△ 不等辺ワークショップ第64回 (2009/02/22)


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写真  進行役を務めた林です。2月22日のワークショップをレポートします。いつも書くのが遅くなってごめんなさい。いま3月1日です。もう3月に入ってしまいました。毎月そうですが、2月はいろいろあったなぁ。高校演劇の審査員を務めたり、絵本の読み聞かせのワークショップをしたりしました。会津若松で高校生たちと演劇ワークショップもしました。もちろん高校の演劇の授業もありました。2月で1年間の授業が無事に終わりました。写真 最後の授業ではみんなでパシャパシャ写真を撮りました。どれもこれもみーんな大事な思い出です。こうしてみると2月は高校生関係の活動が特に多かったなぁ。2月は芝居もたくさん観ましたよー。演劇10本、映画も2本。「愛のむきだし」も「おくりびと」も傑作でした。私の活動のこれらもろもろは「不等辺演劇倶楽部のブログ」に詳しいです。よろしければご覧ください。そんな日々のなかで迎えた2月22日でした。このワークショップのこともすでに大事な思い出のひとつです。忘れられない思い出です。この日は快晴の日曜日。私は気分よく自転車で会場に向かいます。アシスタントの田澤くんと落ち合って、打ち合わせをすませ、参加者のみなさんをお待ちします。八幡山のこの会場でワークショップをするのは今日が最後です。最後かぁ。最後なんだなぁ。特別な思いもありつつ、それでもいつものようにワークショップを進めます。以下、主なゲームを振り返りますね。今回はかなり私目線(ワタシめせん)で書いてみます。

写真  今回も12時45分ぐらいに「おもてなしゲーム」をスタートします。早めに来てくださった方々と早口ことばで遊びます。東京特許許可局とか。おなじみの早口ことばを使いながら、じつは相手にちゃんと話しかけたり、ちゃんと聴いたりってことをやっています。初対面同士なのにいきなりそんなことができてしまうのがすごい。東京特許許可局は偉大です。ただ現状のルールだとやっぱり鬼が苦戦しますよね。だからだんだんルールを鬼にとって優しいものにしていく。あれはあれでおもしろいのだけど、もっとアレンジの仕方を考えてみます。ちなみに私は早口ことばには自信があり、それなのに上手く反応できないので、このゲームはかなり本気になります。まぁ私の場合、反射神経が問題なんだろうなぁ。

写真  ワークショップ序盤のメインは「モテモテ」です。約束して、デートして、みんなに語るというゲーム。1日5回のデートを存分に楽しんでいただけましたでしょうか? 今回、やりながら私はこのゲームの本当の面白みに気付きました。いままでは積極的に相手に働きかける(デートの約束を取り付ける)ことがこのゲームの面白みだと思っていました。それも大事です。だけどむしろ「モテモテ」は語りのゲームだったんですね! 約束の段階ではまだデートの内容はからっぽですよね。何時に/誰と/どこで/何をするか。ただ約束しただけ。写真 脳内手帳にメモ書きしただけです。実際に相手とデートすることで、その内容が具体的になります。個別で特別なものになる。会話のなかで印象に残る言葉があったりするかもしれない。身体も使いますし。さらにさらに。みんなに今日一日のデートを語る段階でも、きっと内容はふくらむはずだ。「モテモテ」の醍醐味は、まさにこの部分なんだと思います。個人で自分の経験をどうふくらませるか。記憶の上書き保存。こんなにおもしろい経験をしたんだよって、デート自慢をしちゃいましょう。嘘はだめだけど、ぜひ大げさに語ってほしい(「嘘をつくこと」と「大げさに言うこと」は違います。平田オリザさんがそうおっしゃっていました)。面白おかしく語ってほしい。みんなを羨ましがらせてほしい。この自慢話大会をもっともっと楽しみたいなぁ。同じデートを語っても、相手と自分とで思いが違っているかもしれないですね。それが発覚するのも面白いですね。「え。おいしそうに食べてくれてたのに、じつはお昼もケーキだったの?」みたいな。登場人物(みなさんのことです)ひとりひとりのドラマが交錯する。面白いなぁ。このゲームも進め方をもっと考えてみます。最後に「デートの達人」を選ぶとか。

