△ 不等辺ワークショップ第36回 (2006/02/25)


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写真  順番がまるで反対だけど、まずは打ち上げのことから入ります。今回は松陰コモンズが会場です。コモンズのときはいつもそう。そのまま大広間で打ち上げになだれ込みます。居酒屋で打ち上げるのとはゼンゼンちがう。なにせ安上がりだ。今回なんて割り勘で300円でした(松浦くん、買いもの上手!)。雰囲気ももちろんいいです。畳に新聞紙をたくさん敷く。缶ビールやらお茶やら食べものやらを広げる。みんなで輪になってくつろぐ。ワークショップそのままですね。打ち上げの半ば、私はそっと輪から外れ、みんなの様子をのんびり眺めます(じつは風邪気味のため、電池切れの状態だったのです)。私がいなくても、話が弾んでいます。こういうの、私はとっても心地がいい。みんなは初対面同士です。こうして盛り上がっているのは、ワークショップがうまくいった証しですね。よかったよかった。私は気分よく、ウーロン茶でひとり祝杯です。

写真  松陰コモンズをお借りするのは、つぎはたぶん5月かな。ワークショップ自体もさることながら、5月はぜひ打ち上げを楽しみになさってください。せっかくの大広間です。打ち上げにもなにかアイデアを加えたい。ねらいは打ち上げの「アート化」です。食べるアート。飲むアート。創造的な打ち上げ。これまでの打ち上げは、楽しいけど、でも普通の飲み会でしたよね。どっかり座り込んで、出されたものを食べたり飲んだりするだけでした。そういう受け身のものではなく、できれば参加型のもの。能動的なものにしたい。たとえばご飯をたくさん炊いておいて、みんなでおにぎりを作るとか。冬場は鍋ものとか。作って、みんなで食べる。そういうの、楽しそうでしょ? 午後からのワークショップで刺激された創造性が、夜の打ち上げでも活かされるといい。愉快な打ち上げのアイデアを募集します。コモンズの大広間ならではの、楽しい打ち上げにしましょうね。

写真  さて。主なゲームを振り返ります。『ピカソ』では画用紙とクレヨンを用意します。ペアになった相手と向かい合う。お互いに相手の顔を見たまま、似顔絵を描きます。視線は顔にフィックスです。手元は見ない。画用紙も見ない。だれもがモデルでありつつ、同時にピカソでもある。だれでもピカソ。さすがにピカソ。個性的な絵がたくさん描き上がりましたね。へぇ〜、みんなけっこう顔がちいさいなぁ。画用紙はもっと大きいですよ。うまく描くコツを考える人がいたりとか(クレヨンをいちども画用紙から離さないのがいいそうです)。おもしろいものですね。占いみたいに、絵には描き手の性格が表れるのかな。

写真  さらにペアを替えて、簡単な自己紹介をしました。時間は1分間。テーマは「最近腹が立ったこと」です。お互いに腹を割って(?)話す。そしていわゆる他己紹介(私のワークショップではこういうの、はじめてですね)。壇上に立ち、ピカソが描いた絵を掲げる。自分の顔じゃなくて、相手の顔。相手に成り代わって、あたかも自分の話のようにスピーチします。どんなことに腹を立てているかで、「その人らしさ」がずいぶん伝わってくるものですね。アルバイト先のできごとやら、職場でのことやら、友だちとのことやら。自分が腹を立てた話を相手が聞いてくれる。その話を相手が自分の代わりにスピーチしているのを聞く。ダブルでココロが癒されませんか? どうかしら。

写真  メニューには載せていませんが、アドリブで『ライン・アップ』をちょこっと入れています。『ジャグリング』のつぎに、2本だけね。1本目は「小指ライン」。右手の小指を見比べて、その長さの順に1列に並ぶ。男性と女性がけっこう入り混じりました。意外だ。これ、やったあとで気づいたのですが、全員ちゃんと小指のある方たちばかりでよかった…。もう1本はおなじみの「バースデイ・ライン」。2月25日から数えて、誕生日が早く来る順に1列に並ぶ。これは相談なしです。結果、今回のメンバーで早生まれは私(3月30日生まれ)ひとりだけだということが発覚。それってめずらしくない? 「バースデイ・ライン」を作ったあと、そのまま『バースデイ』に進みます。プレゼント交換のゲームね。スキのない段取りだなぁ。我ながら。

