オーディオ日記 第39章 扉を叩け、開け(その16)2017年2月 1日


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JPLAY Dual PC構成におけるAudio PC側の設え(ノイズ対策その他)は一応終了と考えられるところまで来た。次はControl PC側の設えなのであるが、一般論的に考えれば、モニターレス、ファンレス、SSD起動、各種電源系ノイズ対策の実施とAudio PCとほぼ同一にすることが想定される。だが、Dual PCにおけるネットワーク構成の比較実験を経て、Control PCの構成をいざ考え始めてみると疑問もいっぱいあって思案するところが多い。Audio PC側には考えられる限りのノイズ対策等の対応を行ってそれなりの成果を得たとも思うのであるが、さてControl PCとなると「そこまで本当に必要か?」と自問してしまうのである。もちろんやらないよりは各種対策はやった方が良いとは思うのであるが、やみくもに盲目的に実施することは本意ではなく、やはりそれなりに確認しながら行いたい。そしてその上で、自分に取って本当に最適な構成に設えたいと思うのである。

JPLAYに係わる、前段のテストとしていろいろなケースを実践し比較してきたが、結果についての自分なりの評価(独断と偏見による)は以下の通り。OS、稼動モード、PCの構成の三つのポイントの評価である。もちろん、全ケースにおいて、ブラインドで100%判断できる、などという自信まではないのだが。

1.OS (Audio PC、Control PCとも、ただしWindoes Serer 2016は未テスト)
Windows Sever 2012R2 > Windows 10 > Windows 7 > Windows Vista

2.Windows Serverの稼動モード(Audio PC)
Core > GUI

3.PCの構成
Dual > Single

この評価を踏まえて、我が家での基本的な環境は、OSは共にWindwos Sever 2012R2、Audio PCはCoreモード、Control PCはGUIモードとするDual PC構成に至っている。(運用メンテナンスの観点やタブレット端末からの操作なの使い勝手などの環境面も多少意識している)

この環境において、先般のネットワーク構成の差異による音の比較という テスト において、ほとんど有意差が検知できなかった、ということもあって自分としては(単なる駄耳なだけかもしれないのであるが)、次なる素朴な評価・確認の必要性を認識した。つまり、Control PCの構成、環境によってLANを介在して分離されているAudio PCの最終的な音が変わるのか、ということである。これを確認しなければControl PCとして必須なハードウエア構成やノイズ対策の実施必要範囲が見えてこない、という思いなのだ。PCの環境、構成が変われば、DAC Link値、PC Buffer値の設定可能数値は変わる。DAC Link値、PC Buffer値が変われば確かに微妙に音は変化する。従い、DAC Link値、PC Buffer値の許容範囲はPCの総合的な処理能力に依存関係があるように思われるが、ここを「固定」した上で(DAC Link値350、PC Buffer 0.1秒とする)ハードウエア構成等によって音に変化が現れるか、またそれが確認可能か、という観点である。

(注記)ソフトウエア的なチューニングの観点からは現在いろいろなOS最適化ツール(Fedelizer、Audiophile Optimizer、Process Lassoなど)があるのだが、この辺りはシステム環境が確定した後に音が本当に良くなる要素があるのか取り組んでみたいと考えているのだが、その前段となる検証をまずはしっかり実施したい。

非常に一般論的ではあるのだが、具体的な疑問点は以下の通り。
疑問1:Control PCにおけるCPUやメモリなどのハードウエア環境の差異は音に現れるのか。
疑問2:Control PCのOSがSSD/HDDのいずれかからの起動であることによって音が変わるか。
疑問3:Control PC~Audio PC間のLANケーブルの違いによって音が変わるか。(HUB経由前提)

いずれも、難問かもしれない、、、デジタル周り、特にPCオーディオ周りには様々な都市伝説的なものがあり、いろいろな可変要素に対して「音のベールが剥がれる」、「クリアーさが増す」、果ては「激変する」、などの評価が多く伝えられている。もしその変化を聴き分けられないのであれば単に「耳が悪い」という結論にも繋がってきてしまう怖れもある話だ。もちろん、オーディオを趣味とする人間にとって、誰しも自分の耳が悪いとは思いたくは無い、という前提もある。だが、しかし素朴な疑問であればあるほど、自分でしっかと確かめた上でシステム構築の判断材料としていかねばならない。良いと信じたものは採用し、そうでなければ見送れば良い。自分のオーディオシステムの音は実は一番自分が(良否を含めて)判っているはずなので、誰におもねる必要も無いと思うのだ。

さて、上記疑問についてのテストであるが、環境は比較的簡単に作成できるので、とにかくやってみようと考えた。そこで、まずはContol PC用のWindows Sever 2012環境を同一の内容(JPLAY Streamer、Minim Server)、設定 でHDD/SSDの二つを作成した。これをシステムディスクとして差し替えながらテストする。

SSDは3.5インチHDDと同様に扱えるスタイルにしてある:
JPLAY HDD SSD Test

疑問1のテスト:ハードウエア環境の差異
2台のPC(デスクトップ、ノートPC)をそれぞれControl PCとしてHUB介在の構成で起動する。
(1)デスクトップPCはQuad Core 3.4GHz、メモリ8GB
(2)ノートPCはDual Core 2.26GHz、メモリ2GB (ACアダプタ電源使用)

