オーディオ日記 第38章 つぎなるものは(その12)2016年8月8日


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Dante Audio Networkについては、自宅試聴出来そうな可能性があって大いに期待しているのだが、一方でこの仕組みを我が家に持ち込むに際してはそれなりのハードルがあることもご教授いただきつつ分かってきた。だが、悩むよりは実践だと思うのでチャレンジはしてみようと考えている。なお、Dante Audio Networkの特長としては、サンプルレートは固定にて運用することが基本でDSDには対応していない。この点はプロの世界における安定運用ということが前提であると思われるので、特に違和感はない。我が家においては、元々DSD音源は176.4KHz/24bitにダウンコンバートして聴いているので、ここも問題ない。

一方で、サンプルレートを固定するとすれば、そのレートを決定しておかねばならない。CDリッピングの音源が8割以上という現状を意識すれば、88.2KHz/24bitか176.4KHz/24bitのいずれかになるであろうか。CDリッピング音源についてはアップサンプリング、DSDについてはDSDtoPCM変換をした後ダウンサンプリングである。アップサンプリング、リサンプリングによる音への影響を考慮して、順当に考えれば、176.4KHz/24bitかもしれない。

早速この固定サンプルレートの運用を現状の我が家のJPLAY環境で試してみることとした。JPLAYにおけるサンプルレート変換はMinim Serverからffmpegを呼び出すことによって簡単にできるので、DSD音源に対しては、176.4KHz/24bitにダウンコンバートして聴いていることは 以前記載 したが、今回はFLAC形式のその他の音源(DSD以外すべて)を一律に176.4KHz/24bitにサンプルレート変換してしまうというもの。この設定はMinim ServerのSystemプロパティのtranscode設定にて以下のように指定すれば良い。(FLAC形式のファイル、DSF形式のファイルをいずれもPCM 24bit、176.4KHzにする、という指定である)

flac:wav24;176,dsf:wav24;176

(注記1)「176」というパラメータで176.4KHzを指定する。88.2KHzの場合はここが「88」という指定になる。なお、Minim Serverの設定なので、リスニングポイントからタブレット端末からの操作でダイナミックにサンプルレートを切り替えるということはできない。この辺り、VoyageMPDであれば、Output Deviceに予めサンプルレートを定義しておき、タブレット端末からの操作で選択し切替ができるので至極便利なのだが、、、

さて、この設定では元々のサンプルレートが88.2KHz、96KHz、192KHzという音源も全て「176.4KHz/24bit」に統一されてしまうのだ。その是非や如何に。実はこれ、メリットが無い訳ではない。我が家に置いてはデジチャン(DF-55)に直接PCM信号入力しているために、サンプルレートが変わるたびにこのデジチャンでリレーが働き「カッチン」と音を立ててくれるのだ。単にサンプルレートに追随してくれるだけではなく、リレーによってノイズの発生を抑えているのかもしれないが、時に曲の頭がかけてしまったりするという曲者なのだ。これは仕様なので仕方がないと思っていたが、サンプルレートを全て統一するとこのような不都合はなくなり、またリレー音も無くなるのだ。

JPLAYの設定は(まだ完全には追い込めていないのだが)DAC Link 350Hz、PC Buffer 1sec、ULTRAstreamを使用してきたので、これを踏襲する。その他はThrottle ON(注記2)、Hybernate ON、Kernel Streamingである。各種サンプルレートの音源については問題なく176.4KHz/24bitに固定される。しめしめ、、、、、音もまあ違和感は無いか。

(注記2)Throttle ONという設定がPC上のどのような動きに関与しているのか詳細は不明であるが、当方のFANレスPCではこの設定をするとかなり筐体が熱くなる。Throttle OFFではほどほど。VoyageMPDでは人肌程度。従って、この夏場には長時間Throttle ONで聴き続けるのはちょっと危ない気もしている。

