△ 不等辺ワークショップ第32回 (2005/10/29)


トップページ > ワークショップ > 第32回

<前一覧次>

写真  受付をすませて、着替えもして、ワークショップがはじまるのを待っている時間。これはなかなか気詰まりなものです。周りは初対面の人ばかりだし、なにをやるのかもわからないし。緊張しますし、不安もありますよね。早く来たら、あとからあとから知らない人が来るんだもの。で、入ってくる人たちも緊張と不安で、表情が硬いですし。ストレッチとかしていても、落ち着かない時間をすごすことになるでしょう。

 ちなみにリーダーである私自身は、不安はありませんが、やはり緊張はします。どんな方が来てくださるのか、私も知らないですから。ま、早くはじめてしまってね。はじまってしまえば、あとはもうリーダーの腕次第というか。不安や緊張を材料にして、会場の雰囲気をどう作っていくのかは、リーダーの「作品」みたいなものです。そんなものだと思って、安心して「不安」になり(?)、安心して「緊張」してね(?)。私にまかせてね。

写真  さぁ今日もやるぞと思い、見渡すと。槙原敬之と中島美嘉が楽しそうにしゃべっている。なんだ知り合いだったのか、と思って尋ねてみたら「いま知り合いました」とのことでした。まだワークショップがはじまっていないのに、もう知り合ってしまったか! それは頼もしい。今回は、はじめっから全体の雰囲気がやわらかかったように思います。私としては、これはやりやすいです。いやホント、今回は私はなにもしなかったような気さえする。私個人は、ひさしぶりに八幡山に戻ってきたこともあり、初心に還ってきちんとやるぞと、じつはいつも以上に気持ちをひきしめて臨んだのです。けれどはじまってみたら、私も純粋に遊んじゃったなぁ。

 会場に集まってくださったのは、上記のふたりのほか、佐々木蔵之介、松田優作、吉田拓郎、妻夫木聡、BoA、木村拓哉、市川染五郎、伊東四郎のみなさん。リーダーを務めたのは私、スガシカオ。アシスタントはクレオパトラ。30分ほどおくれて、ヒットラーが会場に現れました。これで合ってるか? 私の記憶が正しければ、これで全員集合です。なんだかこの顔ぶれで「We are the world!」でも歌いたいね。

 主なゲームを振り返ります。『ウォーキング』のなかの、平面シーソー。覚えていますか? あの、300キロのボールをもった人が走り回るというゲーム。あれ、楽しいですね! 自分で言ってれば世話はないですが、ワークショップで試したのは初めてでした。やる予定でもなかったのに、勢いでやってみた。やはり全体の雰囲気がすでにやわらかかったためでしょうね、無理なく未知の領域に入って行けました。私はうれしい。さんざん走り回って、いちばん息が切れていたのは私だったように思います。

写真  『ジャグリング』の2個目のボール。名古屋のときと同じく、今回も「好きな有名人」から呼び名を考えます。挙がった名前をそのまま呼び名にするわけじゃないのがミソ。順に、マッキー(槙原敬之)、しまっち(中島美嘉)、ピスタチオ(佐々木蔵之介)、ジーパン(松田優作)、タク(吉田拓郎)、サトシ(妻夫木聡)、ボー(BoA)、キムラ(木村拓哉)、ソメちゃん(市川染五郎)、イト(伊東四郎)、シカ(スガシカオ)、パトちゃん(クレオパトラ)、閣下(ヒットラー)が呼び名に決まりました。

 ここでは「タク」といえば吉田拓郎のことで、木村拓哉ではない。ちょっと意外だ。佐々木蔵之介が「ピスタチオ」と呼ばれるあたり、演劇のワークショップだなぁとしみじみ思う。惑星ピスタチオ。スガシカオが「シカ」になるなら、クレオパトラは「トラ」でよかったような気もするな。

 呼び名を決めるだけのことに時間をかけすぎかしら。でも私はこれ、とってもおもしろいと思います。車座になって好きな有名人の名前を挙げていくのは、ちょっとした自己紹介みたいなものですね。差し支えのない範囲の自己開示。呼び名をつける役目はアシスタントにまかせました。そうすると自然と、好きな有名人をみんながアシスタントに向かって答える。これもよかったです。リーダーだけがずっと中心にいるわけじゃないこと。自分だって中心になりうること。そんな、この場の自由さが感じられたんじゃないかな。どうかな。

写真  『バースデイ』の最後のルール。好きな人のことをちらっと見て、ほかの人のもとにプレゼントをもっていく。これがなんとも、難しいしおもしろいですね。自分の(熱い)視線に、相手が気づいてくれないことがある。その隣の人が、自分のことを見たんだと勘違いするようなこともある。それをまた第三者が見て誤解することもある。中学のときも、高校のときも、最近は小学生でもそうなのかな、こういうことに目ざとい人もいれば、疎い人もいる。そのまんまだ。難しいし、おもしろいですよね。

