△ 不等辺ワークショップ第40回 (2006/06/24)


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写真  メニューの最後の『こめくらぶ』。今回はこれに尽きます。ワークショップは今回が40回目です。毎回毎回が新しいチャレンジでした。でも今回はいつもとはちがう方向へのチャレンジです。やはり勝手がちがいました。準備をするのにいつもの30倍ぐらいエネルギーを使いました。これ本当です。最初にみなさんに感謝の気持ちを伝えたいです。アシスタントの冨田くん。いつもアシスタントの方には助けてもらってばかりですが、今回も本当にそう。冨田くんがいてくれて心強かったです。ありがとうございました。アイデア出しにご協力くださった松陰コモンズの横山さん。私には思いつけないアイデアをたくさんいただきました。ノートに見開きいっぱいです。さぁ、これをどう料理しようかと私はワクワクしましたよ。ありがとうございます。ただ、それをほとんど実行できず…。「ぐわおおおう」と月に向かって吼えたい私です。そしてご参加くださったみなさん。最後までおつきあいくださってありがとうございました。差し入れまでいただきました。あのワインおいしかったなぁ。そうそう。なんと、このワークショップのために岐阜県から来てくださった方もいます。びっくりですよ。みなさんのおかげでとってもいい土曜日、とっても楽しい一日になりました。ありがとうございます。私はうれしいです。『こめくらぶ』万歳!

写真  『こめくらぶ』は、うちあげの別名です。うちあげにも工夫を凝らすというのが今回のミッションでした。ただ食べたり飲んだりするだけじゃなくて、そこに能動的に関わることができる(あるいは関わらなければならない)ような仕掛けを用意する。これは2月のワークショップのレポートで私が予告したことです。従来のうちあげは、みんなどっかりと座り込んで、出されたものを飲食するだけでした。おしゃべりしながらね。それは楽しいけど、その受け身一辺倒なところが私は惜しいなぁと思っていました。せっかくワークショップで、創造性も発揮したしグループワークにも取り組んだのに、うちあげではそれが活きない。活かす機会がない。じゃあ、そういう機会を作ろうよ、と思ったのが『こめくらぶ』誕生のきっかけでした。

写真  でもねー。私自身がねー。そういう方面に弱いのよー。予期せぬ高いハードル。なかなかプランがまとまらぬ。今回の私のニックネームは「メロンパン」です。1ヶ月ほどまえ軽井沢でおいしいメロンパンを食べてほっぺたが落ちた。あれ以来あの味を探し求めて毎日1個は食べています。このことがいい例だ。いちどスイッチが入ると私は同じものばかり食べ続ける。いままでも豆腐だったり豆乳だったりバナナだったり青汁だったり、そのつどそれが食生活の「不動のレギュラー」になります。ジーコ・ジャパンの中村俊輔のように。考えてみたら、私は着るものだって着たきりすずめだ。そしてもう10年以上も引っ越しをしていない。衣・食・住の3方面に、私は無頓着なタチなのだ。鈍感なんですね。普段からアンテナを張っていない。思いついたことをノートに書き留めたりしないし、そもそも思いつかない。アイデアやアドバイスをいただいても、それを自分で膨らませられない。私が思いつくようなのって、たとえば寝袋を人数分用意して、みんな寝袋にもぐりこみながらうちあげをしたら、合宿しているみたいな気分で話せそうだとかそんなの。このアイデアは気に入っているのですが、食べる飲むの部分にはふみこんでいない。うおおう。

写真  今回の『こめくらぶ』では、みんなでおにぎりを作りました。自分の食べるおにぎりは自分で作る。「なんだ、おにぎりかよ」と思う方もいるでしょう。でもこれでもだいぶちがう。だいぶ楽しい。だいぶ能動的だ。ワークショップでは涼しい顔をしていた「見積もり」(←ニックネーム)が、ご飯を握りながら汗をかいています。本人いわく、アタマのちがう部分を使っているそうです。きっとそうでしょう。私なんて、おにぎりを作るのが生まれて初めてです。手を水にぬらし、塩をつまんで両手をこすり合わせる。ボウルからご飯をぐいっと握る。いまアタマのなかの、いちども使ったことのない部分を使っているのだ。すばらしい。なんて創造的なんだ。

写真  今日は朝からお天気がいい。6月の日差しが心地よい。松陰コモンズまで私の家からは自転車で5分ほどです。往復で10分。朝からすでに私は3往復しています。せっせと荷物を運び込む。お米(あきたこまちの無洗米)と炊飯器、ゆうべ炊いてタッパーに詰めて冷凍しておいたご飯と電子レンジ、塩、のり、そのほかたくさんの食器類、エプロン、レジャーシートなど。気分は遠足のようでもあり、お引っ越しのようでもある。ビールやジュース、おかずは冨田くんにスーパーまで買出しに走ってもらう。横山さんが物置から扇風機を2台、出してくれました。しかも羽根をきれいに拭ってくれている。ありがとうございます。さぁもう、これで足りないものはないか。準備は十分か。『こめくらぶ』のことで私のアタマはいっぱいですよ。

