△ 不等辺ワークショップ第30回 (2005/08/27)


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写真  松陰コモンズの大広間に、私は午前のうちに入ります。先日の「演劇倶楽部」のときと同じく。会場にCDラジカセをもちこんで、スガシカオの「夏陰(なつかげ)」に聴き入っている私である。本当にもう、うっとりとしてしまう。夏も終わっちゃうなぁ…。うっとりというか、しんみりというか。この部屋で、外の木々や草花を眺めながらひとりで耳をすませていると、僕らが生きてく理由なんてちっぽけな答えしかないって気がするんだ(「、」からあとは「夏陰」の歌詞をただ引いてみただけです)。季節を身体全体でいま感じている、そんな気がします。夏が終わっちゃうんだなぁ。それを肌で感じる。肌で感じさせてくれる部屋ですね。

写真  私はこの夏をどうすごしただろうか。参加者のみなさんは、どんな夏をすごしたのでしょうか。あらためて考えてみると、それぞれがそれぞれの夏をすごして、今日この大広間に集まるわけです。持ち込み自由。「夏」のよせなべ(?)。「夏」チャンプルー(?)。なんだか身体によさそうじゃないか。そしてそれぞれの夏がもうすぐ終わろうとしている。今回のワークショップのテーマは必然、「夏」ですね。場所柄季節柄、このそれぞれの夏をつかのま満喫して、そして秋に備える。参加者のみなさんに満喫していただけたなら幸いです。

写真  じつはこれを書いているいまも「夏陰」を聴いています。聴きながら、この原稿を書きながら、今回のワークショップのキャッチコピーを、いま決めました。「君に見せたい夏がある」。かっこいいでしょ? ちょっと照れるけど。いや、これは高校野球の、今年の大会キャッチコピーなのだが、今回のワークショップもまさしくそんな具合だったなぁと。いま思った次第です。君に見せたい夏が、ある?

 『クレヨン』

写真  今回のメニューのメインディッシュ。もう夕方の時分。この部屋にもこの顔ぶれにも、すっかりなじめたかな? という頃合いにおこないました。ま、リーダーの私は、今日ははじめっから肩のチカラが抜けていましたけどね。なんだかとっても気楽に、自然にさいごのゲームにたどり着いた。ゲームは、まず「夏」と聞いて思い浮かんだことばを挙げてもらうことからはじめます。思い思いに単語を挙げてもらい、それを私が片っ端から、模造紙に書き留めていきます。挙がったのが、

写真  スイカ、花火、海、誕生日、ゆかた、かき氷、おばあちゃん家(ち)、ギラギラの太陽、盆踊り、うちわ、風鈴、高校野球、とうもろこし、蚊帳、入道雲、かみなり、クーラー、せみ、プール、夕立ち、ラジオ体操、朝顔の観察日誌、ビアガーデン、天気予報調べ、くらげ、登校日、宿題、お盆、すだれ、終戦記念日、ひまわり、UV、ビーチパラソル、旅行、海の家、砂浜、かぶとむし、くわがた。

 いろいろですね。もちろんこういうのに正解も不正解もありません。自由に連想してもらってかまわないです。私だったら、畑仕事とか。合宿とか。あと夏は人が死ぬ季節だという印象もあります。不吉ですけどね。「夏」という、漠然とした巨大なものを、自分なりに形にしていきましょう。すこしずつね。

写真  八つ切りの大きな画用紙をひとり1枚ずつお配りします。輪のまんなかに12色のクレヨンを3セット置きました。みなさんに好きに絵を描いてもらいます。テーマは「夏の思い出」です。絵の中に自分が描いてあってもなくてもかまわない。自分のアタマのなかにある情景を、自由に画用紙にレイアウトしてください。絵の巧拙を評価したり、品評会をしたりするわけではないので、どうぞ気楽にどうぞ自由に。時間は15分ぐらいだったかなぁ。私のワークショップで絵を描いたのははじめてでしたね。

写真  描きあがった絵を掲げながら、ひとりずつ自分のアタマにある情景をことばで表現してもらいました。絵の説明をするのではありません。アタマのなかの情景を、絵とことばを使って表現するのです。(ちなみに演劇もまったくおなじです。「絵」と「ことば」で、あるなにかを表現します。「ことば」で「絵」を説明している類の作品は、ひじょうにつたないものですね)。

 君に見せたい夏がある。

写真  みなさんのそれぞれの情景を思い浮かべているだけで、もう十分にお腹がいっぱい。この大広間に「夏」が満ちていましたね。イマジネーションの力で、それぞれの「夏」を自分のものにする。それだけで、もう満足、満喫、満腹です。

 なのですが、今回はさらにグループワークにも取り組みます。2チームに分かれる。チームごとに相談して、練習して、パフォーマンス作品を作る。メンバーの描いた絵、あるいはメンバーのアタマのなかにある情景から、かならずなにかひとつを抜粋して、それを組み合わせて、ひとつの作品にします。イメージを立体化して形にすること。ストーリーがあってもなくても可です。なるべくなら身体をよく使った作品にすること。その練習の意味合いもあって、これに先立って『シェイプ・アップ』というゲームを今回はおこなっています。身体を使って、リーダー(私です)の指示する「モノ」の形を表現するゲームでした。

