オーディオ日記 第44章 理想と現実の距離(その4)2019年2月14日


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リクロック&リパケッタイズ:MUTEC MC-3+USB(その2)

ファイル音源再生のためのデジタルトランスポートの終着駅を目指して放浪しているのだが、まだまだ紆余曲折がありそうである。極楽の使い勝手と超絶の音、その両者が自分として納得、満足に至らなければ最終解にはならないのだ。

かなりの期待をしていたLUMIN U1 Miniであるが納得できる音を引き出すことは当方の技量不足もあってできなかった。同時並行的にテストしているUSB DDCのリクロック機能(注記)と音の面から比較した結果を(多分に好みの問題もあるが)順位付けすると、、、
(注記)S/PDIFとして出力する際に高精度内部クロックにて信号を打ち直す仕組。

1.MUTEC MC-3+USBをUSB DDCとして使い、「リクロック機能」をオンした場合
  (JPLAY FEMTO Dual PC環境)
2.Electro Art UDA基板をベースとしたUSB DDCを使う場合
  (現状のJPLAY FEMTO Dual PC環境そのまま)
3.Lumin U1 Miniをメディアレンダラーとして使う場合
  (Minim Serverを使用する構成)

という自分なりの順番となった。Lumin U1 Miniの名誉の為に言及すれば、これはコンパクトな機器でありながら充分な実力を持ったネットワークトランスポートだと思う。ただ当方の希求するところが我儘かつ欲張りのせいなのか、これですんなりと決まり、とはちょっとならなかった。操作性に関しては、JPLAY FEMTO Dual PC構成でもLumin U1 MiniでもJRMC+JRemoteの組み合わせをコントルールポイント機能としてのみ使うという対応によって機能的には全く同じ極楽環境なので、この点は全く問題ないのだが。

ただそうなると、結果としては自分の好みの方の構成でしか音楽を聴かなくなることは目に見えているので、ほぼ同じ機能をものを二重に持っておく意義は失われることにもなる。一方で、TIDALへの対応という点ではLUMINとLumin Appを組み合わた環境が望ましいので、ここは敢えてじっくりと対応して行こうと考えている。

MUTEC MC-3+USBにおいては内部の1GHzクロックを「リクロック」用に使う構成であり、10MHzマスタークロックを外部から入力するスタイルはテストしていない。内部に高精度かつ優秀な(?)1GHzクロックがあるのに、外部の高価(?)な10MHzクロックを入力する、という必然性については実のところ当方のクロックに関する知見、経験では何ともコメントできないのだが、やはりその意義はあるのだろうか、、、(10MHzマスタークロックについても一聴すべき、とは考えているのだが)

しかしデジタルオーディオというものも案外難しいものだと改めて思わざるを得ない。デジタル音源に対して超絶とまでは云わないにしてもそこそこの音を出そうとすると、アナログの比では無いようにも思えるのだ。アナログはある程度のレベルまでであれば割とすんなりと音楽を楽しめるようになるのだが、デジタルは一皮むけた状態に持って行くのが実はハードルが高いとも感じている。

もちろん希望的にはアナログだ、デジタルだというテクノロジーベースの議論をしたい訳では無くて、音楽の心地良さ、自然さ、音色の美しさというものを尺度として評価したいのだ。だが音楽そのものの肌触りなど、直感的な意識の上ではデジタルにはまだ越えなければならないものあると、認識してしまう部分があるのだ。「嘘くさくなくて自然な音」など本来オーディオには求めるべくもないものなのかもしれないのだが、(特に)人間の声などに対しては人間の感覚は研ぎ澄まされていてやはり誤魔化しが効かないと実感してしまうことも多い。

この嘘くささというものが、デジタル環境においてはより正確なクロック(あるいはジッターと呼ばれるものの低減)によって多少とも改善されると考えて良いものなのだろうか。正直云ってその辺りの音との関連性は理論的にも良く判ってはいない。また経験値的にもあれこれとクロックを使いこなしてきた経験が少ない(かって Antelop Isochrone OCXを使った 程度)ので、クロック精度と音との関係性についてきちんと判断できるほどの自信はない。

しかしながら、MUTEC MC-3+USBを使用する環境、構成において、リクロック機能をオン・オフとした音の比較はできる。また当然ながら、オフ状態で現行のUDA基板ベースのUSB DDCとの比較もできる。オフにした状態おいて両方のUSB DDCの差が検知できないレベルにあれば、「リクロック機能」は判別可能な改善効果が認められる、ということにもなりはしないか。あるいはMUTEC MC-3+USB自体でリクロックのオン、オフでの差も感覚的にではなくてきちんと検知できるのか、そしてオンの状態の方が良いと明確に判断可能なのか、、、

この辺りの評価をじっくりとやらずに、前述したようなリクロックした時の方が(感覚的に)良いなどという「音の評価」は当然ながら笑止であろうと思いつつ、ふとMUTEC MC-3+USBでは INTONA USBアイソレータ を使用していないことに思いが至った。そもそもMUTEC MC-3+USBはUSB接続においてガルバニックアイソレーションされているという謳い文句なので、INTONA USBアイソレータとは二重に使う必要はないかな、ということであえて接続していなかったもの。

だが、待てよ!? INTONA USBアイソレータにはガルバニックアイソレーションともう一つ重要な「リパケッタイズ」という機能がある。INTONA USBアイソレータは内部基板に対向する二つのFPGAが配置されており、通過するUSBパケットの再生成(リパケッタイズ)処理を行っている。音質面ではこの部分の寄与も大きいはず、、、ということでMUTEC MC-3+USBの「リクロック機能」とINTONA USBアイソレータの「リパケッタイズ機能」両方を有効としたらどういう効果が得られるか、改めて急ぎ試してみた。

内部基板(USB信号のRe-PacketizeはXilinx製Spartan FPGAで行われている):
Intona USB Isolator inside

「・・・・・」

もはやその他の比較など全く不要。先の順位付けなどほとんど意味を持たない感がある。少し大げさかとは思うがINTONA USBアイソレータを介したMUTEC MC-3+USBの音は自分的にはファイナルアンサーとも云えるような自然さや佇まいがあり、それでいて音の彫りが深く(特に女性ボーカルにおいては)実在感や透明感も納得のレベル。空間表現や楽器の定位がかなり優れているように感じられる。このUSBアイソレータを介さずにテストしてきたことは何とも迂闊であった。

「リクロック」あるいは「リパケッタイズ」などというものはデジタル信号への過度の介入ではないかと思うところもある。本来「素の信号」がベストな状態であれば、これらは不要なはず。だがこれによって得られる音がここにある。願わくばこの音が「一夜の夢」で終わらぬよう今は切に願うばかり、、、、


4way構成の設定備忘録(2019年2月8日更新)

項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +2.4 +1.2 +0.7* +4.2
*Analog Att
ON(-10dB)
マスターボリューム
アッテネーション
dB -4.0 -0.0 -4.0 -3.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0.0 0.0 -6.0 -6.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 95.4 91.2 90.8 88.2
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

290
290

900
900

3550
3550

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 24-48 48-48 48-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -10.0 -0.0 -37.0 +4.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm JPLAY FEMTO
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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