分のオーディオ趣味も機械弄りはひと段落させて音楽を「聴くこと」に集中した方が意義があることのように昨今思えてきて仕方がない。

結論は見えていないけれど、どこかで区切りは付けないといけないのか、、、それともだらだらと(あ~でもない、こうでもないと云いながら)続けて行ってしまうのか。自分でも情けないとは思いつつ踏ん切りというものがついてはいない。

音楽(音源)あってのオーディオという意識はオーディオファイルであれば皆等しく持っているようにも思う。でも時に機器だったり設定(使いこなし)だったりを優先してしまう。多分それは、現状に僅かであっても不満があって、何かをすればその課題点がささやかなものだとしても解消されるのでは、という期待値による。そして自分自身はそういうことの繰り返しであったようにも思えるのだ。

もし仮に一定の満足を得られているのだとしたら、それ以上の音を希求する必要性、意味があるのか、自分でも良くわからない。趣味である以上は、今よりベター、究極にはベストを、という思いは捨てきれないとしても、現実は「理想」を手元に引き寄せることは(多分)永遠に叶わない。この半世紀近い時間の流れの中でそれが一つの結論でもある。

人それぞれ、消費した時間と努力と支出は大きく異なると思うけれど、それをもってオーディオを語る必要はない。機器そのものも出てくる音も人と競う必要はない。在るべきなのは気に入った音楽との親密な対話の時間なんだろう。お気に入りの音楽を(そこそこのオーディオの音で)楽しみながら、次々と聴きたい曲が心に浮かんでくる。それを選曲しながらプレイリストにどんどん加えていく。そして、いつしか(いつも?)まどろみの中に落ちていく。それが音楽を聴く幸せなのかも、、、

そういう方向にどんどん心が傾いていく。それは一方で老化、退化の証のようにも感じる部分があるのだが、それでも良いんじゃないか、足るを知る、という言葉もあることだし。だが、100%それで割り切れてはいない自分の心も垣間見える。だから、それなりの努力はこれからも回避はせず続ける。けれど揺れ動きながらも自分のオーディオが日々進歩、進化すべきということを最早第一命題とはしない、、、それが矛盾を抱える今の自分の結論(らしきもの)か。


                 4way構成の設定値(2023年9月18日暫定)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
(Experimental)
BeW-16
Bliesma
M74B-6
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 97.0 (+7.0) 92.0 (+2.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +0.0 +0.7 +2.4 +4.3
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 88.0 86.2 84.4 84.3
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

250
250

1250
1250

3150
4000

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 24-24 24-24 24-flat
DF-65 DELAY
設定
cm -8.0 +19.5 +22.5 +25.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-65 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-65デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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