写真  各チームが、それぞれの数枚の絵をにらみ、相談し、立ち上がって身体を動かしながらあれやこれや作品を作っていく様子を、私は眺めていました。楽しかったなぁ。楽しいというか、眺めていて幸せな気分になりました。どうしてかな。どうしてだろうね、みたいなことをアシスタントの横山さんにも尋ねた気がする。

 こういうグループワークは、苦手な方にはさぞや苦痛であろうと思います。私もどっちかと言うと苦手な方なので、その気持ちがよくわかる。じっと座ってばかりいても埒は開かないものです。考え込んで、うなってばかりいないで、腰を上げること。立ち上がること。それがとっても重要です。まずは動いてみる。それによってかならず視界は開ける。そう信じて、立ち上がる。まず立ってみようよ。誰かがそう言ってグループの全員が立ち上がった瞬間が、おそらくこのワークのもっとも「劇的」な瞬間なのです。

写真  作品の発表会。2チームの作品をお互いに見合います。けれど発表会はオマケのようなものだというのが私の理解です。たぶん30分ほどだったと思いますが、チームで作品を作っていた時間。その時間がむしろ大事です。ひとりひとりの、自分のものでしかなかったイメージを混ぜ合わせる。すり合わせる。イメージをいくつも組み合わせて、だれのものでもない、けれど確かに自分のものでもある、新しいひとつのイメージを作り上げる。自分だけの「夏」ではなく、メンバー全員の、新しい「夏」を体験する。それがこのゲームの主眼であり、僭越ながら、それが私の「君に見せたい夏」です。今回は「夏」の情景が2作品できあがり、君に見せたい夏がふたつできました。いかがでしたか?

写真  この『クレヨン』に先立って、いくつものゲームをおこなっています。コメントを少々。

 『ジャグリング』では、いつもの「食べもののなまえ」ではなく、「好きな有名人」を使いました。挙げられた有名人のなまえから呼び名を決める。決まった呼び名は以下のとおりです。美里(渡辺美里)、アキコ(矢野顕子)、BoA、ゆず、卑弥呼、サダ(緒方貞子)、りえ(宮澤りえ)、柳葉(柳葉敏郎)、モー娘(モーニング娘。)、シカオ(スガシカオ)。あとひとり、有名人が思い出せない! 恐れ入りますが、どなたかご指摘を。

写真  『ストレッチ』。みなさんにひとつずつ、提案していただく形式でおこないました。なんていうの、持ちネタ? みなさん、それぞれ独創的なストレッチをご存じで、私はびっくり。

 『神様』。私ははじめてトランプでジョーカーを引き当てましたよ。あれ、興奮しますね。じっさい神様になってみると、予想していたほどには神様に自由がないんだという発見がありました。あっという間に見つかってしまう。逃げ場がないんだもの。

写真  アシスタントは松陰コモンズの横山紀子さんです。ワークショップ中はもちろん打ち上げの席においても、横山さんの暖かなこころ遣いに、たいへん感謝しています。横山さんは、じつは以前から「アシスタントをやってもらいたいなぁ」「やっていただけないものかなぁ」と、私が切望していた方でした。私の申し出を快諾していただき、これは「30回もワークショップをやってきた私へのご褒美だなぁ」とうれしく思っています。横山さん、ありがとうございました。ぜひまたご一緒しましょうね。

 午前のうちに松陰コモンズをお訪ねし、ワークショップを経て、打ち上げが終わるまで。私はあの大広間に9時間もいたことになります。今年の夏のさいごの休日。9時間もの時間、私は「夏」を満喫しました。参加者のみなさんのイマジネーションと意欲的な取り組みのおかげで、すてきな「夏」を体験させていただきました。ありがとうございました。ぜひまた遊びにいらしてください。リーダーを務めたのは、いつものように、不等辺さんかく劇団ワークショップ管理部の林成彦(はやしなるひこ)でした。今後もますます精進します。よろしくお願いいたします。


★アンケートより

◆雰囲気&内容について

写真 ○HPの紹介にあったように、お風呂のお湯が段々かき混ぜられていくような経過をリアルに感じとりました!
○外とつながっているのがすごくよかったです。
○「夏の終わり」感がとても味わえて、「場の力」があったのではと思いました。
○こんなに自然を感じながら楽しめたのは初めてでした。
○無邪気に楽しみながら、この場に参加している方々の飾り気のないあたたかさを感じました。
○「大人の夏休み」という感じでした。
○少年の頃にタイムスリップした感じで、レトロな雰囲気にひたれました。
○気持ちのよい汗をかいた。裸足がこんなに心地よいとは。
○内容は誰でも気軽に楽しめるもので、よかったです。
○「ライン・アップ」で、手のあたたかさが階段状に上がったのが、現代アートパフォーマンスみたいでおもしろかったです。
○一番気に入ったゲームは「ハシと茶碗」です。みんなの名前を覚えられて楽しかったです。
○絵を描き、夏の思い出を寸劇にしたゲームは楽しかったです。

◆リーダーについて

写真 ○ワークショップ初参加でしたが、ひとりひとりの目を見ての指示に、たいへん安心感を覚えました。
○ポイントをとらえた的確な指示には感心します。
○いつもソフトですばらしいと思います。
○周りをよく見てくれているなぁと思いました。
○とてもスムーズだったと思います。
○親しみやすくて、段取りよくまとめてくださったので満足でした。
○いとをかし。

◆その他

○会場までの地図がわかりやすかったです。
○横山さんはバレリーナなんですか? 姿勢が美しいですね!
○またおもしろい企画がありましたらおしえてください

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