写真  休憩中、私は画用紙にカタカナで『マルマルマル』の歌詞を書く。これを壁に貼り出して一堂注目。輪になって座り、声をそろえて歌いつつ、簡単なフリを覚えます。1番から3番までは、いわばショート・プログラム。規定されたフリをなぞります。4番からは自由演技です。各自でフリを作る。さらに3人ずつのグループになり、各自のフリをもちよって、グループとしての作品にします。これ、グループが5つあればよかったね。輪が5つ。五輪。トリノ。輪をひとつに戻し、全員で1番からさいごまで通して閉幕です。

写真  歌って身体も動かす。なかなか気持ちがいい。座ったままだけど、あれはダンスですね。慣れないうちは、壁の歌詞に目が行きます。そりゃそうだ。歌詞がアタマに入れば、フリに関心が向く。自分の手元やら、ひざを目で追います。大事なのはさらにその先です。目が手元を離れ、顔が上がり、周囲のみんなとアイ・コンタクトがとれましたか? そこがこの『マルマルマル』のポイントです。ことばは、使えませんね。歌詞が決まっているから。身体も使えないですね。フリが決まっているから。だから顔で、目で、やりとりをする。このレベルになれば本当に楽しいですよね。

写真  じつは俳優の演技もそれとおなじです。慣れないうちは脚本に目が行く。セリフに気をとられる。セリフが入れば、自分の演技に関心が向く。自分の動きや言い回しが気になる。その段階をすぎて、ようやく共演者とコミュニケーションがとれるようになります。今回のワークショップは、最初の『ウォーキング』から『マルマルマル』まで、アイ・コンタクトが求められるものばかりでした。ここまでが前半。きちんと段取りを踏んで、さぁ後半です。

写真  ダイソーで売っている色画用紙を最近の私はよく使います。12枚セットでもちろん100円。今日はこれの1枚1枚にあらかじめセリフをひとことずつ書いておきました。『アシスト王』は、グループによるインプロ(即興)です。打ち合わせなしで、状況を作り、会話を作ります。課題は、色画用紙に書かれたセリフをかならずどこかに織り込むこと。順不同。なるべくなら、そのセリフを自分で言うのではなく、相手に言わせるようにもっていく。ここではそのことをアシストと呼びます。サッカーで言えば、シュートを放つのではなく、センタリングを揚げる。ラストパスを出す。そんなことを目標にします。私の用意したセリフは以下のとおりです。

写真  このなかの5つが任意に選ばれます。2グループに分かれてプレイ。見ている側の人たちはひとり1枚ずつセリフを選ぶ。彼らは審判です。自分の選んだセリフについて、言ったのは誰か。アシストしたのは誰か。きちんとジャッジして、覚えておく。いやぁ、このゲームはおもしろかったなぁ。アシストした人がつぎつぎに退場していく(場からいなくなってしまう)ルールは、特にエキサイティング。べつに勝ち負けではないので、会話ゲームとして楽しんでいただければOKです。どうすればめざすセリフのほうに会話が向かっていくか。どういう状況を作るか。個人の働きかけのみならず、全体の協力がきっと重要です。共演者とのコミュニケーションがはかれましたかしら。

写真  用意したセリフには出典があります。じつはコミック作品です。フキダシのなかのセリフをひっぱってきました。さそうあきらの「コドモのコドモ」、岡本蛍の「おもひでぽろぽろ」の2冊から。ぱらぱらと眺め、あまりクセのなさそうなセリフをチョイス。ご存じかしら、どちらの作品も主人公は子供たちです。子供たちと周りの大人たちとのやりとりを描いたもの。そのため上記のセリフにも、子供の気配というか、子供の「気分」が感じられますよね。そこに気づけたかがポイントです。

写真  子供たちが登場する状況を作れたか。子供になれたか。だれかが率先して子供の役になってしまえば、比較的スムーズにどのセリフも導かれるはずです。重要なのは状況です。全体です。そのなかで自分はなにができるかです。全体への貢献です。サッカーとおなじですね。ヒントは前半にやった『バースデイ』でした。あのなかで、ちっちゃな子供になりましたよね。お母さんに誕生日のプレゼントを渡す。あれが伏線でした。我ながら、スキのない段取りだ!

