#104 着メロ百花繚乱

2000/02/15

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 携帯電話には大抵の場合、着信呼出しの電子音(以下着信音)にいくつかのパターンを用意している他、単なるベル音だけではなくいくつかのメロディを用意し、その中から好きなものを選択できるようになっている。更に、音を組合せて着信音メロディ(以下着メロ)を自分で作り登録する機能も持っている。ここから着メロの流行が始まった。

 携帯電話がこれだけ普及すると、ありふれた着信音では鳴ったのが自分の電話なのかどうなのかわからない問題があること、またコンピュータの壁紙スクリーンセーバー、あるいは携帯電話のストラップのように、工業製品である自分の所有物に他人と違う個性を発揮させたいと言う欲求から、着メロは瞬く間にいろいろなバリエーションを持つようになった。ことに現代は、歌謡曲が大量に生産され消費される時代であり、カラオケの新譜同様、着メロも次から次へと新曲のそれが出回るようになっている。

 書店の店頭には、新書版の大きさの「着メロ集」といったジャンルの本が毎月のように出ている。最近の歌謡曲を集めたものはもちろん、例えばGLAY・L'Arc〜en〜Ciel・ZARDといったような特定のアーティストの楽曲を集めたものや、CMソングやアニメソング特集といったものまで、様々な着メロを紹介している。またWeb上をちょっと探してみても、着メロを紹介しているサイトはたくさんある。

 携帯電話にオリジナルの着メロを作って入力するのは結構手間のかかる作業である。音符には高低や長さなどの情報を与えなくてはならないわけだが、そこにはテンキーといくつかのボタンしかないわけであるから、例えば1のあとに#を1回押せば2分音符のC(ハ長調のド)とか、ややこしいルールに従って入力しなくてはならない。更に入力のルールは機種によってバラバラであったりする。そこで先の「着メロ集」の場合は、そういった難しいことは考えなくてもいいように、入力方式別に、入力の際のボタンを押す順序を羅列して書いてある。着メロの編集画面にした後は、何も考えず書いてある通りにボタンを押して登録すれば、そのメロディが出来上がってしまうと言うわけである。

 初期の電子音のみで作る主旋律のみの着メロの場合は、機種にもよるが様々な制限がある。例えば音数は休符も合わせて最大でも32個程度、音域も最大3オクターブ程度なので、長いものや音域の広いものは作成できない。また使える音符にも制限があったりしたため、複雑な楽曲は「それらしく」聞こえるようにデフォルメされている。

 私もご多分に漏れず、自分で着メロを作って入力してみたりしたことがあるが、最近ではそもそも着信音をあまり使っていない。着メロにしたいと思うような思い入れのある曲も特にないし、あったとしても、それを公衆が聞くかもしれないような場所で鳴らしていいものかどうかという疑問もある。第一、世間には携帯電話の着信音を鳴らすことが憚られる場所が多い。先日会議の最中に、よりによって「キューピー3分クッキング」の「タカラッタッタッタッタ、タカラッタッタッタッタ、タカラッタッタッタッタッタッタッタッタッタンタッタン…」という着信音を鳴らして慌てていた人がいたが、あれは本人はもちろん周囲も恥ずかしい思いをする。というわけで、私は普段は着信音は使わずズボンのポケットに入れて無音のバイブレーション方式(マナーモード)にしておくことが多い。

 DoCoMoの208シリーズや502iシリーズなど、最近の携帯電話は着信音に3和音が鳴らせるものまで登場した。先日劇団員の一人がそれを購入したので試しにいくつかのサンプルを聞かせてもらったが、これがなかなか綺麗な上に長い。件の「キューピー3分クッキング」もメニューの中にはいっているのだが、これがワンコーラス流れるくらい長い。

 こんなに長くて複雑だともはや自分で入力して作ろうなんてほとんど不可能であろうと思う。そこで最近では、i-modeなどのWebの参照が可能な端末用に、3和音着信音をダウンロードして使えるようにした有料サイトもできたようである。更にこの度発売されたDoCoMoのN502iなどは4和音16色の音色が再現可能で、現在は更に128種類の音色を出せるものを開発中だと言うことだ。こうなっては殆ど電子楽器である。本来は電話のはずなんだがな。


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