#040 続・困ったメールたち

1998/12/11

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 以前も「困ったメールたち」で少し触れたが、添付ファイルのついたメールというのは結構迷惑なものである場合が多い。最近、これにまつわるちょっとした事件が身近で相次いで起きたので、実例と言うことで紹介する。

 先日私の所に、高校の後輩の結婚式の二次会の案内状か何かがメールで送られてきた。関係者へということで、宛て先は私の他にもいくつかあった。添付されていたのが画像ファイルで、しかも圧縮のほとんどされないビットマップファイル(BMP)だったので、大きさが1Mbyte近くもあった。発信者は結婚する本人ではなく、彼からそのメールをもらった私の親友の一人で、受け取ったもののその添付ファイルが開けないのでそのまま他の関係者にも転送したというものであった。

 久々の巨大なメールにうんざりしていたところ、念のためということか、同じ内容のメールがまた送られてきた。普段なら目をつぶる私もこの時は「これ以上送られてはかなわん」と思って発信者である親友に警告のメールを出した。自分のところでコンピュータ資源をあまり意識しないで使えるような人はそれほど深刻にとらえていないようだが、添付ファイルは普通の人のテキストメール受信量の1ヵ月分以上を一度で消費してしまうのだ。これが二度三度送られてくると、スプールという受信メールを一時的に保存しておくディスクスペースが溢れると言ったことは現実にあり得る。私とて親しい友人にそんなことを言わねばならないのは心苦しいのだが、まずいことはまずいと言っておかねばなるまい。

 だが行き違いもあったのか、結局その巨大メールは都合3度も送られてきた。私のところは職場でも自宅でも専用線だから、別に読み込みに時間や課金がかかるわけでないからいいものの、こんなメールを電話回線接続で受け取る人は気の毒である。現にそのようにしてメールを読んでいる別の受信者の一人は「パソコンが壊れたかと思った」とコメントしている。

 更に別の人の場合は、UNIXユーザで、エンコード法(base64)も画像形式(BMP)もUNIXの世界では一般的ではないものなので、読まずに捨てていたそうである。結局の所、添付ファイルというものは一般にバイナリファイルであることが多いわけだが、それらはある程度特定のOSやソフトウェアを意識したフォーマットである場合がほとんどなので「読めなくて捨てられる」という運命をたどることも多いのである。

 結局このメールを送った人は他の人からも苦情があったのか、翌日みんなにお詫びのメールをよこしていた。彼も直接の情報源ではなく、単に親切心で右から左へ流しただけではあるから、責められるのも気の毒と言えば気の毒である。

 ちなみに問題となったその1Mbyte近いBMPファイルの中身は何だったかというと、2次会の案内状(葉書)のスキャン画像で、地図も何も入っていなかった。要するに情報としてテキスト以外でなければ困ると言うものは何一つなく、これならテキストで送ればすむことではないか。中継して責められてしまった私の親友も、もしそのファイルを開いて中身を確認することができたのなら、でかいだけの画像ファイルを複数に送りつけるなどということはしなかったであろう。肝腎の結婚する当人がことの顛末を知っているのかどうかは不明だが、思わず「このくらいテキストで送れー、ばかー、出席してやらねーぞ」とか一人で叫んでしまった。

 まあ送った本人に悪意がなくてもこういうこともあるわけだが、もっと酷い場合もある。これがWordなどのMS製品のソフトが作るファイルである。

 先日同僚の一人が仕事の関係で、インドネシアから添付ファイルつきのメールをもらった。中身はWord97形式の文書ファイルで、コンピュータのネットワーク図とかがくっついてるので確かにテキストでは手に余る内容である。Wordでなければならない理由もないとは思うが。

 そのファイルを開いてWordで編集しようとしたところ、ある時間がたつとインドネシア語の音声が流れ、最後に女の人の顔が映ってWordそのものがハングしてしまうという症状が起こったそうである。

 状況的に見て、MS-Wordなどに寄生する「マクロウイルス」に感染したファイルを受け取った可能性が高い。Wordのファイルも基本的には直接読むことの出来ない独自のフォーマットのファイル、すなわちバイナリファイルの一種であるのだが、その文書ファイルの中に寄生して、ファイルを開いた時にシステムなどに感染し、しばらくして発病するような仕組みをもつ新種のウイルスを「マクロウイルス」と呼んでいる。ちなみにMS-Excelにも同様のマクロウイルスの存在が多数確認されている。

 結局その人は一応Wordを一度アンインストールしてからインストールし直してみたのだが、やはり同じ現象は起こってしまうらしく、手元にワクチンソフトもないので、未だ解決できていない。同じファイルは東京のオフィスにも送られたようなのだが、そこではほとんどの人がWord97を使い、文書ファイルなどを部内LANでやりとりしていると言うから、一たび誰かのパソコンに感染するとあっと言う間に伝播する危険性がある。一応警告は発したようだが、その後どうなったかは確認していない。もはや時々東京から送られてくる添付ファイル付きメールは恐くて開けない。

 恐らくこの場合も発信元であるインドネシアの人が悪意を持って流したものではなく、感染していることを知らずに送ったという可能性も高い。だが、先の画像ファイルの件も含めて、コンピュータの世界では「無知は罪」である。厳しい言い方ではあるが、コンピュータの世界では、こういった落とし穴はあらゆる所にひそんでいるので、コンピュータ、特にパソコンを使っている者は、出来るだけいろんな情報を吸収し、必要があれば自己防衛をしなくてはいつか必ず足許をすくわれるのである。


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