写真  ジャグリングではニックネームを作りました。今回の参加者は50音順に瑛太、コート、号泣、黒板、サボテン、シンクロ、超大作、 鉄矢、天童、とび蹴り、豊(←私です)、ヨシオ、よしよしのみなさんです。「もう一度観たいと思うテレビドラマ」について10秒間スピーチをして、そのスピーチ内容を素材にみんなでネーミングしました。なるべく覚えやすく呼びやすい言葉を選んでいます。ちなみに私は「熱中時代 刑事篇」について熱く10秒間語ったところ、ニックネームは「豊(ゆたか)」になりました。ご機嫌だぜ! ニックネームの作り方としては、このやり方が私はかなり気に入っています。会津若松でもまったく同じやり方で作りました。高校の演劇の授業でもお互いをニックネームで呼ぶようにしています(この1年間、私は「赤福」でした)。こんどの4月の最初の授業でも、たぶんこれと同じことをやるでしょう。

写真  キャッチボールをしたり鬼ごっこをしたりしながら、お互いのニックネームを覚えます。鬼ごっこのとき、みなさんの表情がすごく真剣でした。びっくりした。いい表情でした。鬼ごっこのときの鬼の表情のアップって、なかなか写真に撮れないですねー。逃げる側が真剣に逃げないと鬼も真剣に追わないものね。鬼の表情をお見せできないのが残念。そして2チームに分かれてネームバレーです。名前を呼ぶこととしっかり身体を動かすことと、このゲームは二重で難しいんですよね。準備運動として、例えば最初は輪になって透明なバレーボールで遊んでみるのはどうかしら。身体の動きだけで透明なボールの軌跡を追う。こんど試してみましょう。あとの『ネームバレー』がすごいことになったりして。さて。勝ったチームは「強い生きもの」を、負けたチームは「弱い生きもの」を身体表現します。でき上がったのはカバと蝶でした。そしてカバが蝶を食べる。食べられた蝶はカバの血となり肉となり、カバはスーパーカバになる。この「スーパーカバ」という名前が、あまり強そうに聞こえないのがいいですね。なんだか新聞配達とかしていそう。最後は私がスーパーカバに食べられたところで、ワークショップの前半戦が終了!

写真  ここまでレポートを書いてきて、私は「語る」ということにすごく興味があるんだなぁと気付きました。「モテモテ」でもニックネーム作りでも語ってばかりですものね。ワークショップの後半戦もまさにそう。最近の定番人の話を聴くで、いろいろと語っていただきました。なにせみなさんのお話を聴いているのが、私は楽しくて仕方がない。本来、私がみなさんを楽しませるべきなのに、すっかり自分が楽しんでしまっています。写真 今回用意した話題は「ぜいたく」「やせがまん」「失恋」「万引き」などでした。自分にとって何がぜいたくかが語られた「ぜいたく」は、とりわけ刺激的でした。ローマ帝国の話から単に「ドリンクを付けること」まで。「ぜいたく」という切り口でその人の人となりが透けて見える。よくできた脚本のようでした。「失恋」のときは、ABC3名のうちBは「そうだね」、Cは「そうかな」しか言えないというルールでトライ。つまりは聞き役です。実際の恋話(こいばな)も、会話はそれに近いんじゃないかしら。でもAはよくがんばりました。あの会話を、目を閉じて聴いている人たちの心境も興味深いです。修学旅行の夜みたいだったという感想がありました。その感想が私はうれしかったです。そういう経験ができるの、演劇ワークショップだからこそですよね。

写真  何について話をしているのかを探るゲームを発展させて、こんどは何を待っている人たちなのかを探りたい。「待つこと」をテーマにしたエチュードと『人の話を聴く』を結び付けてみました。試してみるのは、これが初めてです。セリフを限定したエチュードは面白いですねー。全身の表情が豊かになる。「何を待っているのか」を探る段階まで進めなかったのは、私の準備不足です。時間配分を誤りました。流れをもっと考えます。今回はいつになく、普通に演劇の稽古っぽい感じで終了。「俳優を目指さない演劇ワークショップ」というよりも、授業やレッスンのときみたいな感じでした。いつもはもっと大団円というか、ぱーっときれいに打ち上がる終わり方を目指します。それもまたよし。これもまたよし。ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。お疲れ様でした。4時間のワークショップを楽しんでいただけましたでしょうか。

