オーディオ日記 第34章 ブレークスルー(その12) 2014年10月22日


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デジチャンでのデジタル絞りを極力行わないようにするため、デジチャンからの中域用ドライバーの出力レベルを0dBにする 実験 を行ったが、これは好結果であった。これを受けて、デジチャン後段にてドライバーとウーファーのレベル差(14.7dB)を吸収するためのアッテネーションを行う各種の方法を試してみようと考えた。先の実験自体は中域専用に別途プリアンプを用意し、これをデジチャン~パワーアンプ間に挿入してレベル調整を行ったが、低域、中域、高域などの各チャネルのレベル設定が終わった後の全体の音量調節はこのままではできないので、実用上はデジチャン上流でデジタルボリューム(ソフトウエアボリューム)を使用せねばならない。結局のところこの方法では完全にはデジタルボリュームを排除出来ないことになる。

デジタルボリュームを全く否定する訳ではないが、まずは出来る限り最小にしてみることをやってみようと考えた。中域の能率差を吸収する個別アッテネーションを行う方法論としては以下のようにいくつかのアプローチが考えられる。

1.ドライバー用のパワーアンプの入力レベルをアンプ付属の入力アッテネータで下げる。
2.ドライバー用のパワーアンプを低ゲインのもの、あるいはゲイン調整ができるものに交換する。
3.デジチャン~6chプリアンプの間にラインレベルで個別のアッテネーションをかける。
4.パワーアンプ~スピーカユニット間でアッテネーションをかける。

さらにその上で、全チャネル一括の音量微調整が行えねばならない。残念ながら、現状では8chマスターボリュームが無いため完全な解は得られない。ならば近似値の解を求めてみようと思う。

さて、上記のアッテネーションの方法論であるが、最終的には2.のアンプの交換が必要になるのかなと考えているが、まずはありもので手軽に出来ることからやってみよう。4.の方法であればありものの僅かな抵抗で実験可能だ。L-PAD型の固定抵抗アッテネータならば目標の減衰量近い値の抵抗が2本あれば良い。過去にデバイディングネットワークを作成した残骸を確認すると8オーム負荷で-12dBに絞れるJantzenの巻線抵抗の組み合わせが見つかった。理想論的には12オーム負荷で-12~-14dB程度にできる抵抗の組み合わせがあると良いのだが、、、まあ、結果が良ければ改めて目標数値に見合う抵抗を購入することとしよう。

固定抵抗をスピーカー側の端子に接続して、まずは3wayでのバランスを取る。スピーカーユニットに対する固定アッテネーションはしばらくやっていない方式なので、まずはパワーアンプの入力レベルを完全に絞ってからおそるおそる音出し。低域、高域はともに0dBで問題ないが、中域ドライバーはありものの抵抗故に減衰量が不足で、バランスを取るためにはデジチャンの出力を-4.7dBとする必要があった。正味の減衰量は-10dBというところか。まあこれは仕方なしとして妥協。一括での音量調節は6chプリアンプにてアナログレベルで行う前提としているが、問題は3way+One方式のSub Wooferの音量調節である。これは6chプリアンプのボリュームの常用位置でSub Wooferの出力レベルのバランスを取った。つまるところ固定値である。当然の結果として6chプリアンプで音量を変えれば、バランスが狂う。これも現時点では実験と割り切って目をつぶった。6chプリアンプのボリュームを常用位置から大きく動かさねば受け持ち帯域が極めて狭いので聴感上も大きな違和感はないように実際も感じた。

さて、これで環境は整った。音楽試聴はまずVoyageMPDで行う。これはVoyageMPDからのデジタル信号は44.1KHz/16bitのままでアップサンプリングさせていない(CPUのパワー不足による)ので、デジタル絞りの影響が大きいと考えているためである。VoyageMPDのデジタル出力の設定でソフトウエアボリュームを使うかどうかは「mixer_type」というパラメータで行うので、これを「software」から「disabled」に変えれば良い。これでソフトウエアボリュームがキャンセルされ0dBの出力が行われる。(当然ながら、iPOD等のクライアントソフトでの音量調節も不可となる)なお、システム全体としてみた場合、中域ドライバーの-4.7dBにしているところがデジチャンでのデジタル絞りで、全体音量調節はアナログ絞りとなる。ソフトウエアボリュームを使用する場合は全帯域にデジタル絞りが入ってしまうが、今回の実験ではこの中域のみだ。

