オーディオ日記 第51章 行く道は果て無く(その19)2021年6月2日


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低域を考えてみる(その2):

再生系の周波数バランスについては、従来から悩むところが多い。1メートル程度の近接距離でフラットに近づけてもリスニングポイントではなだらかに高域が減衰してしまうし、また高域は周波数が上がるにつれて指向性劣化というやっかいな事象も起こる。一般論的にはリスニングポイントではなだらかな右肩下がりが自然に感じるし、それが本来望ましいものとは思うが、やはりフラットでもいいんじゃないかと迷うこともままある。

一方で部屋の影響による暴れは低域に比せば少なく、調整し易いとも云えるだろう。実際我が家でも400~500Hzより上の帯域であれば相当に素直な周波数レスポンスを示してくれており不満点はあまりない。(求めるものは超絶的な透明感、繊細で広がりのある高域感、ふわっとした自然さであるが、元よりこれが担保できているとは云えない、、、)

低域は高域のように素直にエネルギーが減衰をしてくれないので自ずと部屋の(悪)影響を受けてしまう。一番の課題は定在波の発生によって引き起こされる周波数レスポンスの乱れ(ピーク、ディップ)であると思う。部屋の作りと強度にもよるがかなり低い帯域では共振の問題もある。忘れてはならないのは他へ漏れる音の配慮。これらの難題に打ち勝って納得の低音を得ることは高域以上に難しいと日々痛感するところ。

甘美で穏やかな旋律から壮大な音の伽藍へと音楽のエネルギーは一挙に立ち上がらねばならない。そこに僅かな躊躇も引っ掛かりも許されないのだ。そしてそれはまた「気持ちの良い程」あるいは「胸のすく程」であることが感動には不可欠。

パイプオルガンは巨大なエネルギー感に支えられて持続する音を出し続けなければならない。コントラバスは瞬発力のある乾いた音を軽やかに、そして混濁することなく表現せねばならない。男性ボーカルの低音はずっしりと腹に応えて、なお魅力的でなければならない。女性の声はチャーミングさとふくよかさが同時に心に届かねばならない。このような低域をどうすれば我が手に掌握できるのか。途方もない課題のようにも思える。

ただ、理想的な低域はデジタルトランスポートなどの上流の小細工やアクセサリーの類では得られるものではないと思う。もっとずっと根源的なところで、部屋の空気を如何に震えさせられるか、その震えを己が身体まで届けられるか、ということに尽きるのではないだろうかとも考えている。

低域ユニットの能力、パワーアンプの力量、それ無くしては実現は難しい。その上で部屋とのマッチングと音響的な調整であり、配置や設定などの使いこなしなんだろうとも思う。あまりの難しさに「宿題放棄」という逃げを打ちたくもなる。だが、諦めたらそれで進歩は終わり、、、

先に低域のユニットと中低域のユニットの周波数の被り(オーバーラップ)を急峻なスロープ特性で回避することによって、若干の改善を図ることができそうにも思えたので、この点をもう少し詰めてみようと考えた。この対応で課題とする周波数帯域は100Hz~300Hzである。これは100Hz以下のような完全な低域とは云えなくて、むしろ音楽的には中低域と考えても良いかもしれない。ここをどうすればより理想論に近い出音にもっていけるのか、それを再度試行錯誤してみた。

前回のトライは低域ユニットを250Hz、-96dB/octとすることで、一応は評価できる形にはなった。だが、低域ユニットはなるべく低い領域で使いたい。中低域ユニットは6.5インチ口径と決して大きくはないが、 HiFiCompass における当該ユニットの詳細なデータを検討してみても、200Hzを超える領域の歪率は非常に優秀であり、周波数レスポンス的に劣るところも無い。また僅かではあるが上向きに 角度を付けて あるので、床面からの影響も多少は回避できているか、、、

一方で、低域ユニットを-96dB/octで切った時の周波数を厳密に測定してみると、レスポンスは当該周波数でスパっと切られるのだが、あまり素直ではない肩特性(いったん盛り上がる)を示している。これを-48dB/octとするとあくまでも測定上であるが、このような傾向は見られず素直に減衰されて行く。このような測定結果をどのように信じればよいのか正直迷うところでもある。

そこで、一旦スロープ特性は低域、中低域の両ユニットで-48dB/octの設定としてクロスオーバー周波数を動かして試行錯誤を行ってみた。確かに-48dB/octだと低域ユニットのクロスオーバー周波数より上のレスポンスが若干ながらも残るので、250Hzでは少し見通しが悪くなる(ような気もする)。そこで今度は250Hzから、224Hz、200Hzと前回とは逆に少しづつ下げてみた。-48dB/octのスロープ特性においては200Hzのクロスオーバー周波数の時に中低域の明晰さや反応速度などが低域の量感と合わせて割と良い塩梅になる。音楽の基礎となる低域の下支えは充実していなければならないし、だからと云って鈍重になってしまってもいけない。この微妙なバランスなのであろうか。

もちろんこれでベスト、理想的とはならないのだが、改めてこの辺りのちょっとした匙加減は敏感で難しいものだと思う。正に行ったり来たりの繰り返しでもある。最終的には部屋が「幸せな音楽」で満たされてくれればそれで良い話なんだろうけれど、そうは問屋が卸さない、である。あれこれと微細に拘ってしまうことが却って自分の敗着の要因なのかもしれないと反省もするのだが、、、


                 4way MW16TX構成の設定暫定値(2021年6月2日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
SB Acoustics
MW16TX
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 110.0 (+20.0) 93.0 (+3.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +0.7 +0.7 -10.5 +4.7
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -3.0 -3.0 -5.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 88.7 85.2 83.5 80.7
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

200
200

1000
1000

3550
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-24 24-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -10.0 +28.0 -37.0 +27.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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