#462 ささやかに楽しむW杯2022

2022/12/03

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 気がつけば毎回のようにこのテーマで何か書いているので、4年前の2018年大会に続き、今回も2022FIFAワールドカップ[TM]カタール大会について書くことにするのである。

 今回は中東のカタールでの大会である。世界一広い国土を持つロシアでの前回大会では各チームともとんでもない移動を強いられたわけだが、今回は広さが秋田県ほどしかない国で、しかもスタジアムはすべてドーハの周辺にあり、移動の手間はほとんどなく、史上最もコンパクトな大会であると言える。

 そもそも産油国がオイルマネーに任せてW杯開催の権利を「買った」と言われることをはじめとして、この大会は何かと場外の悪評が絶えない。曰く、スタジアム等のインフラ建設のために世界中から集めた出稼ぎ労働者を劣悪な環境で働かせただの、同性愛者などの性的マイノリティを法律で禁止しており彼らの権利を迫害しているだの、スタジアムの空調などで多くの化石燃料を消費しているのが地球環境に優しくないだの、競技場での飲酒が土壇場で禁止されただのと言ったものである。

 そういった様々な報道に触れると、あまり楽しんでばかりもいられないのだが、いざ32か国でのW杯が始まると、各大陸の予選を勝ち抜いてきた出場国の代表どうしの戦いは、様々なドラマを生み、目が離せなくなるのも事実である。とは言え今回も日本との時差は6時間あり、日本時間で言えば、早いゲームでも19時の試合開始、遅ければ試合終了は朝の6時ごろということになり、ずっと見ているとこれまた完全に昼夜逆転生活となってしまう。

 前回の大会から導入された「Goal Line Technology」と「Video Assistant Referee(VAR)」は、ますます高度化したものになり、特にVARによるオフサイド判定は、足先や手先程度のちょっとした差でオフサイドと判定してしまうので、鮮やかに決まったと思ったゴールがあっさりとノーゴールにされてしまったり、判定の確認などで前回にも増してアディショナルタイムが増えたりと、見ていて戸惑う場面も多い。

 さて目出度くアジア予選を勝ち抜き、これでW杯初出場より7大会連続で出場が決まった日本であるが、個人的なところを告白すれば、組み合わせ抽選の結果を見た段階で「今回はグループリーグ止まりか」と思ってしまったのが正直なところである。日本の入ったE組は、W杯優勝経験4回のドイツと、同じく優勝経験のあるスペインが入る所謂「死の組」であり、普通に考えればこの2チームが決勝トーナメントに進むであろう、というのが正直な感想であった。

 それが、第1戦でドイツに対し鮮やかな逆転勝ちを決め、サウジアラビアがアルゼンチンを破ったに次ぐジャイアントキリングを演じ、一気に盛り上がりを見せたところ、第2戦で、グループ内では比較的与しやすいと思われていたコスタリカに惜敗。決勝トーナメント進出のためにはいよいよ勝つしかない状況に追い込まれた中での第3戦、スペインに対し前半先行されながら、後半鮮やかな逆転劇を見せてそのまま逃げ切り、蓋を開ければ、スペインとドイツを差し置いて、グループEを首位で通過するという快挙を成し遂げた。特にスペイン戦の逆転の2点目は、ゴールラインを割ったかに見える折り返しのパスが、VARの判定によりインラインと認められたものであり、こんなドラマチックな展開は全くもって予想し得なかった。己の不明を恥じるところである。

 これを書いている時点で、グループリーグ48戦が終わって、決勝トーナメントに勝ち進んだ16チームが決定した。3連勝して勝ち点9で突破したチームは一つもなく、アジアからは日本のほか韓国とオーストラリアの3チームが進出。世界のレベルが拮抗した新時代を迎えた感じがする。12月19日(日本時間)の決勝まで、どんなドラマが展開されるのかますます目が離せない日々が続く。


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