(注記)ここではシステムディスクはSSDを使用する。Control PCでは実質600~700MB程度のメモリしか消費せず、CPU使用率も10%未満で処理性能自体の要求レベルは決して高くないので、Control PCとして動作させるだけであればあまりパワフルな構成は必要としない。

疑問2のテスト:システムディスクがHDDかSSDかの差異
同一PCをHDD、SSDからそれぞれ起動させる。
(1)HDDは320GB/7200rmp、SATA II
(2)SSDは32GB、SATA III

(注記)ノートPCの場合はUSB Boot。

疑問3のテスト:LANケーブルの違いによる差異
Control PC~HUB間について以下の3種類のカテゴリのLANケーブルを試す
(1)CAT7のLANケーブル(銅箔シールド、フェライトコアなどの対策実施済み)
(2)CAT6のLANケーブル(10G対応)
(3)CAT5eのLANケーブル(100均で購入したもの)

LANケーブルの長さは50cm~100dmと不揃い:
JPLAY LAN Cable Test

結論から先に書く。疑問1~3のいずれにおいても有意差を確認できなかった。僅かに疑問1:ハードウエア環境の差異においては、同じDAC Link値、PC Buffer値であっても、より処理能力の高いデスクトップPCにアドバンテージがあるようにも感じられた。これは、気がした、という程度であって、自分で聴いている構成が判っているから、とも考えられる。疑問2:HDDかSSDか、疑問3:LANケーブルのカテゴリ、については全くと云っていいほど変化を認識できない。

実験の準備をしながら、これは何とも恐ろしいようなテストかもしれない、と思わざるを得ないところもあった。オーディオである限り、これらの変化によって微妙であっても音の差異が出ない訳は無いとも思う。一方で我がオーディオシステムはその僅かな差をきちんと表現し得る能力まで高まられているのか、何より肝心なのは自分にそれを聴き分けられる耳があるのか。良し、悪しの判断自体はたとえ難しくても、変化自体を有意差として認識できるのか。これが一番大きなポイントなのだが、もしこれらの結果を「否」とすると、我がオーディオシステムも自分の耳も「落第」ということになってしまうし、その恥を晒すことにも通じる。

しかし、不都合な真実であっても、この結果に真摯に向き合おうとすれば、自分にとってあるかないか分からないような差について脚色することはできない。我がオーディオシステムについては十全とは云えないまでも表現力を高める努力はしてきたので、何らかの差があればそれをちゃんと音として具現化してくれるものと期待している。となれば、己の耳が聴き分けられないのか、あるいは実体としてほとんど差が無いのかとも考えられる。

Control PCの役割を改めて冷静に考えてみれば、LAN上に極めて正確なタイミングにて音楽データを送り出す、という機能のみである。この構成において、同じDAC Link値、PC Buffer値で送り出される音楽データが、Audio PCにおけるUSB DDCの動作に影響を与え得るとすれば、それは一体何であろうか? 当方の環境ではControl PCとAudio PC間にはHUBが介在している。HUBについては、AC電源用ノイズフィルタ、DC電源ラインのノイズフィルター、基板に対するシールドを実施している他、金属塊によってサンドイッチするなどの対応を行っているが、LANケーブルのアイソレーションは実施していない。この辺りが関係するかどうかは現時点では明確ではない。

構成環境によって安定的に稼動できるDAC Link値、PC Buffer値が変化し、DAC Link値、PC Buffer値によって微妙に音が変化することは然り。だが、このパラメータを固定してしまうと、Control PC側のハードウエア環境に依存して音が変化することはほとんど無い、というのが実験から得られた当方の結論となる。この結果を仮に「然り」とすれば、Control PC側の構成や設定、チューニング自体は最適なDAC Link値、PC Buffer値の目標設定をした上で取り組めば良いことになる。現状の当方の標準値は再生の安定性の観点も踏まえて、DAC Link 350、PC Buffer 0.1secである。これは今回のテストではいずれの環境においても実現できているレベル。だが、敢えてDAC Link 700、PC Buffer 0.01secを目指すのであれば、それなりのチューニングはまた必須であろうと思うのだが。

Control PCのハードウエア構成に関しては、パワフルな処理能力は不可欠ではないし、パーツについてもそれほど神経質になることもない、ということが今回の実験によって導き出されることになる。システムディスクに関しては発熱や回転ノイズの観点からSSDの選択が良いだろうということになるのだが、運用、操作性、設置環境などの観点から最適な構成を選定し、仕様を決めれば良いように思う。「音を良くする」という目的で新たにファンレスシャーシのControl PCが不可欠かということについては一番悩ましいポイントなのだが、一方で以前に実施したファンレスPCの2台構成による 実験 とは矛盾する結果にもなっているようにも思う。しっかりとノイズ対策を実施したファンレスPCを準備した上で再検証することが肝要で、今回のような多少中途半端な実験では最終結論は出せないのかもしれないと反省している。


4way構成の設定備忘録(2017年2月 1日現在)

項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
パワーアンプでの
入力絞り
dB -4.0 0.0 -8.0 -7.0
設定値
SP側での
アッテネーション
dB 0.0 0.0 -12.0 0.0
L-PAD抵抗
DF-55の
出力設定
dB 0.0 0.0 0.0 +6.0
Analog Att
OFF
スピーカーの
出力(想定)
dB 93.0 90.0 90.0 92.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

355
355

800
800

9000
9000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-48 48-48 48-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 25.0 37.0 0 36.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Normal Normal Normal Normal JPLAY
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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