 『神様』『ごみ問題』『ペンキ屋』はどれも私のワークショップの定番。野球でいうクリーンアップ・トリオです。得点源(?)。『バースデイ』の、好きな相手にプレゼントを、の体験が『ごみ問題』に連なり、おなじ『バースデイ』の、なんだか普段の生活の縮図だ、みたいな感覚が『神様』に連なりますね。そう考えると今回はきれいな流れだったなぁ。すこしずつ展開している。

写真  『神様』では反省点がひとつ。ルールの説明のとき、神様のことを「オニみたいなもの」と私は言いました。これは誤解を招きかねないな。このゲームは鬼ごっことはちがいます。神様を捕まえることが目的なのかというとちょっとちがう。神様さがしをしながら、自分なりに感じることを素直に受け入れるというか。ああ、なんか人生の縮図だなぁみたいなことを大きく感じてくださればそれで十分です。

写真  たとえば。だんだん周りの人が少なくなっていって、とうとう自分も神様を見つけて目を開くと、みんながそこにいる。私は実人生でまだ死んだ経験がないですが(当たり前ですが)、将来自分が長生きをしたら、そんな情景もリアルなものに思われるのかなぁ。大げさにいえば「タイタニック」のラスト・シーンがそんな感じでしたよね。あの、ディカプリオが立っていてこちらを振り向くシーン。

 セリフ、その言い方、表情、身振りなどで「愛」の感情を出題者に伝える『ごみ問題』。アンケートでも、このゲームについてのコメントがいちばん多かったです。これはもっともっとルールにバリエーションを加えることのできるゲーム。工夫をこらして、また楽しみたいと思います。

 あとで、今日のテーマは「愛」だったんですか? と尋ねられました(BGMも小沢健二の「愛し愛されて生きるのさ」でしたしね)。いえ、特に。テーマは考えていなかったです。ただ「演劇」を遊び道具にして、みんなで遊べればいいなと思っていただけ。べつの答え方をすれば、今回だけじゃなく毎回「愛」がテーマです。だって、いつもワークショップはこんな感じですから。テーマが「愛」だと感じてくださったなら、それが正解。

写真  今回のワークショップにもしテーマがあったなら、「愛」もさることながら。そうですね。「置かれる立場によって感じること(見えるもの)がちがう」というののほうが大きいかな。『神様』では、いつ神様を見つけるか、その順番によって。『ごみ問題』では、出題者か回答者かの立場によって。『ペンキ屋』では、どのタイミングで部屋に入るかによって。それぞれ感じることや見える世界がちがったはずです。どのゲームも2回以上くりかえしたのは、ぜひちがう立場でちがう経験をしてほしかったからですし。どのゲームでもコメントを求めたのは、自分とはちがう立場の人のコメントから想像をふくらませてほしかったからです。どうだったかな。

 ご参加くださったみなさん。ありがとうございました。お疲れさまでした。次回のワークショップは11月26日(土曜日)。会場はおなじみの松陰コモンズです。畳敷きの部屋ならでは、11月下旬ならではの内容を考えます(これから…)。どうぞお楽しみに。

写真  今回のアシスタントをお願いしたのは中村麻美さんです。お忙しいところ、一日おつきあいいただいてありがとうございました。中村さんは世田谷パブリックシアターの方です。パブリックシアターの企画するさまざまなワークショップに中村さんはスタッフとして関わり、私なぞよりずっと多くの場数を踏んでいます(きっと修羅場もくぐっているにちがいない)。アシスタントとして、たいへん頼もしかったです。ワークショップや中村さんに興味のある方はどうぞパブリックシアターのワークショップに。みたいなご紹介をきちんとするつもりでいたのに、うっかりすっかり忘れていました…。たいへんごめんなさい。反省。ワークショップ後のミーティングで、パブリックシアターのワークショップと比べてのコメントが聞けたことも、私にはとってもおもしろかったです。感謝。

 打ち上げの席でのこと。いくつかのワークショップに参加してみたという方が、「ここ(不等辺)のは有名なワークショップなので参加してみました」と言いました。私は聞き間違いをしたのだと思って、聞き返したらおなじ返事でした。有名なワークショップ??? それはやっぱりなにかの間違いなのでは…。でもありがたいお言葉です。『ごみ問題』的にいえば、ほめ言葉だし、はげまし言葉だし、いたわり言葉でもあります。お言葉にチカラを得て、今後もますます精進します。ぜひまた遊びにいらしてください。

