沖縄ツーリング


2000.05.02.Tue.
 翌朝はAM5:00起床。よく眠れた。穏やかな波の音に誘われテントから這い出す。昨夜は暗くて周りの状況がよく判らなかったが、ビーチに隣接して公園があった。そこで用を足して顔をお洗う。その後、早朝の海岸を散歩してからテントに戻り身支度を整える。荷物をまとめてThunderAceに積み、テントを畳む。が、どうも作業がはかどらない。と言うか、気分がのんびりしているので手がゆっくりになるのだ。結局出発の準備が整った頃には AM7:00を過ぎていた。
 今日は昼迄には那覇空港に行ってなければならない。しかし、ここから直接那覇に行くと一時間ぐらいで着いてしまうだろう。それだと石垣行きの飛行機を待つあいだ暇になってしまう。それなら、辺戸岬方面で行けるところまで行ってみよう。適当なところで山越えの道に入り、本島西側に出てから名護市に向かう。名護から高速に乗れば那覇まで一時間かからないだろう。よし、そうと決まれば出発だ!
 R329からR331に入るとだいぶ緑が多くなる。海沿いでも浜辺が無くなり、左側には山が迫ってきて峠道らしくなってきた。車も人も全然見かけない。空は少し曇っているがいい天気だ。ツーリングには絶好のシチュエーション。景色も走りも楽しみながらの快走が続く。お陰で AM8:00頃には、県道70号との合流地点の平良に着いてしまった。このまま R331で山越えして大宜味に抜ける予定だったが、まだ時間に余裕がある。そこで県道70で辺戸岬方面に行き、途中適当なところで引き返す事にした。
 県道70号はホントに車も人も見かけない。しかも、適度にコーナーとアップダウンが組合わされた峠道が続くものだから、ついつい攻めてしまう。気持ちイイ〜。あ、イカンイカン。このままでは辺戸岬まで行ってしまう。適当なところで停まるとしよう。丁度、谷間に掛かる橋の手前にパーキングエリアがあったのでそこにThunderAceを停める。
 エンジンを止めた瞬間、静寂が辺りを包み込む。メットを縫いで一呼吸。空気が美味い。ワインディングで適度に昂揚した心が解されていくこの瞬間がオイラは大好きだ。
 パーキングの手摺りに腰掛け、景色を眺める。谷間の向こうの丘の間から海が見える。緑の間から見える青い海が、同じくらい青い空と水平線で一つになっている。何だか心が安らぐ。何もないけれど、ずっとここで景色を眺めていたい。しばし、時を忘れてただ景色に魅入っていた。
 どのぐらい時間が経っただろうか。県道を一台のバイクが走って行く音で我に返った。どうやら同じツーリングライダーらしい。ひょっとしたら同じフェリーに乗って来たのかも。今日は飛龍で上陸したライダー達の殆どが、辺戸岬へ向かうのだろう。このまま辺戸岬に行けばまたみんなに会えるかもしれない。県道70号も走りやすいし、絶好のツーリング日和なんだが。そう思うと後ろ髪が引かれるのだが、そろそろ那覇に戻らないと飛行機に乗れなくなってしまう。名残惜しいが平良まで戻る事にする。
 しかし戻る途中で数台のバイクとすれ違ったのだが、その中に見覚えのあるバイクがあった。XR250で、あれはフェリーで一緒になった荒川さんだったのではないだろうか。オフメットにゴーグルで顔が判らなかったので確信は持てなかったのだが、おそらく荒川さんだったと思う。Uターンして追いかければ良かったかなぁ。でも人違いだったり、デカイバイクで煽ってくる変な奴と思われるたりするのも何だし……。結局、平良でR331を右に折れて峠越えの道に入って行った。