楽曲を再生させてのファーストインプレッションは「何か懐かしい音」。パワーアンプで中域ドライバーを直接駆動している場合とはやはり印象が異なる。敢えて云えば、音の切れ、解像度が甘くなるような印象がある。しかし、楽器の色艶や音の芯という点では却って好印象。何故か生き生きとしており情報の欠落が起きてしまっているような印象もなく、音楽がとても楽しめる。これは抵抗によるマイナスファクターとデジタル絞りが浅くなったというプラスファクターの両方があるのかもしれない。最初の感触である懐かしい音の印象に従って、オールディズセレクションのプレイリストを再生してみる。これが何ともドンぴしゃり。音楽が気持ち良くノリノリで楽しめる。古い録音のボーカルも何故か(当然好きな曲ばかりなので)浸れる。本当はオーディオってこうあるべきなのかも?と思わせるのだ。クラシック系もあまり神経質にならずに済む点は同じ傾向。決して高域不足ではないのだが、弦の音のあたりも心なしか優しく感じる。もしかしたらこれはかってアナログチャンデバを使っていた時と同じような音の傾向なのだろうか、とふと考え込んでしまった。デジチャンの機能的な良さ、便利さを生かしつつも、それに胡坐を掻くことなく、音楽にとってマイナスファクターとなる点は丁寧に取り除くべきなのだ。そういう意味では今までデジチャンの機能を礼賛してきたが、マスターボリューム以外の別の課題もやはりあるのだ。

デジタルボリュームか、アナログボリュームかという観点からはそう簡単に結論を出すべきものでないと思うが、ボリューム自体は必要悪なものだと改めて思う。アナログボリュームも質が悪ければ音に大きく作用してしまうし、深く絞れば左右のバランスも狂いかねない。一方でデジタルボリュームは必要以上に絞れば(特に高域において)音の質感を損ね何か硬い印象を醸し出して音楽自体をつまらなく感じさせてしまう。音楽を聴く上で、どちらが好ましく、気持ち良いのか、ということが自分にとっての判断基準となるのだ。

現時点での当方の判断はデジタルに頼った絞りを極力減らす、という方向である。(デジタルイコライザの使用をやめたのも同じ方向性によるものである)今回の固定アッテネータ方式では、中域に-4.7dBのデジタル絞りが残っているので、さらに小さくなるように希望の減衰量に合わせた抵抗を急ぎ調達して変更してみようと思う。自分では抵抗の音の良否まではわからないかもしれないが、指定値(12Ω負荷で-12dB)となるようなDALEの巻線抵抗を早速オーダーした。比較的手軽に出来るこの方法をさらに詰めてみようと思う。一方で、パワーアンプにはしっかりと仕事をさせた上で、その後に絞る、という今回の実験方式が全方位で良いとは言えない点もあるので、この点はこれからの実験課題としようと思う。その上で本来のマルチアンプシステムの特長であるドライバーをダイレクトに駆動する美点をも追求するとすれば、これはパワーアンプを低ゲインのものに交換するしかないであろう。

なお、その他の方法として1.パワーアンプの入力アッテネータでレベルを下げる、というのも現状構成で実験可能であり、これも試してみたが結果は好ましくなかった。当方所有のパワーアンプの入力アッテネータは基本バイパスとしており、今まで常用で使ったことはない。この入力アッテネータで音量をしぼると何故か音に生気がなくなってしまうのだ。相対的に残留ノイズの影響が大きくなることにも関係があるかもしれないし、アッテネータ自体の質の問題かもしれない。

いずれにしても我が家ではデジチャンベースのマルチアンプシステムが基本となるので、8ch連動のマスターボリュームが欲しいという思いは強まる一方である。欲を云えば、個々のチャネルごとにプラスの方向にもレベル設定が出来るようなもの。となるとやはり電子ボリュームしか方法が無いのであろうか。何とももどかしい状況である。


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