オーディオ日記 第29章 音の泡沫(うたかた)(その9) 2012年2月4日


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milonさんのオーディオルームに押しかけ、ALTEC A5とアナログをたっぷり5時間(それでもあっという間で、もっと聴いていたかったのであるが)拝聴させていただいた。milonさんのホームページにも 訪問記 がアップされている。

1975年に本格的にマルチアンプを始めた時のユニットが416-8Aと802-8Dであったこともあり、ALTECは当方にとってとても思い出深いスピーカーである。豊かな声の響きと弾むように出てくる低域に特徴があり、ボーカル好きにはたまらないスピーカーである。当方は新たなチャレンジのため、1997年になってALTECのユニットには別れを告げてしまったが、完璧にチューンされたA5を聴かせていただき、改めて惚れ直してしまった次第。率直に申し上げてここまで完璧なALTECサウンドは初めてである。特に感銘を受けたのは、スピーカーの設置におけるメカニカルグラウンディング(あるいはメカニカルアースと云うべきか)による音の滲みのなさ、これは正に特筆ものである。この効果が音像のシャープさと臨場感に繋がっている。メカニカルグラウンディングの対処の有無による音の差をわざわざ聴かせていただいたが、その効果はスピーカーの存在を消す方法に働く。当方の感じるままに表現すれば音のリアリティは「魂にぐさっと刺さる」ようなものになる。

30年位前の江川三郎氏が執筆したオーディオ雑誌を参考とされたとのことで、その記事を少し拝見させていいただいたが、その理論は次の通りである。スピーカーの振幅によって空気が押され、その反動によってスピーカーが揺すられてしまうため、音の支点が明確ではなくなり、結果として曖昧な音の表現になる。その対策として振動や後方への揺らぎを一切排除・抑え込むことが望ましいというもの。Milonさんはスピーカー背面の壁にH型鋼を埋め込み、スピーカーの背面とボルトで連結して、常時スピーカを前に押す力を与える仕組みによって、メカニカルグラウンディングを実現している。一般論的にはスパイクを履かせることもこれと同じ効果と考えられるが、こちらはより大掛りな構造(普通の家ではちょっと実施は難しいと思うが)である。

翻って、当方の新環境におけるスピーカー設置方法は、キャスター付きの台に乗せているという情けない方法であった。これは、スピーカボックスの背面に防振対策を行っており、重量が100Kg以上もあることによるある種の安心感と、設置位置を動かすこともあるので、それを考えてのお手軽な措置であった。しかし、15インチウーファーが空気を押して、これを震わせ、音を伝えるという力強さを侮ってはならない。これでは音の支点が不明確になることにより「音の微細な滲み」を生んでしまう。当方の求める音のイメージはやはり「寸分も微動せず、音の支点が明確なスピーカー」からしか生まれないのでは、と強迫観念にも似た感情が、訪問からの帰り道に沸々と湧き出てきたのである。これはやらねばならない。

ぐるぐると考えを巡らしてみた結果、実用上の観点と完璧性をあれこれと天秤にかけることは一度止めて、まずはチャレンジしてみようと考えた。とにかくやってみる、というのがこの道の王道であり、醍醐味であろう。対応の理屈は簡単であるが、ボルトを介してスピーカーの背面を押すのである。同時にスピーカーの前側のスパイクを後ろのスパイクより若干高くする。原理的には後ろのスパイクを支点にして、前面を僅かであるが高くすることにより背面への圧力をかけ、箱全体を前と後ろからガッチリとボルトで抑え込むというのが当方のプランである。微動だにさせないぞ、の意気込みである。へたな図解だが、ご理解の参考まで。(スピーカーが傾いているのは図の誇張です、為念)

Mechanical Ground Image

具体的な方法として以下の2点を行うこととした。(いずれもDIY店で購入した金具で費用はわずか)
①背面の金属ボルト支柱(まずは一本でトライ)
②前後の高さ調整可能なスパイク(前後で計4本)

百聞は一見にしかずなので写真を参照されたいが、キャスター付きの台ごとスパイクで浮かせるようにした。(床を傷つけないように床面にはステンレスの板を噛ませている)なお、スパイクの高さはボルトにより調整可能なので、これを短く調整すれば、キャスターが利用可能となる。いろいろな作業をする場合もあるので多少面倒ではあるが、これによりえらく重いスピーカーも移動可能である。
背面のメカニカルグラウンディングは最終型とは云えぬかもしれないが、まずは実験的な要素を含めて、写真のようにした。何とも幸いにスピーカーの後ろの壁は全面コンクリートなので、その硬さと質量を最大限に利用する方法が取れる。(これは今回の転居における一番の利点かも。さすがにH型鋼を埋め込むようなことは我が家では許されそうにないので)

Speaker Spike Photo Mechanical Ground Photo


合わせて、マルチアンプでありながらついつい妥協していた以下の点も見直した。
①中域と高域のアンプの兼用をやめ、個別のパワーアンプとする。
②ドライバーのトランス型アッテネッターの利用をやめアンプ直結とする。

今までは、パワーアンプの台数を減らすために、中域と高域のユニットをパワーアンプ1台で駆動していた。(高域はスーパーツィータ的な使用方法であったための油断かも)このため、中域のドライバーと高域のリボンの能率を合わせなければならないので、中域ドライバーにトランス型アッテネッターを使用してレベル合わせをしていた。これは自分でも合理的な構成と考えていたが、マルチアンプシステムの良さをトランス型とは云え、アッテネッターをかますことによって幾分でもスポイルしてしまっている。ここはやはり徹底するためにも本来のマルチに戻そうと考えた。結果都合4台のパワーアンプが必要となった。

さて、音である、、、、、、、(^-^)/


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