 峠越えとは言っても、走りやすい道で30分もしないうちに西側に出られた。R58を海沿いに名護市へ向かう。この道は、海大好きライダーが海を眺めながらのんびり走るには良い。しかし、こちら側(西側)は車が結構走っている。流れはスムーズなのだが、速度がやや遅い。いや、こちらのペースが速いのだろう。ここの人達の基準からすれば普通の速度だと思う。実際、みんな海を眺めながらのんびりドライブしている感じだ。だが、オイラは13:00の飛行機に乗る為に、11:00ぐらい迄には那覇空港に到着したかったので気が急いていた。そこでちょっと申し訳ないが追い越しかけさせてもらった。
 が、目の前の車をパスした矢先に次の車が現れる。それをパスした後も次の車の集団が……。結局、連続して追い越しばかりかけて名護市付近まで来た。ツーリング計画には余裕を持たせましょう(トホ
 名護市に入って驚いたのは、そこら中にパンダが走ってる事。9月に沖縄サミットが控えてるせいも合うのだろうがあるのだろうが、余りにも物々しい。おまけに、国道にはオービスが数百メートルおきに立っている。名護市は取り締まりが厳しいと聞いていたが、まさかここまでとは……。
 ま、ゆっくり走って違反さえしなけりゃ何でもないんだけどさ、オイラはKは好きじゃないからパンダ見る度に何となくムラムラきてしまう。某K県のK共が不祥事を繰り返しているので尚更だ。だが、ここはグッと抑えて殊勝な走りに徹して市街地を通過。そのまま沖縄自動車道に乗った。
 沖縄自動車道は車が少なく快適。どっかの高速とは大違い。ここは ThunderAceの本領発揮でサクサク進む。途中、沖縄自動車道唯一のPAである伊芸PAに寄って休憩する。別に疲れた訳ではないしガソリンも十分あったのだが、朝飯を食っていなかった事を思い出したのだ。PAの売店でパンと緑茶を買い、海を眺めながら食う。高速は高台の上を走っていて、PAの展望台からは伊芸湾を一望することが出来る。
 遅い朝食を済ませてから、再び那覇を目指す。オービスも結構あるので速度には気を付ける。それでもストレスが溜まらない程度の巡航速度で、一時間もしないうちに那覇ICに到着した。
 その後はR329で那覇空港へ直行。予定通り11:00前には空港に到着していた。空港の駐車場で荷物を降ろし、ThunderAceにカバーを掛ける。屋内駐車場なので雨が降っても濡れる心配はないのだが、こんな所に4日も置きっ放しにするのがちょと心配だったから。ツーリングなのに相棒であるバイクを置いていくのが何となく後ろめたかったのもある。
 テントとか大きな荷物は空港に預かり所があるのでそこで預かってもらい、着替えを詰めたデイパックとタンクバックだけの軽装になる。チケットカウンターで昨日予約したチケットを受け取り出発ロビーへ。まだ時間に余裕があるので、早めの昼飯にする。朝飯食ってからそんなに経ってないが、パンとお茶だけだったのでもう少し補給したかった。空港内の食堂で天ぷらうどんを食う。しかし、沖縄来てからまだ一度も地元名物らしいものを食ってないなぁ。パッションフルーツジュースぐらいか(^^;
 腹ごしらえした後はメールチェックをする。今回は mobio NXを持ってきたので、ツーリング中でもメールチェックが出来るのだ。しかし、携帯接続用のカードを持っていないので、空港内で黒電話を探してアナログモデムで接続。更に機動性を高める為にも、携帯接続カードは必要だな。それは今後の課題かな。
 メールは特に重要なものは無し。S&Sのメーリングリストに「今、沖縄来てるよ」メールを出してログアウトした。その頃には12:00を過ぎており、チェックインをして搭乗口へ向かった。国内線に乗るのは、3年前に北海道に行ったとき以来。久しぶりの国内線で、国際線に比べて手続きの簡素な為に「え、これで良いの?」とちょっと不安になってしまう(^^;
 時間になってJTA611便に乗り込む。窓際後ろ寄りの席で、機が滑走路までタキシングしている間、窓の外を眺める。すると滑走路脇の格納庫にF−4ファントムがずらりと並んでいるのが見える。おお、自衛隊の  航空隊だ。写真撮りたいなぁ。でも離陸前だからデジカメ使えないし。こんな所で、銀塩カメラの方が良かったなんて思うとは。
