オーディオ日記 第35章 賢者の導き(その18) 2015年 9月20日


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DSD音源とデジチャンの最適な相性を探すべくあれこれと試している。

一般論的には素直にUSB DACでアナログ変換したものをデジチャンにアナログインすれば良い訳で、確かにこの経路での音はリーズナブルであると思う。しかし一方で、我が家ではDSDをリアルタイムにPCM(176.4KHz/24bit)変換してデジチャンに入れた場合の音に微妙なところで軍配が上がっており、あれこれと試行錯誤を続けている。DSDtoPCM変換をした音は確かに明晰でメリハリがあると感じるのだが、逆に音楽の雰囲気とか柔らかさは多少出にくく、その辺りどこに要因があるのか、改善可能なのか、いろいろな音源を聴き較べながら、再生環境も変えながら調べている。

過日我が家でのオフ会で 先にも書いた DSD音源、PCM音源(192KHz)、アナログ音源の聴き比べをしたが、DSD、PCMについては参加者の概ねの意見としてもPCMに軍配が上がっている。デジチャンを使っていることによるA/D変換の課題なのか、DSD再生環境についてはまだまだ詰めが甘いこともあってDSD音源のパフォーマンスを引き出せていないのか、現時点では結論を出せていない。

なお、実験から判ったことのひとつであるが、DSDtoPCM変換した際の「音量」がソフトウエアによって異なるという点。VoyageMPD環境でDSDtoPCM変換した時の音量と比較すれば、Audiogateで変化した場合の音量は明らかに大きい。SACDはダイナミックレンジのマージンを確保することから一般的にCDに比して-6dBの音量だと思うが、その程度の差が明らかにあるのだ。今までAudiogateでDSDtoPCM変換しているものを疑問なく基準として考えていたのだが、振り返ってみればAudiogateではCDからリッピングした44.1KHz/16bitの音源との音量差も感じていなかった。新たにVoyageMPDとの比較試聴することによって、明確に差があることが判った。この原因は何だろう? 考えられるのは176.4KHz/24bitにする際の音量情報の扱い・処理の違いだと思うが、どちらが正解なのか現時点では判らない。差がある方(VoyageMPD)が正解のような気もするのだが。

VoyageMPDはタブレット端末からの圧倒的な操作性を誇るので、これで十全なDSD再生環境が得られれば文句無い。VoyageMPDにおけるDSDの対応状況は、DSD Nativeはもちろん可能だし、DSDtoPCM変換しながら再生させることもできるので、適宜切り替えての比較がやり易いのだ(実験の内容、設定については参考としてまとめて記載した)

さて、このVoyageMPDの環境で176.4KHz/24bitにDSDtoPCM変換した音をじっくりと聴く。うむむ、、、、何故かあんまり良くない。DSD Nativeは特段の違和感がないのだが、VoyageMPD環境下ではDSDtoPCM変換した音は何だか見通しが悪くすっきりしない。音楽を聴いて気持ち良くないのだ。おそらくこれは変換処理が音質面から詰められていないのかもしれないと推察する。そこでAudiogate(バージョンは2.3.4)に戻してDSDtoPCM変換した音を再度聴く。音量差の問題を別にして、やはりこちらの方がクリアーかつ明確である。感覚的にはWindows環境よりLinux環境の方が相対的に音が良かろうと思っていたのであるが、この差は想定外であった。

VoyageMPDでもさらに別の設定で音質改善できることがないか、探しているが今のところ見つかっていない。しかし、これは困った。Audiogateの方が間違いなく音が良いのだが、タブレットでの楽チンリモコンができないともはや生きていけないのだ。人間は贅沢にできているようでリモートデスクトップでAudiogateの遠隔操作が出来る、という程度ではもはやだめなのだ。ひたすら快適でなければ、、、

そこで改めて、USB DACでのアナログ変換した場合とAudiogateでDSDtoPCM変換した音を数十種類の音源にわたって比較した。VoyageMPDで感じた音楽を聴いてあんまり気持良くない、ということがあったのでこの点を改めて重要なポイントとした。DSD Nativeでアナログ変換した音はちょっとふわっとしていて肌触りが良く、柔らかく感じる点は変わらない。DSDtoPCM変換した音は明晰であるが、どこかしら表情が冷たい。高域の伸びや倍音の表現となると好き嫌いだとは思うが、穏やか系のクラシック音楽ではアナログ変換した音の方が好ましいかな~とこの点は少し軍配が逆転する。
(注記:DSD2.8MHz音源をUSB DAC上のFPGAにて11.2MHzにアップコンバートしてからアナログ変換している。USB DACのチップはES9018である。デジチャンのDACチップはES9008。

Audiogateの場合、KORGのDACを使わないとDSD Native再生が出来ないので、両方式を気分によって選択・切替することができないのがちょっと残念。逆にVoyageMPDはそれができるのだが、肝心のDSDtoPCM変換した音がどうもよろしくない。これは困った。さりとて、44.1KHz/16bit音源をPCMtoDSD変換した音は採用には至らないので、デジチャンへアナログ入力一系統にすることもできない。このため、DSDのアナログ変換を採用するのであれば、音源の種類によって再生時にデジチャンの入力をDSDならアナログにPCMならデジタルに、と切替しなければならないのだ。これは面倒。両音源を混在させたプレイリストでランダムに聴くなどは論外となってしまう。これもつらい。