 ひとりまたひとりと参加者のみなさんが集まってくださる。午後1時です。ばたばたしながら、まずは演劇のワークショップがはじまるわけです。こんにちは。林成彦です。今日はようこそおいでくださいました。

写真  ご挨拶しながら、私は畳の上にオレンジ色のレジャーシートをひろげます。シートの上に全員が乗っかって、これをきれいに裏返していきます。足が畳につかないようにね。さらにはシートを半分ずつに畳んでいく。やっぱり足は畳につかないように。うん。みなさん、すばらしいです。身体の使い方がハイレベルです。「ファーブル昆虫記」のスカラベ(ふんころがし)のようだ。このゲームはあちこちで試しているのですが、スカラベになったのは初めてです。相談してもいないのにすごいなぁ。率先してスカラベになったのは冨田くんでしたね。さすがだ。ミス・ファーブル。昆虫といえばあなただ(?)。

 『ウォーキング』では会場をつぶさに観察します。よくよく観察してみると、柱がやや斜めになっています。フスマもちょっとずれている。向こうの部屋は、枠が平行四辺形になっている気がする。これは震災でタテモノが傾いでしまったためだそうです。震災って、もちろん阪神じゃないですよ。1923年の関東大震災。すっごいなぁ…。

写真  『ジャグリング』のなかでニックネームを決めます。自分を語る上でのキーワード。挙がったのがビール、イエロー、焼酎、太陽、広島、見積もり、くわがた、メロンパンでした。メニューにはなかったけど、アドリブで『バースデイ』を試します。そうしたら「見積もり」は今日が本当に誕生日だとのこと。ひゃああ、そんな大切な日に来てくださってありがとうございます。プレゼントの連想ゲーム。もらったプレゼントから、なにか連想される品物を次の人にプレゼントします。スタートして早々、私は「クオ・カード」をいただきました。が。私はクオ・カードってなんなのか知らなくて…。自分の世間知らずっぷりが恥ずかしい。人生って、いつも勉強だなぁ。

写真  おなじみの『神様』を終えて、だいたい午後3時です。ばたばたと振り返りましたが、ワークショップそのものもばたばたとしていたように思います。駆け足というか、私が浮き足立っていたからなぁ…。もう40回目だというのに、新しい取り組みをひとつ入れただけですっかり慌ててしまう。まだまだ修行が足りません。落ち着け、私。

写真  後半のメニューにはテーマがありました。キーワードを挙げると、17歳、夏、記憶、呼び水、そんなところかな。『リーディング』はワークショップではひさしぶりですね。用意したテキストは村上龍の「69」です。これは以前、不等辺△劇団の稽古でも取り上げました。登校時の、学校前の、坂道。主人公の矢崎剣介が、あこがれの松井和子と出会うシーン。いかにも瑞々しい。この見開き2ページのテキストを「、」「。」「・」などで小ブロックに細分して、ブロックごとに読み手を交替して回し読みします。こんな具合です。

 矢崎さん/バス?/いや/歩き/松井は?/うちは/バス/バス/混むやろ?

 この部分はテンやマルが多いんですよね。それでもシングル読みだとまだ簡単なんだな。これをダブルにすると途端にむずかしくなる。私自身、ひさしぶりだったためか、うまく対応しきれず。むずかしかったですねー。またやりましょう。ちなみにここではBGMを用意しています。松井和子が「一番好いとる」というサイモン&ガーファンクルです。じつはこれのために、昨日ブックオフでこのCDを買ったんですよ。こういう、要らんところに手間がかかってるんだな。

写真  この「69」を踏まえてつぎの『クレヨン』です。画用紙に絵を描くことからはじめます。今回のテーマは17歳。矢崎剣介や松井和子のトシです。自分が17歳だったころの思い出をなにかひとつ、自由に画用紙に描いてください。私も描きます。松陰コモンズのこの大広間がそのまま大きな電子レンジになったと想像する。目盛りを「17歳」のところに合わせてチンします。うぃぃぃんと部屋が回転して、私たちの身体が分子のレベルで振動して、みんな17歳になるのだ、みたいなイメージです。今回はやっていませんが『エイジ』というゲームとコンセプトは似ています。描き上がった絵を互いに掲げつつ、各自がエピソードを語る。その、絵や語りのなかからキーワードを拾い出します。弓道部とか。ワープロとか。後楽園とか。そのキーワードを組み合わせて、最後に演劇作品を作りました。5分間ほどの、コラージュ作品の上演。誰のものでもない、けれど「私」のものでもある、17歳の初夏の物語ができあがりました。嘘なんだけどちょっとリアル。すてきでしたよ。