写真  以前の、ある参加者からいただいたメール。彼は40代の男性で、ワークショップのレポートをご家族でご覧になって、特に自分の写っている写真で盛り上がったのだそうです。たぶん普段のお父さんとはちょっと様子がちがったのでしょうね。その、写真を見て家族で盛り上がっている光景を思い浮かべてみて、私はじんわりとうれしくなりました。私のつたないワークショップが、それでもご家族に話題をひとつ提供できました。そういうのって、ステキなことだなぁと思うのです。本当にうれしい。そのメールをいただいたのはじつは1年も前のことなのですが、いまでも私にとっていちばんのほめ言葉、はげまし言葉、いたわり言葉です。そう思うと、私は、このワークショップが有名なものであるよりも「話題のワークショップ」でありたいです。家族の話題になるような。話題を持ち帰っていただけるような。そんな。ね。

 不等辺さんかく劇団ワークショップ管理部 林成彦(はやしなるひこ)」


★アンケートより

☆雰囲気&内容について

写真 ○おもしろかった。なじめました。簡単だけど意味のあるものと思いました。
○なごやかぁな感じでよかです。
○ぜんぜん堅くなく、林さんの説明もわかりやすく、ひとつひとつのゲームにつき、自然と心から笑顔になれるものでした。
○年齢からも本当にいろんな人がいて、みんなを見ているのがすごく楽しかったです。もう少し時間があったらなぁ。もっとみんなと仲良くなりたい。
○心身ともにリフレッシュできました。頭の体操と反射神経の訓練になりました。自分のボキャブラリーを確認する作業にもなりました。
○全員が初対面で、年齢の幅も広いですが、目を合わせたり、相手に触るという行為で、そこから自然と生まれるコミュニケーションは、会話以前に大切なことだと思いましたし、何か感じるものがたくさんあり、よかったと思いました。
○「バースデイ」とか好きでした。相手が喜んでくれるコト(モノ)が、みんな思いつくコトが各々で、楽しかったです。人柄が出ますね。やさしい人とか楽しい人とか。
写真 ○「神様」は、最初に神様以外目をつぶっているので、目をつぶっていても何をしてもいい気分になります。
○「神様」。五感六感の使用。こんどは神様をしたいです。
○「ごみ問題」が良かったです!! やっぱり愛があるものは良いですね!!
○「ごみ問題」は自分の日常を省みる機会になったような感じで、今日から鏡を見て表情を作る練習をしようと決意しました。
写真 ○「ごみ問題」、おもしろかったです。どうやったら伝わるかなとか、たくさん考えました。
○「ごみ問題」がおもしろい。やはりオーラや自分の表現が思い切りが足りないと、これだけの大人数の役者(?)がいるなかで、目を引かないと思った。前に立って見るとよくわかったがOさんはよくアピールしていた。
○「ごみ問題」。伝えることの大事さと魅力。
○「ごみ問題」はみなさんの表現が詰め込まれて見れて、おもしろかった。
○「ペンキ屋」はうまく会話がつながったときが気持ちいいです。
○「ペンキ屋」。いろんなコミュニケーション方法があるなかで、実際に会話で楽しめたのが良かったです。

☆リーダーについて

写真 ○目が大きいので、アイ・コンタクトの大切さを言われるのは説得力がありました。
○声がすてきでした。目が大きかったです。まゆげがよく動いていました。
○優しすぎたと思います。気を遣いすぎかと。
○とてもわかりやすく丁寧で、一人一人のことをよく見てくださっているなと感じました。
○楽しい方です、林さん。普通の人っぽくて(笑)。

☆その他

写真 ○友人に聞いて、演劇というかいろいろ楽しくできるところだということで、それはその通りだと思いました。ちょっと芝居くさくなるものもやってみたいなぁと。
○大人数で何かを作る、するといったプログラムがあったらなぁと思いました。
○芝居の演技にのっとった内容だと思います。
○足元は靴か裸足か統一したほうがよいかもしれません。
○鬼ごっこをするやつは、危ない、と思いました(笑)。
○はじめに時間がかかっているので、後のゲームをもっとやりたい。
○いろんな人が集まって、それぞれの個性があって、楽しい時間をすごせました。やりきれなかったゲーム、またやりに来たいです。
○ひとつひとつのゲームにつき、だんだんレベルを高くしていくのはとても楽しかったです。
○もっともっとワークショップの回数が増えると良いです!! 特に「演劇倶楽部」のほう。
○インプロをやっていて、最近はずっとインプロのワークショップに通っていたので、ちょっと違うものをと思って参加しました。でもやっぱり基本は同じなんですよね。楽しかったです

<前一覧次>


トップページ > ワークショップ > 第32回