△ 不等辺ワークショップ第37回 (2006/03/25)


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写真  居酒屋のうちあげのあと、いつもアシスタントの方とコーヒーを飲みに行きます。コーヒーを飲みながら、一日のワークショップを振り返る。この「コーヒー・トーク」の時間を、私は楽しみにしています。今回のアシスタントは冨田くんです。今日みたいに天気がいいと外に出てみたくなりますねーと冨田くんが言いました。本当にそうだよなぁと私も思いました。八幡山の会場は、道路に面した側の全面が窓になっています。今日はとってもいいお天気。春らしい日差しが部屋にたっくさん注ぎ込みました。それだのに私たちは部屋のなかだけで遊んでいる。たしかにもったいないことだ。

 ワークショップは今回が37回目でした。ですが、いままで一歩だって会場の外に出たことはなかったです。ぜーんぶ、すべての回のすべてのメニューを室内でやっている。演劇って室内でとりくむものだ。そーゆーインドアな先入観が私にあったのかしら。次回以降はひょっとするとお散歩テキな要素をもつゲームも導入されるやもしれません。お天気次第ですけどもね。冨田くんのひと言がヒントになりました。可能性が広がった。「コーヒー・トーク」は楽しい。

写真  定刻どおり午後1時にワークショップをはじめます。かっちり定刻。じつはいままではややルーズでした。遅れてくる方を(何分間か)待つことが多かった。気を揉みながらね。でもその考えを私は改めましたよ。遅れる人よりも、時間までに来てくださった方を尊重するべきだ。当たり前ですよね。演劇って5分押しではじめるものだ。そーゆーだらしない習慣がこの業界には蔓延しています。それはよくないね。これからは新幹線のように、私のワークショップは定時にスタートします。発車のベルを鳴らそうかしら。「参加のしおり」といっしょに「ワークショップ乗車券」とかもお送りしようかしら。ワークショップは1ヶ月に1本しか走らない特別列車です。そう思ってくださるとうれしい。乗り遅れないでくださいね。

写真  と。時間どおりにはじめたはいいですが。遅れてくる人がまだ何人もいるんだよなぁ、と思いつつしゃべっていたためか。私のご挨拶のトークが、いつもとくらべ上の空な感じでした。ごめんなさい。あとで冨田くんに笑われてしまったほどだ。よくないね。やると決めたらきちんとやる。私もきちんとやりますので、みなさん。気持ちよく全員が顔をそろえてスタートしましょう。よろしくお願いします。(あらかじめ2時とか3時とか、遅れてくる旨の連絡をくださった方はもちろん別です)。

写真  今回のいちばんの目玉は『エイジ』。私は見ていて興奮しましたもの。なんだかピーター・ブルックの演出する舞台を見ているようでした。舞台に前もなく奥もなく。登場人物に主役もなく脇役もなく。はじまりもなく終わりもなく。あちらこちらでさまざまなやりとりが自然発生して、舞台全体としてひとつの「エイジ」の世界になっている。それがうつろう。人間たちの一生がパノラマのように展開して、さいご一周して元にもどる。すばらしかったです。演劇ってすごいなぁと思いましたよ。

写真  『エイジ』は「ある年齢の自分」になってみる、年齢ごっこです。「5歳」からスタート。全員でその年齢になってみます。身体の使い方や声の出し方、表情、もちろんしゃべる内容など、いろいろ工夫してみる。最初の『ウォーキング』のときの要領で、なるべくいろんな人と絡んでみる。コミュニケーションをとってみる。「10歳」「18歳」などと私が黒板に数字を書いていきます。グローイング・アップ。全員でいっしょに年齢を重ねる。既知の世代を思い出したり、未知の世代を想像したりします。「95歳」まで進み、さいごは「5歳」にもどりました。自分の好きな年齢をひとつ心に決めて、それを演じ、ペアを探したりもしましたね。足して100歳になるペア。まぁ、あれは余興です。『エイジ』のキモは、やはり全員で足並みをそろえるところですね。