 そうこうしている内に、機は離陸体制に。滑走を開始すると身体がシートに押しつけられる。機体が上を向いて離陸。うーん、離陸の時のこの加速と浮遊感は好きだ。
 昼頃から曇ってきて天気が悪くなってきたのだが、上空も雲ばかりで下は全く見えなかった。せっかく窓際の席を指定したのに残念。
 石垣島には一時間ほどで到着。流石に早い。空港からタクシーで離島桟橋まで行く。車で20分程だ。離島桟橋はその名の通り、石垣島周辺の離島へ行く定期便が入る桟橋である。石垣島では、ホテルや土産物屋等、殆どの観光施設が離島桟橋周辺に集まっていて、ここが中心街となっている。
 離島桟橋に着いたら、すぐに西表島行きの高速船のチケットを買う。西表島には北側の船浦港と南側の大原港の二つの港があるが、仲間川でカヌーに乗りたいので南側の大原港行きの船にした。出発までには20分程時間があるので、西表島での宿を探す事にする。昨日買った「沖縄・離島情報」で、宿を探して電話をかける。大原港近辺には民宿が10件ほどあるが、安いところから順に電話をかける。しかし予約でいっぱいのところが多く、結局空きがあったのは6件目であずま旅館というところだった。まぁ、それでも素泊まり\3,000、二食付きでも\5,000からと安いんだけどね。
 宿も決まって一安心したところで大原行きの高速艇に乗る。
 高速艇が離島桟橋を離れた頃、ポツポツと雨が降り出してきた。これじゃカヌーに乗れないかなと心配になる。高速艇は30分ほどで大原港に到着した。この時は雨はやんでいたが、依然空にはどんよりと灰色の雲が横たわっている。また何時降り出してもおかしくない状態だった。
 とりあえず宿に行く事にして、あずま旅館に向かう。場所は大原港のすぐ近くで、歩いて一分もかからなかった。旅館と言っても、経営者一家が切り盛りしていて民宿みたいなところだった。部屋も畳の6畳一間で質素なものだ。もっとも、西表島まで来て近代的な豪華なホテルなんて泊まる気にならない。このような民宿の方がオイラは良い。荷物を部屋に置いてから、女将さんに聞いて仲間川カヌーツアーを催している「南風ぱぴよん」に連絡して、明日のカヌーツアーを申し込んでもらった。  その後、夕食までまだ時間があるし、折角来たのだからレンタバイクでも借りて散歩する事にした。雨具とカメラだけ持って出かける。
 レンタバイクはあずま旅館のすぐそばの土産物屋で借りられた。レンタバイクと言ってもスクーターしかない。スクーターだと船浦まで行くのは一日がかりになるらしい。うーん、やっぱり自分のバイクで来たかったなぁ。出来れば西表島を一通り見ておきたかったのだが、時間は既に15:00を過ぎていたので仕方なく近場で済ます事にした。土産物屋のおじさんに訊くと、湯布島あたりまで行くのが丁度良いだろうとの事。湯布島は干潮時には西表と地続きになり、牛車で渡れるらしい。
 空は曇っていて、今にも雨が降り出しそうだが構わず出発する。スクーターなんて殆ど乗った事ないから、始めはちょっとおっかない。何がって股の間に車体がないのがエライ怖いです。スピード出ないから良いけど、車体をホールド出来ないのに傾けて曲がるなんて無茶だと常日頃から思っている。スクーター乗ってる連中は度胸がある。つーか怖い物知らずだよな。
 それでも慣れてくれば☆※km/hぐらいで走れるようになる。西表島には駐在所が一つあって、そこに警官が一人いるだけなので、当然スピード違反で捕まる事なんて無い。ここぞとばかりにアクセル全開。でもスクーターだからトロい。
 とりあえず県道215号を行き、仲間川河口にかかる橋を渡る。ここで西表山猫発見!


