#403 スマートスピーカーより便利なもの

2018/01/15

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 昨年あたりから、スマートスピーカーという音声認識ツールが一斉に出初め、雑誌などでもいろいろ紹介されるようになってきている。Amazon Echo、Google Home、LINE Clova WAVE、Apple HomePad(今後発売予定)など、大手IT企業から軒並みラインナップされ、それぞれに性能やサービスを競い合っている。

 余談だが、単に「スマート」と聞くと、日本人には見た目が良いという意味が先に立つが、英語のsmartにはほかにも「知的」「正確」「迅速」と言った意味が込められている。スマートフォンもそういう意味では「賢い携帯電話」と言った意味で捉えるのがいいと思うが、既にもともとの意味など意識することなく「スマートフォン」として人口に膾炙している。

 ということで、今度はスマートスピーカーであるが、この「賢いスピーカー」は、人間からの音声による命令を理解し、それに応えるというのが大雑把な機能と言って良いと言える。

 そもそも、人間の音声を正しく理解することは、ここ数年で目覚ましい進化を遂げた技術の一つであり、スマートスピーカーはその結実であると言える。人間のコミュニケーションツールとして最も有効なものが言語であり、それを書き言葉(文字)だけでなく、話し言葉(音声)としても機械が理解できるようになったというのは、確かに画期的なことである。

 また、言葉を理解できるようになったということは、その内容を別の言葉に翻訳することもできるようになったということであり、実際、機械翻訳は近年長足の進歩を遂げている。現にGoogle翻訳などは、言語の構造がかなり違っている日本語と英語の間ですら、非常にこなれた訳を出力するようになっている。私も英文のメールをやりとりする時には、たびたびお世話になっている。少なくとも、Google翻訳あたりで誤解無く翻訳できれば、人間相手であっても誤解される恐れが少ないだろうという一つの判断材料になっている。

 話がそれたが、そういったテクノロジーでもって、スマートスピーカーは、人間のしゃべる簡単な命令であれば、きちんと理解して応えることができるものであるらしい。各社の製品によってどんなことが可能かはそれぞれ違うが、天気や時刻などに加えて、計算や翻訳、タイマーやアラームやスケジュールの設定や確認をはじめ、好みの音楽を聞かせてくれたりネットに接続された家電(ラジオやテレビや電灯やロボット掃除機)を操作することもできるそうである。

 これらのスマートスピーカーは、独り言などに反応しないように、命令する時にはウェイクワードと呼ばれるものを頭につけて命令する必要がある。「OK, Google」とか「Alexa」とか言うのがそれである。とは言え、日本人の7割くらいが「人前で音声検索をするのは恥ずかしい」と感じるという調査結果もあって、こういったウェイクワードをつけてモノに話しかけることに恥ずかしさを感じなくなるかどうかが、日本でスマートスピーカーが普及するかどうかを左右する要因になるかも知れない。

 そういったことは別にして、私自身は今のところスマートスピーカーにそれほど魅力を感じていない。何だかんだ言っても、入力も音声、出力も音声というのだと情報量として大したものではないし、何か検索したければ、しゃべるよりもキーボードを叩いた方が正確で得られる情報も多いと感じるからである。そういう意味では、我が家のダイニングテーブルに置いてあるノートパソコンは、すぐに調べものができるという点で大変に重宝するツールになっている。

 もう一つ、スマートスピーカーが物足りないと思うのは、できることが物理的な「仕事」を伴わないものにほぼ限られている点である。スマートスピーカーによってロボット掃除機を動かしたりネットでの注文はできるかも知れないが、ゴミをまとめて出したり米を研いだり料理を作ったり食器を洗ったり洗濯をしたり洗濯物を取り込んだりアイロンをかけたり衣服を畳んで仕舞ったり風呂を入れたり風呂を流したり、人間生活を営む上で必要なそういった仕事は、やっぱり誰か人間がやらなければならないことに変わりはない。

 私が外でやっているような仕事は、早晩AIに置き換えられてしまうのかも知れないけれど、そういった細々した家事が全自動化されるのはまだまだ先である気がするし、そういった家事を分担できる伴侶がいるというのは、ありがたいことだと思っている。もちろん、私もかなりの部分の家事を分担していると自認しているし、加えて妻の「あれって何だっけ」と言った疑問にGoogle検索などで素早く調べて回答しているという点では、スマートスピーカー以上にスマートだと思っているが。


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