#448 見守りツールとしてのEcho Show

2021/10/11

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 私の息子から見た祖父母、つまり私と妻の両親の4人のうち3人はすでに他界しており、現在は妻の母親のみ存命である。今のところ電車で30分のところに一人暮らししており、何かあればすぐに駆けつけられる距離ではあるが、その「何かあった時」というのを知るのがなかなか大変だったりする。

 最近はスマホなども普及しており、連絡手段も電話に限らずいろんなものがあるが、私の両親が存命だった時のことを思い出してみても、高齢者は概して新しい機器の操作を覚えるのも一苦労だったりする。携帯電話こそ、固定電話からの延長で音声通話は使いこなせていたけれども、メールとかLINEなどの文字によるコミュニケーションツールとなると、まずもってテンキーで文字を入力し変換するというのが非常に高い壁である。

 古いタブレット端末を用意して、Skypeでテレビ電話をする環境を整えたりもしたのだが、端末のせいかネット環境のせいか、ちょっとしたことでうまく繋がらなくなったり、繋がっても映像がまともにならなかったりということもあったりして、あまりうまくいかなかった。また操作がそれほど簡単とは言えず、こちらからかけたのを受けることくらいはできても、向こうからこちらにかけてもらうことは望むべくもない状況であった。

 難しい操作を必要とせず、映像つきで、できれば通話料がかからない方法での双方向のコミュニケーションが取れないものかということで考えていたところ、AmazonのEcho showという画面つきのスマートスピーカが、こうした遠隔見守りに最適だという話を聞き、一つ購入してみたところである。Amazonで注文したら、翌日には届いてしまった。

 箱に入っていたのは本体とACアダプタと簡易な説明書のみ。基本的には、Wifiのパスワードと、自分のAmazonのアカウントのパスワード(注文した人のアカウントがあらかじめ記録されているようである)を入れて、しばらく待てば使えるという簡便さである。

 スマートスピーカというと、音声で聞きたいことを聞けば答えてくれるというもので、機械に話しかけるのが日本人にはちょっと気恥ずかしいのでどうだろうとここでも書いたことはあるが、やってみたら案外面白いものである。ウェイクワード(デフォルトでは「Alexa」)を呼びかけると、認識された場合は画面の底辺が青く光り、続いて聞きたいことを聞けば答えてくれるというもの。時刻や天気などが典型的なものであるが、そのほかにも単位換算や翻訳や計算などに答えてくれたり、音楽や動画なども、Prime会員であればAmazon MusicやPrime Videoから検索して再生してくれる。Echo showには画面がついているため、音声だけでなく文字や映像や動画で答えてくれるので、得られる情報量が圧倒的に違う。

 通信には「呼び出し」と「通話」の二種類があって、ここのところがちょっとややこしいのだが、呼び出しは、前もって許可を与えておいたデバイス間で、相手の応答を必要とせずに通信を確立する方法で、通話は通常の電話と同じ、相手の応答により成立する通信と整理するのが良さそうである。

 高齢者の見守りという点でいえば、呼び出し機能で相手の応答を必要としないというのは大きなメリットで、相手には一切何も操作を覚えてもらう必要がないというのが究極的に便利である。通話成立から数秒間は相手の様子が映らない(もやっとした映像になる)ほか、応答を拒否したり、物理的にカメラを塞ぐことができるなど、相手側のプライバシーにも配慮した設計にはなっている。

 AlexaアプリそのものはPCやスマホにも入れることができるので、見守る側は専用機であるEcho showがなくてもPCやスマホで代用することもできるが、なぜかアプリだと接続がうまくいかない場面が多々あった。PCやスマホはほかの用事で使うこともあるし、やはり通話用途としては双方に専用機を置いていた方が確実なようである。

 Echo showシリーズは、一番安いものだとセールの時を狙えば1台6000円以下で買えてしまったりする。2つ買っても12000円で、両方にネットの常時接続環境があればそれ以上の費用はかからない。文字通り、呼びかければ繋がるというのは心理的距離を短くしてくれるので、高齢者の遠隔見守りに最適であり、今では一日に1〜2回、接続して顔を見ながらお互いの安否を確認できるようになって、義母からも妻からも感謝された。良い買い物をしたものだと思う。


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