オーディオ日記 第44章 理想と現実の距離(その2)2019年1月12日


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「リクロックなるものを試す」:MUTEC MC-3+USB(その1)

オーディオシステムの上流部分はもう永らくPCオーディオなのであるが、環境の変遷も多くすべての面で満足出来ているとは云いがたい。安定性であったり使い勝手などの面も重要で音よりも優先せざるを得ないこともある。また、デジタルファイルそのものが多様化しフォーマットも多く、サンプルレートなども含めてどんどん進歩していく。

それらをPCオーディオという汎用的な環境でこまめに追随し吸収していくべきなのか、ネットワークトランスポートのような専用の機器で広範囲に対応しているものを選択してそれで事足れりとしていくべきなのか、悩みもある。もちろん期待値以上の音が提供されなければ常用の位置を占めるようにはならないこともあって結論を出せず揺れ動いている。

PCオーディオをベースとしたデジタルトランスポートとしては、JPLAY FEMTO、Intona USBアイソレータ、エレクトロアートのFPGA基板をベースとしたUSB DDCという幾つかの役者が揃ってまずまずの成果を出せてはいると思うものの音としては「まだ先がある」、「まだ上がある」という想いも消すことが出来ないのだ。環境的な制約や使い勝手の制約は僅かであってもそれらの全てを打破したいのだが、子細な課題が喉に刺さった小骨のように存在しており現状まだまだ磐石と云える環境とはなっていない。

このPCオーディオの音の満足度を向上させる可能性のあるものはそれでも試してみたいと思い、今般 MUTEC MC-3+USB をテストしている。本来MUTEC MC-3はクロックジェネレータの類の機器なのであるが+USBというバージョンに進化することによってUSB DDCとしての機能も備えた。USB DDCとしては基本的なUSBからS/PDIFへの変換機能だけではなく、USB信号のガルバニックアイソレーション、そして信号を内部の1GHzの高精度のクロックで打ち直す(リクロックする)という機能を持っている。ガルバニックアイソレーション(及びそれに付随する信号ノイズ成分の除去)という観点で早くからIntona USBアイソレータに注目しその 効果を実感 してきたこともあって、このもう一つの機能の「リクロック」というものがどれほど音への貢献があるのか確認してみたいのだ。

Intona USBアイソレータとMUTEC MC-3+USB:
MUTEC MC-3+USB

この機器はUSB入力のみならず、光や同軸(BNC)、AES/EBUの入力もあるので、単純なリクロック機能を確認することもできる。テスト項目としては

1.オールドCDトランスポートからのデジタル出力をMUTEC MC-3+USBにてリクロックしデジチャンへ入力
2.既存USB DDCからのデジタル出力をMUTEC MC-3+USBにてリクロックしデジチャンへ入力
3.USB DDCとしてAudio PCに直接接続し、リクロック機能オンとしてデジチャンへ入力

という三パターンの環境で確認を実施した。

まず1.であるが、我が家のCDトランスポートはAccuphase DP-90という往年の(既に20年はとうに超えている)製品。品位のある音でかっての名機ではあるが、やはり時代を感じさ音の明晰さにもどかしさが残るもの。さて、これをMUTEC MC-3+USBでリクロックした音、、、正直云ってちょっと驚くほど現代的な音になりほとんど不満を感じさせない新鮮さ。びっくり。Accuphase DP-90に搭載されているクロックの精度がどの程度のものかは分からないのだが、MUTECは1GHzクロックが売りということもあって、この20年で相当進化、進歩したのではと思わせられる。そう云えばかってCDプレーヤのクロック交換という音質向上策も流行った時期があった。

次に2.であるが、これも同じ傾向に変化するものの、元々の音がそこそこということもあるのか、大きな変化という表現は適切ではないと思う。ただ、低域方向の滲まずにしっかりと音を押し出してくる部分、高域のほとんどストレスを感じさせない煌きや広がり。やはりリクロックという観点からの効能はあると納得した次第。

さて、本命の3.であるが、USB DDCとして直接USBケーブルでMUTEC MC-3+USBをPCに接続する場合は専用ドライバーが必要となる。本家のホームページからダウンロードしてインストールするスタイルとなるが、特に課題となるようなことも無く、接続や認識にもトラブルなし。ただし、この専用ドライバーはLatencyやBuffer Sizeといった詳細な設定をすることはできない(これは誤り。以下の訂正を参照)。XMOSを使っている一般的なUSB DDCや我が家のFPGAベースのエレクトロアート製基板を使ったUSB DDCでもこれらの設定は現在では可能なのだが。この最適な設定によってJPLAY FEMTO環境ではDAC Link値などが変わってくる。このためDAC Link値は200あたりから様子を見ることとした。USB DDCとして「Kernel Streaming Mode」の設定も全く問題ないので、JPLAY ユーザーにとってはありがたいところ。

(2019年2月26日訂正)
MUTEC用専用ドライバーでもLatencyとBuffer Sizeの設定ができる:

(訂正終わり)

この三番目のテストでは謂わばエレクトロアート基板のUSB DDCとMUTECのUSB DDC機能との対決となる。なお、この構成においてIntona USBアイソレータを間に挟むかどうかの選択も可能なのであるが、最終的にはシンプルに考えて、MUTEC MC-3+USB側にはIntona USBアイソレータは介在させずに比較試聴を行った。(接続については問題ないこと確認済)

一聴してのMUTEC MC-3+USBの感想であるが、音が自然なのに押し出し感、あるいは実在感が醸しだされており、高域については煌めきに加えてふわっと感もあってこちらの方が好みかも、、、という印象。エレクトロアートのUSB DDC基板もFPGAによるインターフェース変換を行っている訳で考え方や構成は一緒なのであるが、このように音の差になって現れる要因は一体どこにあるのだろうか、とちょっと不思議な気分にもなる。つまるところここでの「差」はリクロックという機能に起因するものが相当部分あるのであろうか。またこのMUTEC MC-3+USBはルビジウムクロックなどの10MHzの入力も可能なので、その場合更に音の真価が発揮される可能性もある。当方はルビジウムクロックを所有していないが試してみたいと思わせられる魅力があるのだ。結構気に入ってしまったのでさらに深く試聴、比較を続けようと思う。

だが、PCオーディオでずっと行くことが大前提ならばこの機器は即導入、だと思うのだが、、、今回は迷っている。近々にも Lumin U1 Mini というデジタル出力専用のネットワークトランスポートが国内でも発表となるようで、ここに大きな魅力を感じているだ。ただし、Lumin U1 Miniの音は当然ながらまだ聴けないので、まずはそこをクリアーせねばならない。本当に究極(?)の使い勝手と音を求めたいのならあまり回り道をせずにやはり最初から U1 に行くべきであろうか、、、


4way構成の設定備忘録(2019年1月12日更新)

項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +2.5 +1.0 +0.5* +3.0
*Analog Att
ON(-10dB)
マスターボリューム
アッテネーション
dB -4.0 -0.0 -4.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0.0 0.0 -6.0 -6.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 95.5 91.0 90.5 90.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

290
290

900
900

3150
3150

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 24-48 48-48 48-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -10.0 -0.0 -37.0 +4.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm JPLAY FEMTO
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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