オーディオ日記 第40章 はじめに音楽ありき(その4)2017年4月30日


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普遍的なオーディオ再生ということで「平坦な周波数特性」を目指して4wayの設定をあれこれと見直ししてきた。なるほどある程度は納得の周波数特性を 実現する ことはできた。だが、一方で音楽再生という観点からみて、これが本当に心地良く聴ける音なのか、という疑問も抱えることになってしまっていた。

キレがあって解像度の高い音で低域には芯があって、、、それでいて軽く柔らかくふゎっと広がる音を求めているのだ。本来的にこの要求は相反するものなのかもしれないが、そのどちらも実現したいという思いが強い。

先の4way調整で周波数特性の平坦さを求めてたどりついた設定の音は、それなりに聴かせてくれるのではあるが、この柔らかく自然に広がる、という観点からは手放しで合格とは云えない。特に高域方向に向かってどうしても硬い感じが残ってしまっているようで、時に耳への当たりが強く感じ心地良くないことがある。無いものねだりながら、このあたりを何とか望む方向に設えないものかあれこれと考えてきた。

ひとつ思い当たるのは中高域用に使用しているホーンドライバーの受持ち周波数帯域が広すぎる(高域方向に使いすぎている)のではないか、ということ。これはこのユニッがは900~9KHzの範囲であれば驚異的とも思えるフラットな周波数レスポンスを持っているため、周波数特性の平坦さを求めればどうしても高い領域まで使ってしまうことになる。9KHzで高域用のベリリウムツィータとクロスさせれば高域の落ち込みも少なく測定上はほぼ理想的な周波数レスポンスが得られるので、ここを軸にあれこれと弄ってきた。だが、この用法では平坦な特性を維持しつつキレがあって解像度の高い音は実現できたとしても、柔らかくふゎっと広がる音、ということについては納得には至らないと感じてしまう結果なのだ。

多少悶々とするところがあるのだが、これを打開するためにオーディオ達人からアドバイスをいただいて指向性のコントロール(スピーカー全体として高域の指向特性をブロードにする)という観点で見直しを行った。ホーンドライバーはホーンの形状とも関連するが元々指向性が強く、それは高域に向かってさらに強まる。このため、リスニングポイントにおける測定においてはそれなりの周波数レスポンスを計測できたとしても、それは指向性が鋭くなってしまっている状態での特性ということにもなる。ホーンによってふゎっと広がる音、というのはやはり難しい点があるとは感じつつも、この指向特性を考慮しての再設定で改善策を探した。従って、今回は平坦な周波数特性というものには多少目をつぶって、心地良く音楽を聴けるというポイントを「測定に頼らず」に模索してみた。とはいえ、中低域においては従来の設定をある程度踏襲するので全く無視、という訳ではないのだが、、、

高域用のベリリウムツィータは2.5KHz辺りから充分使えるユニットであるが、導入時の想定では低くても4KHz以上を受け持たせる想定としていた。なお、指向性という観点からは10KHzくらいまではそこそこの広がりを期待できる。(ただし、10KHzを越えるとやはり60度あたりのレスポンスが落ち指向性はかなり強まる)従って、中高域(Mid High)ユニットと高域(High)ユニットの受け持ち帯域の変更ということが「指向性をブロードにする」という観点からの主眼になる。想定としては2.5KHz~4KHzの範囲で考えてみた。同様に中低域(Mid Low)に使用しているFPSもそのユニットの形状(平面型)からも高域に向かっては指向性が強くなるのだが、この点についてはFPSの配置の見直し(メインエンクロージャーの内側配置から外側配置に変更)によってある程度の成果は感じられている。中低域と中高域のクロスオーバーに関しても800Hz~1400Hz辺りで弄ってみようと考えた。

まずは中高域のクロスを3550Hz、中低域のクロスを1250Hzと暫定設定してみたが、クロスオーバー周波数の変更だけでは高域がかなり強すぎる状態になってしまいこのままでは帯域バランスが取れない。高域を強く感じる、ということは即ち直接音以外の回り込んでくる間接音を感知している訳で、「音が広がっている」ということでもあるのでこれは良い方向である。従って、聴感上で帯域バランスがとれるように高域の(一部中高域)のレベル設定を変える。9KHz以上を担当している時と、3550Hzから使用する場合ではかなりのレベル変更が必要となる。当然ながら、ここでツィータのレベルを落とすということは、10KHz以上の超高域においてはかなりのレベルダウンとなることが予見され、おそらく測定すればそのレベル低下は明確に把握できるものと思う。だが、ここでは「聴感上」のバランス、ならびに音楽(特に弦)の心地良さを重視して、レベル設定した。