音源により機器の着替操作が不要であること、またプレイリスト上の楽曲として混在していてもシームレスな音源の選択と再生が出来ることが当然望ましいのだ。この観点からはDSD音源は(我が家の環境では)DSDtoPCM変換する方式が適合するのだが、ただやはり納得の音でなければならず、利便性だけを優先させることはできない。

他の選択肢としては、何が候補となるだろうか。JRiverで納得できれば、こちらはJRemoteというタブレットからの操作環境もあるので、行けそうな気がする。Bug HeadでのDSDtoPCM変換機能も忘れちゃいけないのだが、やはりAduiogate同様の操作性の問題は残る。しかし、やはり最終的には音であろう。何はともあれ実験だ。最後の頼みの綱はJRiverである。このソフト、音源のサンプリングレートを設定で自在にコントール(DSDの場合はPCMにするか、Nativeにするかの択一であるが)できるという特徴があり、またその演算処理も高精度で行っているとの能書きなので期待値も高い。気になっていた音量であるが、JRiverの場合はVoyageMPDと同じレベルである。とすると、AudiogateにおけるDSDtoPCM変換はこの音量差を補正しているものと思われる。JRriverとAudiogateの比較を行う際この部分をちゃんと頭に入れておかないと判断を誤るかもしれないので、注意深く行った。

さて結果であるが、DSDtoPCM変換の個人的評価としては下記の通りで(利便性を重んじたい当方としては)少し苦渋の結果である。

Audiogate ≒ Jriver ≒ Bughead > VoyageMPD

(20150923追記:VoyageMPDでのDSDtoPCM変換が今ひとつであった原因が判明、末尾に追加記載しました)

従って音と操作性(JRemote前提)という観点からの総合評価はJriverなのであるが、ここでも困った点がある。それはDSD NativeとDSDtoPCMの切り替えがタブレット端末からサクッと出来ないということ。VoygeMPDはこれが簡単に可能なのだ。確かにDSDtoPCM再生に限定してしまえば良いとも思うのだが、クラシック系の曲ではDSD Nativeでも聴きたくなるという我儘な欲求もかなえて欲しい。やれやれ、DSD再生も落ち着くまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。

(参考)VoyageMPDにおけるDSD再生:ALIX3D2上とPCの二環境でテストした
1.DSD Native再生の場合
   出力デバイスの設定にて  dsd_usb "yes"
   PCMはそのままのサンプリングレートで再生される。

2.DSDtoPCM変換をさせる場合
   出力デバイスの設定にて  dsd_usb "no" format "176400:24:2"
   すべての音源が設定に従って176.4KHz/24bitにリサンプリングされる。

出力デバイスは上記の1と2の設定をしたものを別々に作っておき、再生時にどちらかを選択すればOKである。さて、ALIX3D2での再生は1.DSD Nativeは全く問題ないが、2.DSDtoPCM変換はCPUのパワーが不足して音が途切れたりするので、これは全然使い物にならないことがわかった。ただし、再生方法の設定はこれでOKだということが確認できた。そこで、音楽再生専用PC(HTPC)上のVoyageMPDに同様の設定を行いテストを継続。やはり変換処理のためのCPUパワーに依存すると思われ、こちらの環境では2.DSDtoPCM変換処理も全く安定している。使い慣れたiPadの画面から楽曲の選択を自在に操作できるのはやはり何ともありがたいし、DSD NativeとDSDtoPCMの再生環境もデバイスの選択(リモコン操作可能)で切り替えられるのでこれも楽チンなのだが、、、

20150923追記:
VoyageMPDにてDSDtoPCM変換した音に納得できず、他の再生ソフトウエアとの比較でも音質的にビハインドしていたが、その理由が判明した。VoyageMPDにおけるDSDtoPCM変換では352.8KHzがサンプルレートの基準値である。当方のデジチャンにはこの352.8KHzのPCM信号をそのまま入力することはできないので、サンプルレートを176.4KHzと設定しているのだが、当然ながらこの時に352.8KHzから176.4KHzへのサンプルレート変換が内部的に行われている。従ってこのサンプルレート変換の品質がポイントであった。

VoyageMPDはサンプリングレート変換する際の精度・品質を稼動するCPUの速度に合わせて設定する機能がある。比較的低速のCPU環境でVoyageMPDが利用されることも多いので、このサンプリングレート変換の設定は一番低品質のものがデフォルトになっている。従って、これを「高品質」の設定に変えることによって、他の再生ソフトウエアと遜色のないDSDtoPCM変換が出来ることが確認できた。これで安心してVoyageMPDでDSD音源を楽しめることとなり一安心。

mpd.conf上の設定内容は以下の通り:

samplerate_converter "Best Sinc Interpolator" (最高品質の設定)

この他に "Medium Sinc Interpolator" (中品質) "Fastest Sinc Interpolatr" (低品質、デフォルト)などの設定がある。


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