 演劇ワークショップの部分はこれでおしまい。みなさん、お疲れさまでした。アンケートに回答していただいている間、冨田くんと私とで『こめくらぶ』の準備です。休憩のときに炊飯器をセットして、ちょうどほかほかといい具合にご飯が炊けている。幸せ。

写真  「69」の矢崎剣介や松井和子にとって、あのシーンはやっぱり大切な思い出なのでしょうね。ひょっとしたら、サイモン&ガーファンクルを聞いたら、彼らはあの学校前の坂道を歩いたときの気分を思い出すのかもしれない。音楽が呼び水になって、ある時期の気分がよみがえってくることってありますよね。ドアが開くみたいに、思い出の世界が開ける。音楽がドアをノックする。そういう音楽をたくさんもっている人は幸せだと思います。サイモン&ガーファンクルは、じつは私にとっても呼び水なのです。ま、17歳ではないんですが。松井和子と歩いたみたいな、そんな思い出でもないんですが。作り手からすると、自分の作品がだれかの記憶の呼び水になるってすごいことだ。音楽じゃなくて私は演劇なんだけど、私も作り手である以上は、そういう呼び水になれたらすてきだなぁと思います。演劇で、演劇ワークショップで、それが可能だろうか。私になにができるだろう。

写真  17歳を選んだことは理由がないわけじゃないです。最近、私はちらほらと高校に授業をしに行きます。そうするとどうしたって自分が高校生だったころのことを考える。あんまり覚えてないんだよなぁ。少なくとも学校の授業のことなんてほとんど記憶に残っていないです。で。思うんですよね。きっと私の授業だって、20年たったら誰の記憶にも残っちゃいないだろう。高校生たちになにか影響を与えようとか教育しようとかなんて思わないけれど、でも忘れられてしまうのは残念だ。なにかの折にふっと思い出されるような、そんな授業ってできないものかしら。『こめくらぶ』でおにぎりをほおばりつつ、差し入れでいただいたワインを嗜みつつ、そんなような話をした覚えがありますが、ちがったかな。すでに記憶があいまい…。ほろ酔い。

写真  今日はありがとうございました。手作りの「△」のおにぎりは、形はきれいではなかったけど、本当においしかったです。不等辺△劇団の「△」は、おにぎりの形だったのだ。発見。私の固いアタマも、おかげですこし柔らかくなった気がします。たとえば広い調理室を借りてみたらどうだろう。演劇ワークショップを調理室でやってもいいのだ。今回の『こめくらぶ』は、これ自体は小さな一歩かもしれません。しかしきっと私にとって、ワークショップにとって、あるいは演劇というジャンルにとってさえ、大きな一歩なのだと信じたいです。今後もどんどん『○○くらぶ』を企画します。もちろん『こめくらぶ2』も。演劇のワークショップという枠を軽々と超えて、もっともっと広い世界に、一歩も二歩もふみこんで行きたい。どうぞご期待ください。今後もよろしくお願いします。不等辺△劇団WS管理部の未来はきっと、6月の今日の日差しのように明るくて、17歳のころの思い出のようにまぶしいです。

 不等辺△劇団WS管理部 林成彦(はやしなるひこ)


写真  今回は松蔭コモンズの和室の癒し効果で、とっても穏やかなワークショップとなりました。天気も良くて、とっても清々しい一日。はじめての参加の方が多くて心配でしたが、すぐに溶け込んで男6女2で片寄せあっていろいろ考えたり遊んだり。最後の「こめくらぶ」では、みんなでひたすらおにぎりづくり。初挑戦の林さんの緊張ぶりが印象的でした。笑


★アンケートより

写真 ○場所がとてもよく、リラックスしてできたと思います。
○ワークショップというものをまったく知らずに来たんですが、体を使ったり声を出したり意見を言い合うなど、初体験でおもしろかったです。
○日本家屋で演劇ワークショップをした経験がなかったのでとても新鮮。
○ゲームのなかにも芝居に活かせる要素が組み込まれているんだなぁと。
○「リーディング」が楽しかったです。
○大人数の「リーディング」をやったらきっと楽しいでしょうね。
○ゲームの説明などわかりやすくとっつきやすく進行してもらえたと思います。
○明るくてすぐにうちとける感じがしました。段取りもよく大好きです。
○今日初めて顔合わせをした人々を取り仕切るのはとても大変だと思うので、スッゴイなぁと思いました。
○今回はメニューがいつもと少しちがうということでしたので、いつもやっていることもやってみたいです

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