オーディオ日記 第53章 超えてきた壁越えられぬ壁(その9)2022年3月1日


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デジチャンの功罪:

デジチャンは我が家のオーディオに於ける「キーデバイス」である。マルチアンプシステムによって個々のスピーカーユニットのポテンシャルを最大限に引き出そうとする上で、チャネルデバイダー機能のデジタル化がもたらした恩恵は非常に大きい。スピーカーユニットの配置に関してレイアウト的な制約がある中で現在の4wayという構成を維持できるのも、すべてデジチャンの能力があっての故であると考えている。

もちろん、現在の我が家のデジチャン機能に完全に満足している訳ではなく、更なるデジタルプロセッシングの可能性を探って行きたいと考えているのだが、機器そのものの 選択肢 が限定されていることもあって思う通りにはなっていない。ある種の突き抜けた機能を具備させることはDSPの世界では最早それほど難しいことではないと思うのだが、やはり需要そのものが限られているのでビジネス的にはハードルが高いのだろうか。

プロ用を中心としたアクティブスピーカーの世界では既にDSP機能(デジタル入力を受けてのデジチャン機能やイコライザ機能)を持つものは一般的になりつつあるし、パワーアンプの世界にもDSP機能が取り入れられて久しい。また、それらのDSP機能は外部のPCなどからのリモート操作(専用アプリ、あるいはWEB UIなど)でコントロールできてしまう製品も多い。これはプロ用のパワーアンプに限らず、DIYのスピーカー製作を行うアマチュア向けと思われる Hypex のプレートアンプ製品はラインアップも豊富で魅力的である。

これらの機能の実現には高性能のDSPチップ(あるいはそれに類するプロセッサー)が必要であるが、製品の生産コストに占めるこのパートの割合はさほど大きいものでなく、比較的廉価に実現できる付加機能と云えるだろう。この観点から見ると、(汎用的な機能を持つ)デジチャン専用機が必要なシーンは限定的ともなってくるのかもしれない。つまり、DSP機能、パワーアンプ機能をスピーカーユニットと一体化させて専用のシステムとして作り上げればそれで事足りてしまうことになる。

普通の音楽ファンにとっては、ネットワークストリーマーとDSP機能を持つアクティブスピーカー、そしてそれをコントロールするスマホがあれば必要にして充分な構成になるし、それでもオーディオ的にもその仕掛けはかなり高度なものとなっている訳だ。コストもリーズナブルな範囲に収めることができる。 ADAM S3V クラスなら(プロ用ということで無骨な外観が欠点かも)もう全く不足はなく幸せの音楽生活も期待できるだろう。

だが、、、我儘を承知で敢えて云えば「神機能を持つ」デジチャンがどうしても欲しい。そしてその機能を使い倒して遊びたいと思ってしまう。我が家のスピーカーユニット構成をいろいろと弄って遊ぶにはやはりある程度多機能で汎用的な対応のできるものが必要なのだ。

現在の我が家のデジチャンには5つの設定プリセットがあって適宜メモリから呼び出せる。通常は4wayの構成なのだが、SONY SUP-L11、SONY SUP-T11というバブル時代の至高のユニットによる2way構成、これにベリリゥムツィータをプラスした3way構成でも聴けるようになっている。さらにはミッドローユニットが2種類(SB AcousticsとFPS)、ミッドハイユニットの2種類(AccutonとSONY)を組み合わせた4way構成の設定が3パターンあり、それで合計5つとなっている。

もちろん、毎日それらを順番に聴き回している訳ではないのだが、バランスや音色の観点からよりシンプルなユニット構成へと立ち返って聴くこともままある。また、そのような比較的シンプルな構成と4way構成で音楽再生に違和感が出ないこともひとつの重要な調整事項と考えている。ユニットによる微妙な音色の差異も当然ながらあるし、音楽そのものとユニット構成による再生音の相性も間違いなくあると感じている。

音楽を堪能するという目的の上では、本来はOne and Onlyのシステムがあれば良いのかもしれないが、いろいろな構成やユニットを試しそれぞれの再生音を切磋琢磨させていくことも自分のオーディオを練り上げていく上ではまた重要なことと考えている。従って、このような遊び? 我儘? あるいは音の追求が自在に出来て欲しいと思うのだ。趣味と云えどもまたひとつの遊びの範疇でもあるのだし、、、

