#140 風邪ひいた

2000/10/23

<前目次次>


 久しぶりにどっぷり風邪をひいた。

 昔鼻炎気味だったこともあって、今でも朝方ひどく鼻水やくしゃみが出ると言うことが時々あり、今回もその類いであろうとたかを括っていたのだが、昼になってもますますひどくなるばかりで、これはどうも風邪ではないか、と感じたのが日曜日。それから1週間近く、くしゃみ鼻水鼻づまりが止まらず、妻にもえらく心配をかけてしまった。

 原因は風呂から出た後床に入るまでに薄着で夜更かししたために寝冷えしてしまったためかも知れない。もしくは、朝方冷え込んだにも拘らずいつもの寝相の悪さで布団を蹴飛ばして寝ていたためかも知れない。あるいは、平日は仕事週末は芝居の稽古というハードな生活で(本当か?)疲れがたまり体力が落ちてウイルスに付け込まれやすくなっていたのかも知れない。はたまた、私はいつも職場にあるうがい薬機でうがいしているのだが先日来うがい薬機のうがい薬が切れてしまい庶務係に連絡したら「生憎在庫を切らしてしまってしばらく待たないと入ってこない」と言われ結局1ヵ月くらいあまりうがい薬でうがいができなかったからかも知れない。

 このように原因はいくらでも考えられるのだが、考えたところでひいてしまった風邪が直るというものでもない。人類は未だ風邪に対する特効薬を見つけ出してはいない。風邪と一言で言うが風邪はそもそも細かく分類すればいろいろな種類のものがあり、しかもウイルスという簡単に亜種ができてしまうモノによって引き起こされるため、ワクチンの開発製造がほとんど役に立たない、というのが風邪の特効薬がない主な理由である。ちなみに薬局で売られている風邪薬は、風邪の諸症状(熱、鼻水、鼻詰まり、喉の炎症)などを一時的に和らげてくれる薬であって、風邪そのものを直してくれる薬ではない。

 従って、文学者であり医者でもある森鴎外が言っていたように「風邪というものは、寝てさえいれば直る。それ以外に治療法はない」のである。充分栄養と睡眠を取って、風邪が自らどこかへ行ってしまうのを待つ以外に風邪を根本的に治療する方法はないのである。

 しかし人類が風邪に対して無力であっても、風邪を予防する智恵はいくらでも知られている。前述したように、湯冷めしないようにしたり、手洗いやうがいを励行してウイルスの侵入を防ぐようにしたり、普段からビタミン等が不足しないようにバランスのよい食事を心がけるようにするという、こういった当たり前のことを励行していれば、大部分の風邪はふせぐことができるはずだ。ただ、わかっていても忙しい現代人の中でそこまで気を配れる人はなかなかいないものと思われる。

 そこで例えば、自分の体の状態を耐えずモニターして、危険な場合は警告してくれるような機械があると、風邪のみならず多くの病気の予防に役にたつのではないだろうか。以前にも書いたが、巷では脈拍数や体温などをモニターしてくれる腕時計などがある。これを更に応用して、例えば血圧とか体脂肪とか血糖値とかその人の体のいろいろな状況や行動などを耐えずモニターして、健康を害する恐れがあればその都度注意してくれるのだ。

 曰く「ピー。皮膚温度が26度を下回りました。湯冷めしている恐れがあります。着込んで下さい」「ピー。手の平の細菌数が推定1億を越えました。手を洗って下さい」「ピー。ナイアシンが不足しています。鯖や鶏肉を食べるようにしてください」「ピー、血糖値の平常値が上昇傾向にあります。糖分の採り過ぎないようにして下さい」「ピー。連続3時間以上モニターを眺めています。目の筋肉が疲労しています。休憩して下さい」「ピー。中ジョッキ5杯目です。血中アルコール濃度が高まっています。これ以上の飲酒は好ましくありません」「ピー。今日80本目の煙草です。毛細血管が過度に収縮しています。これ以上の喫煙は好ましくありません」「ピー。腕の筋力が5%以上低下し、体脂肪が3%上昇しています。少し腕の運動をして下さい」

 確かに便利かも知れないけど、四六時中こんなことを腕時計に言われていると、やかましいこんなことまでして健康になりたくないわい、とか怒り出す人もいるかもしれない。結局、自分の健康は自分で気を配る、というのが一番肝要なようである。


<前目次次>