#314 子ども専用の電子ピアノ

2010/10/24

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 幼稚園の息子に5歳からピアノを習わせている。週1回、30分程度のレッスンなのだが、毎回2曲ずつくらい与えられる課題を家で練習させているうちに、習い始めてから1年ほどで、親にも弾けないような曲を弾けるようになっていたり、あまつさえ即興で作曲していたりするからなかなか大したものである。

 家での練習には、妻が昔合唱をやっていた頃に使っていたキーボードを使っていたのだが、キーボードではどうしてもピアノに比べてタッチが柔らかすぎるし、弾く力にあわせての音の強弱などもできない。また音域も4オクターブくらいしかないので、だんだん習っている曲が複雑になるにつれ力不足になってきた。

 とはいえ、借家である我が家に本物のピアノを置くにはスペース的にも金銭的にも余裕がない。本物のピアノとはいかないまでも、ピアノの練習が十分にできるような楽器はないものかということで、このたび電子ピアノを購入した。といってもそのお金を出してくれたのは、甲斐性のない私ではなく妻の母すなわち息子のおばあちゃんである。

 店頭で購入契約をしてから10日ほどで届くまでの間に、電子ピアノを置く場所を作らなくてはならない。何しろ普通のピアノほどではないにしろ、普通のピアノと同じ88の鍵盤数を持つ電子ピアノであるから、横幅も奥行きもアップライトピアノと変わらないスペースが必要である。(高さの方はアップライトピアノほどは高くない。)それまで息子のおもちゃがうず高く積まれていたところを整理し、小さい頃のおもちゃは処分するかバザーに出し、その他のものも分散して置き場所を確保したところに、どーんと電子ピアノがやってきた。

 電子ピアノとは言え、鍵盤の機構は本物のアップライトピアノと変わらない、キーのタッチもほとんど変わらない。ただそこから弦を叩いて音を出しているか、電子的にピアノの音を出しているかが本物のピアノとの違いである。従って本物のピアノと違って調律の必要はなく、音量も調節できるし、ヘッドホンを使えばで外に音を出さずに弾くこともできる。

 もちろん、電子ピアノならではの芸も持っており、音色もピアノだけでなく、パイプオルガンとかチェレスタとかいろんな楽器の音にすることができる。また50曲ほどのピアノ曲があらかじめメモリーされており、自動演奏させることもできる。そのほか、自分が弾いた曲を録音させたり再生させたりすることもできる。

 ただし、そうしたコントロールはキーボード上のキーのコンビネーションで命令することになっている。ここで言うキーボードとは、パソコンでよくあるキーボードのことではなく、本来の意味での鍵盤である。ピアノの鍵盤というものは普通白と黒に塗り分けられたものであり、そこにはもちろんアルファベットなどの刻印などは書いていない

 キーのうちもっとも低い音はA-1と呼ばれ、そこからA#-1、B-1…と続き、一番高い音がC7になっている。たとえばパイプオルガンの音色にするには「A-1、A#-1、B-1を同時に押しながら、F-4を押す」と言ったようなものであり、ピアノに親しんでおらず何がどのキーだかわからない私にはほとんど操作不可能である。それを、6歳の息子はやすやすと覚え、音色を変えたりして楽しんでいる。

 その上動作状態を示すものはわずかに2つのLEDしかないので。自動演奏で何の曲を弾いているのかとか、今どんな音色になっているとか、状態を示してくれるディスプレイのようなものはない。まあ電子ピアノは電化製品ではなくあくまで楽器であるから、そんな無粋なディスプレイみたいなものは敢えてつけなかったということだろう。

 そんなわけで、キーボードと言ってもパソコンのキーボードしか叩けない父である私にとっては、ほとんど使いこなせない立派な電気製品なのであるが、息子の方は、それはもう毎日楽しんで使い倒している次第である


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