△ 不等辺ワークショップ第46回 (2007/02/24)


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写真  リーダーを務めた林です。これを書いているのは3月5日です。時間がたっちゃったな。2月後半にバタバタバタといくつかの仕事が重なり、片付いていって、やや虚脱。3月に入って、いまはボーっとしています。年度末って、いろいろなものが片付いていっちゃいますね。それが心地よくもあるしさびしくもあるな。終わっちゃったもののひとつに高校の演劇の授業があります。

 終わってみると1年間の授業はあっという間でした。初めのうちは、やはり前に出やすい生徒とそうでない生徒がいます。印象に残りやすいタイプの人というのは、どんな集団にもいるものです。でも授業は1年がかりでじっくりとつきあう。次第にひとりひとりのいいところがよく見えてきます。きっと生徒たちも、居場所が見つかるというか、自分の落ち着きどころが見つかったんじゃないのかな。授業や講師にもなじんでね。1年間の最後には脚本を使って短い上演会をやりました。これがまさしく適材適所。ひとりひとりのよさがよく活きた、ステキな上演でした。

 最後の授業で生徒たちに感想を書いてもらいました。その後メールも届きました。私の宝物です。読むとじんわりします。このメンバーが解散してしまうことや授業が終わってしまうことが残念だとか。そうだなぁ。私も残念に思うよ、本当に。先生も入ってまた同じメンバーで劇をやりたいとか。この「先生も入って」の一言が泣かせる。他にもたくさんの言葉があり、それらは今後も長く、静かに私の心を温め続けてくれるのだと思います。私は自分が高校時代に受けた授業のことをさっぱり覚えていないけれど、みんなはあの授業のことを時々思い出してくれるとうれしいな。大人になっても。

写真  授業のことを書いたのは、振り返ってみて、こういうのが私の理想なのだと思ったからです。ワークショップの理想。4月の始まりから1年がたって2月に授業が終わるまで。そのコース全体がひとつの大きなワークショップのようなもの。「俳優を目指さない演劇ワークショップ」を1年がかりでやっていたような気がします。やっていることは同じなのです。提供する内容も、接し方も、期待することも、経験してほしいことも、ぜんぶ同じです。本当に同じでした。ならば授業で得られたのと同じ手応えを、ワークショップでも得られないものか。もちろん「1年がかり」と「1日かぎり」とでは条件が大きくちがいます。1年がかりでじっくり取り組んだのと同じ地点まで、1日かぎりで達するのは難しいでしょう。でもそれが目標です。この経験が活きるように、今後もますます精進します。ちなみに次回のワークショップは3月31日(土曜)です。いつもの八幡山ではなく、調布市(京王線国領駅の近く)が会場です。「俳優を目指さない演劇ワークショップ」です。多くの方のお申し込みを楽しみにお待ちしています。

 さて。2月24日。今回のワークショップを振り返ります。今回はいつもと比べて、じっくりバージョンでした。参加者が少なめでしたので、今回はがっつりやろうかなと。いつもだったら「不等辺演劇倶楽部」で扱っているような内容を用意。テーマが17歳だったのは、たまたまです。授業とは関係なく、以前から17歳をテーマにした稽古を私はやっていたなぁ、なぜか。

写真  『役作り』と呼んでいるゲーム。これは橋口譲二の写真集「17歳」をテキストに使います。私の大好きな一冊です。人物の写真から、想像力を働かせる。趣味はなにか、将来の夢はなにか、いま悩んでいることはなにか、その他いろいろ、その人物のプロフィールを想像します。戯曲って大抵文字で書かれていますよね。そりゃそうだ。挿絵を入れる劇作家って、たぶんいない(寺山修司にそういうのがあったか?)。でも「人は見た目が9割」だとか言われる時代です。ここでは文字じゃなくて、写真を手掛かりに芝居作りを始めましょう。プロフィールを練ったら自己紹介です。その人物になり切って、自分について語ります。写真を掲げて「これ、最近撮った写真です」というセリフからスタート。紹介を終えたあとは会場からの質問を受け付ける、という寸法です。質問タイムも、あくまでもその人物を演じ切る。