写真  アシスタントを紹介します。松浦雅史くんです。彼は『ペンキ屋』の達人。凄腕のペンキ屋さんです。私はもう覚え切れないぐらいたくさんの方々と『ペンキ屋』をやりました。松浦くんの腕前は、私の知るかぎり(ということは、この地球上で)1番ですね。彼には「ペンキ王」の称号をささげたい。初代王者。今回はペンキを4部屋に塗っています。もちろんキング松浦にもご参加いただいています。用意したBGMは、荒井由実の「卒業写真」。尺八と筝による「砂山」。二ール・ヤングの「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」。部屋ごとにそれぞれのドラマがありました。4部屋目は別れと旅立ちのドラマでした。私の一存でこれは長編化。「わ」のつぎに「あ」に戻って、2部屋分のドラマを私は堪能。キング松浦は今回もさすがです。出るだけじゃなくて引く。時にはあえてセリフを言わず、周囲の人物を立てる。部屋は充実する。すごいなぁ。いつもアンケートでは「印象に残った参加者」をお尋ねしています。これ、今回は松浦くんの名前のオンパレードでしたよ。そんな松浦くんが、前回ワークショップの『ごみ問題』でドツボにはまっていたのが私には不思議だ。松浦くん。つぎの目標は「ごみ王」だ。めざせ2冠王。

写真  ご参加くださったみなさん。ありがとうございました。お疲れさまでした。次回のワークショップは3月25日(土曜日)。会場は八幡山です。募集の告知をすでに劇団サイトにアップしています。どうぞご覧ください。また3月の「演劇倶楽部」は18日(土曜日)に。やはり八幡山でおこないます。いまはグリングの「海賊」のワン・シーンをテキストとして使っています。よろしければ遊びにいらしてください。詳細はおってブログにアップします。

 アシスタントの松浦雅史くんは自分の劇団をもっています。劇団正義の味方。松浦くんが代表だそうです。その公演が3月11日からはじまります。阿佐ヶ谷のアートスペースプロットにて。興味をおもちの方はどうぞ足をお運びください。松浦くん、公演直前の忙しい時期に私のわがままを聞いてくれてありがとうございました。公演の成功を祈っています。ぜひまた稽古場でいっしょに遊びましょう。

 不等辺△劇団WS管理部 林 成彦(はやしなるひこ)


★アンケートより

写真 ○会場の雰囲気がいいです。
○松陰コモンズ、みんなの雰囲気、林さんの司会、ともによかった。
○とても良い雰囲気でした。また来ます。
○一日のなかでも裏テーマがあるのは気がつきませんでした。
○「マルマルマル」が楽しかった。
○「マルマルマル」の歌詞の意味が気になります。
○興味を感じたのは「マルマルマル」と「アシスト王」。またやりたい。
○「アシスト王」とか、きわめたいです(笑)。
○「アシスト王」というゲームを体験して、学校でやったことに似てはいたのですが、そこから様々なことを学べました。
○「アシスト王」での各自の創造性がすばらしかった。
○全部興味を感じました! というか「アシスト王」と「ペンキ屋」の準備のゲームな気がして。いちばん興味をもったのは「アシスト王」と「ペンキ屋」なわけですが、どれも必要なゲームだった! 楽しいのも必要なことだなぁなんて思いました。
○もっともっと色々やってみたいです!
○わっかりやすい説明と、すばらしー段取り、さすが林さんです!
○わかりやすく、ポイントでは注目をひくように話していただけたので、スムーズに入れました。
○時間配分がよく、最後まで一通りゲームができてよかった。
○学校じゃ味わえない演劇のダイゴミを思い出させていただきました。
○継続してワークショップがおこなわれていることがすばらしいと思います。
○初めて顔を合わせた人と、帰るころにはそんな感じがしなくなっているのが、素敵で不思議です

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