オーディオ日記 第52章 目指す頂は見えてきたか(その17)2021年12月1日


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葛藤の終わる時:

オーディオ環境として大きな変化はこのところ無く、細かい調整などに終始している有様だが、一年ほど経ったスピーカーユニットがやっと馴染んできた感触がある。少し前にケーブル類の若干の変更を行ったが、これはまだまだ序の口で評価には時期尚早だろう。僅かでも心の中にある理想へと近づけたのか、それは分らない。今はここで再生される音楽に耳を傾けるのみ。

ただ、次なる施策としてやってみたいこともいくつかあって、それをどう具現化するか思案している。それは4way構成におけるクロスオーバー周波数設定である。もっと自由度が欲しいのだ。現行のデジチャン(DF-65)はクロスオーバー周波数がお仕着せで決まってしまっており、その中から選択することしかできない。ここに任意のクロスオーバー周波数を設定できる機能が欲しいのだ。実際問題としてはプリセットされたクロスオーバー周波数でも低域側、高域側であればまぁ問題がなく、課題と感じているのは中高域部分である。DF-65ではこの辺りのプリセットは2240、2500、2800、3150、3550、4000、5000、5600、6300、7000、8000、9000という具合になっているのだが、3550、4000、5000という周波数ポイントの間隔が開きすぎているのだ。例えば3800とか、4200、4400あるいは4700などを設定してみたい。

音楽的には既に高域であるが、オーディオ的には中高域とも云える部分で高域感や音楽のプレゼンス、そして透明感、繊細感にも大きなインパクトがある帯域なのだ。一方で、3000Hzを超える周波数はスピーカーユニットにとっては案外と厳しい領域で指向性はどんどん悪化していく領域ともなる。従って、中高域のユニットと高域のユニットの素の特性や音のキャラクターにも依存するのだが、ここでのクロスオーバー周波数の設定は音楽表現の上で非常にタッチ―なものとなる。

現状は上記のようなプリセットしかないため、高域を担当するベリリゥムツィータは4000Hzのクロスオーバー周波数としているのだが、中高域を担当するユニットの能力にも依存するがここをもう少し高くできるのでは、と考えている。だが、次のプリセットの5000Hzでは離れすぎているし実際高すぎるのだ。当然ながら中高域を担当するユニットの振動板の口径とも関連する。一般論的には16㎝口径では4000Hzでもこれはまず無理。12㎝口径でも案外と厳しいかも。我が家の中高域を担当するユニットはAccuton C51が51㎜、SONY SUP-T11が100㎜なので、多分対応能力はあるだろうと考えている。そのため、3800~4400くらいのレンジでさらに最適なクロスオーバー周波数があるか探してみたいのだ。

任意のクロスオーバー周波数設定についてはプロ用のデジチャンであれば大体対応している。だが、逆にサンプリングレートが固定されていたり、あるいは対応レートが96KHzまでであったり、高次のスロープ特性が使えなかったりと別の制約もある。残念なことに現時点では当方にとって最適と思われるデジチャンが見当たらない。

この観点からも先に期待を持ってウォッチしているとした、DEQXの Pre-8 HD-Acitive にどうしても目が行ってしまう。デジチャン機能以外のルーム補正その他評価できる点も多いし。もちろんこの肝心のクロスオーバー周波数設定については現状の情報では詳細が判らないので、こちらが望むような自由度があるかどうかは判然とはしないが、従来の製品からの延長と考えれば期待値は大。同社のサイトにおけるその後の情報のアップデートはなく来年のどのくらいの時期にロールアウトされるのかも現時点では不明なのがちょっともどかしい。

登場を心待ちにしたいと思う。

(禅問答)

音楽は魂の救いでもあり癒しでもある。何時のころからかその想いが心に生まれて変わることはない。もちろん喜びでもあり楽しみでもある。そしてこの想いはどんな音楽のジャンルであっても同じだと思うし、素晴らしい旋律は一旦その魅力に捕まえられてしまえばそれはもう自分の中で消え去ることは無い。

そして音楽そのものはいつでも「心の中」にある。いろいろな場面で聴いた素敵な音楽は自分の胸の中にあって徐々に成長し、ある意味で理想化されていく。いつ聴いても変わらないこともあるし、新たな感動をもたらす時もある。急に嫌いになってしまうような事はほとんどなく、ふと耳にする懐かしいメロディには思い出すら呼び起こす魔力がある。