写真  このゲームのキモはじつは質問です。される側じゃなくて、する側。どんな質問を投げかければ、その人物がより見えてくるか。特徴が浮き彫りになるか。理解が深まるか。相手のために働きかける。「役作り」はひとりじゃなくて全員でやるってのが私のスタンスです。まぁ、数をたくさん用意するのが効果的なんですけど、ひとつひとつの質問にも巧拙がやはりあります。質問を受けた側に、あとで「ああ、それいい質問だなぁ」と思ったものを確認してもよかったですね。あらかじめ準備していなかったことを聞かれたら、その場でぱっと取り繕って答えます。自然と、演じる人本人の横顔がにじみ出る。登場人物と俳優とが混ざり合います。質問のさじ加減が、そのブレンド具合を調節します。作り込んだものしか見えてこないと、やっぱり薄っぺらいしね。俳優は完璧に作り込むことはできないし、そもそもそんな必要もないしね。質問者が料理人です。さじ加減ひとつ。いい味が出てくるような問いかけができると、お互い気持ちいいですよね。

 この「17歳」という写真集では、モデルとなった17歳の方々に橋口さんがいくつも質問をしています。その回答と写真とが見開きでセットになっている。最後にその回答のページを配ります。「ああ、この人、こんなことを考えている人なのかぁ」と。自分の想像と照らして感じ入ることがあるんじゃないかな。モデル本人に接近することや、言い当てることが目標ではないですけどね。参加者の方から「自由について語っている人が多いですね」という感想が挙がりました。それは鋭い。この写真集は88年に発表されたものです。モデルは全員が当時の17歳です。自由って、当時の17歳にとって切実なトピックだったんでしょうね。「管理」の反対語としての自由。自由って一体なんだ〜い、どうすりゃ自由になるか〜い! この写真集は、発表された当初は「十七歳の地図」というタイトルでした。尾崎豊のアルバムタイトルと同じです。もちろん偶然じゃないよね。じつは私もモデルの方々と同世代なのです。私も尾崎豊、大好きだったな。

写真  『リーディング』。テキストとして村上龍の小説「69」を使いました。これも17歳の高校生たちの物語です。矢崎剣介と松井和子。ふたりの登場するシーンを2シーン抜粋。全員で読み合わせをしたあと、簡単なシーン練習(エチュード)をしました。このエチュードはよくやります。そして見るたび、いつもぐっと来ます。たぶんこれもブレンドの味わいなんでしょうね。「17歳ブレンド」。ご本人の味が登場人物によく溶け込んでいるんだろうと思います。私たちはもうとっくに17歳じゃないのに設定は17歳だし、小説のムードを踏まえなきゃいけないし、そして「セリフのルール」がある。制約は厳しいです。でもそれがいいんでしょうね。特に「セリフのルール」について頭で考えながらの演技だから、役の人物に没入しないですむ(したくてもできない)。どこか不安定。それが17歳としてのあの自然さ、切なさ、瑞々しさに通じるんだろうなぁ。あ、ちなみに今回の『役作り』『リーディング』は授業ではやっていないです。17歳そのまんまだもんね。

写真  順番が逆になっちゃったけど、最初に『四角歩き』をしています。これ、ワークショップが始まる前です。みなさんに協力していただいて、床にテープを貼って舞台を作ったあと、時間が妙に余ったので『四角歩き』をしました。もちろん予定外です。まだ午後1時になっていないし、挨拶もしていないし、なんにもしていないうちから。あとで思ったのですが、それって現代演劇っぽくないですか? 最近は開演前から俳優が舞台に登場して、いつのまにか静かに始まっちゃう作品も多いじゃないですか。それっぽいな。まだ時間になっていないのに、いつのまにか静かに始まっちゃうワークショップ。そんなの、たぶん滅多にないと思います。

 アシスタントは寺澤恵里佳さんにお願いしました。寺澤さんはこのワークショップの大事な常連さんです。うれしいのは以前のワークショップでやったことなどを、寺澤さんがよく覚えていてくれることです。寺澤さんの話題に私がついていけないことさえある…。寺澤さんと話していると「え、そんな課題やったっけ?」「あああ、そういえばやりましたねー!」みたいな再発見もあります。上述のように、生徒たちには演劇の授業のことを思い出してもらえるようだとうれしい。ワークショップもそれと同じです。参加者の方々には、あとになって時々ワークショップのことを思い出してもらえるようだと私はうれしいです。寺澤さん、今後もぜひ遊びに来てくださいね。ありがとうございました。

写真  「自分自身なんて、それ自体ではそんなたいした存在ではないのです。他人の色を受け入れて、初めて自分という価値があらわれてくるのです」。これ、村上春樹の言葉です。本当にその通りだなぁと感心したので、ノートに書き写しました。春樹さんは演劇について語ったわけじゃないですが、演劇にも言えることですよね。肝に銘じました。戯曲の登場人物がそう。それを演じる俳優もそう。稽古場で多くの人たちと共同作業をする私たちもそう。もちろん日常生活でもそう。私なんて、それ自体はそんなたいした存在ではない。だから他人の色を受け入れる必要があるのだ。関わりのなかで活きるのだ。私ブレンド。みんなだって同じはず。ああ、このこと授業でも言えばよかったなぁ。さりげなく。

 不等辺△劇団WS管理部 林成彦(はやしなるひこ)
 


写真 【アッシの見た目】 好評につき連載第3回!(嘘)です。
いやぁ〜、このまま大台に乗りますかね、林さん!?

