#012 困ったメールたち

1998/08/28

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 3日連続で偉そうな話が続いて恐縮だが、困ったWebPageの話のついでに、困ったメールについても言及することにする。

 ひところはInternet=WWWという図式がまかり通っていたInternetだが、恐らくInternet上で最も利用されているサービスはメールではないだろうか。ネットサーフィンは毎日はやらなくてもメールのチェックは毎日しているという人は多いと思う。届くスピードや返信のしやすさは郵便より格段にすぐれ、電話の様に相手を強制的に呼出す必要もなく、FAXの様に物理的資源を消費しないという点で、今やメールは新たなコミュニケーション媒体として確実な地位を築きつつあると言ってよい。

 昨今のコンピュータ資源の驚異的な進歩に伴い、かつて資源の関係で実現できなかったサービスも今や実現可能となってきつつある。メールサービスとてその例外でない。しかしその一方、ネットワーク黎明期から存在する歴史の長いメールサービスであるから、その利用環境は、MS-DOSのパソコンから大型コンピュータの端末まで、非常に多岐にわたっている。このため、環境の違いによっては意図しない結果を引き起こすことがある。

 以上、抽象的な説明になってしまったが、何が言いたかったかと言うと「テキスト以外のものをメールで断わりもなしに送って欲しくない」ということである。もともとテキストのやりとりのみでスタートしたメールであるから、テキスト以外のものは相手が利用可能であるという保障はない。以下、具体的に見ていく。

 一番困るのは、断りもなしにバイナリファイルをエンコードした添付ファイルをつけて送ってくるものである。添付ファイルは大抵の場合、そのままではテキストとしてメールで送ることのできないデータ、すなわちバイナリデータであることが多い。具体的には、プログラムや、画像や、ワープロなどのアプリケーションの独自フォーマットのデータなどである。これらは多くの場合、最低でも数10kbyteから、下手をすると数Mbyteにも及ぶデータになる。場合によってはこのようなメールを1つ送られただけでメールスプール(メールを一時的に貯めておく場所)が溢れてしまう。また、telnetなどでリモートから細い線でメールを読もうとしている時にこんなメールが入っていると、無意味な文字の羅列がいつまでもスクロールすることになり、悲惨の極みである。

 ちなみに筆者の環境では、このような添付ファイルつきメールが来なければ、一ヵ月のメール受信総量はせいぜい1Mbyte程度なのだが、この手のメールは一ヵ月分のメールを一度に送ってくる。それでもメールスプールが溢れる事はとりあえずなさそうなので、たまにであれば黙認しているが、しょっちゅうになるとさすがに一言言いたくもなる。ひどい場合だと、こういうメールをMailing-List(グループ内のメンバーが同一メールを受けるシステム)で流してくる。さすがにこの時は黙っていられなくて、発信者にやんわりと注意したのだが。

 これら添付ファイルの中でも特に困るのがMicrosoft Wordの文書ファイル(特にWord97以降)である。これらは単に「でかい」だけではなく、マクロウィルスの最大の温床であり、場合によっては文書を開いただけでウィルスに汚染され、OSの破壊など致命的なダメージを被る。Word97のことについては後の機会に書こうと思っているのだが、ともかくWord97の文章を添付ファイルで送る事は是非やめてもらいたい。

 あと、最近ではHTMLメールなんてのもある。HTML化したメールを添付して送ってくるもで、対応していないメーラで見ると、本文の後ろに不可解なHTMLがくっついてきたりする。これらはMicrosoft社のメールソフトから発信されるメールに見られるのだが、はっきり言ってメールをHTML化しても多少見栄えが良くなるだけで何のメリットもないばかりか、受け手が対応していないと単にゴミがついたメールにしか見えない。しかも罪な事に、これらのソフトはデフォルトがHTMLを出す設定になっていたりするため、送信者側が知らずに出している場合が多く、受信者側から文句を言われて困惑するというケースが後を断たないようだ。私もたまに受け取るが、相手が意図的にやっていないように見える場合にはこれも黙認することにしている。本当はやんわりと注意してやったほうが親切なのかもしれないが。

 日本の場合、日本語コードの問題も頭の痛い問題である。これについても後に書くつもりだが、通常、インターネット上で流れるデータは7bit-JISで送る事がルールである。たとえ使っている端末がShift-JISや日本語EUCを採用していたとしても、である。InternetにShift-JISなどの8bitコードを生で流したりすると、途中の流通経路で7bit化されて送られたり、8bit目が切り落とされたりする場合もある。一時期(現在でも?)やはりMicrosoft社のメールソフトが、デフォルトでShift-JISを流す設定にしていたために、ユーザーに多大な困惑と混乱を招いたと言う事実がある。

 こうしてみると、メール社会を混乱させている元凶はほとんどMicrosoftと言っていいかも知れない。コンピュータの世界に強大な影響力を持つ会社なのだから、もう少しInternetのことを勉強して相応の責任と義務を果たしてもらいたいと思う。最後に、Microsoftの腐ったメーラーについてのリンクを集めたページがあるので、詳しい説明はそちらに譲って終わりにする。


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