オーディオ日記 第35章 賢者の導き(その15) 2015年 8月20日


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デジチャンは現在我が家のオーディオシステムの要なのであるが、使いこなすの相当難しい機器であると思う。もちろん、デジチャンがなければマルチアンプシステムのタイムアライメント調整は現実的にほぼ不可能なので、最早アナログチャンデバに戻ろうとは思わないが、デジチャンのパフォーマンスを十全に発揮させるためには随分と苦労させられたように思う。最近ようやっと「ツボ」というか「コツ」というかが判ってきたがまだまだ完璧と思えるほどには至っていない。

そんな中、DSD音源をすこしづつ増やそうとしているのであるが、この再生がまたまた難題であると思う。当方の基本的なデジチャンの使い方はPCM信号をデジチャンに入力し、D/A変換後の各チャネルの音量をマルチチャネルボリューム(現在は6ch)で調節するというものであるが、デジチャンにはDSD信号を直接入力できる仕掛けがないのだ。世のデジチャン、プロ用の機器を見渡してもDSD信号を直接入力可能なものはない。これはデジタル信号の演算処理はPCMでしか行えない、DSDのまま演算処理できないという制約からきている。(なお、当方の使用しているDF-55というデジチャンにはHS-LINKの入力端子はあるのだが、これもDSD信号は受けられない)

このような構成において、DSD音源を再生しようと思うと、大きくは以下の二つの方法に大別できる。

1.DACにて一度アナログに戻したものをデジチャンに「アナログ」入力する。
2.DSD音源をPCM信号に変更してから、デジチャンに「デジタル」入力する。

また、PCM信号に変換するタイミングもいくつか考えられるし、その場合サンプルレートをどうするか、という課題もあるのだがこちらも以下の二通りである。

A.DSDファイルをPCMファイルに予め変換しておく。
B.PC等からの再生時にリアルタイムでPCM信号に変換させる。

基本的なスタイルとして上記1.のアナログに戻してからの入力は世のSACDプレーヤと同じ考え方になると思うが、D/A変換後に、デジチャンにてA/D変換、PCM信号の演算処理、D/A変換というプロセスを経ることになる。ここで音に対して非常にシビアなのはデジチャンでのA/D変換部分である。このA/D変換前に音量を絞る、という処理を入れると(世のデジチャンの使い方も典型としてはSACD、プリアンプ、デジチャン、パワーアンプというような構成をとるのであるが、その場合プリアンプでかなり音量を下げることになる)現実としてA/Dコンバータがフルスィングしなくなる。このため、デジチャンへの入力レベルをなるべく高く保ち、出力レベルは抑えるという設定が極めて重要になる。この課題を避けるために、当方の構成はUSB DACの後段は(アナログ信号を絞らずに)、デジチャン、6chマスターボリューム、パワーアンプという変則的な構成にしている。(このような使い方をしているデジチャンユーザーは既に多いかもしれない)

このような構成でDSD音源を聴く場合と上記2.のPCMに変換してデジタル入力する場合との差がどの程度あるのか、ちょっと検証してみた。これによって今後のDSD音源に対するリスニング方法を確立させようと考えている。CD層とSACD層の音を聴き比べれば、今までの経験から率直に云って多くの場合SACD層に軍配が上げられることもあり、DSD音源自体に対する期待値は高い。
(注記)別件ではあるが、44.1KHz/16bitのPCM音源をリアルタイムにDSD変換することによる音の改善については、いくつかの実験を行った結果から現在では当方はその効能にはやや否定的である。

もちろん、手持ちの機器は限られるし、使い方の問題もあるので、パーフェクトな比較は難しいと思うが、まあ、やるだけやってみようと。なお、前提となるデジチャンのマルチアンプの設定についてはデジタル絞りはなるべく最小にしたいのだが、各ユニットの能率や出力バランスの調整の関係から、低域-2.0dB、中域+1.0dB、高域±0.0dBと僅かだが低域にデジタル絞りは入っている。(デジタル絞りの件については末尾にて補足する)

アナログの送り出しは自作PC上のVoyageMPDから USB DDC/DAC 経由であり、このUSB DDC/DACにてDSDからD/A変換を行う。なお、その際に音源の2.8MHzのDSD信号を5.6MHz、11.2MHzへアップコンバートさせてからD/A変換をさせることも可能なので、ここでは一律に11.2MHzとしてみた。

