#313 腸カメラ検査を体験

2010/09/27

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 まず最初に、今回のお話はちょっと尾篭なものなので、お食事中の方はお済ませの上お読みのほどを。

 肺炎から退院してほどなく、職場の健康診断を受診したら、今度は便潜血で陽性の診断が出た。つまり、便に血が混じっているということらしく、要精密検査とされたのであった。

 肺炎の経過観察のため通っていた病院で、主治医の先生に相談したら、近いうちに大腸の内視鏡検査(腸カメラ)を受けることを勧められた。ほおっておいてもいいようなものではないので、仕事が忙しくなる前に日を見つけて受診をすることに決めた次第である。

 以前に胃部X線カメラで胃炎が見つかったことがあったりして、胃の内視鏡検査(胃カメラ)は3回ほど受診したことがある。内視鏡検査の場合、消化管に食べ物などの内容物があってはちゃんと診断することができないから、前日の夜から検査の時まで断食する必要があるのだが、今度はもっと念の入ったことになっている。

 言うまでもなく、食べ物は口から体の中に入り、食道、胃、十二指腸、小腸を通り、最後は大腸を通って出てくる。胃カメラの場合は、胃までの上部消化管がクリアになっていれば検査に支障はないのだが、大腸の場合はゴールに近いところであるから、消化管の上から下まで空っぽにしておく必要がある。つまり、胃の時に比べて更に厳しい条件が課されるわけである。

 たとえば、検査の前日の朝からは、消化に良い食べ物以外は口にしてはいけないと言われる。具体的には、ごはんやパンやうどんやなどで、要するに炭水化物以外はほとんど口にできない。アルコールはもちろんのこと、コーヒー紅茶も駄目である。

 そうして前日の夜から断食なのは胃カメラの時と同じだが、あらかじめ予約した検査の時刻の4時間ほど前から、処方された下剤を飲む必要がある。これはあらかじめ、プラスチック容器に入った白色の粉薬を、2Lの水で溶かして冷蔵庫で冷やしておいたものである。これをだいたい1時間に1Lくらのペースで、少しずつ飲むのである。一応レモン風味がつけてあるが、味は塩水みたいなもので、美味しいものではない。

 そうすると、飲んで1時間ほどたってから、便が出始める。はじめはちょっと緩い感じの便なのだが、それがどんどん液状化していき、しかも頻繁にもよおすようになってくる。机に向かっていても10分ともたずトイレに駆け込むようになる。最後には尻から小水が出るような感覚になり、色もなくなってくる。こうなって初めて「検査OK」ということらしい。病院へ行き、尻のところに穴のあいた紙パンツに履き替え、その上から病院着を着て検査室に行き、ベッドの上に横になる。

 トイレの行きすぎでひりひりに痛い肛門のところにワセリンを塗られたあと、おもむろにカメラを入れられる。鎮静剤のおかげで、その辺の感覚はあまりはっきりしないのだが、さすがにカメラが奥に進むについれ、お腹が張って苦しくなってきた。

 最初にまず異常がないかを奥まで進みながら見ていき、盲腸のところまできたら引き返す。引き返す時は一緒にカメラの映像を見せてもらった、肉でできた蛇腹の管の中を管が引き返していくのがよくわかる。結局、S字結腸付近に小さなポリープが3つ見つかったので、その場で切除することになった。

 ポリープの切除は、まずポリープの周りに生理食塩水を注射して浮かび上がらせ、それを針金の輪で縛り、電気を流して一瞬で切り取る。切り取ったあとは金属製の留め具で塞いでしまう。鮮やかな手つきで次々ポリープが切除されていく。昔だったら開腹手術しなくてはならなかったようなポリープ切除も、今ではこんな具合に検査と同時に手術してしまえるのだから、医療機器の進歩はすばらしい。検査と切除はおそらくものの30分ほどで終わったのだろうが、鎮静剤の効き目が切れるまではふらふらするので、1時間ほど安静にしているようにと言われた。

 ともかく確かに異常はあったわけだから、早期に発見・治療してもらったのはよかったことだと言えよう。しかし、今回一番まいったのは、検査前の下剤でも検査そのものでもなく、折角検査が終わってお酒が飲めるようになったかと思いきや、ポリープの切除をしたのでさらに十日間禁酒ですと言われたことである。


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