オーディオ日記 第34章 ブレークスルー(その2) 2014年2月13日


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現行の3wayマルチについてはそれなりに熟成させてきたこともあって、その再現力と音色にはある程度の納得と満足感がある。したがって、4wayへの移行に際してはこれを凌駕する音が出てくれなくてはチャレンジの甲斐がないというもの。借用中のミッドローユニットについて、非常に良い感触があることは 前回記載 したが、これをさらに追い込むべく細かな設定変更などを行った。位相、ディレイなども当然ながらOmni Micで測定しつつ微調整した。

詳細は後述するが、ミッドローとしての受持ち帯域を140Hz~560Hzとした。ミッドハイとなるドライバーとのクロスオーバー周波数は3way構成時のものと同じ。つまり、3wayマルチにおけるウーファー受持ち帯域の上のほうの部分のみミッドローユニットに置き換えた形になる。

現在試しているこのミッドローユニットは Flat Panel Speaker というものだが、クラッシク系以外のいろいろなジャンルも聴き込み、いくつか特徴があることも判ってきた。特にボーカルを中心に纏めてみると、

第一は音が良く飛びかつ明晰であることなのだが、曲の流れの中で強奏になった時でも声の存在感が全く失われない。従って、演奏に埋没することなく、また混濁感がほとんど無くプレゼンスの高いボーカルを堪能できる。これはとても得がたい能力だと思う。小音量ほどこのプレゼンスの良さが明確になる気がする。これは一番大きなポイントだと思う。

第二にはこのボーカルの定位がぴしっとセンターに来て曖昧さがない。これは現状のこのユニットの設置位置の関係もあるかもしれないが、平面波を再生するユニットであることと指向性の影響が大きいのだと思う。オーケストラ系の再生では楽器の全体配置が3way構成時よりも見えるようになる。裏を返せば、最適なリスニングポジションはやや狭められる傾向にあり、(実害はないのだが)スピーカーから横方向に大きく離れた位置では音のバランスが変わる。

第三は3wayで中心となっているSONYのユニットとの音色の比較となるが、やや辛口である。SONYのウーファーユニット、SUP-L11は声の表情がとてもしっとりとしていて多少甘口であるが心地良く、この点を高く評価しているのだが、これと比せば硬派とも云える。もちろん低歪なので、聴き辛いとか五月蝿いということはないのだがその音色の違いは結構はっきりしている。叩いた音、弾いた音などの表現力にも長けていると思う。この差は再生音のスピード感の違いということも関連があるかもしれない。従って、ハープやギターソロなどもリアルで絶品である。ただ、女性ボーカルに特に艶っぽさみたいなものを求めたい時は(デジチャンのメモリー設定一発で変更できるので)従来の3wayで聴くという選択もできるというのは強みというか我儘かも。

さて、この Flat Panel Speaker を4way構成のミッドローユニットとして追い込む上で考えたことであるが、指向性を考慮しなるべく低い周波数で使用する。言い換えれば、3wayでのクロスオーバー周波数と同じである560Hzより上をドライバーに受け持たせ、このSUP-T11が持っている中高域の清楚な良さをそのままそっくり生かすという考え方である。一方、ウーファーとのクロスは結構難しくいろいろと指向錯誤した。そもそも低域の再生可能周波数は90Hzというスペックであるためあまり低くは出来ないのだが、100~200Hz辺りの低域再生にはスカッとした質の良さが感じらる。これは現状の試聴状態では箱を背負っていないということも関係あると思うが、締まっていて膨満感はないが力感はある。ウーファーとの繋がり、低域全体のスムーズさを求めていろいろ変えて試してみた結果では140Hzがベストという感じである。奇しくも140~560Hzという2オクターブをこのユニットが担当することになる訳である。
(4way構成におけるすべてのユニットのスロープ特性は-24dB/Octに統一)

また、ウーファーのレベル設定であるが、3way時と比して音量レベルを0.7dBアップとしている。受持ち帯域が140Hzまでとなるため、ウーファーの存在感が薄れないようにという配慮である。なお、ウーファー単体での再生周波数測定を行うと40Hz~50Hz辺りに多少の盛り上がりがあり(これは背面のコンクリート壁との距離が不十分ということもあるかもしれない)、これに起因する低域の混濁感、膨満感をを避けるために従来は40Hz、-24dB/Octのクロスオーバーポイント設定して微調整していた(現在デジタルイコライザーは使用していないので)。結果としてやや低域が薄く感じることもあるため、これは何とか改善したいと考えていた。今般 ケンさん からスピーカーユニットのインピーダンス補正を行う Speaker Conditioner というものをお借りできたので、これを早速ウーファーユニットに繋ぎ、この40Hz、-24dB/Octのクロスオーバーポイント設定を廃止してみた。結果として低域の質感と量感が望ましい方向でバランスした状態となり納得できた次第。この辺りは周波数測定では正確には変化としては捉えきれないようであるが、これは自分としてはシステムに常用として組み込みたいものとなった。

最後に一番大きなこと。この Flat Panel Speaker をミッドローユニットとして使うことで、「3way構成の音を凌駕」できたのか、である。これは「応」であると思う。完璧な4wayへの移行に際しては、音量調節のために8chのマスターボリュームが必須であり、その調達の目処はまだ全く立っていないのであるが、6chのプリアンプと2chアンプを組みあせて、4wayの出力レベルの全体バランスを取り、微細な音量調節はデジタルボリューム(iPodなどによる手元調節)で行うという便方で当面は乗り切れると考える。

なお、純粋オーディオからは離れるが、この4way構成で見る(聴く)映画の類はちょっと感涙。セリフの雰囲気がいかにも映画っぽく感じるのだ。声の基音帯域となる音の飛び具合がとても上手くはまっているのであろうかと思わせる。


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