オーディオ日記 第30章 遍路(その1) 2012年3月30日


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今年60歳となる。人生にもけじめをつける必要があると考えており、そのひとつとして、四国八十八ヶ所の遍路を計画している。無事、結願の際には高野山も訪れたい。しかしながら、空海を知らずして、遍路は語れず。空海が唐より持ち帰った密教にも全く暗いので、まだまだ未消化であるが空海に絡んで勉強している。その中で空海の人物に焦点を当てた以下の2冊(密教や真言宗についての記載が中心ではない)は比較的平易であり、また読んで大変面白かった。
1.司馬遼太郎 「空海の風景」
2.夢枕獏   「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」
  空海は語学力にも尋常ならざる才能を有しており、この時代にしては稀有の国際人とも云えるイメージがこの本では鮮明に浮かび上がってくる。

さてさて、我がオーディオの巡礼の旅はいつ果てるとも無く続くのか。社会人となった最初の年、1975年の暮れのボーナスでALTECのユニット(416-8Aと802-8D)を購入し、マルチアンプのチャレンジを開始したのだが、それは途方も無く昔のような気もするし、ついこの間のようなことにも思える。今は既にサラリーマンを卒業しているので、まあ多少の時間は流れたとも云えるのだが。そのALTECのユニットを20数年愛用し、別れを告げた1997年からこの駄文をつけ始めた。これは新たに調達したユニット(JBL 2450JとElectroVoice EVX150A)の調整になかなか納得感が得られず、その調整の過程などを記録しておこうと思い立ったことによる。その後さらにいろいろとシステム環境の変遷、苦闘があり、オーディオ的には徐々に落ち着いて来た部分もあったが、昨年11月に現在の住まいに転居したことにより、また新たな調整を積み上げねばならなくなった。転居後約5ヶ月が経過した現在、馴染みの機器たちがこの新居に少しは慣れ落ち着いたのか、ようやっと歌い始めてくれた。

調整においては、デジタル再生の標準原器としてQA550を導入したことがひとつのターニングポイントであったかもしれないと思う。これにより、全体的な底上げをしつつ、最終調整に入ることができたと感じている。ざっくりとであるが対応を行った内容を記録として以下に記す。

1.スピーカー周り
・メカニカルグラウンディング(メカニカルアース)ならびにスパイクの導入
・トランスアッテネッターの廃止
・リボンツィータの位置を僅かに後方にずらす(2cmほど)

2.マルチアンプ、チャネルデバイダー周り
・クロスオーバー周波数を800Hzへ変更(従来は650Hzあるいは500Hz)
・スロープ特性を-24dBへ変更(従来は-18dB)
・ドライバー(SUP-L11)は-14dB設定で逆相接続
・4アンプシステムを試すも、試行錯誤の結果、3アンプ構成に確定(従来と変わらず)

3.デジタルイコライザの設定。
・グラフィックイコライザによる補正量変更(低域をしっかり、高域は補正量を小さく)
・パラメトリックイコライザによる三山特性変更(70Hz辺りを従来より0.5dBアップ)

4.インターコネクトケーブル
・デジイコからDACへの接続をXLR-RCA変換ケーブルへ変更(銀線材)
・QA550からデジイコへはRCA-XLR変換ケーブル(銀線材)
・VoyageMPDからデジイコへのケーブル変更(グラスファイバー線材)

設定全体の良し悪しは、特定のソースだけで判断することは普遍性を欠くことになりかねないので、多種多様なソースをとにかく聴きまくる。良い録音のソースのみで調整を行ってしまうと、一般的なレベルのソース(これが大半)が往々にして楽しめなくなってしまうこともあるためである。その上で、微妙な補正や味付けを実施していくため、なかなか短期間ではすっぱりとは決まらない。音の傾向としては高域の透明感を重視し、音の肌触りを柔らかく。低域は量感を求めてあまりタイトにはせず、という具合であろうか。5ヶ月程である程度納得感を得られたのは少し早い方かとも思える。

今回注力したのは以下の3通りの再生に総合的な納得感を得ようとしてきたこと。すべてを過不足無く再生させるのはかなりの困難を伴うが、現状一応の成果を見たと考えている。
1.アナログ再生
2.VoyageMPD再生(FLAC Uncompressedファイルの前提)
3.CDトランスポート再生
悩ましかったのは、やはりCDトランスポートによる再生であった。所有機器が古いこともあり、機器の更新あるいはクロック交換などを検討したが、実際に再生に使用する割合や時間を考えるとコストに見合わない可能性が大きいので、標準原器としてのQA550再生と比較しつつ納得感の得られるセッティングを探した。

さりとて、これですべてが完了した訳ではなく、やっと「歌い始めて」くれたに過ぎない。まだまだやりたいことが溜まっており、この先改めていろいろな計画を進行させて行かねばならない。その意味ではまた、オーディオにおいても(終わり無き?)遍路道(みち)を歩んでいくことになろうか。


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