PCM変換するケースでは同じ自作PC上のAudioGateにてリアルタイムにDSDから176.4K/24bitのPCM信号に変換して送り出す。こちらも同じUSB DDC/DACからののデジタルアウトをデジチャンに入れるスタイルである。

後段のデジチャンの設定はアナログ、デジタルの入力切替のみ、6chマスターボリュームの音量位置は同じとする想定なのだが、さてここでちょっと困った問題が。D/A変換後のアナログ入力の方が音量がやや小さくなってしまうのだ。これはDACの出力レベルの問題なので如何ともし難く、条件を合わせるために音量を少しいじらざるを得ないが、これは仕方なしと考えた。(もちろん音量を変える、ということで微妙に判断に影響があると思う)

さて、いくつかのDSD音源を聴く。当初の想定はそれほど違わないのでは、と心積もりしていたのだが、やはり差は感じる。PCM信号に変換してデジタル入力した方がピシッとした感じ、謂わば音が明晰で好ましいように思えるのだ。音源をいろいろと試してみたが概ねこの印象は同じである。またリアルタイム変換ではなく、予めPCMに変換したファイルを作成しておき、これをVoyageMPDで再生させるケースでも同じような傾向に感じた。

もちろん、機器や再生ソフトウエア、システム構成などに依存するので、この実験結果を持ってすべてこれに該当するとは思わないが、我が家では現在のところDSD音源であっても一旦PCM変換を行って、デジチャンへデジタル入力する、という方法がベターとの結論になった。DSDtoPCM変換の方が、A/D変換とD/A変換をさらに加える場合よりも影響が少ない、ということであろうか。一方で、デジチャンにおけるA/D変換部分をまだまだ使いこなしきれていないという可能性もあるのだが。これはこれからの課題であろう。翻って考えれば、デジチャンというのは大きなメリットもあるのだがやはり万全に使いこなすのはなかなかに難しい。

なお、当面はDSD音源は176.4KHz/24bitのFLACファイルに変換しておき、一律にPCM音源としてVoyageMPDで楽チンなリモコン再生させる方法が、入力切替等の手間もなく、多様な音源を取り混ぜて聴きたい場合にも良かろうと考え、これを仮の結論とした。徐々にDSD音源を増やそうとしている心積もりもあるので、この結果はちょっと悩ましい状況でもあるのだが。最近はUSB入力付きのDACも増えてきている状況もあるので、DSD対応のUSB入力付きのデジチャン(DSDtoPCMをデジチャン内部で行う前提)が出てこないものかとちょっと妄想する。各チャネル連動のマスターボリューム付きであれば個人的には理想的なのだが。まあ、需要はかなり少ないと思われるので、期待するのは難しいかもしれない。

(補足)デジタル絞りについて:

マルチアンプシステムを構成するに際して各スピーカユニットの出力レベルを合わせなければならないが、デジチャンにおいてはこれをデジタル絞りに頼らざるを得ないことがままある。しかし、音響エネルギーの相対的に小さい中域や高域においてこのデジタル絞りを大きく使ってしまうと、現実として想像以上に音質が劣化する。特に高能率のユニットを中域や高域で使用している場合は要注意である。経験的には基本は0dBであり、止むを得ない場合でも-3dB以上のデジタル絞りは使うべきではないと思う。もちろん、それだけではスピーカーの能率差を吸収できない場合もあるので、アンプのゲイン調整やその他のアナログレベルの音量調節の方法でこれを行う方が良い。(ただしこの方法でのレベル合わせには結構苦労することになる)デジチャン上でのデジタル絞りは確かに簡単で使いやすいのだが、必要以上に使うと音が硬くなり、所謂デジタル臭が出てくるのだ。特にホーンドライバーのような反応の良いユニットの場合はデジタル領域で大きく絞ってしまうと音へのインパクトは顕著となる。また、状況によってはデジタルレベルで出力をプラス方向に振ることも好結果につながる。ただし、中低域、中域ではデジタルクリップしてしまう恐れもあるのであまり大きくはできないが、高域であれば+6dB程度の設定にしてもほぼクリップすることは無い。このあたりもデジチャンの使い方のひとつのノウハウだと思う。 以下は現状の3wayでの設定であるが、ホーンドライバーの能率が相当高いがデジタル(デジチャン上で)絞らず、アナログアッテネータの併用で出力レベルのバランスを取っている。できれば低域に入っている-2.0dBのデジタル絞りも排除したいのだが、、、

低域  デジタル -2.0dB
中域  デジタル +1.0dB (アナログ -18dB)
高域  デジタル ±0.0dB


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