現在の手持ちのデジチャンは設定や使い方はシンプルでD/Aコンバータ部分の音も結構良いと思うのだが、残念なことに機能的には不足があってちょっともどかしい。イコライザによる周波数補正などの機能は別筐体で単体機能の製品も無い訳ではないのだが、チャネル別の補正はできず全帯域となってしまう。現状大きな周波数補正を必要としてはいないのでそれだけのために導入するのはどうかな~とも考えている。しかしながら、リスニングポイントに於いてある程度平坦な周波数特性を担保することは極めて重要なこと。

機能不足のデジチャンと単体機能のイコライザ(未保有):初代のDG-28は使っていた
DF-65 DG-68

個々のチャンネルの周波数レスポンスを微妙に弄れる機能、クロスオーバー周波数の任意設定(プリセットではなく)、そしてリスニングポイントからリモートで設定変更できる機能。この三種類は絶対に欲しい、、、欲しい、欲しい。また、肝心のチャネルデバイダー部分はFIRであれば尚良いし、DAC部分そのものの音の良さも必須。

かって、デジタルチャンデバをデジタル入力で使うという環境を指向した時に非常に難儀したデジチャン後段での音量調整機能については理想追求の無いものねだりを続けた結果として「マルチチャネルアッテネータ」に行き着くことができた。これは製作、販売する側から見れば大量にはさばけないというハンディも間違いなくあるニッチなマーケット向けの製品だが我が家では絶対不可欠なもの。デジチャンもまた当方のニーズを満たすような製品は同様に小さな市場しかないだろうと推測できる。

微妙なアクセサリー等で音質向上を狙うオーディオファイルも多いと思うのだが、当方はその路線はあまり取っておらず、やはり音を出すスピーカー周りの調整が中心であり、部屋そのものも再生音に対して支配的であろうと考えている。もちろん、市販のスピーカーシステムを導入した場合は置き場所を含めた設定やケーブル、アクセサリなどがチューニング要素とならざるを得ない。

だが、マルチアンプシステムはそこに「無限のパズル」が存在する。手間も無駄もコストも余分にかかる。またその熟成には更なるオーディオスキルとともに練り上げる時間も必要。音をちゃんと纏め上げるためにはある種苦しみの期間さえも相応に経てこなければならず一朝一夕には納得の音にはなり難いことも否定できない。

かってのアナログチャンデバの世界であればマルチアンプシステムへの挑戦は「挫折に終わる」という危険性が高かったこともひとつの事実。だが、現在では廉価(あるいは無償)で使い勝手の良い測定ツールが多くあり、まだデジタル化という恩恵とプロセッサーパワーの向上に支えられたDSP機能という心強いサポートがある。格段に音をまとめやすくなったことは間違いない。当方ももしアナログチャンデバとリスニングのみによる調整を続けていたとしたら、五里霧中の状態から抜け出すことは決して出来なかったと考えている。

アナログディスクへの郷愁は今でもある。それは大事にするべき文化遺産でもある。だが、今や録音の主流もデジタル。マスタリングがデジタル環境で行われていない音源は探すことすら難しい。そのデジタル音源をデジタルのまま聴くことには最初から抵抗はない。アナログ音源が良質な環境でデジタル化されたものに対する心理的な嫌悪感などもない。デジタル音源としてストリーミングが提供してくれる広大な世界はまたドラえもんのポケットのように汲めども尽きない泉ともなっている。

このようにデジタルの世界は当方にとってはもう日常であって、多くの音楽ファンにとっても今や同様かもしれないと思う、、、であるが故に、このデジタル技術、DSP機能をベースにして自分のオーディオを更に練り上げたいと希求するのだ。出でよ! 神対応のデジチャン。


                 4way MW16TX構成の設定値(2022年1月3日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
SB Acoustics
MW16TX
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 110.0 (+20.0) 93.0 (+3.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.0 +1.0 -9.0 +4.0
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.0 86.5 86.0 85.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

140
140

710
710

4000
4000

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-48 48-24 24-flat
DF-55 DELAY
設定
cm -8.0 +19.5 -37.0 +25.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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