なぁんて、今回アシスタントを務めさせていただいたプロントこと寺澤です。
今回はサプライズだらけのワークショップ(以下WS)でした。

まず、林さんより遅れて到着してしまった!!!
待ち合わせの時間には遅れていないはずでしたが、
八幡山には見慣れた自転車が(・_・o)ン? (o・_・)ン? (o・_・o)ン?

三度目の正直(?)林さんをお待たせしてしまった申し訳ござりません!!

(;^_^A アセアセ…といつもの打ち合わせに。
すると衝撃の事実!!参加者が5人!!
どうなる、WS!!

前の団体の方を軽く追い出し(笑)皆様のお迎え準備。
強風吹き荒れる中、来ていただけるか戦々恐々( ̄人 ̄)

写真 『公園』さんの姿をお見かけした時には小さくガッツポーズ!
続いて『つつじ』さん、いらっしゃいませでございますです。ハイ。

今回のWSは蓋を開けてみたら、なんとお芝居経験者(現役を含む)ばかり。
アシとしては見ごたえがありましたが、何せ少人数…。
シャッターチャンスが(_πдπ) シクシク
ボケボケ写真の数々をお楽しみください。

最近WSの始まる前にチョイサービス(?)で何か林さんが…
今回は四角歩き。アイドリングって感じですかね。
さ、定刻。
WS開始でぇす。

写真 いつもの車座でWSの注意事項の最重要課題!携帯電話!!
おっ『つつじ』さんは立たない…既に対応済みですか、さすが。

定番のウォーキングから始まりジャグリングなどを経てエチュード…。
「17歳」という写真を題材にしたエチュードは、ビデオがあれば見せたいくらいに秀逸でした。
皆さんには人物写真しか資料がなくて、それに肉付けして自己紹介。
『すがや』さんの元ヤン。
『アルシェ』さんのスパイ。
『ユモト』さんの女子高生(本当に爪キレイでした)。
肖像権云々がなければ定点カメラで記憶より記録!
できるものならもう一度みたいですねぇ。

なんと今日はペンキ屋をやっていないのですよ。
5人でも充実した時間は早くすぎるんですねぇ。
あっという間の4時間でした。

写真 打ち上げには『すがや』さんは用事で来ていただけなかったのですが、
常々林さんのお話にあがっている不等辺△の中澤さんがお見えになって
ふふふ、お名刺頂いてしまいました(* ̄▽ ̄*)ノ"

軽く酔っ払いながら反省会へ!
一番緊張しますね。
なんといっても今日のメニューを覚えていない…。
すみません(;^_^A アセアセ…
フラッシュ・バックする記憶で何とかごまかし(!?)
お疲れ様でしたぁ〜。
来月は国領、よろしくお願いします。

追記:
これをお読みになっていらっしゃるころ、皆様体調はいかがですか?
アンケートに室内が寒かったと…。
お風邪を召されていないことを祈ります( ̄人 ̄)


★アンケートより

写真 ○おおらかでした。
○とても良かったです。楽しく、真剣に、両立できました。
○ボールを2つ使うゲームや、3つのジェスチャーの組み合わせには苦労しました。元々複数作業の同時並行が苦手なので…。
○番号を身振りで表すゲーム!! さっぱりできなくてがっかりだ〜。むずかしい〜。じゃんけんして手をにぎるゲームもダメダメだった。うまくできないとくやしいけど夢中になるのでおもしろかったです。
○「役作り」。写真の人になって質問を受けるのがおもしろかった。
○「役作り」。写真を見て、色々想像して自己紹介するのがとても新鮮で楽しかったです。
○毎回素晴らしいテンポで進めて頂けるので、ノリにノッていけます。
○お兄さん、という感じがリーダー的でした。
○懇切丁寧。ありがとうございました。
○次回も都合がつき次第、参加させて頂ければと思います。
○前に参加したのは4〜5年前だと思いますが、とてもパワーアップしているなぁと感じました。

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