おお、西表に来たんだゼ!

 更に行くとスオウの群生地という看板を見つけたので寄ってみる。スクーターを路肩に止め、森の中へ分け入る。森の中の植物は、内地では見られないものばかりでいかにも亜熱らしさが漂う。おお、西表に来たんだゼ!
 道からちょっと行ったところに、スオウが群生している場所があった。根が帯のようになっていて面白い。写真を何枚か撮ってからスクーターの所へ戻った。
 更に湯布島方向へ走っていくと、川に掛かる小さな橋をいくつか渡る。川沿いにはマングローブが沢山生えている。今までテレビでしか見た事のない光景だ。おお、西表に来たんだゼ!
 こんな感じで、行く先々で感動してばかり。結局、湯布島に着いたのは16:00ちょっと前だった。で、牛車による湯布島渡りは16:00まで。ガーン。
 呆然と立ちつくすオイラに追い打ちをかけるように、雨まで降り出した。ああ、ついてないなぁ。仕方ないので雨具を着込み、対岸から未練がましく湯布島を撮影する。つまんない絵だな……。なんだか虚しくなったので牛さんを撮影。
 ここでボーッとしてても仕様がないので、来た道を戻る事に。そう言えば途中、自然センターなるものの看板を見かけたので、そちらへ行ってみる事に。で、行ってみたら開館時間は8:30〜16:30までとの事……。ついてない。泣けて来るんでこんな写真撮ったり。


む、むさい……

 そもそも西表着いたのが午後だったのがまずかったか。諦めて帰る事にした。無駄足だったように思えるが、「ツーリング」で来たのだから道を走れた事で良しとしよう……。
 大原に戻ってから、土産屋の近くのガソリンスタンドで満タン給油をしてスクーターを返却し、あずま旅館に戻りました。
 それから夕飯の前に風呂に入ったのだが、浴場がまた変わってる。浴槽はあるのだがホーローとかの一体成形の湯船じゃなくて、床や壁と同じ用にコンクリで仕切ってタイルを貼ってあるだけ。どう見ても、元は床だったところを仕切って浴槽にしたとしか見えない。うーん、やっぱりこっちの方は湯船につかるという習慣はないのでしょうか? 暑いからそんな事してらんないだろうが。ま、結局オイラもシャワー浴びただけなんで構わないけどね。
 夕飯は海の幸がメイン。刺身とジーマミー豆腐(大豆の代わりにピーナッツを使った豆腐)が特に美味かった。
 食卓で同席した方と色々話もした。大阪から来た年輩の方で、リフレッシュ休暇を利用して南西諸島を一人旅しているという。奄美大島から始めて船で島を渡りながら、沖縄本島、宮古、八重山諸島と少しずつ南下してきたそうで、昨日は波照間で一泊したとのこと。今までにも各駅停車や寝台列車を使って安上がりに色々なところを巡ったそうで、北は北海道から南は沖縄まで全国を旅したそうだ。オイラもバイクで分割日本一周を目指しているので、かなり歳が離れているにも拘わらず話が弾んだ。青春十八切符や寝台列車を使った、安上がりで尚かつ時間を上手く使った旅の仕方とか、実に興味深い話も聞かせてもらった。オイラは高校生の頃は山岳部で山登りをしていたので、登山の話なんかもした。
 しかし、関西の人ってのは話が上手いね。これは関西人の「思いやり」の心が現れているのかなと、ふと思った。
 夕食後は早々に寝床に着いた。今日は飛行機乗ったり船に乗ったりで、行動を他に合わせなければならなかったので疲れたカンジ。でも良い出会いもあったし、まぁイイか。

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