 今回のワークショップでは、参加者のみなさんの年齢がタテに30歳ほどの幅がありました。これを、全員が「タメ年」になって、仲間になったりケンカしたりうわさ話したりしながら、いっしょに成長していく。それって、もう。体験そのものがアートなんだと思います。遊びでありながら。想像するにピーター・ブルックもテアトル・ド・コンプリシテも、こういう遊びから作品を作っているのでしょう。もう気分はロンドンですね。八幡山の光景が私にはロンドンに見えました。行ったことはないけども。

写真  順番は前後しますが、恒例の『ペンキ屋』。今回は3部屋を塗っています。うち2部屋でBGMを用意。ここでも『エイジ』を踏まえてみる。あらかじめ「この部屋ではロー・ティーンで」とお願いしました。10代の前半。ペンキ屋の年齢を設定したのははじめてですね。そのうえでBGMとしてベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」をかけてみる。いやぁ。なるほどね。私テキには、冒険に出るというか。なにかを探しに行くような話題になるかしらと期待した。期待するじゃないですか。あっはっは。なにせ最初のセリフが「愛し合ったこと、ある?」でしたからねー。そこから下半身系の話題にまっしぐらに会話が弾んでいった。なるほどなぁ。あっはっは。思春期真っ盛りだ。もう1曲はフランク・シナトラの「マイ・ウェイ」でした。結果として「胸騒ぎ(←ムネさわぎではない)」と「落ち着き」というか。「春」と「秋」というか。部屋ごとに対照的なトーンの会話になりました。おもしろいですね。

写真  参加者の個人名(本名)をこのレポートでは原則として書きません。これがはじめての例外です。前回アシスタントの松浦くん。言わずと知れた「ペンキ王」です。彼が今回は参加者として加わってくれました。王はさすがでござる。私がBGMをかけると、彼は「なるほど、こういう曲で来ましたか」みたいな感じで、いい笑顔でまず私を見るんだな。ここにことばのやりとりはないんだけど、明らかに何らかのコミュニケーションがあり、私は楽しかったです。

写真  『ジャグリング』。今回はみなさんに「自分を語るキー・ワード」をお尋ねしました。自己紹介をするに当たって、いろんなキー・ワードが浮かびますよね。たくさんあるはず。私だったら、たとえば「名古屋」とか(出身地)。「自転車」とか(生活必需品)。ま、なんでもいいんですが、自分を語るための切り口をひとつだけ選んでもらいました。挙がったのが、「留年」、「サザンシアター」、「ドラえもん」、「熱燗」、「イシ子」、「ペプシ」、「ブルドーザー」、「世田谷」、「小とど」、「ねこバス」、「木造アパート」、「缶コーヒー」(←私だ)です。気になりますよね。なんなの? どういうことなのって。でも自己紹介はしません。ここでは、これらのキー・ワードを呼び名として使います。この「キー・ワードをひとつ決める」っていうの、なかなかおもしろいです。呼び名を本人と結びつけて覚えやすいですし。今後もいろいろお尋ねしてみようかな。

写真  『ネーム・バレー』ではその呼び名をボールの代わりに使います。声のバレーボール。まず2チームに分かれる。チーム名は各キャプテンの出身地から、片や「東京代表」。片や「大阪代表」。はからずも東西対決が実現です。たぶん「大阪代表」チームに大阪出身の方はひとりしかいなかったと思います。でもここはイマジネーションで。大阪出身のキャプテンとともに、今日だけは大阪府民の期待を一身に受けて、大阪のためにプレイしてください。「東京代表」チームも同様です。ところでバレーボールって、いま「サーブ権」って、ないんですね! ルールが変わって、完全ラリーポイント制になったんだとか。そんなことはつゆ知らず。サーブ権が激しく移動する激戦の末、「東京代表」が「大阪代表」を破りました。審判の私も声を嗄らすほどの大熱戦。選手のみなさん、お疲れさまでした。敗れた「大阪代表」チームには恒例の罰ゲームを。選手全員で声をそろえてウタを歌います。「ドレミのうた」。選曲がいいし、歌もみごとでした。みんないい顔で、みんないい声が出ていた。聴いている「東京代表」チームが手拍子で応じたのも、とってもよかったです。拍手拍手。ナイス・アクション。ナイス・リアクション。

