#413 過ぎ去りしケーブル

2018/11/16

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 長年パソコンをはじめとする電子機器を使っていると、それらを接続するケーブル類が自然と溜まってくる。引っ越しなどの折りを見て不要なものや重複するものはだいぶ処分したりしたのだが、それでも小物入れの引き出し一つを占領するくらいはまだあったりする。来し方を振り返り、今や過去のものになってしまった様々な種類のケーブル(主にWindows系パソコン関係のもの)について振り返ってみることにする。

★マウス・キーボード

 昔はPS/2という、直径1cmくらいのコネクタを介して接続するタイプのものが主流であった。ちなみに、キーボードが紫、マウスが緑色という色分けはされていたが、ピンの形状は一緒なので、薄暗いところで接続しようとするとしばしば挿し間違えを起こしていた。

★ディスプレイ

 初期の頃はアナログ信号を伝送するD-sub15pinのシリアルケーブルを使って接続していた。コネクタの幅は3cm程度で比較的長いケーブルもあり、ディスプレイが液晶のものになってからも、つい最近まで長らく使われていた。その後はこれに替わってDVIという規格のものも使われた。

★プリンタ

 初期のころはIEEE1284パラレルケーブルというもので繋いでいた。これがまた、種類によってはコネクタ部の幅が6cmくらいあり、結線数も多かったため、やたら存在感があって邪魔臭かったことを思い出す。あまりにコネクタ部が大きかったので、ノートパソコンの小型化に伴って真っ先になくなったような気がする。

★外部記憶装置

 外付けのハードディスクや、光磁気ディスクドライブなどを接続するものとして、SCSIという規格があった。コネクタ部は4cmくらいであったが、結線数が多く、短くて固く取り回ししにくいケーブルが多かった。更に、ディージーチェーンという、PCから数珠つなぎに機器を繋いで最後にターミネータを置くという接続構成で、コネクタの規格も数種類あり、SCSI-IDなんていう面倒な設定もあり、うまく繋げるためにコネクタとケーブルの組み合わせがパズルのごとく難しかったものである。

 ノートパソコン用にはPCカードなどというものもあった。名刺サイズのカードの1辺がコネクタになっていて、カードそのものが記憶装置だったり、はたまた外部接続装置になったり、その両方だったりするものもあった。かつて愛用したHP200LXにもそのスロットがついていた。

★ネットワーク

 電話回線を使って通信をやっていた頃は、電話回線を流れる信号を変換するモデムという機械を挟み、RS-232Cという規格のシリアルケーブルで接続していた。25pinのものはコネクタの幅が5cmくらいで、IEEE1284にも同じ規格のものがあって紛らわしかった。

 これらのケーブルは、今やまとめてレガシーケーブルなどと言われているそうで、現在はディスプレイはHDMIで、それ以外のものはUSBだったり、あるいはBluetoothやwifiなどの無線により接続されるようになってきた。コネクタのサイズも、フル規格のものでせいぜい幅2cmくらいで、スマホやタブレットに接続するものは5mmくらいの小型の規格のものも多く、嵩張らず大変扱いやすいものになってくれたのは、昔の多種多様な規格が乱立していた時代に比べると大変便利になったものであると感じる。

 考えてみたら、ヒューマンインターフェイスを表面の大半を占めるディスプレイに集約し、物理的な接続なしにネットワークに繋がるようにしたものが、スマホやタブレットである。そのように物理的接続のくびきから開放され、時間と場所を選ばずネットワークに繋がることができるような機器があれば、パソコンがそれらのデバイスに取って替わられるのも道理である。

 一方で、デバイスが物理的接続から開放されたのと引き換えに、それを使っている人間の方は、SNSやオンラインゲームなどで、常に誰かと繋がっている状況になり、目に見えないそんな繋がりに振り回されたり身動きが取れなくなったりしている人が増えているのも、なんだか皮肉なことである。


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