#141 新2000円札と新500円硬貨

2000/10/27

<前目次次>


 が、先頃発行された(それぞれ7月19日と8月1日)。みなさんはもう実物をご覧になったであろうか。新しい紙幣や硬貨というものは、どうにも馴染みが無くて「おもちゃみたい」というような感想を持つのが一般的ではないかと思われる。

 故小渕首相の思いつきと言う、極めてしょうもない理由から生まれた新2000円札ではあるが、実はかなりの最新技術がこれでもかとてんこ盛りのお札である。例えば、表面左下の部分は、斜めから見ると「2000」の文字が浮び上がる潜像技術が盛り込まれていたり、同じく右上の2000の文字は、見る角度によって青緑と紫が変化して見える光学的変化インキが使われていたり、両端には斜めから見るとピンク色の模様が見えるパールインキが使われていたりする。

 もちろん、すかしや彩紋模様や、例えば裏面右の「源氏物語・鈴虫の章」の絵の柱の部分などあちらこちらに「NIPPON GINKO」という細かい文字がびっしりと印刷されているマイクロプリントや、表面の日本銀行総裁の印章に紫外線(ブラックライト)を当てると発光する特殊インキなど、従来のお札にも使われている偽造防止のための技術も当然採用されている。

 一方でこの新2000円札は、お札を扱う自動販売機にとっては困った存在である。というのも、現在使われている1000円、5000円、10000円の紙幣は、幅がそれぞれ150mm、155mm、160mmとそれぞれ5mmずつ違っていたのに対し、新2000円札は、5000円札よりも幅がわずか1mm短い154mmなので、お札の幅で金種を判断する簡易ロジックが使えなくなってしまうのである。(もちろんお札の判別にはほかにももっと複雑なロジックが併用されているのであるが。)

 そのような問題もあってか、今の所新2000円札の使える自動販売機やATMは皆無に等しい。いや実際にはおそらくすでに対応済みの自動販売機やATMなども開発されているのだろうけど、この不況の最中、わざわざお金を払って自動販売機やATMを交換する金銭的余裕はない、という事情もあるのだろうと推測される。かくして使える場面が限定されることと、2000円という中途半端な金額にまだ馴染みがないせいもあってか、あまり流通しないで銀行に沢山溜まっているという話も聞く。

 また、表面の左上と右下にある連番の数字が違うという「印刷ミス」のある新2000円札が見つかり、珍品としてオークションで高値で取り引きされているという噂も聞く。話によると、連番の同一性をチェックするソフトが間に合わず、手作業によるチェックを余儀なくされたものの、結局チェックミスが起き、連番の違うお札が出てしまったということだったらしい。準備がドタバタになってしまった現場の様子がわかるようなエピソードである。

 一方の新500円硬貨の方であるが、こちらの方は、変造500円硬貨による被害が後を絶たないために急遽発行が決定した硬貨である。新500円硬貨は旧500円硬貨と大きさは同じ(直径26.5mm)で、重さが少し軽くなった(7.2g→7.0g)。もちろん新500円硬貨にも、潜像模様や斜めに入ったギザなど、今までになかった変造防止用の新しい技術が盛り込まれている。

 材料も、古い方が銅75%ニッケル25%だったのに対し、新しい方では銅72%亜鉛20%ニッケル8%となった。これにより電気伝導度などが変わるため、ニセ硬貨を検出しやすくなるとのことである。しかしながら現在のところ、新500円硬貨に対応した自動販売機の方もまだそれほど普及していない。もちろん旧来の500円硬貨も使えるところが少なくなっているので、相変らず財布の中で邪魔者扱いされている500円硬貨である。

 旧500円硬貨はこの2年程で回収され世の中から消えてなくなるらしいので、その頃にはまた500円硬貨が自動販売機で使えるようになってくれることであろう。そうなると逆に旧500円硬貨は希少になっていくので、邪魔者扱いされてあなたの財布の中から出て行かない旧500円硬貨を今のうちに記念に取っておくのもいいのではないだろうか。何の記念なのかよくわからないけど。


<前目次次>