写真  『シェイプ・アップ』では6対6に分かれ、相手チームの作ったオブジェを観察して再現したり。ラストにはいつもの『アフター・トーク』に代えてもういちど『ジャグリング』をおこなったり。内容にいっそうのバリエーションを加えつつ、37回目のワークショップも無事に終了しました。ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。お疲れさまでした。ぜひまた遊びにいらしてくださいね。

写真  次回のワークショップは4月22日(土曜日)。会場は(あたかもロンドンの)八幡山です。いつもより長めに時間をとりました。余裕をもって、のんびりじっくり演劇で遊ぼうと思っています。ぜひ肩のチカラを抜いて、遊びつつ、舞台の上だけではなく、日常生活の諸場面でも役に立つような「演劇のワザ」をたくさん見つけてください。「俳優を目指さないワークショップ」です。どうぞお楽しみに。

写真  ところで。「いいワークショップ」と「わるいワークショップ」というものがあるとします。どういう(演劇)ワークショップがいいワークショップだと思うか、どういう(演劇)ワークショップなら参加したいと思うか。参加者のみなさんにお尋ねしてみました。箇条書き&自由記述の方式です。アンケートのご協力ありがとうございました。たいへん参考になりました。これについて「不等辺演劇倶楽部のブログ」に簡単な記事を書いています。よければご覧になってください。(あなたはどんなワークショップが「いいワークショップ」だと思いますか?)

写真  最後に。アシスタントの冨田くんをご紹介します。「コーヒー・トーク」でたっぷりお話ができて、私はとってもうれしいです。たくさんアドバイスをもらいました。私のワークショップについて、うれしい言葉があり、私は泣きそうになったりもしました。冨田しのぶさんは前回アシスタントの松浦くんとおなじ劇団の方です。劇団正義の味方。先日は公演お疲れさまでした。阿佐ヶ谷の劇場に公演を観に行った日のことは、今年の3月のいい思い出になっています。お忙しいところ、一日おつきあいくださってありがとうございました。ぜひまた稽古場で遊びましょう。今後もよろしくお願いします。

 不等辺△劇団WS管理部 林成彦(はやしなるひこ)


写真  今回はアシスタントとして参加したので、「じぶんがフルに楽しむ」といういつものスタンスではなく、「楽しんでいるみなさんの空気に触れている」、というあたらしい感じの体験でした。

 こどもが公園で遊んでいるのを、にこにこと見守るお母さんのような気分…(?)。

 あまりアシスタントとして機能していなかった気もしますが、こどもに戻ったみたいにはしゃぎまくるみなさんの姿をたくさんカメラに収めることができて、とっても幸せな時間でした。

 …次回からまた、こどものようにみなさんのなかではしゃぎたいな、とも思いましたが。

 37回ワークショップアシスタント 冨田しのぶ


★アンケートより

☆雰囲気&内容について

写真 ○童心にかえることができてよかった。
○わきあいあいでよかったです。
○脳と身体の連動がうまくいかなくなった今日この頃、リフレッシュさせていただきました。
○かなり元気のいいメンバーだったので盛り上がってよかった。
○最初は緊張しましたが、身体を動かしているうちにそんなことは忘れました。
○どんな相手でも否定しない楽な雰囲気が好きです。
○初めて参加させていただいたのですが、みんなで遊んでいるうちにすぐになじめて、和やかな雰囲気でよかったです。
○重力の問題はあまりにも難しすぎるのでは?
○エイジとネーム・バレーがたいへん楽しかった。
○エイジは難しかった。
○子供っていいなぁ。
○ネーム・バレーはおもしろかった。
○ネーム・バレーはコミュニケーションをとりやすく楽しかったです。
○ネーム・バレーはおなじチームの人たちと、今日初めてお会いしたとは思えないほど盛り上がってしまい、とっても楽しかったです。
○ネーム・バレー、自分も大きい声が自然と出ていてビックリ。
○他のプログラムもやってみたいです。

☆リーダーについて

○たいへん円滑に進行されたと思います。用意されたメニューも適切でした。
○スマイリーで、説明もわかりやすかったです。
○説明、すごくわかりやすかったです。
○丁寧すぎるところが場数を踏んでいるなぁと思いました。
○目を大きく開いているので表情がすてき。
○林さんのリーダーとしての手腕にはいつも感心しています

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