オーディオは「缶詰」にされた音楽を至って簡便に提供してくれる。その手軽さは何物にも変えがたい利点だと思う。だから、オーディオには心の中にあって成長し、理想化された音楽を「完璧なまでに」聴かせて欲しいと願ってしまう。それは音楽そのものの再現を願うのか、あるいは単なる「良き音」の発出で良いのか、その区別は自分ではつけられない。音楽そのものも音もどちらも理想的であって欲しいのだ。

だが、現実のオーディオは、機器や環境を含めて、この心の中にある音楽をそうは容易く具現化してはくれない。時に現実とイメージのギャップが大きくて負の葛藤のスパイラルに落ち込んでいく。もっとこうあって欲しい、こう鳴るはずだ、魂を鷲掴みにするような音楽を再現して欲しい、、、その気持ちが解消されることは無い。

オーディオが音楽の缶詰であるならば、その作り方によって美味しくも不味くもなる。実際、どう転んでも美味しくない録音の音楽には心が折れることもある。缶詰であっても最上の料理を味わいたい、そう願う心がまた葛藤を生んでしまう。自分を含めて世のオーディオフィアルは音楽の心地良さを求めて少しでも「我がオーディオ」を向上させようと足掻いているようにも思えるのだ。

だが、現実に自分の部屋で再生される音楽が、心の中にあってその姿を明確には自分でも描ききれないながらも、理想へと近づいてこなければ満足する事はできない。それは音源でも、装置でも、部屋でもない。対比されるのは自分の胸の中に、あるいは頭の中に鳴り響いている音楽そのものとなのだ。

これはある種無謀なことでもあるのだが、そこを求めんとするのがオーディオ道であろうか。だかそこには決して理想を実現し得ないというパラドックスが存在する。だから、あれこれと葛藤し、足掻き、少しでも音が?良くなることを目指していても結果として満たされた状態には至らない。

オーディオ機器や再生環境というものは強いて云えば代替品であるのかもしれない、、、だが、それでも、ここに良き音楽の再生を求め続けてきた。今に至るまで理想を具現できたなどとは全く思わないし、これからもそれを実感できることはないだろうけれど。

現実に我が家で今ここで聴ける音楽に、それじゃ不満しかないのかと自問すれば、それもまた少し異なっていて、そこそこ感動できる時もある。やっとやっとではあるのだがそこまで来ているのかもしれないと思えることも。もちろん多くの場合、自己満足の中にももっとここをこうすれば、ああもすれば、更に、、、という希望的観測と共に新たな衝動も生まれてくる。もちろん、それは単なる衝動であって現実にはほとんど向上策とはならないのだけれど。

扉を叩け、さらば開かれん。そう思う事はこれからも変わらない。

自分のオーディオで奏でられる音楽を自分で評価することもまた難しいことなのだが、冷静に客観的に、を心掛けてはいてもやはり甘くなってしまうこともある。時に何かを変更した時や新しい「物」を入れた時などは、その期待値もあって、どうしても結果を好意的に見てしまうこともままある。そしてそのメッキは時間の経過と共に剥げていくことになる。

だがら、変わらずに良いものだけが、もう少し長いスパンの時間の中で残っていく。多分一ヶ月や半年ではなく、数年というレンジだと思う。その数年を越えて自分のシステムに定着しているものがおそらくは評価し得る機器なんだろうと。

なお葛藤は続くものと思う。決して終わる時は来ない。これはオーディオに魅せられた者の業とも云えるだろうか。

(速報)
話は変わるが、mora qualitasのサービスが来年3月29日で終了するとの アナウンス が。本邦発の高音質ストリーミングサービスなのだが残念ながら撤退となる。 先に 密林音楽の価格改定の際に予想していたことが早くも現実になり、いずれ密林とリンゴの寡占状態となってしまうかもしれない。その時TidalやQobuzは生き残れるのか、、、


                 4way MW16TX構成の設定暫定値(2021年10月6日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
SB Acoustics
MW16TX
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 110.0 (+20.0) 93.0 (+3.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +0.7 +0.7 -10.5 +4.7
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -3.0 -3.0 -5.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 88.7 85.2 83.5 80.7
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

160
160

710
710

3550
4000

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-48 48-24 24-flat
DF-55 DELAY
設定
cm -10.0 +28.0 -37.0 +27.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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