奧の細道二人旅・室の八島
室の八島

大神神社
(おおみわじんじゃ) 栃木県栃木市惣社町

                    東武宇都宮線野州大塚駅下車
室の八島句碑 糸遊にの句
大神神社参道 室の八島明神に参詣する。同行の曾良がいう。「この神は木の花咲耶姫の神と申して、富士と同じ神です。戸のない室に入って自らをお焼きになった誓いの御中に、火々出見の尊が生まれたもうたことから、室の八島と申しまう。また煙をここの歌によみ慣わしますのも、このいわれからです。」 このしろという魚を食べることを禁じる。縁起であるという、伝説もありました。

 千住を発ったあとすぐに首都高速に入りました。
おくの細道では
「呉天に白髪の憾みを重ぬといへども耳に触れていまだ目に見ぬ境、もし生きて帰らばと、定めなき頼みの末をかけ、その日やうやう草加といふ宿にたどり着きにけり。云々」
という、旅に対する悲痛な思いを述べた部分があるのですが、この部分は大幅に脚色が加えられています。
『曾良 随行日記』によれば、二人はこの日春日部(糟壁)泊まりでした。
 草加、春日部ともに、芭蕉の跡はないようなので、私たちも虚構、虚構というわけで一気に「室の八島」へ向かいました。

 栃木ICを下りて栃木街道をしばらく走ると、右側に杉木立が見え信号脇に大きな大神神社の看板が見えます。右折した突き当たりが上の写真の鳥居です。ここが「おくのほそ道」最初の歌枕『室の八島』です。
鳥居の右を数十メートル走ると駐車場があります。そこからすぐに境内へ入れるのですが、礼を尽くし遠回りですが鳥居をくぐって境内へ。参道の奧右側に「室の八島」左にお社がありました。

大神神社
 下野惣社一宮です。惣社とは国中の多くの神々を集めた神社。平安末頃から始められた風習です。
 大神(おおみわ)神社というくらいですから、奈良の大神神社:大三輪神社とは縁が深いのです。ここは奈良大三輪神社の神霊を分霊した神社。つまり同一のものです。奈良の大三輪神社の祭神は「古事記」ではオオミワノカミ(意富美和之神)「日本書紀」ではオオモノヌシノカミ(大物主神)としてありますから、曾良のいう木の花咲耶姫の神とは違っています。だから芭蕉はここでは素っ気ないのでしょうか?(このあたり学習不足)
大神神社社殿
室の八島室の八島入り口
 大神神社境内の池にある八つの島。それぞれ石橋や朱塗りの橋が渡され、それぞれの島に浅間神社、熊野神社など八つの神々が祀られています。
 入り口近くには芭蕉の句碑
「糸遊に結びつきたるけぶりかな」
          (曾良書留による)
 や、水琴窟なども見られました。
室の八島
室の八島の煙
 古来より歌枕として室の八島を詠む時は煙を詠み込むことになっています。
  煙たつ室の八島にあらぬ身はこがれしことぞく湧き水1やしかりける
                                隆源法師
  くるる夜は衛士のたく火をそれとみよ
             室の八島も都ならねば 藤原定家
 この煙とは水蒸気が煙のように立ちこめていたからでしょう。そんなつもりで室の八島を見ていると、池のあちこちに水がコンコンとわき出ているのです。これなら気温が少し低ければ煙立つ状態になりますね。右の写真2枚は湧き水を撮ったもの。左は中央の石の右側、右は橋の手前あたりに水が湧いています。
湧き水2
  白川の関越え目次へ   千住へ    日光へ

  
奧の細道目次へ