結果的には、従来の音のキレや解像度を残しながらも音の広がり、柔らかさが少し加わって望む方向に変化してくれたようだ。もちろん従来の設定から比すれば相当高域を絞っているのだが、音楽を聴く上での高域の不足感は幸いにもそれほど感じない。もちろん、音像として纏まるべきところは小さく凝縮し、広がるべき音のオーラは横にも縦にも部屋いっぱいに広がる、という(無限の?)欲求からすれば多少採点が上がってもまだまだ及第点とも云えない。だがこれは新たなスタート地点にもなると思えた。試し始めたこの設定には少し余禄があって、高域を絞ることの影響から全体の音量を多少(常用レベルで1ノッチ)上げざるを得ず、そうすることによって音の密度感が高まったようにも感じるという副次的な効果もありそう。また、4wayの中心的役割を果たしているSONYのユニットは音の味が薄い、という傾向があるのだが、この密度感の向上と相俟って多少音色が濃くなる。もしかしたら、これはベリリゥムツィータを幾分低いところから使っていることに起因して、音楽に対してのこのユニットの影響力、支配力が強まっているということなのかもしれない。

(注記)キレキレの録音の音源の再生に関しては、この高域レベルの調整によって、その魅力度は多少下がるように感じる。だが、8割程度は普通の録音状態の音源なので、メジャーな割合の音楽の魅力度が向上する方が本来望ましいことなのかもしれないと(現時点では)考えている。なお、達人宅にて無指向性スピーカーとして有名な MBL を拝聴させていただく機会があり、音場はもちろん自然かつ立体的な広がりを見せるが、音の質感は観念的に抱いている無指向性という音のイメージとは異なり、緻密でリッチでむしろ楽器などのリアリティーの再現性の高さを感じさせるものであった。

実のところ、最近の当方のオーディオは「やりつくし感」、「限界感」があって、現状のシステム構成・機器では、これ以上の改善は見込みにくいのでは?と少しあきらめも出始めていたのだ。この閉塞感を打ち破って前に進まねばならならいのだが、あまり具体策を見出せずにいた、、、しかし、この方向でさらに煮詰めることによって、もう少し前に進めるような気がしてきている。

改めて思うのは測定という行為自体の難しさと、それをシステムの設定にどうフィードバックすべきなのか、という点。Omni Micは非常に便利なツールであり、人間の耳よりは余程確かな結果を示してくれるが、それも使いよう。周波数測定だけでも、測定のマイク位置や反射音、残響成分をどこまで取り込むかによって結果がころころと変わる。測定のある一面だけを切り取って、その結果で「平坦な周波数特性を実現できた」などと浮かれていたら大きな間違いだと気付かされる。音楽を楽しく聴けるかどうか、これについてはやはり自分の耳と感性を素直に信じるしか道は無いように思う。

(閑話休題)

モーツアルトが生涯に書き残した曲がどれくらいあるのか正確なところをきっちりと把握している訳ではないが、それでも並みの音楽家のレベルではない程多作であることは間違いない。現在所有しているモーツアルトの音源もかなり曲の重複があるので、合計すればさて一体何曲になるのか、、、

バブルの時代(1990年)に小学館がフィリップスの音源を使用したモーツアルト全集(全15巻+別巻、CD総数180枚で全作品を収録)というものを出版した。出版社からの全集なので、音楽そのものだけではなく、詳細な歴史的資料や解説文などが充実していることが特徴であった。価格は448,000円。当時30代の終わり頃で子育て真っ最中の当方がおいそれと買えるものではない。

ある時に家内の実家にその全集が鎮座していることを発見(?)した。ほとんど大半は未開封の状態で、、、義父が買い求めたものであるのだがこれを聴かないなんて何てもったいないこと。めぐりめぐって我が家にその全集が程なくやってきたことは云うまでもない。結果的には義父からの大切な遺品になった訳であるが、当方にとってはこれは二重の意味でかけがえの無い宝物となっている。もちろんこれだけの量なので全ての曲に馴染み親しんでいる訳ではないが、やはり聴く機会は多い。小林秀雄が書き残した有名な一文であるが、確信をもってそれを追体験している日々である。

『モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。涙の裡(うち)に玩弄(がんろう)するには美しすぎる。空の青さや海の匂いのように、万葉の歌人がその使用法をよく知っていた「かなし」という言葉のようにかなしい。こんなアレグロを書いた音楽家はモオツァルトの後にも先にもない。』


4way構成の設定備忘録(2017年4月30日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
パワーアンプでの
入力絞り
dB -7.0 0.0 -11.0 -8.0
設定値
SP側での
アッテネーション
dB 0.0 0.0 -12.0 0.0
(L-PAD抵抗)
DF-55の
出力設定
dB 0.0 0.0 +1.5 +2.0
Analog Att
OFF
スピーカーの
出力(想定)
dB 90.0 90.0 88.5 87.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

400
500

1250
1250

3550
3550

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 48-24 24-24 48-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 27.0 55.5 0 36.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm JPLAY
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない


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