だが、複数の曲をプレイリストに投入して再生させると、曲のほぼ終り辺り(次の曲を読み込みに行く辺りか?)のタイミングで再生が停止してしまう。PC Bufferの値を大きくしても若干の改善はされるようであるが抜本的ではない。サンプルレート変換の負荷が微妙に影響しているのかもしれない。DAC Linkの値をかなり小さくすると何とか安定して再生する。う~ん、この辺りJPLAYは設定がシビアでもある。ただ、DAC Link値はヒアリングによって決めた値でもあるのでできればこのまま運用したいのだが、、、JPLAY環境でCDリッピング音源のアップサンプリングが「できる」ということは分かったが、DAC Link値を下げてまでこれを常用で使ってみようとはちょっとなりにくいか。

もしかしたら、176.4KHz/24bitにすることによるControl PCの負荷かと思い、88.2KHz/24bitに設定を変えてみたのだが、あまり顕著には改善しない。残念ながらこの辺りは実験レベルと考えねばなるまい。従って、音としてはどちらのレートであってもほぼ遜色ないと思うのだが、固定すべきサンプルレートを88.2KHz/24bit、176.4KHz/24bitのいずれを常用とすべきかは現時点では結論を出せなかった。

さて、その間にも我が家のシステムを熟成させていく方策をあれこれ試している。JPLAYでの一通りの音の評価が終わったところでこのJPLAYの音にも慣れてくると、またぞろここはこうしたい、あそこはこうしたい、というものが出てくる。上記の実験で88.2KHz/24bitに固定した場合はデジタルイコライザ(BEHRINGER DEQ2496)も使えるサンプルレートなので、JPLAYをデジタルトランスポートとしたケースにおけるイコライジングでちょっと遊んでみた。

もともと我が家の部屋の影響で周波数特性70~80Hz辺りに落ち込みがある。また、4way構成の各スピーカーも厳密に見れば必ずしもきれいにフラットという訳ではなく、中低域用ユニットであるFPSにおいては250Hz辺りから下のレスポンスが少し弱く、ベリリウムツィータも5~6KHz辺りに若干の山があるのと、12KHzを越えていくと30度、60度のレスポンスが落ち込んでいく、という課題があるのだ。この辺りは4wayの設定を詰めるためにOmini Micで何回も測定しており、傾向は掴めていたものであるが、デジタルイコライザ自体が96KHz/24bitがサポートするサンプルレートの上限であること、また音質的な観点から極力イコライザの使用は避けたいと考えてきたことから常用とはしていなかったもの。しかしながら、JPLAYによってある程度まで音が煮詰まってきたこともあって(ちょっと欲を出し)、また、Dante Audio Networkの検討における、一律のサンプルレートを試す過程において試験的に復活させてみた次第である。

とはいっても、イコライジングそのものはパラメトリックイコライザのみを使用し、最大でも3dBの範囲と最小限にとどめており、細かい周波数レスポンスの乱れを補正はせずに上記の部屋の影響、ユニット自体の特性を補うという三点にとどめている。3dBというのは音響エネルギー的には2倍(または2分の1)なので、3dBという数字の感覚的なものよりは実際は大きい補正なのかもしれないが。

結果としては音楽のバランス自体は改善されると思う。より安定感が増すと云えばいいだろうか。だがしかし、JPLAYが本来持っている細部に至るまでの切れの良さはやはり損なわれると感じる。このメリット、デメリットどちらを取るのかは悩ましい問題だと改めて思うのであるが、やはりイコライジング無しのストレートさに軍配を上げざるを得ない。何回もチャレンジしては挫折しているのだが、やはり補正は難しいと痛感する、、、、廉価なDEQ2496そのものの機能的限界なのかもしれないが、たとえば電源等を改造したらもしかしたらあっと驚くような飛躍があるのかもと密かに期待はしてしまう。

閑話休題:

オーディオと音楽というものについて相変わらずの禅問答のようなものを自問自答している。

音楽無くしてオーディオは成り立たないのであるが、オーディオそのものが目的化しているような自分が見えてしまって仕方がない。もちろん、良い音で音楽を聴きたい訳ではあるが、オーディオにおける「良い音」の基準は今もって良く判っていないし、現在の自分のシステムが本当にまともな音で音楽を再生してくれているのか判然とはしない。あるのはささやかな自己満足だけなのかもしれないと思いつつも、この探求そのものを終わらせることはできない。

