オーディオ日記 第35章 賢者の導き(その17) 2015年 9月 7日


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少し涼しくなってA級アンプの過熱の心配も少なくなり、ゆるゆるとオーディオシーズン突入であろうか。さて、女性ボーカルをよりチャーミングに再生してくれる3wayセッティング(中域にホーンの構成)はまあまあ成功と思われ気持ち良くいろいろな音楽が聴かせてくれている。これに気を良くして、FPSを使用した3way構成も同様にブラッシュアップしようと考えあれこれと弄ってみた。先のホーンドライバーを使用した構成ではドライバー単体でのレスポンスのフラット化に留意したのだが、FPSは元々非常にフラットなレスポンスを持っている。このため調整の視点は、低域、高域の両ユニットの受け持ち帯域と音の溶け合いに重点を置くことで考えてみた。4way構成での調整の経験をベースにしながらも、FPSの素直さをなるべく引き出そうと考え、FPS自体は両側とも-6dB/octのスロープ特性で使ってみることとした。(従来は-12dB/oct又は-24dB/oct中心で-6dBはほとんど使用していないのだが、ホーンドライバーの構成で一部-6dB/octを使ってみて意外と好結果であったことによる)低域とのクロスは200~400Hz辺りが候補であり、高域は2500~4000Hz辺りであろうか。まずは355Hzと3550Hzのクロスオーバー周波数で調整を開始したが最初からそこそこの感じである。最初はツィータの遮断特性は-12dB/octとしていたが、これを4000Hz、-6dB/octとこちらも-6dB/octの遮断特性に合わせてみた。FPSのフラットな周波数レスポンスに加えて、ベリリウムツィータのクリーンな高域が上手く重なるようで、なかなかの感じ。FPSは他のユニットに較べると能率が若干低く、力感が不足する面もあるので、最終的にウーファーは400Hz、-12dB/octとしてみた。

思ったよりすんなりと纏まったことに気を良くして、ホーンドライバーベースの3wayとも比較してみる。FPSの3wayはどんなジャンルの音楽でもしっかりと聴かせてくれ、万能と云える音のまとまりのような気がする。そこで、好みの女性ボーカルに絞って聴き比べる。FPSの3wayで聴くと、それなりに満足できるのだが、ホーンドライバーの3wayと比較してしまうと、声の微妙な陰影、グッと来るような魅惑的なところでどうしてもホーン構成に軍配が上がる。これはこのSONYのドライバーユニットに永らく親しんできたことによる体(耳?)の慣れが大きい評価かもしれないのだが、歌手や曲を変えてもその判定は変わらない。ホーンドライバー構成による3wayの方が周波数特性的には若干山谷があるので、それによる音のキャラクター付けなどがあって、結果として自分の心の琴線に触れる部分になっているのかもしれない。

多くの場合、女性ボーカル(JazzやPops系)では録音時のリバーブ、エコーという加工、お化粧があるので、「素」の声を聴けることは少ない。また、このように残響成分を加味された録音は耳に心地良くなる要素を持っている。従って、本来の声の自然さとは違うこともあり、その再生には今の我が家の状況ではホーンドライバーの方が(微妙な味付け?もあって)好ましくなるのだろうか、などなどと考えてみる。

逆に編成の大きいオーケストラ曲では音の広がり(パースペクティブ)や粒立ち、という観点でFPSのアドバンテージも改めて感じる。女性ボーカルの再生での比較評価は微妙な部分もあるのだが、教会音楽等におけるソプラノの透明感は決して引けを取らない。そこで、FPSでもうひとつチャレンジしてみたいことがあるのだ。それはFPSをダブルスタック(縦に2段重ね)で試してみたいというもの。このユニットのフラットネスというアドバンテージを活かしつつ、スケール感、迫力を追加できるのでは?というアイデアだ。オーケストラ、特に教会音楽系では空間の表現力が上がり、より音楽に包まれる、という感覚を味わえるのでは、という期待値だ。これはチャンスがあれば是非とも実験してみたいと思う。

さて、もうひとつ。このところDSD音源を積極的に聴いており、このフォーマットに対する期待値を高めている。一方で同一音源をアナログ、PCM(できればハイレゾ)、DSDについて、比較してみたいと考えてきた。これは掲示板にコメントをいただいたことがきっかけでもあるのだが、今までは同一音源でこの3種類を比較できるソースの手持ちがなかったのだ。今般、アナログディスク、PCM音源(192KHz)、DSD音源が揃ったものができたので、早速チャレンジしてみた。

比較試聴するシステム構成であるが、アナログディスクはプリアンプ(フォノイコ)経由デジチャンにアナログ信号入力。DSDはUSB DAC内で2.8MHzを11.2MHzにアップコンバート、D/A変換しアナログ信号をデジチャンへ入力。(アナログ信号はデジチャンにて176.4KHz/24bitに再度PCM変換される)PCMはUSB DDCからデジチャンへPCM信号を直接入力。音源はHDTracksからのダウンロード。アナログディスクはかなり古いものなので盤質も多少劣化している可能性がある。なお、評価自体は当方の再生機器・システム構成に大きく依存していると思われるので、その点は留意して考えておきべきであろう。なお、DSD、PCMの送り出しはともにVoyageMPDである。

再生順はDSD、アナログ、PCMの順とした。まずはDSDから。1970年代の古典的かつ高名なロックの曲であるが、とにかく気持ち良く楽しめる。曲が素晴らしいこともあって、何ら不満要素がない。次にアナログ。一聴して質感が違うことを感じる。音楽がぎゅっと詰まっていて密度が高く感じる。ボーカルの押し出しもあって音楽の「ノリ」自体はこちらに軍配か。ただ、盤質の問題もあり、ところどころ聴き辛くなるところも無くはないが、ロックっぽさは一番出ているかも。最後にPCM。192KHzをそのままデジタル信号入力する。う~む、難しい。DSDと比較すれば、明らかにDSDの方がある種のアナログっぽさをもっているのかもしれないがPCMの場合は音の切れが良く音楽の再生が明確であると感じる。言うなれば情報、細部の欠落は全く無い、という感じ。
(注記)結果的にはDSD音源をDSDtoPCM(176.4KHz/24bit)変換して再生した場合と 同様な ものとなった。

現状はこの3種の比較ができるアルバムがこのひとつしかないので、(もしかしたら)マスタリングの違いもあるだろうし、特にアナログディスクにおいてはカッティング時などの「処理」の影響も考えられるので、すべてが同じに評価傾向にになるとは思わない。ただ、この音源を比較した限りにおいては、当方の再生音の好みはPCMにある。これはやはり我が家のシステム構成においてデジチャンを使っていることの影響が大きく、PCM、DSDの評価がその点に依存していると考えられるのだが。

アナログ、PCMの比較に関しては、44.1KHzのCD音源であれば比較対象が多々あるのだが、こちらは従来からアナログに軍配があることは今も変わっていない。特にボーカルの再生においては差を感じることも多い。システムの違いか、フォーマットの違いか、マスタリングあるいは製造上のプロセスの違いか、その辺りは定かではないが、、、、やはりオーディオはある種感性の部分もあってなかなか音質評価などは難しいと改めて思う。


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