#200 今度は音響操作に挑戦(後編)

2002/06/25

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前回のあらすじ)所属する劇団で音響操作に初挑戦することになったのだが、なかなかミスがなくならないまま、ついに本番を迎えてしまった。

 実際の劇場にも音響設備はあるのだが、古い機材であったりする場合もあるので、MDデッキやサンプラーについては、普段使っている機材をそのまま持ち込む。基本的には、これらの音源機材からの信号を一度ミキサーに入れて、そこからメインアンプを経て、スピーカーに接続するという構成になっている。ミキサーよりも先の機材については、劇場の備品をそのまま使う。

 音響のスピーカーは、劇場の天井に張り巡らされたバトン(照明機材などを吊る鉄パイプ)に吊してあるのだが、装置や音響のレイアウトによっては音が聞こえにくくなるので、その位置も調節する。音が出ることを確認したら、ノイズが乗っていないか、低音や高音は自然に聞こえるかなどをチェックして、ミキサーを設定する。

 そんなわけで設置を終えたら、きっかけ稽古を経て、いよいよリハーサルである。操作は照明操作の時と同じく劇場後方のブース(オペ室)から行うのだが、暗転中に光が漏れないよう、極力暗くしているのが普通である。普段は比較的明るいところで脚本を充分見ながら操作をしているのだが、いざ本番の暗い中で、脚本もあまりよく見えない状況でやると、ミスの連発である。本番を前にして、大丈夫だろうかこんなことで。

 というわけで、あっと言う間に本番がやってくるが、結論から言えば、7回の公演を通して、何度かミスは犯したものの、役者のフォローなどもあって、なんとかお客様に気づかれない程度のミスで済んだ。以下恥ずかしながら、本番中にやらかした操作ミスを白状する。

 通常MDを演奏するときは、1トラックの演奏が終わるとすぐに次のトラックの再生が始まるものだが、効果音やBGMを入れたMDの場合は、次のトラックが勝手に再生されると困る場合が多いため、あらかじめ1トラックが終わるとポーズ状態で停止してくれるオートポーズ機能がついたMDデッキを使っている。が、今回このMDデッキを3台用意すべきところ、1台調達できなかったため、1台はポータブルのMDプレーヤーを使うことになった。これが想像以上にミスを起こしやすい。

 MDデッキであれば全面の発光表示板に、再生中の曲や音のレベルなどが表示されるため、暗闇でもわかりやすいのだが、MDプレーヤーの場合は小さい液晶窓しかなく、表示が暗くて小さい。またオートポーズ機能がないため、マニュアルで停止しないと次の曲を勝手に再生してしまう。また、ボタンが小さく、暗闇では誤ったボタンを押してしまいやすい。

 その結果、再生を押しているつもりが曲を送ってしまい、別の音を再生してしまったり、きっかけでも何でもないところで音を止めてしまったり、停止を忘れたために次の音が入ってしまったりというミスをやらかしてしまった。思えばミスの大半はやはりこのポータブルのMDの操作ミスによるものであった。

 また、劇場備品のミキサーの調子が悪く、初日初回の後半は1台目のデッキからの音のうち、右スピーカーからの音が出なくなってしまっていた。このため次の回から急遽構成を変更し、右出力が不安定なチャンネルについてはサンプラーからの音に振り替え、フェーダーの位置を左右完全に入れ替えた。2度目の本番の際は構成が全く変わってしまったためにミスをしてしまいそうで緊張したが、そのことによるミスはなんとか防ぐことができた。

 芝居の後半はきっかけの連続で気を抜くことができず、更に回を重ねるにつれ演出からも細かい指示が入るようになる。もちろんなるべく反映しようとはするのだが、その結果操作も複雑になって肝心のきっかけを忘れてしまい、新たなミスを招いたこともあった。

 結局ノーミスでできたのは1回だけで、あとはお客様が気づく気づかないは別にして、何かしらのミスをやらかしてしまった。しかし幸いなことに、サンプラーの操作ミスはほとんどなかった。こればかりは押すボタンを間違えれば全く場違いな音が出るので絶対に間違えるわけにはいかない。このミスがなかっただけでも幸運だったと言える。

 かなり余裕のない状況で臨んだ音響操作だったが、なんとかぎりぎり及第点はもらえる程度にはできたのではないかと思う。来月早速、別の劇団で音響操作をすることになってしまったが、その時は今回ほどは大変ではないとのことなので、今度こそノーミスで臨みたいものである。


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