#134 携帯端末再考(その3)

2000/09/11

<前目次次>


 情報管理の重大さが謳われるようになって脚光を浴びてきた携帯端末ではあるが、いまいち中途半端な製品が多いのもまた事実である。そんな中で気になる携帯端末をいくつか挙げてみる。

 まず本体の小ささで言えば、CITIZENから出ているDataSlimシリーズに勝るものはないだろう。何しろ本体そのものがPCMCIAカードスロットに差込み可能で、そのままWindows内のデータとシンクロ可能になっている。重量もわずか35gだから、名刺入れや財布の中にまで入ってしまう。小さいが役に立つソフトもアドインソフトとしてインストールし利用することが可能である。さすがに小さいのでユーザーメモリエリアも1Mbyteと極めて限られてはいるのだが、携帯性は申し分なく良いので、用途を選べば充分有益であろう。

 SHARPのザウルスシリーズは、その後も用途に応じて様々な製品を出しており、一頃かなり重くなったりもしたが、最近では200g以下程度に押さえられコンパクトにまとめられている。一方で文庫データや漫画データなどを配信するサービスを行うなど、買った後のサポート面もしっかりしている。とりあえずモバイルを使ってみたいという場合の選択肢としてはいいかも知れない。反面、製品がきっちり作り込まれているため、独自のソフトを使うと行った汎用性や拡張性には乏しいようだ。

 現在携帯端末として頭角を現しているのがPalmと称される一連の製品である。もともとはアメリカのベンチャー企業「PalmComputing」が1996年始めに開発したもので、それまでに携帯端末に比べて動作の軽快さや価格の安さが力となって、全世界で500万台を出荷したと言う。日本IBMが日本語版PalmOSを搭載したWorkPadシリーズを発売するなど日本語にも対応したことで、国内でも徐々に浸透し始め、最近では専門の雑誌も発売されるようになった。

 Palmの特徴としては、文字どおり「手のひら」に充分納まる大きさと重さ、住所録やスケジュールなどの頻繁に利用するデータに少ないストロークでアクセスできるというシンプルかつ効率的な設計、アルファベットを一筆で書くことにより早く正確な認識が可能になるGraffitiという独自の文字認識入力法、HotSync機能を使ったパソコンとの簡単なデータ同期、そしてサードバーティやユーザーが開発した数多くのソフトウェアが挙げられるだろう。

 弱点であった通信機能についても、米国ではすでにワイヤレス通信機能内蔵のPalm VIIが発売されたり、日本でも企業向けながらPHSモジュール組み込みのWorkPadが発売されるなど、徐々に克服されつつある。最近ではソニーがPEGシリーズを出したり、パームコンピューティングが2万円を切る低価格モデルm100を出したりするなど、各社それぞれ特徴のある製品を出しており、利用者の側にも選択肢が増えてきている。ともかく多くの企業やユーザーが力を入れているだけあって、勢いが感じられる

 一方Microsoftも、Palmへの対抗馬として、モバイル用にバージョンアップしたWindowsCE3.0を搭載したPocketPCを発表し、日本語版の方もHP社のJornada548とPocketPCカシオペアが先頭を切って発売される。PocketPCがPalmの市場をどれだけ脅かすことができるのか、今後注目される。

 とか何とか言っていながら、私自身はザウルスもPalmも使っておらず、お気に入りはやっぱりHP200LXである。小さいながらも高速入力が可能なフルキーボード、どこでも調達可能な単3乾電池による長時間駆動、徹底的なカスタマイズが可能な仕様、レジュームやアプリ立上げ時の機敏性は言うに及ばず、何よりDOSを積んでいることで、パソコンの環境をまるごとコピーしたり同期したりでき、またパソコンと同じツールを使えることで、パソコンの作業環境を文字どおり「移動できる」のがうれしい。もちろん、DOS以降にパソコンに触れた人を含め多くの人に取ってはとっつきにくい製品ではあるが、DOSの心得のある人にとってはこれ以上心強いパートナーはない。発売中止になってしまってからはもう買い直しが効かないので、大切に使おうと思っている。

 まあ当たり前のことだが、どんな場面でどう使いたいかという個人個人のニーズによって、自ずとその人にとってのベストの選択は決まってくるだろう。もちろん「使わない」というのも一つの選択肢には違いない。


<前目次次>