写真  アシスタントはおなじみの田澤恭平くん。いつもお世話になっています。田澤くんが初めてこのワークショップに参加してくれたのが、ちょうど3年前かしら。30代も終わろうという私にとってこの3年間はあっという間ですが、20代半ばの田澤くんのこの3年はきっと中身がぎっしり詰まっているでしょう。いつも嫌な顔ひとつせず、私のワークショップと関わってくれてありがとうございます。初めて参加してくださった方にも、何回も通ってくださっている方にも、それぞれ愉快であり刺激的であるように。今後も「豊(ゆたか)」なワークショップを目指します。変わらない部分と変える部分とのバランスをとりつつ。どうぞ末永くお付き合いください。

写真  次回は4月18日(土曜)を予定しています。「俳優を目指さない演劇ワークショップ」です。下は高校生から、上は50代60代の方まで。健康な心身の持ち主であれば、どなたでもご参加いただけます。演劇の経験は問いません。その方針は今後も変わりません。次回からは会場が変わります。長年使い慣れたこの八幡山の会場を離れ、京王線下高井戸駅の近くに新しい会場を見つけました。「ワークショップのお引っ越し」です。新居での初々しい(?)ワークショップ。どうぞご期待ください。私も存分に楽しもうと思っています。多くの方のお申し込みをお待ちしています。

 不等辺△劇団WS管理部 林成彦(はやしなるひこ)


写真 はい、どうも。アシスタントコメンツ担当、田澤恭平です。

アシスタントをやっていると、林さんが様々なことを熟慮しながら進行しているのがよく分かります。
見る度に、凄いな、なんておもいます。
そして同時に、混ざって遊びたい、とおもうのです。
林さんをサポート出来る反面、遊べない葛藤に悩まされるのです。
僕が参加者の皆さんと遊べない分、これを読んでいるあなたが楽しんでくれたら幸いです。

以上、アシスタントコメンツでしたー。


★アンケートより

写真 ○4時間という一見長い時間ですが、それを忘れるぐらい楽しめました。
○来るまでドキドキ緊張してましたが、挨拶の時点でホッとしました。
○とても雰囲気が温かくて、安心して参加できた。内容がちょっとだけ演劇っぽくて、だけどそんなにハードルが高くなく、チャレンジするのにちょうどよかった。
○脳トレって感じでした。普段頭使ってないので難しいのもありましたが、とっても楽しくすごせました。
○3回出たなかで一番楽しかったです。それは人とか内容のせいなのか、慣れたからなのか、最近の私の感覚が変わったからなのかは今はわかりません。
○レッスンの時と変わらず、とても楽しめました! レッスンの時に林さんに言った「また受けたい」が今日かなってとてもよかったです。
○モテモテ、意外と覚えていられた。なんかリンクするペアがあったりして、それでお話を作れないかなと思った。
写真 ○鬼ごっこがとても楽しかったです。
○鬼ごっこ、普通の鬼ごっこが面白かった。
○ネームバレーが初めてやったけど面白かった。
○ニックネームを呼んでバレーボールをするなど頭の体操になりました(まだまだ自分はイケると感じました)。
○伝えたいことをおおっぴらにせず話す。それが難しく感じられたのは不思議だ。
○座談会みたいなやつがとても好きでした。
○「人の話を聴く」も面白くて、色々なバージョンになってるんですね。うまく話せてよかった。
○話の輪に入る遊び、ABCの寸劇、面白かったです。
○ひとつの言葉でいろいろ表現できる楽しさを改めて知りました。
○決まったセリフだけで演じるのは難しい。その人の引き出しの多さが問われる。しかし面白い。
○「来ないね」「来るよ」は演劇の構造みたいだと思った。タイトルは「ゴドー」ですか?
○もともと口下手で自分を出すのが苦手な私でして、今日も100%は出てなかったです。たぶん若い男の子には慣れていないからかもしれないなぁ(?)。
○時間の取り方(ひとつのゲーム、休憩)が上手い。丁寧な説明で動きやすかったです。
○林さんにずっとついていきたい。
○アシスタントさんが劇団員じゃないのが魅力だ。
○田澤くんの明るさもとてもステキでした。今日は田澤くんコーナーはなかったんですね。
○いくつか「これ、ウチの部活でもできるんじゃないかなぁ」と思えるものがあったので(例えば話題に入るやつ)、いろいろ参考になりました。
○最初すごいボケーっとしていて、普段仕事とかこれじゃいかんと無理にスタートかけるんだけど、今日はぼやぼやした身体のままやっていった。そういうのが許されている場は素敵だなと思ったし、そうできた自分をほめてやりたい

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