最近は4wayのスピーカーのセッティングを大きく弄ることはなく、落ち着いてきているとも思う。各スピーカーの基本のクロスオーバーやスロープ、タイムアライメントはしばらく弄っていない。ごく僅かなレベルの微調整(0.2~0.5dB)の範囲で最適解を探している、というところか。従って、大きな不満は無い、ともいえるであろう。しかし逆に常に大きな満足があるのか? 自問すれば、それもまた否である。

あるところで、「幸せな音」という表現を目にした。そう、音楽を聴く目的は、その心地良さに身を任せ、心を委ねて、それに浸るという瞬間なのではないだろうか。それができるシステムと再現される音楽があれば、当方の「オーディオ人生」もまた幸せになれるはず、、、、

だが、未だもってその境地には達することができていない。ある瞬間に、ある音源を聴いたと時に、束の間の「幸せ」が垣間見える一瞬はある。だが、多様な音源と音楽全てにおいて、その愉悦を味わうことはできない。オーディオにおける音楽は、曲、演奏、録音という三拍子が揃うことが望ましいと、それは昔から語られてきたこと。曲や演奏は己の好みが歴然とあり、選別することはできる。しかし、録音(状態)は曲、演奏とは別の次元として存在し、自分のオーディオシステムの状態によって評価がかなり変わってしまうことを体験している。自分のオーディオシステムが充分な熟成をしていない時は、録音が良い(と思われる)音源をかなり評価してしまうことが多々ある。少しづつでも進歩が進んでくると、むしろ録音が良い、などと思わせる音源はどこかにあざとさや人工的加工臭があり、徐々に評価が下がっていく。不自然で過剰なリバーブやエコー感、空気感など要らなくなる。自然で穏やかで、楽器や声の持つ本来の音色と響きを十全に味あわせてくれるものが好ましくなってくる。一方で音楽が持っている、ぴんぴんと立つような鮮度感やリアリティが存在していなければ、感動は増加していかなくなる。

目的と手段、という観点では明確ではあると思うものの、その比重が自分の中で正しいのかどうか、自問する。素晴らしい録音の音源だけを集めて、それのみを聴く、というアプローチもオーディオとしてはあるのかもしれない。また、ちょっともどかしいと思う録音の音源を何とか納得の音で聴けるようにする、ということも重要なのかもしれない。あるいは、そこそこで音楽を聴けるのであれば、それ以上はこだわらずに、「音楽だけを」聴くようにすれば良いのかもしれない。

この辺りは自分の哲学でもあり、趣味としてのオーディオの立ち位置の問題かもしれないと思う。ここに良い曲と演奏がある。それを最大のパフォーマンスで再生してあげることが、自分のオーディオにおける「最終解」なのかもしれない。自分では音楽を作ることも、録音することも叶わない。ならば聴くだけなのだが、その「聴く」という領域において、自分自身の役目が何かあるはずである。音楽自体は時に神にもなりうる。演奏もまた然り。同様に、オーディオにおいてもその「神性」を感じさせてくれるものが世には存在する。もちろん、自分ではとてもその領域には辿り着けてはいないのだが、確かにそう感じさせてくれるようなオーディオシステムの音があるのだ。

もしかしたら、目指すべきなのはそのような世界なのかもしれない。だが、どうすれば其処に辿り着けるのか、実現できるのか、この娑婆の中で足掻き回ってみたら少しは光が見えてくるのであろうか。「神の領域」に至るのは狭き門、そしてそれはともすれば滅びの門であることは疑いようも無い。「余命幾ばく」と考えれば、もっとお気楽なアプローチで良いのかもしれない。だが、オーディオを趣味と自認してきた自分にとって、それは許容できるものではない。ならば、どこまでも夢を追っていくしかない。例えそれが目的と手段の穿き違えであったとしても、追い続けることに意味と意義があるのではないか。見果てぬ夢、と人の云う。目的地に辿り着けない旅人がいる。人生の終焉において達観できない人もいよう。それはもしかしたら自分自身かもしれないと思いつつ、、、

無駄なことはできればしたくはない。だがしかし、やれることはやってみなければならない。時間的、金銭的な制約の中でそのような取捨選択はこれからはさらに重要であろう。


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